第四十六話 戦闘訓練の相手は知り合い
クロードはレオのその言葉にとても驚いたのである。なにしろ撃墜の必要が無いことはすなわち相手の攻撃を回避し続けるだけで良いという事である。今までヒットアンドアウェイで戦ってきたクロードにとっては最も得意な戦術であり、なおかつ勝つ必要も無いのなら戦闘訓練での失敗は無いだろうとクロードは確信が持てたのである。
「……説明は以上だ。直ちに演習場C5に向かいなさい」
レオによって送り出されたクロードは急いで格納庫へと戻るとヴァッシュに乗り込み格納庫を出発した。演習場C5は一番最初にアンドロと戦闘訓練をした場所である。久々に行く場所ではあるが記憶は残っており、MAPに表示されていることもあって迷わずに演習場の入り口に辿り着いたのである。
……さて、到着だな。ところで戦闘訓練の相手って誰なんだろう? アンドロじゃあ無いだろうし見た事無い人が相手なんだろうか? 知ってる人だと対応も分かっているから楽なんだけどね。
そんな事を考えながら演習場C5の入り口の扉を開けたクロードの視界に飛び込んできたのは見覚えのある赤い機体である。長い剣が似合うその赤き機体を見たその瞬間クロードは相手が誰であるかを悟った。
『……どうやらクロード、ラッケル両名が演習場に着いたようだな。ただ今より戦闘訓練を始める』
やはりあの機体はラッケルさんか。機体の名前は確かローゼル。そして装備している武器パーツは名前こそ知らないけどかなり強そうだ。
『制限時間は5分間で特に禁止事項は無い。どちらかが撃墜またはそれに準じたとこちらが判断するまでは訓練は中断しない。クロードは先程言ったように制限時間まで撃墜されずに残っていれば達成とする。……それでは訓練始め!』
レオの号令に従ってラッケルはローゼルの持つロングソードを構えた。いきなり攻撃が来るのかと身構えたクロードに向かってローゼルから声が聞こえて来た。
「やあ、こんなにも早くまた会えるとは思ってなかったよ。僕が相手でクロードは驚いたかい?」
「……まあ、そうですね」
「ふふ、君としては制限時間全て経過することでも達成されるから僕が攻め込まなければそれで良い……。そう考えているのかな。まあそれはそうだよね。その方が楽だもんね」
ラッケルが言いたいことがクロードには分からなかった。何故なら攻め込まなければ良いとこちらが望んでいると思っているのならこうして武器を構えたまま歩み寄ってくることは無いと思うからである。
「でもそれは僕が面白くない。僕はねクロード、君と真剣勝負がしたいのさ」
「……俺は真剣勝負をするものだと聞いてここに来ました」
言いながらクロードは左隅に表示されている残り時間が4:05と表示されているのを見た。もう約1分が経過しようとしているのである。こうして話しているのなら時間はすぐに過ぎるが戦闘となるとそうはいかない。今から制限時間まで長い長い戦闘が始まるのである。
「良いね! 制限時間内まで生き残れば良いなんてそんなヌルいルールは必要無い。話している間に1分経ったね。まあこれは僕から君へのハンデとしよう。ただ今から真剣勝負の始まりさ。……僕はただ君を! 全力で叩き潰す! ……さあ、踊るとしようか!」
言い終わるや否やラッケルはこちらに突撃をしかけた。ローゼルは斬撃攻撃が主体の近、中距離のE・L・Kである。メテオライフルによる射撃攻撃が主体のヴァッシュは遠距離のE・L・Kであり、クロードとしては出来るだけ距離を詰められたくは無い。
そのためクロードはメテオライフルを半ば牽制するかのように発射させた。ラッケルは避けようともしないので当たったは当たったが大したダメージは無さそうである。
回避をしながら隙を見て射撃攻撃を仕掛ける得意の戦術でクロードは素早く距離を取ろうとした。しかしラッケルとの距離は離れるどころかどんどん縮まっているのである。
「……これちょっとやばいな」
クロードは焦っていた。それは他でもなく、いつもならこのぐらいで相手と距離が離れるのに離れるどころか縮まっているからである。これはクロードが今まで戦ってきたE・L・Kの内、パディン以外の全てのE・L・Kが自分より速度が遅いものだったことの弊害である。
本来ならパディンと戦っている時に気付くはずがパディンがスキル主体で戦うがためにあまり動かなかったため速度の重要性に気付かなかったのだ。ローゼルの速度である150に対してヴァッシュの速度は120。
それに加えて素のステータスで負けているにも関わらずメテオライフルの装備ボーナスによりさらに10低くなっているのだ、その差は歴然である。
そのためローゼルの斬撃が届く位置まで迫ることは造作も無いことなのである。動き始めてからおよそ1分。3分以上残った状態でクロードはかつて無いピンチに陥ったのである。やばいと感じたその瞬間真横から薙ぎ払われヴァッシュは真横に吹っ飛ばされた。
ぐぉっ、……初めて吹き飛ばされたか。あんまり良い気分じゃあ無いね。ルピウスが何も言ってこないから装甲はまだ大丈夫なんだろうけどそう何度も攻撃される訳にはいかないね。さっさと立ち上がっ……
「ほらほらすぐに立ち上がらないとダメだよ? 敵はそんな事待ってくれないんだからさ」
クロードは吹っ飛ばされたところから体勢を立て直そうとしていた。その無防備なところを狙ってラッケルはスキルを発動させるために予備動作に移行していた。何のスキルかを悠長に見ている暇は無い。すぐに体勢を立て直すと前に進むために思い切りペダルを踏み込んだ。
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ローゼル 彗星の赤き騎士。剣の扱いに長ける。
攻撃 200 速度 150 装甲 1200




