981話 捨て場で、ころっ
「にゃうん」
寄り道せずに王都に向かって4日目。
順調なので、予定通りあと3日で王都に着くみたいだ。
「シエル、おかえり。あれ? それは、マジックアイテム?」
食事に行っていたシエルが、マジックアイテムを銜えて戻って来た。
「シエル、見せてくれ」
お父さんがシエルからマジックアイテムを受け取る。
「魔力が残っているけど、壊れているな。それに、雨風に晒されていたようだ。違法な捨て場を見つけたのか?」
「にゃうん」
「ぷっぷぷ~!」
「てっりゅりゅ~」
「ぺふっ。ぺふっ」
シエルの返事に、ソラ達が興奮する。
「セイゼルク、少し道を逸れるがいいか?」
お父さんの質問に、ソラ達が期待を込めてセイゼルクさんを見る。
「いいぞ、違法な捨て場なら場所を確かめたいし。シエル、その捨て場は、この場所から近いのか?」
「にゃうん」
「そうか。案内を頼む」
「ぷっぷぷ~!」
「てっりゅりゅ~!」
「ぺふっ!」
大興奮の3匹に首を傾げる。
「ご飯の量が少なかったのかな?」
「どうかな? 1日に与えている量は減らしていないよな?」
お父さんに頷く。
王都まで7日ぐらいだと言っていたので、減らす必要はなかった。
「それなら大丈夫だと思うぞ。あれは、制限なく食べられる喜びだろう」
制限なく?
「コロコロになるまで食べちゃ駄目よ」
「「「……」」」
あれ?
聞こえなかったのかな?
いや、私の様子を窺っている。
もしかして聞こえなかった事にしたの?
「こらっ、聞こえているでしょう?」
「……ぷ~?」
ソラが不思議そうに私を見る。
本気で聞こえなかった事にするつもり?
「みんな――」
「ぷぷ~」
「てりゅ~」
「ぺふっ」
今度は話を遮った!
ソラ達の対応に、シファルさん達が笑う。
「凄いなぁ」
「ラットルアさん、感心しないで」
「ごめん。でもソラ達はやっぱり凄いな」
本当にね。
まさか、聞かなかった事にしたり、言葉を遮ったりするとは思わなかった。
嬉しそうに跳びはねるソラ達を見る。
まぁ、丸くなっても害はないし。
それほど気を付けなくてもいいのかな?
「着いたぞ。これはちょっと問題だな」
「凄い量だな」
捨て場を見て、眉間に皺を寄せるセイゼルクさん。
お父さんも、捨て場を前に険しい表情をした。
そんな彼等を、ソラ達がちらちらと見る。
「あぁ、いいぞ。危険な物があるかもしれないから気を付けろ」
ソラ達は、お父さんを見て嬉しそうにぷるぷると震える。
そして、鳴きながら捨て場に跳び込んだ。
「ぷっぷぷ~」
「てっりゅりゅ~」
「ぺふっ」
すぐに、なんとも言えない音が捨て場から聞こえてくる。
「この場所は、地図上ではここだな。あとは、周辺を調べるか」
「手伝うよ」
セイゼルクさんとお父さんは周辺を調べるようだ。
この場所に違法な捨て場が出来た原因を探すんだろう。
「セイゼルク! 俺達は捨て場のゴミを確認する」
「頼む。アイビーは周辺に異常があったら知らせてくれ」
「わかった」
セイゼルクさん達が捨て場を離れると、シファルさん達がゴミを調べ始めた。
その様子を見ながら、周辺の気配を探る。
ただ、ゴミによって凶暴化した魔物は気配を探るのが難しい。
音や臭いにも、注意をしないと。
「にゃうん」
私の傍に来たシエルを見る。
「シエル、一緒にいてくれてありがとう」
頭を撫でると、ゴロゴロと喉が鳴る。
「ぷ~」
んっ?
ソラのちょっと強めの鳴き声に視線を向ける。
あれ?
ソラが食べているのは弓?
剣以外の武器も食べられるんだ。
知らなかった。
「そうだ。皆のご飯を拾おう」
それだったら、気配を探りながらでも出来る。
空になっていたマジックバッグに、ポーションやマジックアイテム、剣を入れていく。
これで王都に着くまで絶対に大丈夫だね。
「「ただいま」」
周辺を調べていたお父さんとセイゼルクさんが戻って来た。
「俺達の方も終わりだ。周辺はどうだった?」
捨て場から出てきたヌーガさんが、セイゼルクさんを見る。
「この近くには何もなかった。簡単に調べただけだから見落とした可能性もあるが。ゴミはどうだった?」
「ゴミは、冒険者が旅で使う物ばかりだ。洞窟や崖で使う物もあったが、異常なほど多いという事もない。異常なマジックアイテムは見つからなかったが、ゴミが山になっているから下の方にあるかもしれない」
「わかった、ありがとう。はぁ、冒険者ギルドに報告する事が増えたな、面倒くさい」
ヌーガさんが、溜め息を吐くセイゼルクさんの肩をポンと叩く。
「頑張れ、リーダー」
「俺の代わりに報告を」
「嫌だ」
嫌そうな表情で首を振るヌーガさんに笑ってしまう。
そんなに面倒かな?
場所を知らせて、規模を言って、周辺の状態を……あっ、面倒くさいか。
魔物の事もあるし。
「少し休憩しよう」
お父さんが倒れた木に座りながら、私を見る。
「そうだな。ソラ達も当分は戻ってこないだろうし」
セイゼルクさんが捨て場を見る。
捨て場では、ソラ達がまだ楽しそうに食事をしている。
お父さんの隣に座ると反対側にラットルアさんが座った。
「今日の予定の場所まで、あとどれくらいだ?」
シファルさんが、セイゼルクさんから地図を受け取り広げる。
「ここからだとあと2時間だ」
今は昼過ぎだから、ここでゆっくりしても余裕で着くね。
「もう少し先に進めそうだな」
ヌーガさんが、シファルさんの隣から地図を覗く。
「いや、この先は少し道が険しくなる。だから、今日はゆっくり過ごそう」
あぁ、明日のために今日は早めに終わるのか。
「わかった」
シファルさんは頷くと、地図をセイゼルクさんに返す。
「アイビー、そろそろ終わった方がいいかもしれないぞ」
お父さんの視線の先には、ちょっところっとした体形になったソラとソル。
フレムはまだ大丈夫だけど、すぐに追いつくだろう。
「本当だ」
慌てて木から立ち上がると、ソラ達に向かって声を掛ける。
「皆、終わり、戻って来て」
「ぷっ?」
「てりゅ?」
「ぺふっ?」
「どうして」と体を傾ける姿は、とても可愛い。
でも、その姿に絆されたら駄目だよね。
「終わりです。ほらっ、そろそろ出発するよ」
諦めたのか、のろのろと戻って来る3匹。
「たくさん食べた?」
まぁ、見ればわかるけど。
「ぷっぷぷ~」
「てっりゅりゅ~」
「ぺふっ。ぐふっ」
「ソル、大丈夫?」
食べ過ぎたのかな?
「ぺふっ」
大丈夫というけど、本当かな?
あっ、人の気配がこっちに向かっている。
「誰か来るな」
セイゼルクさんが警戒するように、武器に手を掛ける。
「どうする?」
シファルさんがセイゼルクさんを見る。
「こっちに来るという事は、捨て場を知っている者達かもしれない。様子を見たいから、隠れよう」
「ソラ、フレム、ソル。バッグに」
3匹をバッグに入れると、お父さんと一緒に木の後ろに隠れる。
しばらくすると、冒険者の格好をした5人の男性が姿を見せた。
その5人を見て首を傾げる。
どうしてあんなにマジックバッグを持っているんだろう?
1人が6個?
いや、7個を持っている者もいる。
ちょっと多過ぎない?
不思議に思って男性達を見ていると、彼等は捨て場に入るとマジックバッグの蓋を開け逆さに向けた。
えっ?
次々とマジックバッグを空にする男性達の行動に顔が歪む。
「回収屋か」
ヌーガさんを見ると、軽蔑の視線を男性達に向けていた。




