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233話 照れちゃいます

女性はローズさんと言い、お店の店主さん。

こういうアイテムのお店の店主は、今まで男性しか見たことがなかったので驚いた。


「はい。毎度あり。整備はしっかりしてあるから無茶な使い方をしない限り、長持ちするはずだよ」


店主さんからマジックボックスと機能付きのマジックバッグを受け取る。

使うのが楽しみだな。

ドルイドさんは、お金を払ったらすぐにアイテムを探しに行った。

特に欲しい物はないらしいが、楽しそうに色々と見て回っている。


「ありがとうございます。大切に使いますね」


「ハハハ、それは良い心がけだね。そうだ、面白いバッグを紹介してやろう」


店主さんが奥の部屋から持ってきたマジックバッグ。

今持っている物より小ぶりで容量も少ないが、時間が倍速になるらしい。


「時間が早くなるのですか?」


「あぁ」


時間停止は知っているけど、時間を早めるのは初めてだな。


「あっでも、何に使うんですか?」


「知らん」


えっ、知らないの?


「このバッグに物を入れたらすぐに壊れるし腐るからな。使い道など思いつかんよ」


おかしいなさっきお薦めのバッグって……ん?

あっ、面白いバッグだと言われて紹介されたんだった。

それにしても壊れやすくなって腐りやすい、良い所が全くないバッグだな。


「で、次がこっちだ。通称『怖いバッグ』だ」


怖いバッグ?

おかしな名前。

店主さんが、バッグに手を入れて機能を動かすスイッチを入れる。

マジックバッグに付いている機能の動かし方は、全て取っ手の内についているスイッチらしい。


「ほら」


「ひっ」


店主さんがバッグから腕を出すと、腕がちぎれて血が出ている。


「何をしているんだ! 早く医者に」


棚のアイテムを物色していたドルイドさんが、私の悲鳴を聞いて駆けつけてくれた。

そして店主さんの怪我を見てバッグから布を取り出そうとする。


「落ち着け、大丈夫だから。怪我をしているように見えるだけなんだよ」


店主さんが、笑いながら声を上げる。


「「はっ?」」


話を聞けば、実際に切れているわけではなくそう見えるようになるだけらしい。

切れていないので、まったく痛くないと言われた。

しばらくすると、見えなくなっていた腕がすーっと現れ血に見えた所も綺麗に消えていく。

本当に何もなかったような状態に戻っている。


「使い道はないが、面白いと思わないか? 人を驚かせるには十分だろう?」


人を驚かせるにはって。

ドルイドさんとため息をついた。

それを見て大笑いの店主さん。

最初の印象とかなり違うな。

冷たい印象は何処へ行ってしまったんだろう?

それにしても機能付きのマジックバッグって使い道がないモノも多いのか?


「珍しいな、ローズがそんなに楽しそうなのは」


なんだかとても落ち着いた声が聞こえた。

声のもとを探すと、店の奥から何とも温和そうな男性がお店にでてくるところだった。


「そうかい? 私にだって楽しい事の1つや2つは毎日あるよ」


「だが、そんなに大笑いするのは珍しいよ」


「まぁ、久々に面白い客が来たからね~。掘り出し物だよ」


掘り出し物って、もしかして私たちのこと?

何だろう、これは気に入られたって事でいいのかな?

でも面白い客って、喜んでいいのかな?


「本当に珍しい事だ。見ない顔だが旅の者か?」


「はい、旅をしている者です。この村には冬の間お世話になる予定です」


「そうか。私はローズの旦那でデロースという。よろしくな」


旦那さんだったのか。

何だろうすごくホッとする雰囲気の人だな。


「すみません」


「なんだい?」


「これ買いたいんですが」


店にいた客が、店主さんを呼ぶ声が聞こえる。

どうやら何かを購入したいらしい。


「面倒くさいね~。お金だけ置いて出ていってくれればいいのに」


店主さんは大きなため息をついて、客の対応にむかった。

それを見て笑っている旦那のデロースさん。

なんだか不思議な2人だな。


店主さんを見ると、棚を指さして何か話をしている。

どうやら商品の場所を教えているようだ。

そう言えば、私たちが購入した物は、両方とも店の奥にあった物だな。

何か違いがあるのだろうか?

店主さんは、棚にある商品はほどほどの物だと言っていたけど。

近くの棚からアイテムを取り出す。

いい作りをしていると思う。


「この店の棚にある物はローズにとってはまぁそれほど悪い物ではないから売ってもいいか程度なんだよ」


私がアイテムを見て首を傾げているからなのかデロースさんが教えてくれた。

というか、それほど悪い物ではない?

私の目から見たら、棚にあるアイテムはどれも整備されているしっかりとした商品だ。

ドルイドさんも不思議そうにアイテムを手に取って見ている。


「本当にローズがいいと思った物は、棚には置いていない。全て奥の部屋に置いてあるよ」


購入した2つは奥から持って来てくれた物、つまり店主さんの目にかなったアイテムって事か。

なんだかうれしいな。


「めんどくさいな~。そんなもん自分でやりな!」


不意に店主さんの怒鳴り声が店に響き渡る。

見ると、冒険者の人が怒られている。


「どうしたんでしょうか?」


「何かあったのか?」


店主さんの怒鳴り声に、ドルイドさんが私をかばうように立つ。


「ローズはお気に入り以外には冷たいからね~。人によってコロコロ態度を変えるから困ったものだよ」


と言いながら、店の奥で会計をしているローズさんを温かく見つめるデロースさん。

なんだか2人を見ていると背中がムズムズしてくる。


「店主さんは、かなり目が肥えているんですね。俺から見たら棚にあるアイテムも相当いいモノです」


ドルイドさんが棚にあるアイテムを見て言う。


「ローズは目利きスキルを持っていましてね」


目利きスキル?

そんなスキルがあるんだ。


「まったくやっていられないね」


「ローズ、お客に当たり散らしたら駄目だよ」


「分かっているよ。まったく」


店主さんの怒りが、デロースさんと話すことでスッと消えていくのが分かった。

仲がいいな。


「アイビー、そろそろ戻ろうか」


「うん、あっボックスの登録はいつするの?」


「明日にしようか。服屋にも行く予定があるし。そうだ、ボックスの登録はどちらのギルドでも出来ますか?」


「あぁ、冒険者、商業どちらでも問題なく出来るよ。登録しておくのかい? 推奨されているけど面倒だってあんまり登録する奴はいないだろう?」


「不人気ではありますが、もしもの事がありますから」


「確かにね」


「この村の冬はどうですか?」


「今年の冬は予測がつかないね」


「そのせいなのかな。犯罪者がいつもより多い気がするよ。とても残念だ」


デロースさんが困った表情をする。

ドルイドさんと話していた通り、やはり犯罪に走る人が増えているみたいだ。


「この時期、自警団が見回りを強化しているからほとんどすぐ捕まるのに馬鹿だよね」


ローズさんはあきれ顔だ。


「この村の自警団は優秀なんですね」


「少し前に犯罪者集団に手を貸した者が多数出て大騒ぎになったが、まぁそこそこ優秀だね」


その犯罪者集団って私が関わった事件の組織のことかな?

本当に広い範囲で被害が出たんだな。


「そこそこではないだろう? 今の団長は本当に優秀だと言われているだろう?」


「はっ、そうだったかな?」


デロースさんは自警団の団長をかなり評価しているようだ。

ローズさんは批判ではなく反対でもなく……照れ? ているように見える。

少し頬も赤いような?


「私たちの息子なんですよ」


「そうなのですか? すごいですね」


「ふん」


だから店主さんに照れが見られるのか。

あっ、デロースさんの目がものすごく優しくなって店主さんを見つめている。

……って、見てるこっちが照れるんですが!


「なんだか2人を見ていると照れるな」


ドルイドさんも2人を見て照れているようで、気まずそう。


「うん。なんだかこそばゆいです」


ローズさんを見ると照れていた顔が、すっと引き締まる。

不思議に思い見つめていると、小さくため息をついたのが分かった。


「だが、これからはどうかな?」


「ローズ」


デロースさんの表情が少し陰る。

何かあるのだろうか?

2人の様子を見ていると、ローズさんが苦笑を浮かべた。


「本当に優秀なのかは、問題が起きた時こそわかるものだからな」


なんとも言えない空気が流れる。

もしかしたら大きな問題でも持ち上がっているのだろうか?


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― 新着の感想 ―
ローズさん話し方が男前で好きだな。この町は女性が店主なこと多いのかな?
加速か… 発酵、熟成、腐敗は紙一重だから使いづらいか…
加速バッグはアイビーちゃんにいいかなと思いましたが、すぐ腐るレベルだと扱いがちょっと大変でしたね……残念(´・ω・`)
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