195話
フーローの村から盛大な見送りを受けながら別れを告げた後、コウ達は2日程時間をかけて目の前にあった山を2つ超えようとしていた。
とはいえ2日間も交代交代で見張をしながら野営を行ったためか睡眠不足であり、身体に疲労が溜まりつつあったのだ。
そして2つ目の山の山頂へ到着すると目の前に広がった光景に思わず各々の口から声が漏れた。
「わぁ〜!見てください〜!」
「おぉこれがロスガニアか。凄いな」
「キュキューイ!」
山の麓にある窪地には、はちみつ色の明るい色の石を使った建物が立ち並ぶ大きな街並みが開拓され、その中心部に一目で王宮と分かる豪華な建物が威光を放つかの様に聳え立っている。
麓にあるロスガニアを目指して山を下っていき、ようやくアルトマードの王国並の大きな城門へと辿り着つく。
ロスガニアの城門はアルトマード王国と同じように一般入口から特別入口までの4つに分けられているようだ。
周りには殆ど獣人しかおらずコウ達は浮いてしまっているが気にすることはなく、寧ろ堂々としながら特別入口へと歩いていく。
あの子達入り口を間違えてないかしら?
あんな小僧がBランクなら俺はSランクだぜ!
ははっ!ちげーねぇや!
人族の審査基準甘くないか?
そんなコウ達は一般入口に並んでいる獣人の冒険者達の横を通りすぎる度に散々な言葉が耳に入ってくる。
まぁ聞き慣れた言葉ばかりだとしても気分の良いものではない。
「ロスガニアへよくきたな。ここは特別入口だが...」
「わかってる。これでいいだろ?」
収納の指輪から先日、Bランクへ更新されたばかりのギルドカードを取り出して自慢げに魔力を流すと登録された情報がカードに浮かび上がる。
「ふむ...ギルドカードの偽造は出来るわけもないし本人だな。ようこそロスガニアへ」
「じゃあ通らせてもらう。ライラはパーティだから一緒に入るぞ」
「Bランク様々ですね〜並ばないのはらくちんです〜」
門兵から特別入口の通行許可が降りたので城門をくぐり抜けるとそこは人混みでごった返しており、王都に負けず劣らず栄えていた。
屋台などもあって売っている物もがらりと変わり、一風変わった見たことのない料理がいっぱいで香りも良いためこれから巡るのが楽しみでしょうがない。
「まぁ面倒な依頼を終わらしてからにしようか」
「そうですね〜終わったら楽しみましょ〜!」
「キュイキューイ!」
ジールから忘れ物を届ける相手は王宮で勤めていると聞いていたので観光は後回しにして王宮へと足を運ぶことにした。
大通りの景観を楽しみつつ中心部にある王宮を目指していると歩いて行く方向で何か男女が言い合いをしながら喧嘩している声が聞こえてくる。
「だーかーら!あたしは弱い男は興味ないにゃ!」
「はぁ?お前はCランクだろ?俺ァBランクの男だぞ!飯ぐらい良いじゃねーか!」
どうやら恋愛事のようで聞いている限り、男側が一方的に詰め寄っているようにしか聞こえない。
「なぁ!いいだろ!」
「あたしについてくるにゃ!」
徐々に声はコウ達に近づいて来ており、言い争いをしている男女が目の前に現れる。
男の方はガタイが良く虎のような耳と尻尾をした獣人の冒険者だったが女の方の獣人は過去にコウが出会った人物だ。
「ツェリじゃないか。何してるんだ?」
「お知り合いなんですか〜?」
その人物とは闘技大会の3回戦目で戦ったツェリであり、獣人国ロスガニアに遊びに行くと約束した獣人であった。
まさかこんな所で出会うとは思っておらずなにかしらの問題を抱えているようだが、つい声をかけてしまった。
「む...?コウじゃにゃいか!遠いのによく来たにゃ!」
「まぁロスガニアに用があったからな」
「なるほどにゃあ...何処か行くにゃら連れて行こうかにゃ?」
王宮はここからでも見えているとはいえ初めて歩く街であるため、ツェリのような現地の案内人はいた方がいいだろう。
「じゃあ王宮までお願いしようかな」
「王宮なら任せるにゃ!そういうことだからあんたはあっち行けにゃ!」
羽虫を追い払うようにしっしっ!と手を動かし、先程まで絡んでいた男に向かってツェリは雑な対応をするとふるふると身体を震わせて顔を真っ赤にさせていた。
こんな多くの人が通る大通りで恥をかかされるような対応されてしまえば誰でもそうなるだろう。
まぁそうなってしまう原因は目の前の男が生み出したのだが...。
とはいえ怒りに任せて掴み掛かってこないだけマシな部類である。
「おいおい...ツェリ!俺なんかよりそんな非力そうなガキを選ぶのかよ!」
声を荒げながら男はコウに向かって指をさすが純粋にただの巻き添え事故である。
お前のせいだぞ!と思いながらツェリをチラリと横目で見るもふいっと顔を逸らし、明後日の方向を見ながら下手くそな口笛を吹いていた。
「面倒臭いにゃ...あいつが諦める方法はにゃいか?」
「あー...流石に街中で私闘はなぁ...」
流石に来たばかりである街の大通りで私闘などを起こすのは良くはない。
「この際、腕相撲とかじゃダメなんですかねぇ〜」
「腕相撲だぁ?良い案じゃねぇか」
ライラの言葉に男の耳はぴくりと反応してにやりと笑うと近くの建物の隅に置いてあった大きな木樽を軽々と片手で持つ。
運ばれてくる木樽からは液体がちゃぷちゃぷとする音がし、コウ達の前へドンっ!と重量感のある音を立てて置かれた。
そんなパフォーマンスを見せつけるということは相当、腕力には自信があるのだろう。
そしてその木樽に肘をつくとコウに向かって早くしろといった感じで口には出さず、代わりに視線を飛ばしてくる。
しかしそんな視線を飛ばされてもコウ自身は力比べをする気など更々なかった。
ただ腕力ならばこちらも負けてはいない。
こちらには十字架の装飾がついた黒い手袋をしている時のみだが、オーガの拳を軽々と受け止める膂力を持つライラがいるのだから。
「よし!ライラの出番だぞ!」
今回は事前に魔道具を使ってはいけないなどのルールは決められていないため、隣に立っているライラへと振って任せることにした。
「えぇ〜私ですか〜!?そこは男らしくコウさんじゃないんですか〜!?」
隣に立っているライラはコウが腕相撲をすると思っていたため、急に振られると驚き声を上げながらこちらを振り向く。
「ほら提案をしたのはライラだから」
「んも〜私はだって女の子なんですよ〜?」
文句を言いつつも右肩をぐるぐると回し、渋々ライラは木樽に肘をついて待っている男と腕相撲をするのであった...。
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