【この手で開け!】ディオスクロイ討伐スレ2015戦目【自由への扉】
4:親指姫
歌が聞こえるのです
これは……魔法の歌でしょうか?
5:世界図書館管理人
どうやら灰かぶりさんは
自己を取り戻したようですね
6:王泥棒3rd
いやいや~ひ~どい目にあったぜぇ
この借りはきっちりお返ししなきゃだなあ
7:白鳥の湖の悪い魔法使い
……何企んでんだよ?(真顔)
8:王泥棒3rd
なあに
お~れの取って置きを披露せずに終わるのももったいねぇなあ
っとな(凄味)
へ~い
そこの運転手さんよぉ
意識はあるか~い?
9:ドラゴンライダーエルマー
おかげさまで!(ヤケ)
お仕事なら運ぶよ!
10:王泥棒3rd
俺を決戦場まで連れて行っちゃくれねぇかい?
11:ドラゴンライダーエルマー
おk!
このご時世だからね
お代はツケにしといてあげるよ!
12:王泥棒3rd
おほー!そいつぁ助かるぜぇ!
13:ぬこの王さま
ちょっと待った
お前ら行って何する気!?
妙なちょっかい出して引っかき回すのだけは止めろよ!?
14:王泥棒3rd
そいつぁ行ってのお楽しみ
ってなー(笑)
何せこっちは予告状まで出してんだ
なぁんもせずにただ見てるだけ
なんて出来るかよ!(嘲笑)
おいエルマー
わ~かってんだろうな~?
15:ドラゴンライダーエルマー
大丈夫さ泥棒さん!
伊達にライダー名乗ってる訳じゃないんだから!
さてさてそれじゃさっそく!
全速力で最終決戦舞台まで運んじゃうからねー!
しっかりつかまってないと
落としちゃうぞー!
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唸る様な重苦しいコーラスが響き、その僅か1フレーズでオズの顔色が劇的に変化した。
……割と真っ青な方向に。
「聖女さん!全力で結界張って!!射手、裸の王様も行けそうなら撃ち落として!無理だと思ったら全力で引っ込んでて!エドとニンジャ、おおかみはそっから出るな!」
「「初っ端から処刑用BGMうううううううっっ!!?」」
「開幕直葬デストラップキターーーーーー!!」
「処刑、用……??」
「魔力増幅してんだよ!いいからこっち来て身を固めて!“でかいの”が来るぞ!!」
戸惑うエドを伏せさせる様に庇いながらオズが宣言し終えた直後、爆発したコーラスと共に極大の破壊光線が周囲に展開した鏡から発射される。
それを無事防ぎ切ったと思いきや、今度はぴこぴこした音と共に、デスいヘビーな女性ボーカルが力強く……。
「ってうわあああああ!!!」
「こっちくんなあああ!!」
名状しがたきバールのような物を持って暴れ回る魔女……いやJKか。新しい……って私なんだが。
「いつの間に開発しとったんやあ、STRとINT逆転魔法なんて!聞いてへんでぇ!?」
「あ、多分それおおかみの『ランフ○ル・ボール』の時の副産物だわ。いやあ、実用化されてたとは知らなかったなあ。忙しかったから公開すんの後回しにしたかな?」
「元凶おまえやん!!」
「オレかああああああああ!?」
「私みたいにムキムキマッチョにならないだけ、まだマシかしらねえ」
「「たすけてえええ!!」」
……自分でやっといてなんだが、ギャグにしか見えん。
オートで走りながらそう思う。
ちなみに、後ろに憑きっきりの神は、さっきから爆笑しかしていない。
ある意味チャンスなんだが……やはりそうそう簡単に『枷』は外れないか。
「「……」まったく」「同感、デス」
裸の王様とエド、それにニンジャが揃って溜息を吐いた。
それがひと段落したと思えば、お次は数え唄の様な子守唄の様な、一種独特の雰囲気を持った曲が流れる。
優しさの裏に潜む物は、対象を眠りの淵に陥れ、意のままに操る身勝手な意識。
「……っやば、おい、皆無事か!?こいつは精神を混濁させる!気をしっかり持て!」
「……っっ」
「聖女さんっ、ニンジャ!」
ふらつき、膝をつく女性?2人。
「……ゔゔ」
「って王様!?」
「……う、く」
「エド殿下!?」
いかん、王やエドは不味い!
どごん、という鈍くて重くて痛そうな音が響く。
「な、なにしよん!?」
「正気に戻ってくれ、王様!」
「あかん、エド殿下、ふらふらしとるで!?」
本来ならば深い眠りに就かせ、そのまま精神のみ生かす魔法だったが、抵抗が妙な働き方をしたのだろう剣を持ってふらふらしだしたエドに、辺り構わずこぶしを振り下ろし始めた裸の王様。
「こ、こうなったら……!」
「こ、こんなこともあろうかと!」
悲壮な決意をした射手の横から飛び出たのは……、
「電撃ハリセン2刀流!!」
ぴしーん、ばしーん(会心)
「「ハッ」」
オズのツッコミで正気に戻った王様とエドに、おおかみがさらに突っ込みを入れる。
「ハッ、じゃねーよ!!」
「ふう、持ってて良かった状態異常回復アイテム。我ながら会心のツッコミだったぜ……」
まったく、こいつの腹は4次元ポケットかと言われるだけの事はある。
何が飛び出るか分かったものじゃない。
どうでもいいけれど、汗を拭くのは良いが、両手に持っているのがでかいハリセンだと恰好付いてないぞ。
「ぜえ、はあ……」
「あかん、見えた希望が潰えそうや」
「くそ」
「……何だ、便意か?」
「排泄物の話は止めなさいって……それどころじゃないでしょう?あんたたち」
「何か後一手欲しいところだが……」
「困りマシタ……。これではジリー・プーアです」
状況は芳しくない。
未だ体の支配は解ける気配が無く、神の無尽蔵な魔力によって激しい?攻撃に晒され続けた私達は、すっかり疲弊しきっていた。
どうにかしなければ、このまま『積み』だ。
私が使える物といえば、この『意思』1つだけ。
どうにもならない。
そう、思えた。
意思1つ。
……そういえば1つだけ、使える『詩歌』があったな。
静かな始まり。
語りかけるメロディは、先の『詩歌』と同じ。
唯1つ違うのは、その相手が『神』そのものだという事。
「灰かぶり!?お前、何やって……!?」
「ちょっと、どうしたのよ!?」
「何だ!?何が起こるんだ!?」
「説明を!」
「くそ、こいつは……灰かぶりは、『神』に『自ら』を『捧げる』気だ!」
「何!?」
「正確には強制接続。自分を全て捨てて繋がり、強引に神の『心』に侵入する、神降ろしの詩歌だよ!!」
本来の意味としては、その限りではない。
『手続きそのもの』は至って真っ当な物だ。
繋げて、引き出す、その点に関してだけならば。
だが今回の『これ』は、コンピュータやネットワークに『接続』するのとは少々勝手が異なっていた。
何せ相手には意思がある。
意思の無い力を引き出すのでは無い。心無い無機の力と接続するのではない。
そう考えればやはりこれは、『接続』というよりは『侵入行為』に近いのだろう。
「どうする!?止めさせるか!?」
「……いや、様子を見よう」
「エド!?」
「殿下!」
「……そうだな、今の俺たちだと、打つ手が無いのもまた事実だ」
「致し方無し、という事か……」
力無いオズの言葉に、苦汁を飲み込んだ様な顔の裸の王様が続く。
エド、その判断は正しいぞ。
流れ続ける曲は神の力と私を繋げ、私はさらにその力を“魔力循環制御回路陣”へと流し込んで行く。
エドが魔剣に視線を向けた。……どうやら気付いた様だな。
「へえ?そう来る?あはははははははっ、おっもしろーい!さすがは灰かぶりちゃん!そうだよぉ、そうこなくっちゃあ!これだからニンゲンは楽しいんだ……!!」
頭の上から狂った声が聞こえるが、私はもう、構わなかった。
満たされる魔力。
『私』も『空間』も、魔力でぎちぎちに満ちている。
……これなら。
一度は失敗したあの魔法を、私はもう一度展開し始めた。
重苦しい荘厳なオルガンの音。
1度目とは違うBGM。
攻撃の手を止め、固唾を飲んで見守る仲間達。
――――――ここでまた失敗する訳にはいかない。
今度こそ、絶対に……!!
空間の把握、分解と再構築。
対象の選別、確保、拘束。
幾重もの陣が『神』を取り巻いて行く。
何時しか私の衣装は、神に支配された際のあの『制服』ではなく、漆黒の『魔女のドレス』に変化していた。
限界突破した自分でさえも扱った事の無い膨大な魔力量に翻弄され、意識が持って行かれそうになる。
だが。
「灰っ、かぶり……っっ!!!」
ただの空気の流れとは違う、空間の揺れとして巻き起こる暴風に息が出来なくなる中、それでも私を信じてその名を呼んだあの人が、あの人の声だけが、意識を繋いだ。
「『扉』が、開く……!!今だ!王様、エド、聖女さん!お前らも!全員の全力で押し込むぜ!!」
「あいよ!」
「合点承知や!」
「いくわよ!」
「イヤーーーッ!!」
「ふんぬうううううう!!」
射手や王様の弾幕、オズや聖女の魔法に奇跡。そしてエドの魔剣の力で、今までびくともしなかった『神』が耐え切れないという風に、僅かに1歩、後ずさった。
「っく、これは……ちょおーっと不味いかなあ?」
それでも、何処かその声は楽しげで。
少しずつ開いて行く白の『扉』の中は、何も無い真っ暗な空間が口を開けていた。
あたかもそれは、渦を巻く暗黒の、光さえも飲み込むブラックホールの様で。
神の力をちょろまかして作り上げた空間干渉の魔法は、私とネットワークの力のみで作り上げた時の様にただ空間が歪むだけで無く、境としての区分けがきちんと出来ている、よりしっかりしたものだったが、それでも多量の魔力と精神力を必要としていた。
激しくなる音楽に比例する様に、私の腕はぶるぶると震えている。
神もそれなりに本気で抗っているらしい事を、何時しか眼前に突き出し、さらさらと音を立てる袖に包まれた震える腕を見て知った。
だが。
「……ってあれ?これだけ?他にもっと何かないの?……ちょっとぉ、もしかしてこれで終わり?期待外れも良いとこだよ。言っとくけど、この程度じゃぼくは外へは行けないからね?…………ふんー、そう。本当に何もないみたいだねー。……ならもう、いっかな?」
拘束の陣は輝きをさらに増し続けていたが、そんな物は無いとばかり、後ずさった筈の1歩を容易に戻す神に、狂おしく『願う』
『扉』はすでに開き切っている。
後は『神』が1,2歩でも後ろに下がれば。
唯それだけの事が、酷く難しい。
……ああ、後もう少し、もう少しなのに……っ!!
まさにその瞬間、だった。
「『咎人、架刑の王』」
「「!?」」
「なんちゃってな~。いやあ、運転手相変わらずいい仕事すんぜ~。あれでもうちょーっとばかし乗り心地が良けりゃ、文句はねえんだけっどもなあ?」
異次元に繋がる真白き扉の前。
そこには、ひょろ長い緑ジャケットに黄土色コートの胡散臭い男が。
突如現れた十字架に架けられた『神』は、何かを口に出して言う事すら封じられたらしい。
きょときょとと周囲を見回し、天を仰ぐ。
「言ったろ?『お命頂いちゃいます』ってよ?……エルマー!!」
同じ様に空を見上げた王泥棒3rdの視線を追うと、そこには自身の体で半円を描く竜と、その中心から炎を纏って落ちて来る、年若い少年の姿が。
「ら・い・だ・あ・きーーーーーっく!!!」
片足を突き出し、神に向かって降下して来る少年を呆然と見ていた自分達。
いち早く自分を取り戻したのは、オズ。
「灰かぶり、しっかりしろ!『扉』を保てよ!エド!!」
「ああ!!」
阿吽の呼吸、なのだろう。
言われるまでも無いとばかりに、神の力で満たされた“ネットワーク”から魔力を剣に移す。
魔剣に組み込まれたオズの魔法が、汲み上げた魔力を収束し、増幅する。
使い手の身の安全を確保する為、『攻撃魔法無効化』の陣が起動し、後は元から備わっていた機能―――『消滅』と『破壊』……いや『分解』の指令を放出するのみ――――――
「赦光」
エドが振り下ろした魔剣の先、赤い光に包まれ、役目を終えて消え行く扉と共に崩壊する『世界』の中……不思議と『ディオス』は穏やかな顔で微笑んでいた様に思う。
「……おわっ、た?」
閉じ消えた『扉』のあった場所から目を離す事が出来ないままへたり込み、誰かの茫然とした呟きを聞く。
チチ……チチチ……
微かに聞こえるのは小鳥の声?
そう、ここは光溢れる穏やかな森の中。
ああ、そうか。
暗い暗い、何かに見つめ返されている気さえした、あの闇の中の様な深奥は、もう何処にも存在し無い。
ぽかんと口を開けたまま、森の上を見る。
空は、晴れていた。
ジェノサイダー的解決法。
次回よりエピローグです。
れぷれきあ きゅーてぃぱんぷ はいばね りんか
最後のは某歌ロイドpでもある、とある方の曲から。
「オリジナルの製作者自身によって作られたコピー(複製品)」wikiより
です。




