187話
翌日、コウ達一行はBランクになるための試験依頼をこなすためにロックドラゴンが住み着いているという東部の渓谷へと来ていた。
渓谷には低ランク冒険者では太刀打ち出来ない魔物も多く存在し、ここへ来るまでにオーガと出会い既に一戦交えていたのでウォームアップは出来ている。
時間帯も既に昼頃となるため、帰る時間を考えるならば早めに終わらせたいとこではある。
「それにしても〜全くいませんね〜」
「時間は経ってるからしょうがないな」
ライラの言う通り目撃されていた付近にロックドラゴン姿は見えず、その場から移動してしまっているようで面倒だが地道に探すしか無い。
といってもロックドラゴンは鉱物を食べながら移動する魔物であり、痕跡はすぐに見つけやすい筈である。
とはいえ今の場所にもロックドラゴンがいたような痕跡はあるが時間が経っているため他の場所を探したほうがいいだろう。
「移動するか」
「そうですね〜」
とりあえず渓谷を見渡せるような場所へと移動して周りを見通すと虫食いのように凸凹した岩場地帯が見えた。
「ライラー!痕跡を見つけたぞー!」
「はぁ〜い!」
反対側を見渡していたライラへ伝えると返事をして岩の上を飛び移りながら此方へ合流する。
そしてそのまま先程見つけた別の痕跡がある場所まで向かい到着すると今度はフェニの出番である。
「フェニ。そろそろ出番だぞ」
「キュイ!」
外套の中で待機していたフェニはコウの肩へ移動すると羽を伸ばして空に飛び立つと偵察するように周囲を飛び回る。
ある程度周囲の偵察が終わったのかコウの肩へと降りて来た。
「どうだ?わかったら先行してくれ」
「キュキュイ!」
どうやらロックドラゴンの居場所は分かったらしく肩から再び空へ羽ばたくと先行する様に移動を始めた。
「俺らもついてくぞ」
「了解です〜!」
フェニはコウ達が走る足場が悪いことを理解しているのか、気を遣ってゆっくりと飛行するので後をついていきやすい。
ある程度フェニの後ろをついていくと空を飛ぶ速度を落としてコウに並走し、肩に飛び降りる。
「この先なんだな?」
「キュ!」
目の前にある大きな岩を越えると、そこはまるで広く窪んだ採掘場の様になっており、下には大きな岩石がごろごろといくつも転がっている。
そんな場所で岩壁をゴリゴリと強靭な顎で削り、背中には大きな岩を亀の様に背負った体長約5〜6m程のロックドラゴンを見つけた。
「まだ気づかれてないし先に仕掛けるぞ!」
「私に任せてください〜!」
コウとライラはまだ気付かれていないのを好機だと思い飛び降りながらサンクチュアリと拳をゴツゴツとした岩だらけの背に向けて振り下ろす。
「っ!硬い!」
「手が痛いです〜!」
振り下ろしたサンクチュアリと拳は残念なことに鎧の様に纏っている硬い岩肌によって阻まれ、弾かれてしまう。
ロックドラゴンは食事として食べている鉱物を背に作り出して身を守る魔物のため、そこらの大きな岩に向かって攻撃しているようなものである。
先程の一撃によってコウ達の存在に気づいたようで食事の邪魔をするなと言わんばかりにゴツゴツとした長い尻尾を振り回す。
「氷壁!」
受け止めるためにコウは氷の壁を目の前に作り出すが長い尻尾はゴツゴツとした岩肌のためか、いとも容易く砕かれていく。
「あの硬さと馬鹿力は厄介だな」
「どこかに弱点はないんですかね〜?」
「わからん。とりあえず色々と試すしかなさそうだ」
ロックドラゴンがまだ本格的に敵と認識せず、鬱陶しい蝿だと思っているうちにコウは別の方法を試していくことにした。
「これはどうだ?夕立!」
人工的に魔法で作り出した雨がぽつりぽつりとロックドラゴンの上部から降り注ぎ、全身を水で濡らしてからフェニへ合図を送る。
そしてコウ達は巻き込まれない様にその場から離れると待機していたフェニは次々と雷球を作り出して撃ち込んでいく。
外からの攻撃が駄目なら今度は身体の内部に電流を走らせれば多少なりともダメージを与えられるのでは無いかと考えていた。
「グゥルルルル!」
「キュウ...」
「効果はあまりなさそうだな」
「な〜んか かなり怒っていませんか〜?」
犬が濡れた身体を乾かす様にブルブルとするぐらいであまり効いていない様子だ。
寧ろ半端な攻撃をしてしまったせいか先程よりも敵意が増している気がする。
ロックドラゴンはコウ達に狙いを定めると背中に背負っている岩を手当たり次第周りに振り撒いてきた。
「皆避けろ!」
「当たりませんよ〜!」
「キュイ!」
フェニは上空まで退避し、コウとライラの2人は飛んでくる岩をその場でステップを踏みながらいなしていく。
全く当たらないコウ達に苛立ちが募ったのか岩を振り撒くのをやめ、今度は突進を仕掛けてくる。
重そうな見た目の割に足は速いが、小回りは利かないようで左右に別れて避けるとコウ達の後ろにあった岩壁へ大きな音を立てぶつかるとめり込んでしまった。
ロックドラゴンがめり込んだ岩壁は大きく凹んでいるのであんな攻撃を喰らってしまったらひとたまりもないだろう。
「どうしたものかなぁ」
壁にめり込んだロックドラゴンに向かって水球や氷槍を撃ち込むがダメージというダメージは無さそうである。
「ひっくり返せれば〜あの柔らかそうなお腹を攻撃出来るんですが〜」
確かにライラの言う通り、背の方は岩だらけで硬い鎧を纏っているが腹回りをよく見ると硬そうではなく、寧ろぷにっとして柔らかそうである。
なんとかして亀の様にひっくり返せればあの柔らかそうな部分へ攻撃出来る筈だ。
「それだ!ライラはあいつが落ちるぐらいの落とし穴を作れるか?」
「ん〜できなくも無いですよ〜?」
小回りの利かない突進とライラの一言にコウはとある作戦を思いついた。
簡単に説明するとまずライラが大きな落とし穴を作り、スピードが勝るフェニはロックドラゴンを挑発して突進を誘導、最後にコウが作り出した魔法で仕留めるといった感じだ。
「この作戦を試してみるのはどうだ?」
「とりあえず〜やってみましょ〜!」
「キュイ!」
軽く作戦を説明した後、各々は自身に課せられ仕事をこなすため行動していく。
まずライラは大きな落とし穴を作り出すために高い場所へと登ると拳を握りしめて、魔力を手に込める。
すると徐々に握りしめた拳の中から煌めく光が溢れ出すので地面に向かって手を開くと輝かしい光線が放たれ、大きな落とし穴を作り出した。
「コウさ〜ん!出来ましたよ〜!」
「ナイスだ! フェニー!準備ができたぞ!」
そしてフェニはコウの合図を聞くと落とし穴がある方向からちょこまかと飛び回りつつ、挑発する様に雷球を撃ち込んでいく。
するとヘイトが向いたのかフェニへ突進する様に走り出すので落とし穴に誘導するため、追いつかれないぐらいの速さで空を飛ぶ。
「グルァ!?」
フェニを夢中で追いかけるロックドラゴンは罠として作り出された落とし穴に気付かず、足を踏み外してそのまま前のめりに落ちてしまう。
「よくやった!後は任せろ!氷槍!」
落とし穴の底では亀の様にひっくり返ったロックドラゴンがおり、コウは普段よりも数倍大きな氷槍を作り出すと穴の底へ落としていく。
しかし柔らかいと思っていた腹部は多少なりとも硬さはあるようで巨大な氷槍は貫通できてはいなかった。
とはいえ背ほどは鎧の様に硬くは無い筈だ。
「追加だ!受け取れ!」
「追撃です〜!」
そのためコウとライラは氷槍を貫かせるために反対側をサンクチュアリと拳で思いっきり叩きつけると耐えきれず貫くことができた。
そして身体を貫かれたロックドラゴンは大きな雄叫びをあげ、暴れていた両手両手をだらりと地面へ下ろす。
「ふぅ...流石に倒しただろ」
「中々に大変でしたね〜」
落とし穴の底へ降りるとロックドラゴンはピクリとも動かず、氷槍が刺さった場所からドクドクと血が流れていく。
もしかしたら丁度心臓を貫くことが出来たのかもしれない。
とりあえずはまだ血は地面に流れ続けているので血の池になる前に回収した方がいいだろう。
「よし回収完了だ」
倒したロックドラゴンを収納の指輪の中へ仕舞い込み、落とし穴から出たので後は帰るだけだ。
「さぁ〜帰りましょ〜!」
「これで無事にBランクだな」
「キュ?」
しかし帰ろうとした途端、フェニは何かに気付いたようで、ごろごろと転がっている大きな岩が突然、小刻みに震え出すのであった...。
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