226話
広範囲に氷壁を石の階段から生えてくるように作り出しているため、小さな入口だった木のハッチは氷壁によって徐々に広がっていき、最初は塞ぐためにしていたことの筈だったが今では人がすんなり通れるぐらいの状態にはなっていた。
このまま氷壁を破壊されなければ塞がった状態になるのだが、剣を振るっている謎の男はまるで豆腐のように切り裂いてくるので追加で氷壁を出さざるを得ない。
しかしそれにしてもコウが作り出した氷壁をいとも容易く切り裂ける人物は少ないだろう。
つまり今現在、目の前で剣を振るい続ける謎の男はコウの中で恐らくこの裏ギルド内で一番強い者であろうと理解していた。
そして次々と氷壁を作り出す速度よりも男が剣を振るい切り裂いていく速度のが速くジリジリとだが、コウの前まで迫ってくるためこれはもう覚悟を決めて戦うしか無い。
これ以上氷壁を作り出して魔力を消費するのは無駄だと考えコウはサンクチュアリを収納の指輪から取り出し、目の前に迫っていた謎の男を迎え撃つと足元が不安定な石の階段で鍔迫り合いになった。
「こんばんは。誰だい君は?うちにこんな子いたかなぁ...?」
結構な力を込めて押し込もうとしているのだが、被っているフードの外側からぽりぽりと頭を掻きながら片手で軽々と涼しい声でコウのサンクチュアリを受け止めている謎の男。
しかしながら言っている言葉とは裏腹に一瞬だけちらりと見えた男の瞳はコウのことをその辺りに転がっている石を見るかのような目をしており、興味はなさげである。
「あんたが裏ギルドの中で一番強い奴だな」
「ん~間違ってはいないかなぁ。頭でもあるしねぇ」
頭というとつまりはトップということだろうか?だとすればこの場で仕留めてしまえば裏ギルドは一気に瓦解していくはずだ。
とりあえずは鍔迫り合いをしているため、一旦弾き返すように手に力を込めるが一切びくともしないので、ここは何とかして押し返さなければいけない。
「氷槍!」
コウは片足に魔力を込めて自身の足元を強く踏むと石の階段の表面を氷がピキピキと音を鳴らしながら走りだし、目の前にいる男の足元に到達すると鋭く尖った氷の槍が石の階段から貫くように作り出される。
「おぉ怖い怖い。というか君達も手伝ってくれないかなぁ」
流石に足元から飛び出てくる氷の槍に貫かれたくはないのか鍔迫り合いをやめて後ろに下がりながら先程話し合いをしていたであろう仲間達にも声を掛けていた。
「ちっ!不利だな!」
流石に多対一を出来るほど自身は強いと自惚れていないコウはその場から逃げ出すように石の階段を数段飛ばししながら走って天井に氷柱を作り出し、入り組んだ地下へと逃げようとする。
しかし突如として綺麗な笛の音色が響き渡り、コウの進む先を塞ぐかのように植物の蔦のようなものが上下左右の様々な場所からボコリと次々に生えてきたのだ。
「邪魔だ!」
コウは目の前に生えてきて何層も重なるように塞ぐ植物の蔦を切り裂くようにサンクチュアリを振るうが狭い場所のため上手く振るえずにいた。
とはいえ無数の氷柱を天井に作り出し、地下道をある程度は塞いでいるためそれなりに時間は稼げると思っており、焦りはしていなかった。
暫く植物の蔦を切り裂きながら前へ進んでいると笛の音色に混じりながら天井へ作り出した氷柱が石の階段に落ちて割れる音がするのでどうやら誰かが無理矢理にでも突破してきたらしい。
とはいえもう少しで何層にも重なるように塞がっている蔦が突破できそうであったためわざわざ振り返って確認しなかったのが仇となったのか突然、コウの首元にひんやりとした鉄のような物が突きつけられた。
「手を上げて武器を下ろせ」
首元に武器を突きつけられている以上、抵抗は無意味だと感じたコウはサンクチュアリに魔力を流すのをやめてブレスレットの状態に戻すとすぐさま後ろに両手を回され組み伏せられてしまい無抵抗の状態になってしまう。
「痛いだろ!」
「黙れ女。殺されないだけ有り難く思え」
組み伏せられた際に文句を言うとどうやら女装をしているため勘違いしているらしい。
両手首と両足首をロープのような物で縛られると腰に抱えられ、先程の場所まで戻るように連れて行かれることとなる。
「生きたまま連れてきたぞ」
「お疲れさん。やっぱ君に頼んで正解だねぇ」
「あたしも頑張ったんですけどー」
顔をあげて全員の顔を確認しようとするも全員は深くまでフードを被っており、顔は見えないが一癖も二癖もあるような人物達だというのは雰囲気から察するものがある。
雑に床へ降ろされると3人に囲まれ、ジロジロと見られるがあまりいい気はしないがここで抵抗しても碌なことにはならないだろう。
とはいえ女装のお陰なのだろうか?何故かあまり手荒なことはされなかったのは運が良かったのかもしれない。
「さて...君はどうしてこの場所まで来れたのか教えてもらっていいかなぁ?」
最初に剣を振るっていた謎の男はしゃがみ込んでコウの顔を覗き込みながら片手で掴むと尋問の時間が始まるのであった...。
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