223話
場面は変わり、イザベル達とは少し離れたスラム街の奥にある人も住んでいないような廃屋が立ち並ぶメインストリート。
「痛ぇな!何処のどいつだ!俺様をぶん殴った奴は!」
がらがらと建物が崩れ落ちている1つの廃屋から先程、ジールに吹き飛ばされるほどの勢いで殴られた頭部が痛むのか片手で擦りつつ、文句を言いながらゴラスが出てくる。
「悪いな。そいつぁ俺だ」
「さっきはよくも殴ってくれたな...俺様が誰か分かってんのか?」
「三罪の1人のゴラスだろ?御託はいいから掛かってこい」
ジールは挑発するように人差し指でくいくいと何度も折り曲げるとゴラスのこめかみにボコりと太い血管が浮き出る。
そしてゴラスはまるでワイルドボアの如く足に目一杯力を込めて地面を蹴り上げるとジールに向かって突進していく。
「まるでワイルドボアだな...ふんっ!」
ジールは地面を強く踏みしめてラグビー選手のように突進してくるゴラスを両手で吹き飛ばされないように受け止めると衝撃が地面へと伝わり、両足が大きく沈み込み周囲の地面が隆起する。
「むぅ!?」
「逃さねぇぜ!」
しかしゴラスの突進を上手く受け止めたと思いきや、今度はジールの腰あたりを両手で掴まれ空高くまで放り投げられる。
空高くまで放り投げられたジールが空を飛べるわけもなく、ある程度の高さまで到達すると重力には抗えずそのまま自由落下していく。
落下地点では既にゴラスが、腰を落としてはち切れんばかりに腕の筋肉を膨らませ、大きな拳を目一杯握りおおきく振りかぶって落下してくるジールを待ち受けている。
「あばよ!ローランのギルドマスター!」
そして丁度、ゴラスの待ち受ける地点まで落ちてきたジールに向かって大きく振りかぶっていた拳を振り抜くと先程のゴラスが出てきた廃屋に向かって吹っ飛んでいく。
異常に発達した筋肉を持つ腕から放たれた一撃は並大抵の者では全身の骨を砕かれる程の威力であるためジールもただでは済まないだろう。
「よし終わりだぜぇ!さてあの糞爺のところに行って恩でも売るかぁ!」
ゴラスは今まで出会った相手は全て自身の有り余る筋肉から放たれる拳を振るい一撃で屠ってきたことによって今回も自身の勝利を確信しており、廃屋の中に吹き飛んだジールの状態も確認せずにイザベル達と戦っているであろうアーロウェルの応援に向かおうとくるりと反転し、歩き出す。
「おいおい...もう終わりか?」
するとガラガラに崩れ去った廃屋から倒したはずのジールの声が聞こえ、振り返るとほぼ無傷の状態でジールが現れた。
「お前...なんで無傷なんだ...?」
「こう見えて身体は丈夫なんでな。ほらもう一度突っ込んで来いよ」
「後悔すんなよ!」
再び人差し指で挑発すると先程の状況と同じようにゴラスはジールに向かって突進するように走り出し、ジールもまた同じく突進するように走り出す。
(馬鹿が!俺様とお前とじゃ体格が違うんだよ!)
そしてお互いの突進が衝突し、明らかに体格が一回り小さいジールが吹き飛ばされるのではないかと思われたが実際には真逆のことが起きた。
お互いの肩と肩がぶつかりあうと体格が一回り小さいジールが自身よりも大きいゴラスを吹き飛ばしたのだ。
まさかゴラスは自身が吹き飛ばされると思っていなかったのか驚愕の表情を浮かべるとそのまま地面へ転がり、ジールは当たり前だと言わんばかりの笑みを浮かべる。
「お前さんは力の使い方がなってねぇんだよ」
「一回俺様を吹き飛ばしただけでいい気になってんじゃねぇ!」
廃屋まで吹き飛ばされた際に付いた砂埃を払いながら説教をするかのように言い放つジールに馬鹿にされたと思ったのか地面から起き上がり今度は右ストレートでを振り抜くように襲いかかる。
その振り抜かれた右ストレートは風を巻き込む音を出しながら放たれるがジールはその右ストレートを左手だけで受け止めた。
「なっ!」
「本当の拳ってのはこういうものを言うんだぜ!」
ゴラスの拳を左手で受け止めながらジールは空いている右手で拳を握りしめ、お返しとばかりに分厚い筋肉を鎧のように纏っている鳩尾に向かって下から振り上げる。
ジールから放たれた右拳が分厚い筋肉へめり込むと肺から一気に空気が押し出されゴラスの口から「かはっ」と息を漏らし、ぐるりと白目を剥いてしまう。
そしてそのまま前のめりに身体が傾き始めたのでジールが横に避けると地面に倒れ込みピクリとも動かなくなってしまった。
「よーしこれで終わりだ。さて...他の奴らの様子を見に行くか」
とりあえず三罪の1人であるゴラスを捕らえることが出来たのでまだ戦っているであろうイザベル達やディザーの元へ向かおうと歩き出す。
「いやちょっと待て...。こいつ放置したら駄目じゃねぇか?」
しかしイザベル達やディザーの元へ向かうにしても気絶して倒れたままのゴラスを放置するのあまり良くはなく、拘束して放置していたとしても並大抵の拘束では勝手に解かれてしまうだろう。
そのためジールは歩き出すのをやめるとゴラスが再び起きても対応できるようにその場で胡座をかいて座り込み、イザベル達やディザーの戦いが終わってこちらに来るまでのんびりと待つのであった...。
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