236話
「ふわぁ〜ぁ...眠い...」
翌日の時間で言えば10時頃。コウは欠伸を噛み締めながら多くの服屋が立ち並ぶ街中を左右にいるイザベルとライラに両腕を挟まれ、ずるずると引き摺られながら運ばれていた。
周りにいる独り身の男達からしたら両手に花を持っているようで羨ましがるような視線がコウに向かって突き刺さり、逆に女性と一緒に歩いている男性からは憐れむような視線を感じる。
本来はこうならないようにしたかったのだが、前日の夜遅くまでイザベル達の寝間着を選ぶ戦いへ巻き込まれ強制的に参加させられていたためコウは朝はぐっすりと眠っており、いつの間にかコウが寝ている部屋にイザベル達はこっそりと忍び込むと眠たいなか起こされ連れ出された。
あれよあれよとコウはイザベル達の手によって介護されながら着替えさせられ、朝食を食べさせられ、歯をしっかりと磨かれると街中へ繰り出していた。
ちなみにフェニはというと馬車を運んでくれていた馬の元へ遊びにいっており、この場にはおらずダリアに関しては商売の匂いがするとかなんとかで1人で街に繰り出している。
こうなってしまった以上、解放されることは無理だと諦め、身を流れに任せるしか無いのだ。
「もう...コウさんしっかりして下さい。これから私達の服を選ぶのですから」
「そうですよ〜早く寝なかったのがいけないです〜」
早く寝れなかったのは誰のせいなのか小1時間この2人を問い詰めたいところではあるがまだ若干眠気が覚めてないためその気にもならない。
そしてイザベル達にずるずると引き摺られ、最初に辿り着いた場所はキラキラと煌く華やかなドレスがショーケースに数多く飾られた服屋であり、どれもこれも値が張りそうな服ばかりである。
服屋といっても庶民が来るような服屋ではなく、貴族向けの服屋のようでここを教えてくれたマリエルからは紹介状を手渡されているらしい。
店の扉を開けると上に付いているドアベルがからんっと小さく鳴り、中には裕福そうな奥様方が身体のラインにドレスをあてがっていたり、試着していたりするのでコウは若干場違いなのではないかと思ってしまった。
そして新規の顧客だと察した店員がこちらに駆け寄ってくるのでイザベルは収納の腰袋からマリエルに手渡された紹介状を取り出し、店員に渡すと封蝋の紋章で察してくれたようで愛想よく明るくライトアップされた店内へ案内されていく。
「何か御用がありましたらお話かけ下さい」
どうやら話しかけてくるようなタイプの店員ではないため、ゆっくりと服を選ぶことが出来そうなのでイザベルとライラの2人はお互いに店内を歩き回りに行ってしまう。
そして店内は殆どが女性物の衣服ということもあって、コウは近くあるフカフカそうなソファーが置かれた休憩スペースへと足を運ぶと先客として休日のお父さんのように疲れ切った男達が腰を据えていたのでコウも同じ様に混ざってゆく。
暫く休憩スペースでゆっくりとした時間を過ごしているとある程度の衣服を選び終えたのかイザベル達がホクホクとした表情で戻ってくるのでようやく買い物が終わったようである。
「もういいのか?」
「そうですね...あぁ1つだけ忘れていました。コウさん私はどんな服が似合うと思いますか?」
「あ~そうでした~私のも選んで下さい~」
買い物がようやく終わったと思っていたら残念なことに終わっておらず、今度はどんな服が似合うかと話を突然振られてしまう。
しかしイザベルやライラは普段から冒険者の格好をしていたり、シスターの格好していたりと既に印象が決まっているため他にどの服が似合うのか分からない。
ただここで何かしら似合いそうな服を見つけなければなんだかいけない気がしてならないのは何故だろうか。
「イザベルの似合う服...ライラの似合う服...」
2人の名前をぐるぐると繰り返しつぶやきながら似合う服を必死に探し、少しでも良さそうだと思った衣服をとりあえず手に取る。
コウが手に取った服は2着であり、袖口が大きめに作られ、全体的に花の刺繍があしらわれた真っ黒のロングドレス。
そしてもう1着の服は白を基調とし、ゆったりと身体のラインを隠す様に出来ているノースリーブワンピースであった。
「あー...これとか駄目か?髪の色とかに合わせれば似合いそうじゃないか?」
「これは...悪くないですね」
「そうですね~じゃあお会計したら早速着替えましょう~」
黒いドレスはイザベルに白のワンピースをライラに手渡すと2人は自身の身体に服をあてがいながらお互いに顔を見合わせ、納得したような表情を浮かべるのでどうやらコウの選んだ服は間違いでは無かったようで一安心する。
そして2人はお会計を終えるとコウが選んだ服へサッと着替えマリエルがおすすめしてくれた店から出て大通りを歩き出すとライラが何かを見つけたようでその場で立ち止まる。
「むむっ!これは...!」
「どしたんですか?ってなるほど...行きますよライラさん!」
「善は急げですね~!」
そのままイザベルとライラはコウを置き去るように走り去っていき、ぽつんと1人取り残されてしまう。
2人が見ていた物はなんだろうと見てみるとそれは1年に1回あると言われているファッションショーがここ数日以内に開催されるということであり、参加を募っているという張り紙であった。
「なるほど...だからあんなに急いでいたのか」
とりあえずは2人から開放されたということで眠気覚ましにルガルの街を観光するのも悪くないだろうと思いコウは歩き出そうとする。
「むむっ!お主は...珍しい者に珍しい所で出会うものじゃな」
すると後ろから聞いたことがある声が聞こえ、振り返るとそこにはまさかのこんな所で会うと思ってもいなかった人物であった...。
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