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156話

 蛇の習性としてとぐろを巻く行為とは周囲の外敵から身を守る際に全体を見渡せて、迫り来る敵に対してすぐに攻撃できるような体勢といったものとなっている。


 まぁこの世界で前の世界の常識が通じるかは分からないのだが、インビジブルスネークの動き方を見る限り同じだろう。


 インビジブルスネークが八の字にぐるぐるとその場でとぐろを巻くと、いつでも攻撃や防御をできる様にこちらをじっと見ながら待っている。


「完全に待ちの姿勢だな。まぁこっちは存分に魔法を撃たせてもら――」


 相手が待っているだけなら遠くから魔法を使うだけでいいのでコウ達側からしてみれば寧ろ都合が良いと思っていたが実際には違った。


 コウとフェニは魔法を魔法を打ち込もうとしたのだが、インビジブルスネークの様子が少しだけ変化した事に気がつく。


 その変化とはとぐろを巻いた後、じっとして待っているはずであったインビジブルスネークの無数にあるガラスの様な鱗の一部分が白く輝く光を少しずつ溜め込んでいたということだ。


「っ!氷壁!」


 その些細な変化に気づいたコウは咄嗟の判断で自身達の前方に氷壁を作り出すとインビジブルスネークの鱗部分が輝きを増していき、無数の細い光の光線がコウ達に向けて放たれる。


 放たれた光線は地面を削りながらコウ達に向かっており、作り出された氷壁へと直撃すると掘削機で硬い岩盤をガリガリと削るかの様に氷壁の表面が削られていく。


 このままでは突破されてしまうと思いコウは追加の氷壁を前に展開すると放たれた光線は少しづつ弱まっていき、インビジブルスネークの鱗は光を失って元の透明な鱗へと戻っていった。


「ふぅ...危なかった。遠距離攻撃もあるのか」


 今回はたまたま些細な変化に察知し気づけたので無事に防ぐことができたのだが、事前にインビジブルスネークの情報などを知っていればもっと楽では対処したり出来ただろうか。


 とはいえまさかインビジブルスネークと遭遇するとは誰も思っていなかったし、この辺りでは中々に遭遇しないはずの魔物であるためわざわざ調べたりすること無いのでしょうがないだろう。


「う~...このままだとジリ貧になりそうですね~」


 ライラの言う通り先程の光線と撃ち合っても流石に火力負けするだろうし守りに徹しても無駄に魔力を消費するだけである。


 別にスタンピードの時オークに使用した魔法を使えば火力負けはしないと思うが、確実に仕留められる保証もない。


 頭を悩ませていると再びインビジブルスネークの鱗は先程と同じ様に光線を撃ち出す為なのか、無数にある鱗へ白く輝く光を溜め始める。


「ちっ!またか!氷槍!」


 何度も光線を撃たれては堪らないと思ったコウは少しでも妨害するかのように光を溜めている鱗に目掛けて水球を撃ち込む。


 するとインビジブルスネークはとぐろを巻いている体をぐるぐると動かし光を溜める行為をやめて、光の溜めていない鱗で庇うようにコウの撃ち出した氷槍を受け止めた。


(なんで急に光を溜めるのをやめたんだ...?)


 インビジブルスネークが透明だった時に水球を撃ち込んだ際、特に庇うような動きはしておらずそのまま自慢の硬い鱗で受け止めており、しかも光を溜めるのをやめていたので今の行動に少しだけ違和感を覚える。


(あいつの意識外から攻撃しないと無理そうだな)


 氷槍や水球は基本的に飛んでいく速度が遅いので先程の様に目の前で放てばすぐに反応されてしまい光を溜めている鱗を狙うのはほぼ無理だろう。


「ライラとフェニに少しだけやって欲しいことがある」


「キュイ?」


「なんですか〜?」


「あぁそれなんだが...」


 先程と同じ状況を作り出したいのでコウは少しだけ囮となって欲しいと手短に伝えるとライラとフェニは頷きすぐに行動を移す。


 フェニは右へライラは左へ2手に分かれ左右から挟み込む様に走りだし、コウは身を隠しながら背後を取ろうとする。


 するとインビジブルスネークは2手に分かれたライラとフェニから左右に挟まれ攻撃されると思ったのか、自身の周りに向かって光線を放つ為の準備として鱗が光り輝き出す。


 鱗が光り輝き出すと同時にコウは背後を上手く取れたので首裏で光っている鱗に向かって氷槍を狙い定めて撃ち出した。


 インビジブルスネークの意識はライラとフェニに向いていたため、意識外から放たれた氷槍は吸い込まれる様に光り輝いている鱗へ直撃した瞬間、大きな爆発音とともにガラスの様に透明な鱗が粉々に砕け散り、柔らかそうな表皮がちらりと見える。


 意識外からの攻撃であり、大きなダメージを与えられたせいかとぐろ巻いていたのをやめてのたうち回り悲痛な声を上げた。


「なるほどな。溜めてる時に攻撃されるとこうなるのか」


 今まで自慢の硬い鱗で様々な攻撃を防いできたので大きなダメージというダメージは受けたことはなかったのだろう。


 一気に畳み掛けようとしたのだが、そこはBランクの魔物だ。痛みに耐えつつもすぐに体勢を立て直す様にぐるぐるとその場でとぐろを巻きながら回り続けコウ達を寄せ付けない。


 コウとフェニは体勢を立て直させないように魔法を打ち込みつつ、ライラの方向へと向かって走り合流していく。


 とはいえ次はインビジブルスネークも流石に警戒してもう光線はあまり使ってこないだろう。


「確かライラはあの硬い鱗を無視できるんだよな?」


「出来なくも無いですけど〜近寄らないと厳しいです〜」


「わかった。道は俺とフェニで作るから安心して向かってくれ」


 体勢を立て直し、とぐろを巻いたインビジブルスネークはこちらが行動を起こすまでじっと待っているようであり、ライラの道を作るためコウとフェニは左右に分かれて氷槍や雷球等の魔法を撃ちながら迫っていく。


 フェニやライラに対してはそこまで警戒しておらず、フェニの魔法は鬱陶しそうにしているが無視しているようで、どうやら先程大きな一撃を与えられたコウのみを完全に警戒しているようだ。


 インビジブルスネークは徐々に迫りつつあるコウに向かって大きな口を開け、首をS字の形にすると一気に首を伸ばし何度も噛みつこうとしてくるが上手に氷壁などを使ったりフェニの支援によってなんとか躱していく。


 そしてコウが完全にロックされているうちにライラが別の方向からインビジブルスネークへと迫り背後を取ると右手に魔力を込める。


「いきますよ~!」


 ライラは透明な硬い鱗に向かって拳で殴りつけると大きな振動が大地を走ると同時にインビジブルスネークが再び苦痛の声を上げのたうち回る。


 目の前にいるコウではなく、全く警戒していなかったところからの一撃。


 今まで防御面に関して絶対的な自信を持っていたインビジブルスネークは2回も大きな一撃を食らってしまい困惑を隠せず今度はとぐろを巻くのをやめて逃げる体勢へと変えていく。


「逃がすか!」


 逃さないようにコウは透かさずインビジブルスネークの背中に乗ると一気に首筋近くまで駆け上がる。


 透明な鱗が粉々に砕け散り表皮が丸見えな首裏へとコウは到着するとサンクチュアリをずぶりと差し込み魔力を込めて刃の穴の部分からジェット噴射の様に大量の水を吹き出させる。


「暴れちゃ駄目ですよ~!」


 首裏から大量の水を送り込まれたインビジブルスネークはコウを振り払うように暴れようとするがライラが止めるように頭部を思い切り殴りつけ、動きを止める。


 インビジブルスネークの首元はどんどんと送り込まれる水によって大きく膨れ上がり、限界を迎えたのか破裂音とともに頭と首が2つに別れて遂に戦いが決着したのであった...。

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