表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
踏み台令嬢に転生したのでもふもふ精霊と破滅フラグを壊します! 気づけば王子様ホイホイ状態なんですが!? 完結  作者: まほりろ・ネトコン12W受賞・GOマンガ原作者大賞入賞
第一章「謹慎編」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/58

9話「王宮の侵入者との遭遇」ユリウス視点




――ユリウス視点――



母は隣国ヴァルトハイム王国の王女で、国王の正室。


父はブライドスター王国の国王。


伯父はヴァルトハイム王国の国王。


そんな恵まれた環境で第一王子として生を受けた僕の人生は、幸せとはほど遠いものだった。


父と母は政略結婚。


父と母の結婚は、ブライドスター王国の先代の国王と、ヴァルトハイム王国の先代の国王によって決められたもの。


両国の先代の国王の逝去が重なり、父と母の婚姻は予定より三年遅れた。


父には学生時代から思いを寄せていた男爵令嬢がいた。


父は彼女を愛人として娶り、彼女との仲を深めていた。


正室より先に愛人を娶った理由を、父は「婚期が3年も遅れたのだから仕方ないだろう」と述べている。


それでも、ヴァルトハイム王国の顔を立て、正室を娶るまでは、愛人との間に子供は作らなかったようだ。


そんなわけで、嫁いで来た母に居場所はなかった。


父は国王として、義務感で母との間に子を成した。


父は僕が生まれてから、母に会いにすら来なくなった。


父は愛人の元に入り浸り、1年後、弟が生まれた。


父は愛人と弟を溺愛した。


しかし、そんな日々は長く続かず、弟が3歳の時に愛人は他界した。


愛人が死去したあと、父は以前にも増して弟を甘やかし、僕や母への関心はますます薄れた。


父は、僕には何かと理由をつけて婚約者を作らなかった。


弟には、11歳の時に婚約者をあてがっている。


弟の婚約者は、カレンベルク公爵家の長女アンジェリカ。


赤い髪と瞳が目を引く、はっきりとした顔立ちの愛らしい少女だ。


弟はアンジェリカに興味がないらしく、婚約してからずっと放置していた。


弟を一途に想い、まっすぐに愛情を伝える彼女の姿は、僕の目には眩しく映った。


アンジェリカと一緒なら、孤独な王宮の生活にも耐えられるかもしれない。


アンジェリカと僕は一歳違い、状況が少し違えば彼女は僕の婚約者だったかもしれない。


弟の婚約者にこんな感情を抱くなんて間違っている。


なのに、彼女への想いは日に日に想いは募っていく。


母の血筋と伯父の身分に守られ、僕や母が王宮内で軽んじられることはなかった。



 ◇◇◇◇◇



事態が急変したのは、一年前。


聖女が覚醒し、王宮に保護された頃だ。


神から聖女に選ばれたのは、コレットという名前の平民の少女だった。


父はエドモンドを聖女の世話係に命じた。


エドモンドと彼の側近のダミアンとライナスは、聖女に夢中になった。


聖女は桃色の髪に同色の瞳の小柄な少女だった。


その儚げな見た目からか、聖女に恋心を抱く者が後を絶たなかった。


淀んた魂を整った容姿で隠しているようで、僕は聖女に薄気味の悪さを感じていた。


その頃、ブライドスター王国ではモンスターの襲撃が減り、目撃されることすらなくなった。


人々は「これぞ聖女様のご加護!」と聖女を持ち上げ、褒め称えた。


我が国でモンスターが出現しなくなったのと同時期に、ヴァルトハイム王国ではモンスターが大量に出現し、村や町を襲うようになった。


ヴァルトハイム王国は、モンスター退治に追われ、急速に力を失った。


ヴァルトハイム王国が力を失うと、僕と母の周りから一人、また一人と貴族が去っていった。


彼らは僕らの味方ではなく、隣国の力を上手く利用し、美味い汁を吸おうとしているだけの人間だったのだ。


母と僕は原因不明の体調不良に悩まされ、パーティや学校も欠席することが増えた。


何かがおかしい。


どこかが変だ。


そう思っても、解決策は見つからない。


体調不良の原因を、医者に問い詰めても「原因はわかりません」と言われるだけ。


そうしている間に時だけが過ぎていった。


一週間前。


エドモンドが学園の進級パーティでアンジェリカを断罪。


彼女との婚約を破棄し、聖女を新たな婚約者に選んだ。


カレンベルク公爵家は、エドモンドの後ろ盾になっていた。


学園のパーティで恥をかかせるようなやり方で、婚約を破棄しなくても良かったはずだ。


こんなやり方は間違っている!


父とエドモンドを責めたが「お前には関係ない」と言われ一蹴されてしまった。


その後、僕の体調は急激に悪化した。


父に代わり、アンジェリカに謝罪に行きたかったが、何もできなかった。


好きな人が一番苦しんでいる時に、何もできないなんて情けない。


このままではいけないと思い、体調不良の原因を自分で突き止めるために図書館に向かった。


僕と母の住まいは王宮の端にある。


警備も手薄で、「侵入してください」「襲ってください」「殺してください」と言っているようなものだった。


だが、部屋を抜け出し図書館に向かうには都合がよかった。


図書館にたどり着いたとき、体が悲鳴を上げていた。


王宮内を歩いただけなのに、こんなに息が上がるなんて……。


僕の体は、自分で思っている以上にまずい状態なのかもしれない。


図書館には鍵がかかっていなかった。


不審に思い中に入ると、図書館の奥、許可がないと入れない古書コーナーの本棚が動いていた。


こんなところに隠し部屋があったのか?


第一王子の僕でも知らない場所を、知っている人間は限られている。


物陰に隠れ耳を澄ませる。


部屋の中から聞こえて来たのは、若い女性の声と少年の声だった。


見つからないように中の様子を伺うと、部屋の中には黒い服を着た女と黒い大型犬がいた。


少年の話し声が聞こえた気がしたのだが、気の所為だったのだろうか?


正体を確かめようと声をかけたら、大型犬に押し倒され、女に妙な薬を嗅がされた。


気がついたら朝で、ベッドで眠っていた。


あれは夢だったんだろうか……?


唇に柔らかい感触があったような……? それに良い匂いもして……人肌の温もりも感じた気が……?


図書館に行く前まで感じていた、体の不調が嘘のように消えている。


手に何かが触れ、視線を向けると黒いものが落ちていた。


「これは、ボタン……?」


僕のものでも使用人のものでもない。


なぜボタンがこんなところに……?


図書館にいた女は黒い服を着ていた。


夢の中で、女が纏っていた服のボタンが弾け飛んだ気がする……。


シャツの下には……そこまで思い出して顔に熱がこもる。


「とにかく、ボタンがここに落ちていたということは、女がこの部屋にいた証拠だ!

 彼女が何者なのか突き止めて見せる!」


そうすれば、僕の体調が回復した理由もわかるはずだ。






読んで下さりありがとうございます。

少しでも、面白い、続きが気になる、思っていただけたら、広告の下にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると嬉しいです。執筆の励みになります。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ