235話
コウ達はマリエルが呼び出した初老の執事であるリオメールに案内された部屋でゆっくりと旅の疲れを癒やし、急な来客ということなのに態々夕食を用意してくれ至れり尽せりのもてなしを受けさせてもらえた。
そして夕食を食べ終えたコウ達はその部屋で元々用意されていたお菓子をつまみつつ、これからの予定をどうするか話し合っていると来客が訪れることとなる。
「どなたか扉を開けてくださいまし~~〜!」
来客というのはマリエルであり、部屋の扉に近かったイザベルが返事を返して扉を開くとそこには両手に大量の衣服が抱えられているためか衣服の山に埋もれた状態のマリエルの姿があった。
「マリエル...あなたはいったい何をしているのでしょうか?」
「これは助けてくださったお礼の品ですのよ。どれか好きな寝間着を欲しいだけ選んでくださいまし」
「そこまで大したことはしてないのですが...頂けるなら有り難く頂きますけど」
「私は何もしてないんですけどいいんですか~?」
部屋の中に入ってきたマリエルはコウの座っていない反対側のソファーの上に持ってきた衣類を置くとイザベルとライラは光に誘われる虫の如く吸い寄せられていく2人。
衣類はどうやら寝間着ばかりであり、衣類の街と呼ばれることもあってただの寝間着1つでもデザインが違い、中には奇抜なデザインの物もあったりする。
とはいえマリエルを助けたのはイザベルであるためライラは持ってきてくれた衣服を受け取るのを戸惑っていた。
「ライラさんは新しい友人として出会えましたのでプレゼントとして送りますの!」
助けてくれたお礼の品とはいったいなんだったのか...。
もうこれは実質友人の家に遊びに来てお泊まり会をしに来たようなものである。
寝間着を貰う許可を得ることができたライラはイザベルと2人で仲睦まじく寝間着を身体に当ててどれが良いのか探しているとマリエルも感化されたのか寝間着限定のファッションショーに混じってゆく。
「ほら〜コウさんにも似合いそうなのを持ってきましたよ〜!」
ライラは1つの寝間着を手に持ちながらコウの元へ持ってくるが、それはワイバーンを可愛らしくデフォルメした着ぐるみの寝間着である。
コウの持っている寝間着はハイドと一緒に魔の森で暮らしていた際の物だけのため2着だけと数は少なくルガルの街を観光しているときにもう1着ほど買おうと思っていたところではあったのだ。
しかしコウとしては奇抜な寝間着が欲しいわけでもなく、なるべく普通のデザインの物が欲しい。
「いや...それはちょっとなぁ」
「じゃあ私の選んだ物はどうでしょうか?」
着ぐるみの寝間着を選ぶつもりはないので首を横に振って持ってきた着ぐるみの寝間着を断ると今度はイザベルがライラを押し退け、選んできた寝間着を両手で広げて見せてくる。
イザベルが持ってきた寝間着はコウには知らない兎の魔物をデフォルメで模した物であり、ほぼライラと同じような気ぐるみの寝間着を持ってきたのだ。
「さっきのと似たような物なんだが...もう自分で選ぼうかな」
「いえ!今度はわたくしの番ですわ!」
とりあえずイザベルの持ってきた寝間着もライラと変わらないため自身で選ぼうとソファーから立ち上がると今度は何故か2人に対抗心を燃やしているマリエルが次の寝間着を持ってくる。
マリエルは持ってきた寝間着を広げると白い絹で作られたようなの寝間着であり、コウの持っている物と同じ一見普通の物に見えたため意外とマシなのを持ってくるじゃないかと思ったが実際にそんなことはなかった。
「実はこれには隠し種がありましてよ!水に濡らすと何と透け透けになるのですわ!」
マリエルは机の上に置いてある水差しを手に取って寝間着を水で濡らすと濡れた部分から透明に透け始め、反対側が透けて見えるかのように寝間着は変化し出す。
「だからなんで奇抜なのを選ぶんだよ!」
「おかしいですわねぇ...殿方には人気らしいのですが...」
「人気の理由は絶対に相手へ着せるためだろ...」
もしかしたらこの3人娘達はまともな寝間着を選ぶ気はないのでは無いのだろうか。
ここは唯一まともなダリアに意見を聞きたいところではあったのだが、馬の面倒や馬車のメンテナンスがあったり、この街を治めている領主であるマリエルの父と人脈を作りに行ったりと忙しいようで残念ながらこの場にはいない。
ツッコミに疲れたため今度こそ自身で選ぼうとソファーから立ち上がるとマリエルはパンパンと2回手を軽く叩いて音を立てた。
「リオメール!コウさんを座らせてあげてくださいまし!」
「了解致しましたお嬢様」
「え?」
するとコウの背後へ暗殺者のように現れた執事であるリオメールは後ろからコウの両肩に手を置くと座っていたソファーへ強制的にすとんと座らせられてしまう。
そしてイザベル、ライラ、マリエルの3人はお互いに視線で火花を散らしており、誰が一番早くコウが気に入る寝間着を選べるかの勝負が始まってしまった。」
なんだかこの場から逃げ出したくなり、助けを求めるような視線を後ろに立っているリオメールに向けてみるも自身の主人には逆らえないのか申し訳無さそうな表情をして謝ってくるので責めることも出来ない。
また先程、側で寝ていた筈のフェニは被害を被らないように部屋の隅にある椅子の上へいつの間にか移動し、ぐっすりと寝ているので羨ましい限りである。
もうイザベル達が選んだ寝間着から適当なのを貰って3人の戦いを終わらせようと思っていたりするがここはなるべくマシなのを貰いたいところ。
しかし残念なことにコウの寝間着を選ぶ戦いは夜遅くまで続き最終的には外から帰ってきた唯一完成がまともなであるダリアを無理やり寝間着を選ぶ戦いの中にねじ込み、選んでもらった寝間着にすることでその夜の決着はついたのであった...。
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