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つきの夜  作者: のりこ
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突然の選択

少し話をしよう、騎士のその一言で膠着状態を脱し、1人と2人とが向かい合う。



「自己紹介をさせてくれ。私はカラン・ヴィノー。流れの…傭兵だ」

そういって兜に手をかける。兜の下に隠されていたのは、端正な顔立ちであった。


金色の細い髪が白い細面と相まって、天の使いもかくやと言わんばかりである。エメラルド色の瞳は知性と奥に秘めたる情熱を感じさせ、鼻筋はすっきりと通っている。薔薇色の口唇は慎ましやかながら艶かしい。なんとも美麗な顔である。が、しかし。


「じょ、女性だったのですね…」


そう、カランは凛々しい女戦士だったのだ。こう…オークとかの退治にいって捕まり、『くっ殺せ…!!』なんて台詞が似合いそ…いやいや、何を考えている。


「うむ。女でこういった仕事を生業とするものはあまりいないからな。驚くのも無理はない」


「はぁ…。私は水上祈…いや、イノリ・ミナカミと申します。この子はヨルです」


金髪のイケメン騎士とのロマンスは破れた。王道パターンなんて私には存在しなかったんだ…、なんて悲しみに浸りつつ紹介をする。


「イノリにヨル、か…。変わった名前だな、響は綺麗だが」


褒められているのかけなされているのか。


「さて、イノリ、君は魔族についてあまりよく知らないようだが、どこまで知っている?私はどこから話せばいい?」


そう言ってカランは私の目を見据える。


「すみません、魔族についてさっぱり分からないので最初から、小さい子でも分かるくらいの易しい言葉で話していただけますか?カランさん」


魔族どころかこの世界についても全く分からない状態なのだが、この場で言うことではないだろう。


「堅苦しい言葉は使わなくていい、カランと呼んでくれ。

実は話すといっても、魔族について知られていることは少ないのだ。普通に暮らしていれば会うことはそうないし、その方が幸せだからな。さて、どこから話そうか…」


そう言ってカランは話し始める。少々難解な言葉や理解できなかった点はあるが、大雑把にまとめてしまうと…



この世界には魔力があって誰でも少しは持っているよ!特にたくさん持っている人は魔法っていうすごい力が使えるんだけど、とっても珍しいんだ!大体高い地位に就いているよ!


魔族は人間とは根本的に違っていて、誰もがたくさん魔力を持っていて魔法を使えるよ!人間とは考え方も生きる時間も違っていて、享楽的で残酷、怖い人達らしいんだ!


魔族と人間は生息圏が古くからの慣わしで一応分けられているんだけど、こっちに来て悪さをしていくやつらがいっぱいいるよ!


…という感じである。



「…あれ?どうしてカラン…は、ヨルが魔族だってすぐ分かったんで…分かったの?」


カランには砕けた態度で!と再三言われてるのだがなかなか難しい。


「あぁ、魔族なんて見たのは初めてだが、その不吉な右目の色を見ればすぐに分かる。それは魔獣や魔族の…血を好む者の目だ」


血を好む者…肉食獣みたいな感じかな。私にはヨルの目は綺麗な蜂蜜色にしか見えず、舐めたら甘そうだとさえ思うのだけれど。


「それにその顔の右半分を覆う皮膚だな。それには魔力凝固症の症状が出ている」


「魔力凝固症とは?」


「古来より魔力が最も強く宿るのは目だと言われているのだが、魔力が特に強い子どもは魔力の扱いが上手くいかず、魔力の根源たる目から魔力が溢れるのだ。その強すぎる魔力を抑えるために、周囲の皮膚が硬化し、変色する。これが魔力凝固症の症状だ。…魔術師の家系ではこういう子は非常に喜ばれる、力の強い証だからな。さすがにここまで酷いのは初めて見たが」


そう言って一息つく。


「…君はそれと偶然会った、と言ったな。それが本当ならば、恐らくそれは奴隷商から捨てられたのだろう。

私には理解できないが、この世には魔族を侍らしたいと願う馬鹿もいるらしく、それなりの高値で売買されているらしい。それのもともとの持ち主もいい値になると踏んでいたのだろうが、魔力凝固症が発症したのを見て皮膚病の一種だとでも勘違いしたのだろう、この症状は一般にはあまり知られていないからな。

伝染する病で他の商品に移されては大損、とでも考えて置いていった、というところか」


奴隷として売られるという事態を回避できたので、ヨルにとっては発症してよかったのではなかろうか。それにしても、


「…ヨル、魔法が使えるのか。いいなぁ、かっこいいなぁ」


誰もが一度は憧れたことのあるだろう魔法。私も小さい頃は竹箒をまたに挟みピョンピョンしてみたり、何を思ったか自作の魔法の呪文を作ってみたりした。それが夢物語でなく可能であろうヨルが羨ましくて、つい頭をわしゃわしゃと撫でる。


「君は魔術も魔族も本当によく知らないんだな。これほど恐ろしいものはそうないのに。…魔術は簡単に人を殺めることが出来る。そして、魔族というのはそうすることにさしたる感慨を覚えない、残酷な生き物だ。

…君がヨルと呼ぶその魔族も今はまだ幼く非力だが、そのうち人を簡単に殺せるようになる」



「イノリ、悪いことは言わない。それを然るべき場所に引き渡そう。…今なら抵抗されることもない」


読まれている方がいらっしゃれば、すでにお気づきでしょう。サブタイトルに行き詰まっていることに。

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