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童話トリップ!  作者: 深月 涼
第6章 不思議の国のアリス
48/53

【祝!】眠り姫復活&ディオス戦勝祝賀大舞踏会実況part1【大団円!】

 『神』が消えた。

 その知らせは瞬く間に世界中を駆け巡った。

 

 大国である3国の首脳は直ちに顔を突き合わせ、今後の対応策について話し合う。

 都市部に大きな被害は無く、さりとて無傷とは行かなかった様。

 戦闘に加わった、あるいは負傷した者には十分な休養と補償金が与えられ、この件の引き鉄となった者達関しては、今後の身の振り方について検討するとの通達がなされた。

 それはセントラーダ第1王子にして皇太子であるアルジャーノン殿下であろうと例外では無く、とりあえずの暫定処置として謹慎が言い渡された……のだが。

「はい、あーん」

「あーーーん」

「フフッ、おいしい?」

「ん。……アル、も」

「そう?じゃあ、あーん」

「…………」

 隣のイスからその光景を見やる。

 反省なぞ、全然まったくしとらんじゃないか、このロリコン皇太子めが。

 いつしかこびりついてしまった、魔女としての思考でそう思う。

 というか、それに動じず平然と受け入れている眠り姫の思考こそが謎だ。

 そもそも、だ。私はいつになったらセントラーダの城を出て家に帰れるのだろうか……。

 あの戦闘で負った傷も、意識を保つのが困難な程に減った魔力も、とっくのとうに回復し終えているのだが……。

「…………」

 ラブラブ熱々カップルの逆隣りからは、これまた焦げそうな程に熱い熱視線が降って来ている。

 正直その原因が誰なのかも、その意味自体についても考えたくはない。

「ふー、どれだけ忙しくっても1日の〆のご飯が美味しいとホッとするね。あ、料理人さん、これおかわり」

「あいニャ」

 斜め前で平然と飯を食らっているねこの王が恨めしいよ、まったく。


 とはいえ、戦闘が終わった前線組と違い、ねこの王ら都市部残留組はここからが本番だ。

 何せ、私も含め身動きの出来ない連中に代わって各国首脳部と会談し、改めて自分達の立場を強固な物にすべく精力的に働いてくれているのだから。


 こうして、上がひと段落付き、我々や被害にあった者らの傷も癒えた頃、セントラーダ王宮で戦勝祝賀会が催される事になった。

 ……例によって“舞踏会(ダンパ)”である。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

124:ぬこの王さま

    ふいーっ


    ようやくひと段落って感じかな


125:浮かれ小坊主

    おっつー☆


126:腐乱12の犬

    おっつでーっす☆


127:アナスタシアは雪の女王

    お主ら……


    少しは茶化さんと

    素直に労ったらどうじゃ?


128:ぬこの王さま

    あ、いいのいいの


    こいつらのこれは最上級の讃辞と労いだって

    ちゃーんと分かってるからさ


129:仮面の槍者青ひげ

    まあ本人がそう言うのなら構わんが


    ところで会議の方はどうだ?


130:ぬこの王さま

    取り敢えずの暫定処置だけど

    俺らの攻撃魔法は当面全面的に禁止な


131:浮かれ小坊主

    ええーーーーーーっ!?


132:エメラルドの都の魔法使い

    ええーーーーーーっ!?



133:じゅげむっ!!

    ええーーーーーーっ!?


134:妖精王

    お前ら……


135:7人の狩人 3番目

    まああれだ


    憂さを晴らすなら

    魔物相手にしとけって言うこったな


136:死者の王

    なるほど


137:白鳥の湖の悪い魔法使い

    おっけー(真顔)


138:美髯聖女

    …………(頭痛が痛い)


139:7人の狩人 5番目

    しかし『いつまでも使えない』というだけでは

    以前と変わらない


    恒常的な抑止力となりうるかは兎も角として

    将来的には法の整備もある程度必要だろうな


140:おおかみさん@本日の晩餐は肉また肉!

    いっそ世界そのものを覆い尽くす魔法とかあればいいんじゃね?

    その中では攻撃魔法が制限されるとかよ


141:魔弾の射手

    そこはよくあるRPGみたいに

    街限定にしといたらどないなん?

    まるっと使えなくなんのは困るわ


    悪人にだけ限定解除はお約束っちゅーやつや


142:世界図書館管理人

    街の人たちも魔法については不慣れですし

    いっそ学校を作ってみてはどうでしょう?

    分からないから怖いのであれば

    分かってしまえば怖くはないという事ですもの


    それに

    何事においても学ぶ場というのは大切ですし


143:ジャックと豆の木

    それっていわゆる冒険者学校ってやつか?


144:羽帽子の騎士

    将来はともかく

    魔法を扱う上での心構えや最低限の技術など

    教える場所があるのはいいかもしれませんね


145:ぬこの王さま

    そういやそこら辺が原因で魔法禁止になったんだっけ

    

    学校ねえ……どっかに良い敷地あったかな?やっぱ王都?


146:おおかみさん@氷菓子うめえ

    とりあえず魔物と悪人に関しては一切手加減なしで噛み付け

    って事だな


147:仮面の槍者青ひげ

    そこら辺は各国と足並みを揃える必要もあるだろうが

    簡単にいえばそういう事だな


148:エメラルドの都の魔法使い

    各国と連携といえばさ

    新しい陸地が次々と浮上してるって話聞いてる?

    特に東西海

    調査兵団派遣するなら俺も噛むんだけど


149:軍用ブーツを履いたぬこ騎士

    エメマンは巨人とでも戦うつもりかにゃ(呆)


    やっぱり原因は神様がいなくなったせいにゃ?


150:灰かぶり

    タイミング的にそうとしか考えられないね

    押え付けていたのが上がって来たとも考えられるが……


151:幸福の王子

    本人がいなくなってしまいましたからね

    追い出したのは我々ですが……(^^;)


152:ぬこの王さま

    当然協力要請はあると思うからそこは心配せんでいいぞー


    というか問題は

    それを俺達に押し付ける流れがあるって事なんだが


153:白雪姫

    まあ

    それはつまりわたくしたちが

    捨石にされるかもしれないという事ですの?


154:7人の狩人 4番目

    それも込みで囲い込み作戦


    って事かな


    城には今眠り姫もいるしね


155:眠り姫

    ???

    わたし?


156:勇ましいチビの仕立て屋

    それって向こうが姫のこと

    人質とったどーって思ってるって事?


    そんなの絶対許せないよ!


157:ロバ耳王

    しかし

    ある意味当然ともいえる動きではあるな


158:赤薔薇白薔薇 ブラッティローズ

    郷に入れば郷に従えとは言うけれど

    これは……(困惑)


159:親指姫

    またケンカになってしまうですか……?

    それはなんだか悲しいのです

    せっかく仲良くなれそうだったのに……


160:ぬこの王さま

    まあまあ

    何も全面的に従えとか降伏しろとか

    そういう話にはまだなってないんだし

    いくらでもやりようはあるっしょ


161:裸の王様

    一度はっきりと意思を示す必要があるだろうな


162:浮かれ小坊主

    半裸神降誕祭キタ━━━ヽ(゜∀゜)ノ━( ゜∀)ノ━(  ゜)ノ━ヽ(  )ノ━ヽ(゜  )━ヽ(∀゜ )ノ━ヽ(゜∀゜)ノ ━━━!!!!


163:おおかみさん@メイン2つ目!さらに肉!

    いやー……

    戦闘はしばらくお腹一杯っすわー……

    

    けっぷ


164:ノロウェイの黒牛

    おいおおかみ

    

    っち

    満喫しやがって


165:赤い靴

    おおかみさんはちゃんと頑張ったからねー

    

    意思表示ならいっそ

    目の前から全力で逃げ出すとかどうかな


    分かりやすくシンプルに

    あなたには従わない(キリッ)

    みたいな(XD)


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 がやがやとざわめく会場の中、私はエドやオズらと共に開会を待っていた。

「きれい。……夢みたいね」

「僕にとっては、君が隣にいる事の方が夢の様さ」

 そばにいる皇太子アルジャーノンと、その傍で目を輝かせている可憐な姫……眠り姫が、いつの間にか2人だけの世界を作り上げている。

 ……ここまで来たらもういっそ心底どうだって良いが、皇太子のロリ疑惑はどうやら真性の様だな。

 ……この世界にまともな王子はおらんのかと小一時間ほど討論したい。

「王家も太っ腹じゃのう」

「うめー!この飯うめー!」

「お前は少し、自重しろっ!!」

「貴方方?これ以上見苦しい真似をなさる様でしたら……分かってらっしゃいますよね?」

「「イエス、アイ、マム!!」」

 少し離れた場所では、雪の女王が涼しげに扇を仰ぎ、その近くでは狩人達や白雪姫が卓を囲んでいる。

 会場を見渡せば、華やかで賑やかな白鳥勢に少々騒がしげな青ひげ孤児院一行、パックや妖精王達妖精郷の面々に、珍しくも人間バージョンのカエルの王子と、その周りをはしゃぐ様に飛び回る親指姫。

 さらには、慣れない場所柄かきょときょとと周りを見回すマッチ売りに、見守っているらしい、いつもの騎士の姿もある。

 訪問者(ビジター)達も強制ではないとはいえ、今回ばかりは全面参加が推奨されているだけあり、何時にも増して人が多い。

 王都の方でも同時にイベントが開催されている様で、会場の各所に設置された魔法スクリーンには浮かれ騒ぐ民草の様子が映し……って魔法少女(アイドル)達が勝手に握手会やってる様だが、あれはきちんと許可を取ったのだろうか……。


「まー、突然泥棒が乱入して来た時は、何が起こったか一瞬分からんかったぜ」

 会場の様子をぼんやり見つめていたら、隣のオズが突然話出した。

 ああ、ねこの王が来たのか。

「あれね、掲示板の方で一応宣言はあったのよ。……止める間も無かったけど」

「あいつら一度動くと、とんでもないスピードで事を成しちゃうからな」

「泥棒はスピーディに、スマートに、そしてスタイリッシュに、が身上だからな」

 まあ王泥棒3rdの本質は、盗みは盗みでも怪盗の方だからな。

 手に持ったグラスを傾けつつ、オズとねこの王の会話を聞きながら、そう思う。

「でもよ、何であれ、いきなり磔刑(たっけい)なんだ?」

「それは私も気になるな」

 泥棒と磔刑。犯罪者が裁かれるという意味ならば関係あるのだろうが、どうもイメージとして直接結び付かなかった。

「それはボクが解説してあげるよ!ハハッ」

 足元から聞こえて来たのは小さなネズミの声。

 その場にいた全員の視線が床の1点に集中する。

 黒みがかった灰色の体に赤い半ズボンをはいた、でっぷり肥った2足歩行の目つきの悪い小さなネズミは、えへん、と胸と腹を張った。

「どうやらね、『泥棒の王さま』(から)『全ての犯罪の王』(から)『犯罪者は処刑』(から)『処刑すなわち架刑』(から)『架刑にかけられた王さま』(から)『イエスキリスト』……っていう解釈みたいだよ!ゴリ押しにも程があるね、ハハッ!」

「「「「…………」」」」

「「???」」

 その場にいた訪問者(ビジター)全員が沈黙した。王子2人は……まあ分からんだろうな。

 よりによって『救世主』を時の為政者目線で『十字架にかけられし犯罪者(の王)』などと解釈するとは。

 まだ『泥棒の神(ヘルメス)』の方が繋がりがあるわ!

 下水道魔王の言った通りだとしか言い様が無い。上手く行ったから良いものの。

「そんな磔の刑から脱出して目的の物を盗み出してこそ、至高の怪盗。そういう事みたいだね、ハハッ」

 そんなゴリ押し理論で神まで拘束する王泥棒……意外に侮れない奴なのかもしれない。


「……各都市部の被害状況はどうだ?」

 オズがやや強引に話題を変える。

 あれ以上突っ込むと、いらない事まで考えた挙句、こっちの精神に傷が付くとでも思ったのかもしれない。

「都市部の損害は、まあ……想定していたよりは軽微で済んだよ。各軍部隊が奮戦してくれていたからね」

 泥棒の件が尾を引いているのだろう、ねこの王が顔を顰めながらそう言った。

 引き継いだのは、なんと皇太子。

「避難等、事前の通達もあって、その後も含めて都市内部での大きな被害、混乱は無し……と言って良いんじゃないかな。特に避難に関しては、かなり詳細な対応指示が出されていたから、こちらとしてもすごく助かったんだよ」

 アル殿下の言っているのは、避難マニュアルの事か。

 ただ逃げろという指示だけでは、暴動や混乱が起こる可能性もあったからな。

 役に立ったなら良い。

「『森』は多少燃えたが、本拠への損害はほぼ無しだそうだな」

「多、少……?」

 マッチ売りが暴走しかけたのを『多少』で済ませる気か、お前(エド)

「ま、あの様子見れば大丈夫そうだけどね」

 その場にいた全員が、またもや視線を1点に集中させる。

 まだ早いというに、視線の先には王子もかくやと言わんばかりの凛々しい騎士に手を取られ、くるりくるりと回るマッチ売りの姿があった。

 彼女の顔に浮かぶ動揺と驚きは、騎士の姿を見ると、途端に笑顔へと変わる。

 ……どうやら、こちらでもカップル成立の様だ。

「だけど、『神』のいた深奥部分は完全に消えた。今やあの森は『やや魔力の多く残る』ただの森にすぎない」

「だからって、魔物が完全に消えた、って訳ではなさそうだけどね」

 ディオスとの戦いの終わりに、決戦舞台ごと呪われた深奥部分が消えた。

 文字通りの消滅だった。

 それでも、世界にはまだ魔物が多数存在しているらしい。

 消え損ねた残骸なのか、あるいはまた新たに出現したのか。

 証人による目撃数が多くない現状、判断はつきかねた。

 願わくばその魔物はディオスの残滓であり、いずれ消え行くものである事を祈るばかりである。






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