246話
コウは坑道内を一直線に突進してくるモグラの魔物に向かって相棒であるサンクチュアリで迎え撃つかのように振り下ろそうとするも何か途中で引っかかったような感覚が手に伝わり、何だか嫌な予感がしたため頭上を確認すると天井へ見事にサンクチュアリの先端である刃がしっかりと刺さってしまっていた。
「ん...?ちょっ...やばい!」
天井が低い坑道なので当たり前なのだが、目の前のモグラの魔物に気を取られてしまい意識していなかったため、唐突に訪れたピンチに動揺するコウを見て更に突進が加速して近づいてくる。
「何しているんですか...ここは私に任せて下さい」
コウの後ろで保険として風魔法を準備していたイザベルが前に立つと周囲を流れる風をまとめ上げて坑道内の砂や小石を巻き込み、渦のようにぐるぐると回り続ける風の槍がいくつも作り上げられた。
「風槍!」
そして突進してくるモグラの魔物に向かってイザベルは手のひらをかざすと周りに浮遊している風の槍が折り重なっていき、轟音と共に一直線上へ放たれる。
風の槍が前方に放たれると地面の砂や小石などを更に巻き込みながら突き進んでいくため、突進してくるモグラの魔物の姿は見えなくなった。
しかし逃げ場の無いこの一直線の坑道内ということもあり、勝利を確信したコウは天井に刺さっていたサンクチュアリを引っ張り抜いて魔力を流すのをやめて元のブレスレット状態にして暴風のように突き進む風の槍が通り過ぎるのを待つ。
そして風の槍が坑道内を通り過ぎて視界が良くなるがそこにはモグラの魔物の死骸は無い。
もしかして坑道の奥まで風の槍と共に運ばれていったのではないか?と思った瞬間、目の前で地面が隆起しながらこちらに向かってくる何かが視界に入った。
「地面の中に逃げたのか!」
あのモグラの魔物は風の槍によって坑道の奥まで吹き飛ばされたわけでもなく、地面の中に潜り込みイザベルが作り出した風の槍を避けてこちらまで迫っていたのだ。
といってもあの魔物の攻撃方法はゴブリンが襲われていた一部始終を見ていたためコウ達は理解している。
とはいえあんな鋭く尖った角に刺されてしまえばゴブリンと同じ道を辿ってしまうこととなってしまうため、なんとかして回避しないといけないが生憎地面の中に潜っている魔物に対してどうにかできる手はないのでここは自身の反射神経を信じるしか無いだろう。
コウとイザベルの2人は共に回避するため、目を閉じて自身の全てという全ての感覚を集中させて向かってくるモグラの魔物が爪で掘り進んでいる振動を感じ取る。
「来ます!」
「避けるぞ!」
モグラの魔物がコウ達の足元に到達し、地面から鋭く尖った角の先端が出始めると共に2人は声を合わせ、地面を蹴ってその場から左右に別れるように緊急回避をしていく。
そして地面の中から姿を表したモグラの魔物へカウンターとしてコウは氷槍をそしてイザベルは風の槍を放った。
しかし2人が放った氷槍と風の槍は回避中で体勢が悪かったためか胴体から狙いが少し外れモグラの魔物が持つ鋭く尖った角と片手の太い爪に直撃することとなる。
「ちっ!外したか!」
「惜しいですね」
致命傷を与えられなかったため更に追撃をしようとすると先程の氷槍と風の槍が直撃した角と太い爪にヒビがぴしりと入っていき、ぽっきりと中心部分から綺麗に折れる。
その事に気づいたモグラの魔物は自身の武器であった自慢の角や爪を折られたことによってなのか、戦意を喪失してしまい一目散に逃げようと先程出てきた穴に向かって走り出す。
「逃がすわけ無いだろ!」
このまま地面の中へ潜られてしまうと追跡がほぼ不可能になり、逃げられてしまうのでコウは手に持っているサンクチュアリを今度は縦に振るうのではなく、貫くように潜りかけているモグラの魔物のお尻に向かって鋭い突きを繰り出す。
そしてお尻に突き刺したサンクチュアリが抜けないよう更に奥深くまで突き刺すと骨の隙間へ入れ、コウは持ち手を両手でぐっと握り、半身ほど潜りかけているモグラの魔物を力任せに引き抜こうとする。
また地面の中からはサンクチュアリが突き刺されたことによって激痛が走ったのか、くぐもったモグラの鳴き声が聞こえると同時に暴れ狂いながら後ろ足をバタつかせ、砂埃が舞う。
「うぐっ...!重すぎて引き抜けない!」
それでも重量差によって地面へ潜りかけているモグラの魔物は引き抜けず、コウとモグラの魔物が大綱引きのように引っ張り合って拮抗状態を維持していると坑道の奥でイザベルが立っているのがちらりと見えた。
「コウさん!そのまま耐えていてください!」
とりあえずイザベルの指示通り、コウは足腰に力を入れてなんとかその状態を維持しているとモグラの魔物が潜っている穴の隙間から風が漏れ出てくる。
どうやらイザベルがこの穴に通じている反対側から風魔法を送り込んでいるようで半身ほど潜りかけていたモグラの魔物がじわりじわりと引き摺り出しつつあった。
「氷槍!」
そして栓が抜けたように地面から引き摺り出すとそのまま空中へ放り投げられ、コウは身体の中心部...つまりは心臓があるだろうと思われる部分に向かって氷槍を作り出して狙い撃ち、そのまま空中で貫くこととなる。
流石に心臓を貫かれてしまっては生きていられる訳も無く、モグラの魔物は空中から落ちるとそのまま仰向けに倒れ、血をどくどくと地面へ垂れ流しながらピクリとも動かなくなった。
「ふぅ...終わったな」
「怪我はないですか?」
「ん...問題ない。イザベルは?」
「私も大丈夫です。とりあえず回収しましょうか」
お互いに無事を確認しあって一息つくが濃厚な血の匂いが充満していくので他の魔物がやってくる前にさっさとモグラの魔物の亡骸を回収する必要があるだろう。
またモグラの魔物の背中に背負っていた鉱石はいつの間にか周囲へ散らばっているのでコウとイザベルは分担しながら回収していき、ダルガレフが待っている鍛冶屋まで戻るのであった...。
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