212話
ここ最近、裏ギルドの者達が女性の冒険者を狙い誘拐をしているということでコウは今1人で行動しているはずのライラを探しに行くことにした。
時間帯としては昼時ということもあって人通りも多く、危険な目に遭う可能性は限りなく低いだろうが何があるかわからない世界であるため、1人で行動するよりは共に行動した方が安全だろう。
ライラの向かう先の目星は大体ついており、朝食の際にお互い今日の予定を話していたため、ライラがいるであろう今の場所から一番近い場所まで向かい走り出す。
「確かここに寄るって言ってたはずだけど...」
コウが最初にたどり着いた場所は大通りを超えて少し落ち着いた通りにある服屋へと到着するもそこは女性物の服や下着をメインとして売り出しているところであったため、年頃の男の子なコウにとっては入りづらい場所である。
意を決して中に入ると様々な種類の服や下着があちらこちらに並べられており、やはり女性物を専門として扱っている服屋ということでどれも作りが凝っているものとなっていた。
並べられている下着の中には布が少ない物や刺激の強い物もあるということでそれらをイベルやライラが履いているたりする想像してしまうが邪念を祓うように頭を横に振る。
今思えばライラは基本的にシスターが着るような修道服を普段着として着ていたりするが、店の中にあるような服を着ていたりすることは見たことがない。
ライラの下着に関しては今までコウが持っている収納の指輪の中へ荷物と一緒にまとめて入れていたりしていたが、ライラといえども年頃の女の子であるため収納の袋を手に入れた際に荷物とまとめて返していたりする。
まぁ収納の袋を手に入れたことによって年頃な女の子であるライラもおしゃれを楽しみたいのかもしれない。
「いらっしゃいませーって...あらあら?おつかいに来たのかな?」
奥のカウンターから出てきて話しかけられたのはこの服屋の店主であろう髪をお団子ヘアにまとめて小綺麗にしたお姉さんであった。
質の良さそうな外套を身に纏い、見た目の良さや若さを考えるとコウはどこかしらの裕福な家庭からのおつかいに見えなくもない。
「いや違うけど...」
「えぇーじゃあ何をしにきたのかなー?あっ!もしかして女の子の服が着たくなっちゃったのかな!?」
何を勘違いしたのかそんな発想になるとは思っていなかった。いやまぁ確かにコウの見た目や声質ならば女装も似合うかもしれないのだが...。
そして店主であるお姉さんは謎のスイッチが入ったのかコウがこの店に訪れた目的を話そうとする前に次々と女性物の服を並べられ、どれが似合う服なのか着せ替え人形のようにコウの身体へとあてられたりしていた。
そんなことをされながらも店内をきょろきょろと見渡すがライラは見当たらないので次の目的場所へと向かったのかもしれない。
ただこの場にライラがいれば、ほぼ必ずこの状況に悪ノリで乗ってくるのは確実であったため、この場にいなかったのは運が良かったともいえる。
「悪いんだけど人探しに入っただけなんだ」
「えぇー!似合うのに勿体ないなぁ...誰を探しているの?」
次々と服をあてられながらもこの店に入った目的を話すと残念そうにしていたがそれでも夢中になっているのか手は止めない。
「金髪のシスター何だけど次に行く場所とか言ってなかった?」
「あぁー沢山買っていった子ね!あの子ならカフェに行くと言ってたよ!」
どうやらライラはこの店で服を多く買っていったためなのか?それとも金髪シスターという特徴的な人物だったためか?店主であるお姉さんには印象としては大きく記憶に残っているようである。
店主の話を聞く限り、ライラはカフェに向かったと言っていたらしく確か朝の話でもカフェが多くある通りの場所へ向かうと言っていたはずだ。
もうここには用がないということで店主が次にコウへあてる予定の新しい服を取りに裏へ行ったタイミングで店から出ると店の中から「待ってー!この服だけでもー!」と聞こえてきたので逃げるようにその場を後にする。
そしてカフェの多くある通りへ向かうとやはり大通りと違って歩いている人は少ないが昼時ということで店内はそれなりに賑わっていた。
「これだけカフェが多いと探すのが面倒だな」
「あら?コウ君じゃないの」
カフェが多くある通りをぼやきながら歩き、外から店内やテラス席を見て何処にライラがいるのか探していると思わぬ人物に声を掛けられた。
それは冒険者ギルドの受付嬢として働いているミラであり、カフェにあるテラス席に座って1人で本を読みながらゆっくりとしているようだ。
もしかしたらミラならばライラの姿を見ているのではないかと思い聞くことにする。
「そうねぇ...ケーキを奢ってくれたら何処にいるか教えてもいいわよ」
ミラはどうやらライラの向かった先について知っているらしいようだが、残念ながらただで教えてくれるわけでも無いようだ。
コウが以前、多くの臨時収入を得ていたことをミラは知っているためか、この店で出しているケーキを奢ればライラの向かった先について教えてくれるらしい。
「いやいいんだけどさ。で...ケーキは何がいいんだ?」
「ふふっ ちょっとした冗談よ」
「冗談かよ...」
コウが店員へ注文するためにミラの好きなケーキを聞こうとすると冗談だと言われ、からかわれてしまう。
「一緒にお茶をしてたんだけどあの子はサーラに会いに行くと言ってたわ」
「なるほどじゃあ冒険者ギルドだな。ありがとう」
サーラなら今日は冒険者ギルドの受付で働いているのを見かけていたので間違いなく冒険者ギルドへ向かったのだろう。
お礼を言うとその場から離れ、ミラに気づかれないようにこっそりと隠れながら店員へこの店の一番良さげなケーキはどれかと聞いて注文し、お金を払うとミラの席に持っていくようにお願いした。
そしてコウはライラが向かったという冒険者ギルドへと今まで来た道を戻ると最初のスタート地点である冒険者ギルドへ到着し、中に入ってライラがいないか見渡すと酒場の場所でサーラとライラがのんびりとお茶をして話に花を咲かせているではないか。
どうやらコウとライラのお互いは入れ違いのように冒険者ギルドを出入りしてしまったようである。
もう少しジールと長めに話していたら入れ違いにならなかったのではないだろうか。
「あ~コウさんじゃないですか~どうしたんですか~?」
「いや...暇つぶしにギルドに来ただけだ」
「じゃあ私達と一緒に土産話でもしましょ~」
ライラが無事であったのは良いことではあるのだが、わざわざ服屋やカフェへ探しに行ったのはなんだか疲れてしまった。
そんな人の気もしれずにライラからお茶の誘いを受けたのでコウは休憩とばかりにその土産話の輪の中へと入っていくのであった...。
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