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18 意味深な先輩方


「へー、生徒会って結構大規模に活動してるんだな……」


 安曇と話した翌日。

 興味本位で教室の後ろに掲示されている生徒会主催イベントのチラシを眺めている。

 寄付金の多さが活動規模を拡大しているのだろう、地元の方々との共同イベントなど、様々な行事を行っているらしい。


「何見てるの?」


 俺がチラシを見ていると、合宿で同じ班だった村山が話しかけてきた。


「生徒会のチラシ」


「へー、興味あるの?」


「微塵もないな。教室に潜んでるかもしれないゴキブリと戦ってる方がよっぽど楽しそうだし」


「生徒会に親でも殺された?」


 若干引いた様子の村山。


「村山は興味あったりするのか?」


「私があるように見える?」


「ないな」


「うわっ、ちょっと失礼なんですけど」


「嘘だよ。合宿の時から生徒会長は村山しかいないと思ってた」


「そっちの方がちょっと嫌なんだけど」


 ふむ、他人の心を探って話すのは難しいな。

 ただ俺なりに調べてみると、今の時期なら本来生徒会に立候補する時期だろうが、その知らせは何もない。

 まるで募集をしていないような……そんな静けさがある。

 そうなってくると話はいたってシンプル。安曇が話していた事が現実味を帯びてくるだけだ。

 立候補してきた学生ではなく、成績優秀者から選ばれる。

 ますます安曇が上を目指すための努力とモチベーションが必要になってくるな。

 ちなみに医学部の内部推薦枠についても調べてみた。どうやら他の学部とは違って、ガチのマジの成績上位しか枠を得る事はできないらしい。

 例えば、学年トップ10が医学部進学を希望せず、枠が余っていたとしたら11番目の生徒がその枠に入れるかと言えばそうじゃないらしい。

 高水準な最低ラインが敷かれており、そのラインに乗ることが出来なければそれまで。

 まあ、簡単な話。安曇は学年トップを目指せばいいだけなのだ。

 


 ◇


 

 試験終わりの開放感は凄まじく心地良かった。それだけ緊張していたからだろう。

 中間テストの結果返却までもが終わり、期末までは時間がある……そう思いきや新たな試験が俺たちを待っていた。


「えぐいっ! 中間が終わってすぐに校内模試とか脳みそが死ぬっ!」


 バタンと倒れながらそう呟くクラスメイト。

 彼だけではない、何人かはぐったりしている。


「試験続きでやばいね。期末が終わったら全国模試もあるんでしょ?」


「大学は内部推薦で上がれるからラッキーと思って入学したのに!」


「まあ、大学入ってもついていける学力を維持するためだろうな、時々模試がスケジュールに組み込まれてるのは」


 みんな愚痴が止まらない。

 試験ってのはそういうもんだ。評定と関係ない模試だろうと、結果が出る以上は手を抜かない。

 そのプライドだけは一丁前に冥海生としてみんな持っているからだ。

 俺も事実としてすごく疲れた。定期試験より一科目の受験時間が長いのも理由だろう。

 英数国の三教科とはいえ、今日は朝から疲れた。

 こういう時、帰宅部で良かったと本当に思う。もちろん部活が好きで動けばリフレッシュって奴もいるだろう。

 俺には縁のない話だ。疲れた後は休みたい。

 なので今日も今日とて帰宅部として早々に帰ろうとしたわけだ。


「あ、そこの君」


「はい?」


 周囲に俺以外の人気はない。

 多分呼ばれたのは俺だ。


「一年生?」


「はい」


 口調からして先輩だろう。

 ショートヘアの女子生徒だ。

 ウチの学校はネクタイの色が違うとか、制服の色が違うとかそういうのはなく、所謂学年をルックスで見分ける方法がない。

 

「少し手伝ってもらえる?」


「分かりました」


 さっさと帰りたかったが、断るわけにもいかず渋々納得した。

 

「君、名前は?」


「夜星凛月です」


「珍しい名前だね。漢字は?」


「夜の星で夜星。そして凛とした月で凛月です」


「お洒落な名前だ!」


「先輩は?」


「私は坂田 真由(さかた まゆ)。坂に田んぼで坂田。真実の理由って感じで真由」


「坂田先輩ですか」


 俺はひたすら坂田先輩の後ろを辿っていく。

 どこへ向かってるのか……もしかすると手伝いってのは面倒臭いんじゃないか。

 そんな不安が過ぎる。


「今日は一年生にとって初めての校内模試だったわけだけど、どうだった?」


「大変でした」


「やっぱりそうだよね。私二年なんだけど、二年になっても慣れないもんだから」


「一年に三回でしたっけ?」


「そう。校外模試も三回。それで定期試験は五回。計十一回は流石に多いよね」


 確かに多いな。

 

「ちなみに今はどこに向かってるんですか?」


「体育倉庫。実は頼まれてた雑務があってさ。本当は別の人もいたんだけど、見当たらなくて」


「それで通りすがりの一年生を捕まえたと?」


「そう。体育倉庫の雑務だから力仕事だし、男子じゃないときついし」


「別の人はどちらに?」


「さあ。しょっちゅう消えるから分からない」


「幽霊?」


「ははっ! 本当に幽霊みたいなんだよね実際……って、噂をすればっ!」


 坂田先輩は何かに気付いた様子で駆け足になった。遠くなっていく背中を見つめていると、向かう先には一人の男子生徒がいた。


「どこ行ってたんですか宮國(みやぐに)くん?」


 坂田先輩が話しかけた相手は地面と睨めっこして微動だにしない色白の男子生徒だった。

 遠目からでも逆の意味で存在感があるほどの色白。

 さらっとしていて身長も高い。

 端正な顔立ちだし、例えるなら雪男……。


「坂田、俺のコンタクトを知らないか?」


「は? コンタクト?」


「落とした」


「それでぼーっと立ち尽くして探してたわけですか?」


「ああ。目が疲れて探す気力も失せたからな」


「ならさっさと撤収して私の元に戻ってきてくださいよ!」


 丁寧な口調ながらも覇気を放つ坂田先輩。

 先ほどまでの雰囲気はなく、ひたすら宮國と呼ばれた男に怒りをぶつけているようだ。


「ごめん、今戻る」


「頭おかしいんですか! 私から迎えに来たんじゃないですか!」


「なら体育倉庫に向かおう。目が疲れた」


「ちょっ、勝手に歩き出さないでください! あっ、ごめんね凛月くん。見つかったからもう大丈夫」


「それは何よりです」


「それじゃあね」


 そう言って坂田先輩はマイペースに歩き出した宮國という男の後を追った。

 なんだったんだろう。

 すごく不思議な人だった。

 マイペースって意味じゃ朔楽といい勝負かもしれない。

 坂田先輩も大変そうだったな。

 

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