194話
村の端っこにある見晴らしの良い崖側の広場まで案内されたコウは解体してもらう魔物を収納の指輪の中から次々と外に出していく。
周りにいるのは集められた村の獣人達であり、次々と出てくる魔物の死骸を見て驚きの表情を浮かべていた。
「凄いな。ワイバーンまでくれるのか?」
「1匹しかいないけどな」
昨日狩ったばかりのワイバーンも追加で取り出すとロエンや他の獣人達は嬉しそうにしている。
まぁ収納の指輪の中にはスタンピードが起きた際に回収した未解体のワイバーンがまだ大量に残っているがジールから預かっている物なので出すわけにはいかない。
コウが出した魔物の内訳はワイバーンや過去にダンジョンで狩った魔物、そしてまだ手元に残っていたオーガやオークだった。
ワイバーンやオークは食料にダンジョンで狩った魔物やオーガは武器防具として活用するらしい。
「こんなもので魔道具を貰っていいのか?」
「あぁこの村では使い道がないし獣人で魔力を持ってる奴が少ないからな」
獣人で魔力を持つ者は少ないが、ただそれを補うほどの膂力と強靭な身体を持っている。
多分、この村の獣人達は全員が魔力を持たざる者のためそこらで拾った魔道具はガラクタも同然なのだろう。
そこらで拾ったというよりは渓谷で死んでいった冒険者達の遺品を集めたと言った方が正しいだろうか。
「そういえば魔石は何に使うんだ?」
「気になるか?ついてくるといい」
丁度、ワイバーンの魔石が取り出し終わったのかロエンの手にはビー玉のように綺麗な深い紫色の魔石を手渡されていた。
ロエンは歩き出し、使用用途も気になったのでコウは後ろについていくと自宅の裏へと進んでいく。
「これは先祖代々からある水龍様だ」
そこは祭壇のようであり、ロエンは手に持っている魔石を置くと光の粒子が魔石から空高くへと昇る。
光の粒子が向かう先を目で追うと岩壁に彫られた龍の額にある薄い水色の宝玉へと吸収されていった。
すると龍の口からはちょろちょろと流れていた水の量が心なしか増えている。
「もしかして魔石から魔力を吸ってるのか?」
祭壇へ置いた魔石の色は既に深い紫色から無色透明な魔石へと変化していたのであの光の粒子が魔力なのだろう。
「まだ魔石はあるからもう少し水が増えるな...感謝する」
実際に増えた水は少量でまだ解体中の魔物達から取り出した魔石を使っても焼け石に水ではと思うが口には出さない。
「魔石のために魔物は狩らないのか?」
「狩ってはいるが戦える奴が少ないんだ」
確かに集まった獣人達は女性の比率が高かった気がしないでもない。
何故、戦える獣人がいないのか詳しく話してこなかったので何かしらの事情があるのだろうと思い深くは聞かずそっとしておく。
「コウさ〜ん解体が終わったみたいです〜」
お互いに喋ることもなく、沈黙しているとライラがひょっこりと顔を出して魔物の解体が終わったことを伝えにきた。
「そういえばここはなんですか〜?」
ライラにこの祭壇がある場所と魔石が何故、必要だったのかなどの詳しい話をすると突然、突拍子もないことを言い出した。
「コウさんなら魔力を補給できるんじゃないですか〜?」
それはコウの保持している膨大な魔力を龍の額にある宝玉へ補給できるのではないかということ。
獣人は魔力を持つ者が少ないということでまだ試したこともない方法であり、ロエン的にもその方法に興味が湧いた様である。
「確かに試したことはないな。できるなら水龍様に登って魔力を流して欲しい」
「あー...まぁ試しにやってみてもいいけどな」
ロエンからも試しにやって欲しいと頼まれたのでコウは器用に岩壁へ氷の足場作り出すと龍の額まで登っていく。
薄い水色の宝玉をそっと片手で触れ、魔力を流すと身体から抜き取られる様に魔力がごっそり無くなると同時に大量の水が龍の口から溢れ出てきた。
「がっつり吸われるんだが!」
そして薄い水色の宝玉は深い青色へと変化していき、今度はコウへお返しとばかりに宝玉から爽快感溢れる何かが宝玉に触れている手から胸の中心へ通り抜けた。
「水がこんなにも...!」
ロエンは溢れ出る水を掬いながら1人歓喜していると魔物の解体を終えた獣人達が歓喜の声に気付いたのか続々と集まってくる。
そして集まってきた獣人達もまた溢れ出る水を見て喜び、中には涙している者もいた。
「えぇ...なんだこの状況」
龍の額に跨って下を見るとおしくらまんじゅうのように集まる獣人達でいっぱいになっており、少しだけ引いてしまう。
龍の額から飛び降りると獣人が感謝の気持ちを伝えるべく押しつぶされるように群れてくるがモフモフとした耳や尻尾が触りたい放題なのなで幸福感と満足感に包まれる。
とはいえ流石に暑苦しくなっときたので抜け出そうと試みるも、獣人達は力が強く多方面から手足を引っ張られるので抜け出せない。
あわあわしているコウを見兼ねたロエンはパンパン!と手を叩きながら群れる獣人達を散らして助け出してくれた。
「ははっ!悪いなコウ。俺らはまさか水不足が解決するとは思っていなかったんだ」
本当に水不足が解決したのかは分からないが当分水には困らなさそうである。
「本当に感謝している。今日はうちに泊まらないか?盛大に歓迎するぞ」
魔力を半分ほどごっそりと抜かれているので何かあった際には不安だと思い万全な体調でロスガニアに向かいたいため、ロエンの言葉に甘えることにした。
その夜はまるでお祭りのように盛り上がり、主役であったコウの周りには可愛らしい獣人の女の子達が代わる代わる食事や飲み物を運ばられてくる。
夕食に出たのは今日解体したばかりの新鮮なワイバーンで赤身というのにきめ細やかな脂が霜降りの様にサシが入っていた。
そんな良い肉をただ単純に焼いただけなのだが、あまりにも美味しかったために腹がはち切れんばかり食べてしまう。
満足いくまで食べ終えた後はロエンの家にある2部屋を借りて、少し固い木製のベッドで横なり、明日に備えて目を閉じると泥の様に眠ってしまった。
そして翌日の朝、ロスガニアに向けて村を出ようとするとロエンに引き留められる。
「コウ達の用事が終わったらこの村に住まないか?」
それはこのフーローという村に住まないかという提案であった。
ロエン達にとってはコウがこの村に住んでくれれば、もしまた龍の額にある宝玉の魔力が無くなったとしても補給できる。
しかもコウのような魔力が膨大な人族と獣人族の血が混ざれば魔力を持った者が産まれるかもしれないのだ。
「悪いそれは断る」
「まぁ断られると思ってたさ」
ロエンに誘われるがコウは頭を横に振ると断られるのがわかっていたみたいで諦めた顔をしていた。
「じゃあまた気が向いたらきてくれ」
「美味しいものを食べにまた来るさ」
ロエンとの別れを告げ、村の入り口から出ると後ろから獣人達の盛大な見送りを受けながらコウ達はロスガニアに向けて出発するのであった...。
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