245話
ダルガレフの言う通りドワーフの国から出て城壁沿いを右方向に向かって足を進めていくと途中、採掘場から手に入れたであろう鉱石を荷車へ山のように積み込んで運んでいる何組ものドワーフ達とすれ違う。
そして目的の場所に到着したのか歪な形をした岩山がひょこりと姿を現し、採掘場はどんな種族でも出入りが自由のため、個人で切り出したり掘り出した石材や鉱石をドワーフ達や人族、獣人など様々な種族がせっせと運搬しているのが見える。
「目的の鉱石は卵形で大きめのやつだったな」
「しかも翡翠色ですから目立つ筈なのですが...」
そこまで貴重な鉱石でもなく、採掘場に入ればそこらに転がっていて見つけやすいとダルガレフが言っていたがぐるりと周りを見渡してもそのような特徴を持つ鉱石は見当たらない。
「見当たらないし近くで採掘している人達にでも聞いてみるか」
「それが手っ取り早いかもしれないですね」
周囲には採掘している者が多いのでコウ達が必要としている鉱石を何処かで見かけているかもしれないし、もしここら一帯に無ければ何故無いのかぐらいは情報を得られるだろう。
とりあえず丁度近くで採掘をしていた数人のドワーフに求めている鉱石の特徴を伝え、どうしてここら一帯に無いのかを聞いてみるとダルガレフと派閥争いをしているもう一人の二大鍛冶師が嫌がらせとしてここら一帯にあった鉱石を総取りしていったらしい。
ただイザベルのレイピアを修復したいだけなのにそんないざこざに巻き込まれたのはたまったものではないのだが、現状鉱石を取られてしまってはどうしようもない。
「だからダルガレフの手元にその鉱石がなかったのか...」
「それは困りますね...他にその鉱石を見かけませんでしたか?」
「確かその鉱石なら向こうにある坑道の奥に行けばそこら中に落ちているのを見たぞ」
その中にいる1人のドワーフが指をさす方向を見るとそこには岩壁にトンネルのようなしっかりとした作りの入口が作られているのが見えたのでその奥に行けばコウ達が必要としている鉱石を手に入れることができるようだ。
ただその坑道には魔物が居着いてしまったらしく、今では冒険者以外あまり立ち寄らない場所なので奥に行って鉱石を取るのはおすすめはしないと言われた。
「コウさんどうしますか?」
「どうするもなにも行くしか無いんじゃないか?鉱石を譲って貰えるかも分からないし」
派閥争いをしている者が見知らぬコウ達にはいどうぞと素直に鉱石を譲ってくれるとは限らないし、ドワーフの国へ戻ってわざわざ交渉するよりかは自分達で坑道内にあるであろう目的の鉱石を拾った方がまだ早い筈である。
ということでいざ坑道に入ると風の通りが良いのか新鮮な空気が流れ込み、所々に天井へぶら下げてあるカンテラに似た魔道具が昼白色の光を放ちながらゆらゆらと揺れている。
「ダンジョンじゃないのに意外と明るいな」
「ドワーフが置いていった魔道具でしょうか?とりあえず迷わないようにしないといけないですね」
坑道内は左右に人の手で掘られた通路が多く存在して複雑となっており、もし目印などを作らずに迷ってしまえば抜け出すのは難しい。
また天井や地面など様々な場所にも人がなんとか通れるぐらいの穴が空いているのだが、人の手によって掘られたものとは少し違い不安定な作りをした穴である。
そんなあらゆる場所に空いた穴などに足を取られないよう気をつけつつ、コウは雪だるまに似た氷の彫刻を作り目印として置きながら坑道内を進んでいくとギャッ!ギャッ!と何処か聞いたことのある鳴き声が前方から聞こえてきた。
隠れられそうな出っ張った岩壁にこっそりと半身を隠しながら奥の通路の様子を窺うとやはりというか鳴き声の正体は緑色の身体が特徴のゴブリンであり、両手を上げて喜んでいるようであった。
「なんだゴブリンか...」
「コウさん。あれって私達が探していた鉱石じゃありませんか?」
イザベルの言う通りゴブリンの足元を見てみると確かにダルガレフが言っていた特徴と全く同じ鉱石が落ちているではないか。
そこまで時間も掛からず簡単に見つかるとは思っていなかったので鉱石を持ち帰るためにこっそりとゴブリンに近づこうとすると何処からかゴリゴリと何かを削るような音が聞こえてきたので足を一旦止めて様子を窺うことにした。
するとゴブリンの足元の地面がボコリと隆起し始め、そこから真っ白な角を持った黒い影が飛び出すとギャッ!という鳴き声と共にゴブリンの胴体を貫き、真っ赤な鮮血を周囲に撒き散らすと血や臓腑の臭いが坑道内を吹き抜ける風に乗って鼻を通り過ぎた。
「何だあの魔物...モグラ?」
「私もあの魔物は初めて見ますね」
地面から飛び出し、ゴブリンを絶命させた魔物の姿は体長約1~2m程のモグラに似た魔物であり、サイの角に似ているがグルグルとドリルのように捻れ鋭く尖った角を持って背中には見たことのない様々な鉱石を背負っている。
雰囲気から察するにゴブリンなどとは違って明らかに魔物としての格が違うということをひしひしと感じ、コウは相棒であるサンクチュアリを構え、イザベルもまたいつでも風魔法を放てる様に周囲の風の流れが変化していく。
そんなコウ達の存在に気づいたモグラに似た魔物は転がっていた鉱石を五本の太い爪で上手いこと掴み、様々な鉱石を背負っている背中に放り投げると敵意を示し、邪魔をするなと言わんばかりに突進してきたので戦いの火蓋が切られるのであった...。
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