表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
182/767

182話

 空が白み始めるまで休憩してたコウは雪遊びの時に使うようなソリを氷で作り出し、その上に意識を失っているルッチを乗せて引っ張りながら城門前まで向かって歩いていた。


「ふぅ...やっと到着する」


「あらコウさんじゃないですか」


「ん?あぁ無事だったみたいだな」


 城門が見える位置まで来ると丁度良いタイミングでイザベルと鉢合わせるのでお互い無事を確認し、身体を見ても大きな怪我は無さそうである。


 イザベルの隣には縄をぐるぐると巻かれたリィンが宙に浮かび運ばれており、生きた状態で何かしらの情報を持っている2人を捕縛出来たのは十分な成果だろう。


 城門の前へ到着すると激しい戦闘のあったと思われる爪痕があちらこちらへと建物や地面に残されているが既に決着は付いているようで城門は再び固く閉ざされている。


 そんな爪痕が1番激しい中心部にダグエルは立っているので近づいていくとコウ達に気づいたようのか振り向き話しかけられた。


「おぉ 2人とも無事であったようですな」


「爺さんは無傷なんだな」


「うむ ただ鎧が汚れてしまいましたな」


 ダグエルは鎧には斬った相手の赤い血や土汚れが戦闘後のため付着しているが、本人は一切の怪我が無いようだ。


 そしてそんなダグエルの横には狂剣ラルドロフと呼ばれる男が両腕を失い壁際を背に倒れている。


「はっ...。結局全員やられちまったか」


 両腕の切断面は一応、出血多量で死んでしまうことを防ぐため治療されているが既に戦意はなく、諦めた様に項垂れていた。


「そういえば裏切った貴族は分かったのか?」


「うむ アードルフ家の者達の仕業だった様である」


「アードルフ家?まぁ分かったなら良かったな」


 アードルフ家。過去にその貴族の息子であるシス・フォン・アードルフと闘技大会で剣を交えており、元イザベルの婚約者だったがふんわりと聞き流していたコウの記憶には残っていない。


「コウさんが闘技大会で戦った元婚約者の家です」


「あぁ〜あいつの家か」


 すっかり忘れているコウへ思い出させる様にイザベルは捕捉してくれたのでその時の記憶が蘇る。


 元々、アードルフ家は黒い噂があった貴族であった為、闘技大会での出来事が更に追い討ちとして厳しい立場に立たされていたのが拍車をかけ、王国を裏切ったのだろう。


 とはいえ今更、アードルフの屋敷へ向かったところでとっくの昔にもぬけの殻となって逃げ出している筈だ。


 暫く立ち話をしていると城門の方面から騎士隊が列を成し、先頭にはそこらの馬達よりも数段大きい黒馬がこちらへと向かってくる。


 黒馬の上にはこれまたガタイの良い金短髪の男が跨っており、頭以外はフルプレートの鎧を着込み、装飾された巨大な大剣を背負っていた。


「そこにいるのはダクエルか!久しいな!」


「お久しぶりですな。アンドリュー様」


「あんたに様付けされるのはむず痒いからやめてくれ。ところでそいつらが?」


 捕らえたラルドロフ、リィン、ルッチの3人組をちらりと見るので情報を引き出すため引き取りに来たのだろう。

 

「うむ。連れて行ってくれ」


「そこの2人もよく捕らえてくれた。戦争が終わって生きてたら褒美を渡すとしよう」


 何をくれるのだろうと思いつつ、隣のイザベルと同じ様に膝を地面について(こうべ)を垂らしながら感謝の言葉を口にする。


 そして馬に乗っていた騎士隊が降りてくると3人組は手首に枷を付けられてそのまま何処かに連れて行かれ、第一皇子も忙しそうにその場から離れていく。


「とりあえず戻るか」


「そうですね。皆心配しているでしょうから」


「ではまた会えることを楽しみにしておるぞ」


 コウとイザベルは奇襲してきた元Aランク冒険者、そして帝国兵達を返り討ちに成功したため防衛している城壁の1区画へと急いで戻るのであった...。

 


 帝国軍野営地。広々と作られたテントの中で帝国兵を指揮していた男が椅子に座って貧乏ゆすりをしながら奇襲成功の報告を今か今かと待っていた。


 その隣には過去にコウが闘技大会で負かし、勘当された筈であるシス・フォン・アードルフの姿もあった。


「まだ報告はこんのか!」


 空は白み始めており、タイムリミットが迫りつつあるため男は早く王都内に攻め込めなければ敵の援軍が到着し、挟まれてしまうのを恐れていた。


「アードルフ家も裏切ってる筈なので問題無いと思いますが...」


「早く結果を出さねば不利になるのは私達なんだぞ!」


 その男を宥めるかの様にシスは空っぽになっていたグラスにワインを注ぎながら機嫌を伺っていた。


(くそっ!何をやってるんだ!)


 とはいえシス本人もまだ来ない報告に苛立ちを胸の中に隠しながら焦っている。

 

「モーガス様!失礼します!」


 そんな中、伝令兵が慌てて息を切らしながらテントへと入ってくるが表情が真っ青な状態のため、あまりよくない報告なのだろう。


 伝令兵はこの男をモーガスと頭を下げながら名前を呼ぶのでクルツ村を襲う様に傭兵達へ指示をした人物で間違いない。


「やっと来たか!何があった!?」


「それが...」


 今回、奇襲として向かった元Aランク冒険者3名、そして奇襲部隊が全て壊滅したという報告がモーガスへ伝わると怒りの形相を浮かべ手に持っていたグラスを八つ当たりの様にシスに向かって投げつける。


「ぐっ...」


「お前は帝国に連れ帰って然るべき処罰を行う!」


 投げつけられたグラスはシスに当たると砕け散り、割れた破片が肌へ食い込んだため片膝をつく。


「...撤退だ。傭兵と冒険者を殿(しんがり)させて我々は引くぞ!」


 モーガスは冷静に敗戦の可能性が濃厚だと判断したのかすぐに兵を引かせる準備をする指示をしていく。


 確かにモーガスの判断は間違っていなかった。


 もうすぐそこには王国軍の援軍として各地から他領の兵士や冒険者が大地を揺らし、国を守るため迫っているのだから...。

いつも見てくださってありがとうございます!


評価やブクマなどをしてくださると嬉しいですm(_ _)m


次回の更新は5月24日になりますのでよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ