【トナカイさん】第4回聖夜祭実行委員会【こっちです!】
物語終了後のお話。
視点変わるし長いですが、分けるのもアレなのでこのまま。
571:藍色てぶくろのこぎつね
で?結局聖夜祭やるの?
やるなら見に行きたいなー
572:無礼MEN! ぬこみみベース
今年はハロウィンのお祭り王都でやっちゃったからなー
聖夜祭こそは地元でやって欲しいところ
573:双子妖精 ティンク
クローブタウンの地元っ子達も期待してるみたいだしっ!
……てかそもそも
地元住民に配慮して始めたんじゃなかったっけ?これ
574:マッチ売りの少女
やらない理由は無い……んだよね?
参加するなら初めてだから
それはそれで楽しみかなー
575:星の☆プリンスさまっ☆ミ
例の双子ちゃん達『ハロウィンは別腹』
って顔してるんですがこれは……
576:おおかみさん@珍しくコーヒーで腹いっぱい
いいんじゃないか?
例年通りクローブタウンで聖夜祭開催ってことで
577:仮面の槍者青ひげ
原点回帰
……ってやつだな
移動が間に合えば顔を出すのだが
578:魔弾の射手
よっしゃ
ほんならやるか
579:ノロウェイの黒牛
だな
やらいでか
580:ハーメルンのセロ弾き
よし、やろう
581:ジャックと豆の木
そういうことになった
582:白雪姫
問題は要となる幻影魔法使いさんですわねえ(チラッ)
583:灰かぶり
何とも言えんな
だが、今からならば
日程の調整は間に合うのではないかと思う
584:眠り姫
わたし初めて
……楽しみだな
585:浮かれ小坊主
眠り姫ちゃんは大抵の事はそうだよねー
たーのしんでいくといいよ!
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お祭りをしよう!と最初に言い出したのは誰だったか。
6年前、神と戦い自由を勝ち取り、世界へと飛び出した私達。
記憶が無いにもかかわらず、故郷への思いは絶える事無く。
年に一度くらいは皆で会う機会があってもいいよね、という声もあって始まったのが、村の収穫祭に合わせて始まった『ハロウィン』―――現在で言う『ハロウィン大感謝祭』のお祭り。
いつしかそれは仮装してお菓子を振る舞うだけに止まらず、歌唱、演劇、ダンス、魔法等の各種ショウ、各地方から持ち寄った特産物や個人作成生産物の即売会、その他何でもアリのカオスなお祭りと化した。
その一方で聖夜祭というのは、私達がこの世界に来て最初に出会った現地の人々―――今で言うクローブタウンの住民達との対話が元になって行われる様になったお祭りの様なものだ。
かつては過疎村に近かった寂れたこの村も、私達訪問者の手によって立派な港湾都市へと変貌した。
しかし現在でも当時を懐かしむ声が多々聞こえ、また忘れてはならない過去として残したいという現地の希望もあり、年越しの祭祀と共にかつての風景を『再現する』という形をとりはじめた。
それが、聖夜祭の始まり。
掲示板から出された意見からお祭り好きの訪問者達が発起し、こうして今年も聖夜祭が開催される運びとなった。
セントラーダの王城を、第2王子のエドをぶら下げたまま箒で脱出してから早1年。
今年の秋の大祭でとっつかまって以来、私―――こと灰かぶりはセントラーダの王城で暮らしている。
……ちなみに、捕まった際の罰ゲームは……
「愛しき愛の力、桜花の色!魔法少女、ピュア・ピンク!」
「実りの色、結実の橙!ピュア・オレンジ!」
「立ち塞がるものには容赦しない!高貴なる紫!ピュア・パープル!」
「私達の歩みは止まらない!手をとり合い広がる緑!ピュア・グリーン!」
「どんな悪意にだって立ち向かって見せる!染まらない白!ピュアホワイト!」
「「「そして!!」」」
「悪をも惑わし、はね返す力!光の魔法少女、ピュア・プリズム!(泣)」
思い出すたびに、顔の表情が<●><●>みたいな事になっている様な気がするが、きっと気のせいではないだろう。
何度も言うが、魔法少女の6番目とかあの時だけだからな!もうやらないからな!!絶対だからな!!
……ちなみに、わざわざ外見年齢を変えるアイテム『ドロップ』を使っての子供→大人変身だったことも忘れてはならない。
……いやむしろこれは全力で忘れるべきか。よし、忘れよう(決意)
そしてそんな確保劇の後、来年の春には盛大に式の予定がサクッと決まったのだった。……おのれ孔明ェ……。
いや、思い出すべきはそこではない。
今はとにかく差し迫る聖夜祭の件についてだ。
……忘れたいから転換するんじゃないぞ!
「ああそうだエド、私、一度家に帰ろうと思うのだが」
冬も深まってきたとある夜。
王家関係のほぼ全員が揃った晩餐で、私の告げた言葉は、その場の空気を見事に凍りつかせたのだった。
「……何かこやつに不満でもあっただろうか?」
そう心配そうに問いかけてきたのは、国王で未来の舅、リチャード様。
「エドは……そうねえ、何をやらかしたか知らないけれど、悪気は無いと思うのよ?その、突然言い出す前にわたくしに一言言ってもらえれば、上手く問題が解決出来たかも知れないわね。今からでも遅くは無いわ、後でじっくり話し合いましょう」
冷静そうに見えて少々慌てていらっしゃるような、うわずった声を出されたのは、そのうち姑、妃殿下バーバラ様。
「……」
そして肝心のエドは、何故か黙りこくってしまった。
いや元々そう口数の多い方では無かったのだが。
何だ?この反応。
「あ」
「ど、どうしたんだい?ローラ」
わずかに小首をかしげた眠り姫―――私と同じく『眠り姫』のままでは座りが悪いと、ローラと呼ばれる様になった彼女の様子に、アル殿下がびくついた。
「……そっか、クリスマス」
「「え?」」
「こっちでは、聖夜祭、だな」
はにかんだ眠り姫のローラ嬢に軽く訂正を入れる。
「掲示板、賑やか」
「そうだな。皆浮かれている様だ」
中には、終了だの爆発だの言っている連中もいるが。
聖夜祭で、私は森や近隣で活動中の訪問者達と共に、幻影魔法を使ったショーを行っていた。
賑やかでカオスなハロウィンに比べ、どちらかといえば聖夜祭は規模の小さい、その分静かで幻想的なイベントと言える。
「ああ、ええと……クローブタウンで今度夜のお祭りがあるのですが、それに顔を出したいと考えていまして。まさかこんな事になるとは思わなかったので、来年もやると現地で宣言してしまっていましたし」
まだ固まったままの周囲に気付き、慌てて言葉を添える。
例の式が来年春とはいえ、それまでにやらなければならない妃教育は妃殿下を中心に教師を何人も宛がわれ、相当な過密スケジュールで進行していた。
同時に、王宮薬剤師さん達にノウハウを教えたり、いくつかの交渉事も抱え込まされているので、暇が無いと言えば無い。
だからわざわざ確認したのだが、ん?言い方が不味かったかな?
というか、笑ってないでお前が説明したらどうなんだ?猫よ。
「何かあった訳では無いのだな?」
「ああ、申し訳ありません。エドとの間に問題があった訳ではありませんので、そういった御心配は不要です」
「……まあ、何かあったら遠慮などなさらないでね」
「あー……申し訳ありません、お義母上様」
妃教育はスパルタだが、その実気を使って下さっているのだろう(そのうち)姑殿とは、この城に入場した翌日にお互い「うちの息子が申し訳ないわ」「いえいえ、こちらこそこんな嫁で実に済みません」と謝り合戦を繰り広げた仲だ。
今はまだ探り探り関係を構築している段階だが、その内和やかに話が出来る日も来るのだろう。
「お祭り、ですか?ココも見に行きたいですわ!この前のも凄かったですけれど、今度のもきっと盛大なのでしょうね!シンデレラお姉さまが行かれるのなら、ぜひ連れて行っていただきたいのですわ!」
たまたまこの晩餐に同席していたココ姫も、話を聞いて我前行くと大張りきりしだした。
いやいや、ハロウィンみたいな馬鹿騒ぎはさすがにしないぞ?
「聖夜祭という事は、夜か」
隣でようやく復帰したエドが、ぽつりと呟いた。
警備上の問題、とでもいいたいのだろうか?
まあ、少し先に王子妃なる女が、ふらふらと出歩くのは問題なのだろうが。
「ちょっと行ってすぐ帰って来るだけだ。それほど長丁場になる祭りでもないしな。ただ、皆楽しみにしてくれてるかと思うと、やはり少しだけでも顔を出したいと思って……」
「……わたし、初めてなの、聖夜祭。アル、わたしも行きたい」
そうか、ローラ嬢は眠っていたからな。
祭りの事を話には聞いていても実際見ないと分らないし、見てみたいと思うのも当然、か。
「えっ、う~ん」
弱った顔をするアル殿下。
そんなに問題か?
「警備上は何も問題ありません。ハロウィンほどではありませんが仲間も多数集まりますし、それで揉め事を起こす人達が集まる様な祭りでもないですから」
「……そういう問題ではないだろう」
顰め面をしたのはエドである。
はあ、じゃあ何が問題だというのだ?
良く城を抜け出して人の自宅に押し掛けた前科持ちが、今さら森だの街だの行くと言ったところで止める理由にはならないと思うぞ?
声には出さないが表情には出す。
説得力、あると思ってるのか?
「う~ん、それ、僕達は行かなくて良いのかな?」
「それは……そうですね、この前のハロウィンと違って小さくて静かなお祭りですし、王室関係の方々が来る強制的な理由は無いですね……」
参加自体は勿論歓迎だが、なにぶん夜のお祭りだ。
それになにより、やはり寒いと思うのだ。これから行われるとなると、なおさら。
私達だけなら良いが、エドやアル殿下が来るとなると、きっと大事になってしまうだろう。出来ればそれはちょっと避けたい。
「猫の王はどうする予定だ?」
セントラーダ王国筆頭魔法使い殿は、このお祭りには参加しないだろうな。寒いし。
「寒いじゃないですかー、やーだー。大人しく中継でも見ますって。ああそうだ、もしよろしければラウンジの方にでも映像を送りますが」
案の定のセリフだが、後半の言葉は国王夫妻に向けたものだ。
その言葉に二人とも頷きを返してくれる。
祭りだ戦闘だ、と、その度に映像を中継したからな。
今回の事も、楽しみにしてくれたのなら嬉しい。
「僕らも中継で我慢する訳には……」
「私は用があって行くのですが」
「や。行く」
困惑する私はともかく、きゅっと胸の前で拳を握るローラ嬢を見て、アル殿下が溜息を吐いた。
「二人だけで行くのは、やっぱり心配だなあ」
「……行くなら俺も行こう」
2人の言葉に、私とローラ嬢は顔を見合わせた。
「その、恰好、で?」
ま、恰好は、な。
「お兄さま達ばかり、ずるいですわ!」
ココ姫が不満げに声を上げる。
どうどう、仕方ない。
「とりあえず、服を調達するところから始めましょうか」
時間は有る様で無い。
ここは、1つずつ懸案事項を潰して行くとしよう。
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しんしんと冷える冬のセントラーダ王国。
それでも、雪が降るのはまれだ。
地方によって差はあるものの、王都のあたりでは特に珍しい。
そしてこの『始まりの森』が隣接する港町、グローブタウンのある地方も。
珍しく立て込んだ仕事に追われ、夜になってやっと解放された王子エドは、執務室の扉を叩く、こんこん、という小さなノックの音を聞いた。
入室を許可すると、そこには小さな姫君達。
本日の業務が終了したのを確認すると、姫君の片方、眠り姫のローラは用意していた防寒服を手渡し、手を引いて城の中をさ迷い始めた。
正確には、迷っていたのではなかった。
兄である皇太子アルジャーノンを探していたようである。
小さな姫は兄王子を見つけるとその手を握り、はぐれない様ココ姫と手を繋いだエドが付いて来るのを確認してから、とある部屋へと向かう。
果たしてそこには、小さな魔法陣が敷かれていた。
飛び込んだ先は、クローブタウンの街と郊外とを隔てる防風林の外側。
常ならば森の湖、その湖上に位置する塔に直結する筈の魔法陣だが、恐らく仕様を変更したのだろう。
闇夜の暗い林を抜ける。
まるで深い森の中を彷徨うかの様な錯覚に、小さなココ姫が怯えた様に縋りつく。
そんな姫を庇うように歩き続け、果たして鬱蒼とした木々の間から見えたものは、そこにある筈の無い小さな村の家々に囲まれた、さほど大きくは無い広場。
それはかつてその場所に存在した、グローブタウンになる以前、村だった頃の姿の再現。
仄明るく照らし出された広場を中心に、村人らしき人々が集まっている。
かすかに漏れ聞こえる音楽と、さざめく様な笑い声。
すでに祭りは始まっていた様だ。
村長がこちらに気付き挨拶を寄越す。
彼によれば、この祭りは婚約者である灰かぶりの仲間達が楽しむだけのものではないのだという。
現在ではその面影の欠片も存在しなくなってしまったこの街の以前の姿をこうして再現する事で、当時住んでいた人々が思い出し、懐かしんで、人々の心に大切にしまい込む手助けとしての役割もあるのだと聞いた。
なるほど、確かにその意義はある。
これほど急激に変化を遂げたのならば、中には戸惑う住人もいただろう。
そして過去を大切に想い、懐かしむ住人がいたとしてもおかしくは無い。
過去と現在を繋ぐ、緩衝としての祭りか。
この寒村の状態から、現在の活気あふれる街並みに変化を遂げるまで僅か1年、いや半年程だったか。
改めて自身の婚約者、そしてその仲間達の凄さに感服する。
見覚えのある双子の小さな姉妹がこちらに気づいた。
記憶を辿ればつい最近、あの混沌としたハロウィンの祭りで会った双子の少女達であった。
婚約者殿は「招待した」と言っていたが。
彼女らに手をひかれ、集いの中心、その輪へ向う。
ふと中心を見ると、郷土の衣装を身に纏った小さな少女が、中央へ進み出たところだった。
かすかな音が、次第にはっきり聞こえて来る。
どうやら何かの出し物らしい。
踊るような、飛び跳ねるようなリズム音に、期待が高まる。
それは賑やかでも派手でもなかったが、しかし徐々に気分を高揚させてくる。
視線を下げて隣のココ姫の様子を伺えば、騒ぎこそしないものの、祭りの灯りに照らされたその表情は十分に期待に満ち、興奮しているのが見て取れた。
音の変化と共に、淡い光の粒が地面から湧き上がって来る。
それはこの地方では滅多にお目にかかれない雪に似ていて、小さな子供達がきゃあっと歓声を上げて追いかけ始めた。
一緒になって走りだしそうだったココ姫を、手を握る事で窘める。
ここで手を離したら何処へ行ってしまうか分からないな、と心中で苦笑らしきものを零して。
視界の斜め前方では、眠り姫と兄が何やらこそこそと囁き合っている。
大方、この不思議な出し物について話し合っているのだろう。
低いリズムが加わる。期待で高なる心臓の鼓動の様に。
それと同時に光の粒達も明滅した。
メロディに合わせ、光が点滅する。
少女は軽くステップを踏みながら、くるくると回る様に踊っていた。
手を差し出され、惹かれるように手を伸ばす。
彼女が誘うように歌う。手を引かれるままにエドもまた足を動かす。
宮廷で踊るワルツの様に。
いつの間にか眠り姫と王弟も広場に進み出、同じように踊っていた。
視界の端で、ココ姫が瞳を煌めかせているのが見えた。
小さな少女の体は、不思議と自身に良く馴染む。
そして気付いた。そう、彼女は。
彼女はにっこり笑って嬉しそうに歌い続けた。
僅かな間奏の後、手を放される。
ふと、彼女の踊りが止んだ。そのまま中央に立ち、歌う。
いつの間にか浮かんだ、人の頭ほどもある大きな淡い光の球がゆっくりと明滅する。
まるで人の呼吸と同じように。
ベルなのか鉄琴なのか、金属の澄んだキラキラした音が辺りを包む。
雪に音があるとしたら、こんな音だろうか。
再び弾むような、少し賑やかなリズムが加わる。
それに合わせ、少女が跳ねるようにステップを踏み始めた。
上からも下からも、光の粒であふれる。
明滅する光の粒の洪水。
そしてまた立ち止まり、歌う。何かを伝える様に。
空からシャン、シャン、という鈴の音が降って来た。
空から降りてくる白いものが、雪なのか光なのか、もう分らない。
空を駆ける、何かの動物に曳かせた赤い衣の誰かのソリに、気付いた子供達がわあっと歓声を上げた。
鈴の鳴り響くその音楽は、いつの間にか力強い盛り上がりを見せていた。
何かを訴えるかの様に。
そして柔らかく終わってゆく。
笛の導く優しいメロディ。
それにファンファンと太く優しいホルンの音が続き、最後まで残った鉄琴とベルの澄んだキラキラした音が雪と共に鳴り――――――
そして消えていった。
「エドお兄様!」
演舞が終わり、駆け寄って来たのはココ姫だった。
「素敵でしたわ!綺麗でしたわ!とにかく凄いですの!!」
はしゃぐココ姫をどう宥めるか迷うエドだったが、ふと気付く。
見上げたのは、空。
曇天から白いものが下りて来る。
ああ、本当の雪か。
ココ姫がさらにヒートアップしたのは、言うまでもなかった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
それから数年――――――。
第2王子エドと王子妃―――つまり私―――の間には、後継ぎとなる息子と娘が生まれていた。
最近の2人の楽しみは、夜眠る前のお伽話。
かつては森の魔女と呼ばれ、現在では灰かぶり、あるいは城の悪い魔女と呼ばれる私が語る物語を、ああだこうだ言いながら聞いている内に眠ってしまう事もしばしばで。
話のネタに困る事が無い事だけは、“元の世界がある”という事に感謝しても良いかもしれない。
そんな風にも思う。
そんな冬のある日、いつもの様に子供部屋に足を運ぶと、部屋の中から賑やかな声が聞こえてきた。
『タカ、トラ、バッタ!!』
『チョ~イイネ、サイコー!!』
『オン・ステージッ!!』
なん、だと?
ばたんっ
思わず大きな音を立てて扉を開けると、中にいた娘と息子がこっちを見て驚いていた。
その手には……。
「セディ、その手に持っているのは…?」
「あっ、ははうえ~!あのね、これ、オズのまほうつかいさんからの、“くりすますプレゼント”なんだってー!」
そう言って嬉しそうに息子が見せたのは……いわゆる“黙ると死ぬベルト”
しかもセリフが混ざっている、だと!?
「あのね、あのね、魔法使いさん、今日は『一日さんたくろーす』なんだって!ねえははうえ、サリィも『さんたさん』にもらったの、これ!」
嬉しそうに自慢する息子に触発されたのか、慌てた様子の娘が見せたのは……。
「……妙に大きいけれど、まさかそれ、(一部)界隈では有名な“もうなにもこわくない”のペンダントか!?」
頭が、真っ白になった。
正直倒れるかとさえ思った。
「今すぐ返していらっしゃい!!」
「「え~~~っ!?」」
数日前の寝物語の題材に、もうすぐ行われる聖夜祭の話を選んだ。
その時、元の世界には『サンタクロース』なる不思議な老人がいるという話をしたのだ。
良い子にしてれば2人のところにも来るかもしれないよ、と言ったのが効いたのか、翌日から張り切って良い子にしていた2人の様子を見て、何かあげなきゃダメか?と、掲示板に相談スレを立てた、のだが。
オズが一晩でやってくれやがりましたよ……。
……まさか奴、この時を狙っていたのか?
オズの作る玩具がただの玩具で終わる筈が無い。
ご丁寧に添えられていた取説の通りに試してみたところ、二人は特撮変身ヒーロー(バイクどうするつもりだろう……)と魔法少女(今更言うまでも無い……7人目?7人目なのか!?)に華麗に変身した。
そうなのだ、身長があきらかに伸びてる。というよりこれはむしろ成長している!
急激な成長に痛がる様子は見えないが、これは……。
オズのやつっっ!!私が作った(元失敗作)『ドロップ』の効果、物に付与出来る魔法を開発したな!?
この分では使える能力も“本編”準拠だろう。たぶん、きっと、めいびー。
「きっくー?」
「てろひなーれ!」
きゃらきゃらとはしゃぐ二人は、それはとてもとても可愛らしかったのだけれど。
だからって、こんな危険物、そのまま放置して置く訳にはいかない!!(使命感)
子供向けらしく、サリィのペンダントはわざわざ魔法を使ってまで野球のボールくらいの大きさにしてあった。
取説によれば、ペンダントトップに掛っている拡大魔法は年々効果が無くなるらしく、彼女が14歳になる頃には、本物と同じ大きさまで小さくなる予定なのだそうだ。
……これが、才能の無駄遣いと言うヤツかっ!!
もしくは“暇を持て余した変態錬金術師の遊び”とでも言おうか。
……ここの所平和だったから、な。うん、完全に油断していた。
とりあえず、後で必ず、〆る。
その後2人の子供達は、騒ぎを聞きつけた父親にそれぞれの新しい宝物を誇らしげに自慢し、絶対返品するという私の主張に賛同しない様訴えた。
……こいつら“小さくて可愛い”という自分達の武器を熟知してやがる…。
結局2人の言い分をエドが認めてしまった為、最終的に私は2人に「正しい判断力とそれを養う為に様々な勉強をし、自分の手足の様に使いこなす為の訓練をきちんとしなさい」と、自分を棚に上げた説教をする羽目になったのであった。
うう、周りのメイドや近衛騎士達の視線が生暖かい。
……ええい笑うな!こっちは真剣なんだ!
ってこらー!笑いながら人の過去をほじくるな!
私が魔法少女などやるハメになったのは、誰のせいかっ!!
だから今すぐそれやめろ黒歴史――――――!!




