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踏み台令嬢に転生したのでもふもふ精霊と破滅フラグを壊します! 気づけば王子様ホイホイ状態なんですが!? 完結  作者: まほりろ・ネトコン12W受賞・GOマンガ原作者大賞入賞
二章「学園編&陰謀編」

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26話「一難去ってまた一難!? ユリウスからの追求」


ホッとしたら全身の力が抜けました。


エドモンド達との会話は想像以上に、精神を疲弊させたようです。


膝から崩れ落ちそうになる私を、ユリウスが支えてくれました。


彼に手を握られ心臓がドクンと跳ねる。


「失礼いたしました、第一王子殿下!」


「大丈夫?」


ユリウスが穏やかな表情でこちらに問いかける。


相変わらず顔がいい!!


銀色の美しい髪、賢そうな紫の目、以前あったときより肌の艶も良さそうです。


ユリウスの体つきは一カ月前よりしっかりしているように思えました。


今、教室でユリウスと二人きりなんですよね。(ルシアンもいますが)


心臓の鼓動がうるさいです。


「僕の顔がどうかした?」


「えっ?」


「勘違いだったらごめん。

 先ほどからカレンベルク公爵令嬢が、僕の顔をじっと見ている気がしたから」


「……すみません!」


私はユリウスからそっと視線を逸らしました。


ユリウスがイケメン過ぎて見とれていたとは言えません。


「腕は大丈夫?

 エドモンドにかなり強く握らていたようだけど」


ユリウスが心配そうに、私の顔を覗き込んだ。


か、顔が近い……!


心臓がバクバクするからやめてほしいですわ。


「保健室に行って手当してもらおう。

 僕も付き添うよ」


「だ、大丈夫です!

 帰宅したらポーションを塗りますので……!」


第一王子と校内を歩いていたら、周囲に何を言われるかわかりません。

 

保険医に痣が出来た理由も聞かれるでしょうし、復学早々注目を集めたくありません。


だから決して、ユリウスと一緒にいたくないとかそんな訳では……!


「自宅にポーションがあるの?」


「はい、私の自家製なんです」


「そう、凄いんだね。

 もしかしてそのポーションには解毒剤が入っていたりするのかな?」


「解毒剤入りのポーションもありますが、腕に使うのは普通のポーションです」


『バカ、言い過ぎだ』


鞄の中のルシアンが、小声で囁く。


「先月、僕を助けてくれた人がいるんだけど、その人も解毒剤入りのポーションを持っていたんだよね」


ユリウスのアメジストの瞳が、キラリと光った気がします。


そう言えば、以前ユリウスと会ったのは王宮に不法侵入したときでした!


「その人からも君と同じ薬品の匂いがしたんだ」


ユリウスが私の髪に鼻を近づける。


顔をあんまり近づけないでください! 心臓に悪いです!


ご自分の顔が国宝級に良いことを自覚してください!


それにしても、私の髪から薬品の匂いがするなんてショックです。


毎日ポーションなどを製造しているうちに、体に匂いが体に染み付いたのでしょうか?


ユリウスに薬品臭い女だと思われてしまったかもしれません!


「その人の手の形は、君とよく似ていた」


ユリウスの手が私の手に触れる。


エドモンドに腕を掴まれた時は鳥肌が立ちましたが、ユリウスに触れられてもなぜか嫌ではありませんでした。


この気持ちの違いはいったい……?


「それは、偶然では……?」


「僕は第一王子という立場上、職業や年齢を問わずいろんな人と握手する機会が多くてね。 

 そのおかげか、一度握った手の感触は忘れないようになった」


私の顔をじっと見据えるユリウスの瞳は、確信を得ているように感じました。


「ですが、それは個人の感想ですよね?」


前世で口達者な配信者がそんなことを言っていた気がする。


「証拠もあるよ」


ユリウスが制服のポケットからハンカチを取り出した。


彼がハンカチを開くと黒いボタンが出てきた。 

「それは?」


「僕を助けてくれた人が落としていったボタンなんだ」


「……っ!」


心臓がドクンと音を立てる。


あれはお父様から拝借したシャツのボタン。

 

あの日、シャツのボタンが飛んでしまい、肌が露わに……。


私はあられもない姿でユリウスの胸にダイブを……!


思い出したら顔に熱が集まって来ました。


きっと、今の私は耳まで真っ赤です。


「たかがボタン一つだと思うだろう?

 でもね、貴族はオートクチュールで服を作る。

 だからきちんと調査すれば、このボタンを使用して服を作った貴族を、ある程度特定できるんだよ」


ユリウスの表情は穏やかでしたが、目は笑っていませんでした。


お父様のシャツを拝借したことが仇になったわ。


落ち着いてアンジェリカ。


同じボタンを使った貴族は他にもいるはずよ。


調べたところで容疑者の一人になるだけよ。


いくらでも言い逃れできるわ。


「それから、あの日僕の部屋にあったマントが一つなくなったんよね。

 使用人に聞いても知らないと言うし……。

 犯人が持ち帰ったんだとしたら、屋敷を捜索すれば出てくるよね?」


詰んだ! 終わりました!


ユリウスのマントを手放せなくて、今も自室の机の引き出しの中に畳んでしまっています!


3日に一度取り出して匂いを嗅いでます……!


変態なのが……いえ、思い出を大切にしたのが仇となりました!


「王族の使用するマントには特別な刺繍が施してあるから……」


「あの日王宮に侵入したのは私です! 出来心なんです! どうかお許しください!!」


私はユリウスに向かって土下座をしました。


王宮への侵入罪で処刑される……!?


ばいばい、私の首と体。今日限りでおさらばだね。


「私が単独でしたことです!

 どうか家族への処罰は見逃してください!」


何も知らない家族が、愚かな私の巻き添えになるのは嫌!


「頭を上げて、服に埃がついてしまうよ」


ユリウスが床に膝を付き、私の手を取りました。


「勘違いしないで、君をどうこうしようってわけじゃないから」


顔を上げた時、ユリウスと目が合いました。


彼の表情は和らいでいるように見え、私に向けられた視線はとても温かでした。


トゥクンと心臓が音を立てる。


ユリウスの側にいると、心臓がドキドキしっぱなしです。


でも、決して嫌な気分ではありません。


「僕はあの日の少女にお礼を言いたかっただけなんだ」


「……?」


「カレンベルク公爵令嬢、あの晩僕を助けてくれてありがとう」


ユリウスのにこやかな表情から放たれた言葉は温かく、私は彼から目が離せなくなりました。



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