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童話トリップ!  作者: 深月 涼
第6章 不思議の国のアリス
41/53

【ディオス戦だよ!】始まりの森本拠地日報パート1【全員集合!!】

つ りばーしあふ○ろとこる





 割と当然の様な気もするが、あれからすぐ、私とオズは工房に缶詰になる事が決まった。

 特にオズは、眠り姫がいた塔の『とある機能』開放の準備も同時進行しなければならず、近場にあった私の工房(アトリエ)と自身の移動要塞を往復しながら、一部の装備アイテムをはじめとするサポートアイテム全般の制作を担当し、私は私で城の工房を借りて、なおかつ医局関係者を中心にかなりの人手を出して貰いながら、各種薬系アイテムの制作を進める事になった。


 手伝いの中にはエド―――は割にいつもの事なので割愛するとして、ねこの王をはじめとする仲間(ビジター)達、それになんとココ姫までもが含まれており――――――というか皆、何かせずにはいられなかったのか自主的に動いてくれたので、そこは有り難く戦力として徴収させて頂いた。

 流石にココ姫は幼なく、それ相応にお使い止まりではあったが、それでも嬉々として働いてくれたので助かった。

 小さな子が一生懸命頑張る姿を見る事で、一時の癒しになった者も多かっただろうと思う。

 他の人員に関しても最初こそ戸惑われた分進行が遅かったが、それでも人手があるというのはかなりの力になる様で、予定よりも早く細々した……それでいて大量に必要になるアイテムの生産に目途が立つと、次の仕事、次の予定に順次取り掛かって行った。

 特に私の場合は、空間から取っ掛かりを見つけ次元に干渉する、という方向性で進めている例の切り札的魔法の準備があったし、またオズも、例の魔剣の件(……)について最終調整に入るという事で忙しくしている様だった。



 セントラーダ王宮の方では、皇太子アルジャーノンが眠りから目覚めたばかりの『眠り姫』を伴って帰還しており、流れ上、姫はそのまま客人として保護される運びとなった。

 

 アルジャーノン殿下は、あの『邪神』による『宣戦布告』……というか、一方的な滅亡宣言を塔内部で聞いていたらしく、『神』だというだけで盲信し、こちらの事情も一方的に決めつけ、下手を打てば国が2分するやもしれないというところまで害意を持って事に当たった事実を謝罪し、なんとこちらのアイテム制作担当班に人員を寄こしてくれさえもした。

 彼等アル殿下やその配下の魔法管理官らによる『眠り姫救出部隊』が、何故ああもすんなりと姫の眠りを解く事が出来たのかといえば、『神』の『お告げ』により敵対していた筈の『訪問者』である我々の仲間―――ぶっちゃけて言ってしまうとねこの王あたり―――から、所謂『盗聴』の魔法について教えを乞うていたからで、私がエドと共に塔の内部に入った時、その状況をしっかりと記録に取っていたかららしい。

 まあ、ねこの王も、この国に仕えている以上しがらみは多々あるだろうが……。

 しかしまさか、あの時に見られていたとは。そして彼らがここまで手段を選ばないとは、思ってもみなかった。


 貴重になってしまった時間を割き少しだけ手短に話をし、個人としてはお互い利用された者同士、という事で、一時的とはいえ水に流す事にした。

 ……何しろ時間が無かったので。

 思う部分が無い訳では無いが、実際現状それどころではないし、な。

 政治的な部分については、各お大臣様方やねこの王をはじめ、専門家の皆様と当人に放り投げ……いや、お任せする事にして、こちらはこちらで仕事に専念させて頂く。


 森の方でも準備は着々と進み、妖精郷は一時完全封鎖と相成った。

 掲示板を見る限り、近郊の町には『ディオス復活』の速報を読んだ仲間達(ビジター)が続々と集まって来ているらしい。随分と賑やかになって来ている様だ。……こちらの受け皿も、やはり早めにどうにかすべきだろう。


 こうして、日々は少しずつ過ぎ行き、決戦の日は刻一刻と近づいていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~

485:リンゴの木

    今更遅いかもだけどフライングスレ立て乙ー


    数少ない木の連中は無事集団移転完了ですよーっと

    

486:サクラビスイミー

    おつかれさまなんダヨー

    水族関係者も森の湖に集結してるんダヨー

   

489:白鳥の湖の悪い魔法使い

    北勢鳥軍団順調に南に渡り中!

    いつもとちょい時期ずれてるけどな(笑)


    あ、それと報告アリです

    例のあの千匹皮さん

    とうとう例の(監禁)王子さんにとっ捕まりましたんで(真顔)

    

490:ロバ耳王

    なん……だと……?


491:7匹の子ヤギ 時計に隠れた末っ子 チリンモード

    アチャー

    ついに『確保完了だ、このバカ』されちゃったかー

   

492:千匹皮

    そんなドキムネ展開とかじゃないから……(震え声)


    それと子ヤギさん達

    もしかして:全員チリンモード?


493:長靴下の少女P

    全員がチリンチリンしてるとか

    なにそれ怖い

    おおかみさん逃げて!マジ逃げて!!(迫真)

    

    千匹皮ちゃんは別の意味でドキムネしてそうだね



    うん、イキロ



494:ドラゴンライダーエルマー

    いよいよ本拠地が本格始動と聞いて!


    ライダー見☆参☆!!だよ!


495:浮かれ小坊主

    っていうかさー

    この本拠地って何か名前あるのー?

    ないなら付けるのが様式美ってやつじゃないかなー

    とも思うわけなんだけどもそこら辺どうなのかなっ☆かなっ☆


496:ドラゴンライダーエルマー

    どうなんだろ?

    本拠地は本拠地でいいんじゃないの?

    あえて言うなら大本営とか?

    

    まあそんな事より!

    さてさて運び屋としてはこれからが本番なわけで!

    

    輝く物はイミテーションブルーから

    行き着くところは神の御許まで

    何でもかんでもどこまででも運んじゃうよー!


497:王泥棒3rd

    なら俺なら


    (神の)お命、貰っちゃいます


    ってかぁー?(にやりっ☆)


498:スズの兵隊

    ずい分と大きく出たな


499:熊皮コートの男

    無茶シヤガッテ…(aa略)


500:鍵おばあちゃん

    そうだよ

    自分の命を粗末にするもんじゃない

    

    無理だと思ったらいつだって帰って来て良いんだからね


501:ちびクロ

    おばあちゃんやさしい(つД`)ホロリ

    

    ちなみに当方サウバーク荒野在住だけど

    何かあっても怖いから街中に避難する事にしたよ


502:コンとDEポン Mr.コン

    いいんじゃないかな

    無理しても良い事無いし

    自分の命が一番大事是真理ってね


    森の動物メンバーもほぼ全員避難しに

    湖に集まって来てるよ



    ってそれはともかく

    灰かぶりさんキター!!


    いよいよ変形開始だー!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「A~~~A~~A~~A~~~A~A~A~~A~~A~~A~~~A~~~……」


 腹の底から声を出し謳い上げ、ネットワークと接続して魔力を汲み上げ、塔へと流し込む。

 集まった仲間達の目の前で、塔の地下から青く輝く光が移動し、眠り姫の部屋があったと思しき場所まで到達して停止すると、ヴ……という低い振動が地面を微かに揺らした。

「『(ザ・タワー)』城塞モード変形機構、グランド・オーーープンッ!」

 オズの言葉に合わせ、塔のあちこちから青い―――地下から眠り姫の間に移動し安置されたイミテーションブルーの光が溢れ出し、いくつもの壁が突き出し始め、やがてそれらが組み変えられて行く。

「おお……」

「これは……」

「出た出た」

「いよいよだな」

 王子や大臣など現地住民―――所謂在来者(ホステイツ)の代表視察団が感嘆の声を漏らす一方で、ウキウキとした、いささか不謹慎と取れなくもない軽い調子の―――――その実、決意とやる気に満ちた声を出したのは、我らが仲間達(ビジター)


 やがて塔は、歌の終わりと共に、その姿を完全に顕わにする。

 今までの隠されていた、資格ある見るべき者しか見えない霞の塔ではなく、その下に広がる湖の半分を覆い尽くす『湖城要塞』として。

「よおおおおおっし、やるぜぇ、みんなああああ!!」

「「「おおおおおおおおおおっっっ!!!」」」

 誰かのあげた野太い気勢に、その場にいた全員が賛同の応えを返した。



 変形……というか再構築されたばかりの、今までの塔の外壁部分は何処へ消えたと言いたくなる様な青白い外観の、覗き込めば顔が写り込む位に磨かれた石壁で構成されている湖上の城塞に、集った皆で入った後、さっそく部屋の割り振りなどが行われる。

 自室や風呂に洗面、また工房に割り当てられた部屋などを確認してから、私は城の上層にある会議室に向かった。

 そこにはすでに、主要なメンバーが顔を連ねていた。

「皆、よく集まってくれた」

「おつかれだったね」

「とりあえずは、ここまで順調そうだな」

「みんなの顔が見れてうれしい。……元気そうで、よかった」

「安心したかい?それならば良かった。だが、だからといって君が今ここであまり無理をしてはいけないよ?そこは分かっているよね?姫」

 まず最初に口を開いたのは、エドとねこの王。

 そしてオズが続き、目覚めたばかりの眠り姫が顔をほころばせ……それにそっと寄り添ったのは、付き添いという名目で来ているアルジャーノン皇太子殿下。


「いよいよ始まるのだな。……くくく、腕が鳴るわ」

「お主の場合、鳴るのは腕ではなく槍の方であろうに?ほれ、今にも血に飢えてカタカタと言いそうではないか」

「まあ、うふふ。言い得て妙、というものですわね。でもそういう女王様こそ、今にも吹雪きそうな不穏な空気を醸し出していらっしゃいましてよ?」

「アンタの方からは毒が滴り落ちてて、今にも沼地になりそうな気がするけどな」

「あら、じゃあ『なでしこ』ちゃんを植えたら、とっても素敵なハーブに進化しそうね」

「……それ抜くの俺じゃないですか、やーだー」

 一種独特の空気を発生させている一群は、サウバーク代表の青ひげに、ノーディス方面代表の雪の女王、そして白雪姫におおかみと『美女と野獣』の美女(ベル)


「雑談はそれくらいにしとき。ええかげんにせんと、話進まんがな」

「あらぁ、良いじゃないのよぅ。こんな風におしゃべりしていられるのだって、後ちょっとなんだからぁン」

 窘めたロビンフッドに、宥めたのはアンデット代表の美髯聖女。

「そうそう、こうやって、大決戦の前に無駄に緊張しないって分かっただけでも良かったじゃん!」

 聖女の発言を許可と取り、さっそく騒ぎ始めたのは、勝手に参加して来た浮かれ小坊主。

「はあ、お前がそれを言うか」

「まったくだ、小坊主。お前、本来なら指示待ちの方なんだからな?あまり騒ぎを大きくしてくれるなよ?な?」

 溜息を吐く保護者……本来ならこちらの方が妖精郷代表の筈の妖精王に、じゅげむっ!

「何、今さら深刻ぶった所でどうかなる訳でも無い。……さて!程よく緊張が解けたところで、作戦会議を始めようぞ!」

 ……そして最後に半裸神―――裸の王様が、周囲の顔を見渡して、議会の開幕を告げた。


「さて、ではこれよりここ『湖上の要塞』を『本拠地』とし、『世界の神』ディオスクロイ討伐についての会議を行う!」

 恐らくは態となのだろう、殊更に明るくねこの王が仕切り直す。

「せんせー!『本拠地』に名前は付けないんですかー?」

 ……仕切り直された筈だが。小坊主ェ。

 王子達や眠り姫がきょとんとする中、周囲は皆苦笑している。

「あら、それは当然『梁山泊』でしょ?」

 そんな中、ただ1人笑いもせずに直で言い返したのは、自称『世界図書館管理人』眼鏡の理知的な風貌が印象的な『美女と野獣』の美女(ベル)だった。

「先攻突入部隊の予定人数は煩悩の数だと聞いているわ。丁度良いんじゃなくて?」

「流石は図書館の主。情報が早いね」

「ふふ、これくらいはね。そういう事でよろしいかしら?小坊主クン?」

「おっけー。ま、モデルの外観で推して知るべしだったね☆ミ」

「ふふ、あんまり言ってしまうと消されちゃうわよ?」

「わあこわーい」(棒)

「おーいそこ、そろそろ戻って来ーい」

 おおかみの呼びかけで、改めて場が引き締まった。


「サウバークの方は、領主代行を置いたり『上』に許可を貰うのに少々手間取ったが、どうにか希望者全員こちらに来る事が出来た。向こうの守備は『大空舞鯨』殿が空から監視と空爆を担い、地上は『創世のコヨーテ』を中心とした部隊を編成し担当する。そして『白黒カラス』を中心とした鳥部隊がそれぞれを繋ぎ、連携を取り合うという手筈になっている」

 口火を切ったのは青ひげ。

 彼の言うサウバークの上というと……“あの”クセ者の王か。

 また難癖付けられて、無理難題押し付けられていなければ良いが。

「ノーディス公国の方は……まあ、何じゃな、人身御供という悲しい犠牲はあった物の、概ね予定通りに皆南下出来ておる」

「人身御供、だと?」

「それは穏やかじゃないね」

 そっと目を逸らした雪の女王の言葉に、2人の王子が眉を顰めた。

「あー、僕分かっちゃったかも」

「「「…………」」」「あらあら」

 掲示板を見ている(ビジター)は大体の事情を掴んでいる様だが……そうか、あれは人身御供だったのか……。

「問題無いじゃろ、その人身御供こそが最大の戦力となり得るのじゃからな。それに熊共もおる。そう簡単に侵攻は許さんよ」

 そういえば、ノーディスは熊達の一大生息地だったな。

 戦力としてこちらに来ているのも当然いるだろうが……例えばホッキョクグマ(むーみー)などの連中はその生態からして無理に南下せず、そのまま向こうに留まっている筈だ。

 ……むーみーで思い出したが、あちらには青だかピンクだかのカバがいた筈だな。うむ、問題あるまい(投)


「よし、各地域の守備は、ひとまずそれで行けそうだな。ちなみにここ、セントラーダ各主要都市方面の守備だが、各都市についてはそれぞれ王宮騎士団から分団を配備。その他有志の仲間がサポで入る事になっている。俺や眠り姫は、抜けた騎士団の穴埋めも兼ねて王宮の守護。それと後、下水道魔王の一派だが、こちらも王城に本部を置き、そこから在来者(ホステイツ)訪問者(ビジター)関係無しに、各方面へ情報を流す事になった。で……一番重要な最終メンバーの選考についてだが……」

 ねこの王のひと言に、その場の空気がぴりっとした物に変わる。

「細かな調整はともかく大雑把なところは、今決めてしまっても構わないと思う」

「必ず入るメンバーは以下の通り。灰かぶり」

 ねこの王の進行に合わせ、オズが名を呼んだ。

「はいよ」

「それと、エドワード王子殿下」

「ああ」

「それと俺、ね」

 くるりと見回すが、特に誰も反応しない。

「順当、だねっ」

 皆、小坊主の言う通りだと思っているのだろう。

 私もオズも虎の子の魔法があるし、王子には魔剣を持たせる話があるからな。


「護りについては、守備(物理)担当を裸の王様に」

「うむ、任せよ」

「魔法方面の結界担当を『憂悶聖女』にお願いする方向で」

「あらん、アタシでいいのん?」

 少し意外そうな顔をした聖女に、ねこの王が苦笑する。

「本来なら鉄壁の守りを誇るラプンツェルさんの名前が、真っ先にあがる所なんだけど、ほら、彼女……」

「あぁ……なるほどねぇん」

 ラプンツェルは現在2児の母。

 いかにその才が惜しくとも、流石に幼子2人抱えた母親に、命を賭けた最終決戦場まで来て欲しいとは言い難い。

 無論、そういう事を言っている状況で無いのも分かってはいるし、恐らく彼女本人からも出陣の要望は出て来ているのだろう。

 だがそれでも、現状で2番、3番の手が有力なのは、彼女の夫である『ジャックと豆の木』のジャックが止めたからだと察せられた。

 言葉を濁したねこの王に、聖女も事情を把握した様だ。

「そういう事なら仕方ないわねぇ。いいわよぉ、2番だろうと3番だろうと、この美髯に懸けて、目いっぱい全力でやってやろうじゃないのぉ。うふふ~、聖女の名は、伊達じゃないのよん❤」

 そう言って片目を瞑る聖女には、妙な凄味があった。

「アハハ、聖女さんったら、すっごいやる気満々じゃん~!でもさあ、聖女さんってばラプンツェルさんに負けず劣らず鉄壁の魔法防御力にー、“祈り”で回復まで出来ちゃうんだよね~。これで2番だの3番だのなんて言えないって!」

 小坊主の言う通りだ。

 実際、ラプンツェル程の広域守護こそないものの、その祈りの効果は聖女の名を冠するだけの事はあり、非常に頼もしい。

「共に力を合わせようぞ」

「ええ、よろしくねぇん、パートナーさん❤」

 半裸神と聖女ががっちり握手を交わす。

 それだけで、後ろは気にしなくてもいいのだな、と安心出来た。


「それから、青ひげ、赤い靴、マッチ売りの少女あたりで、深奥へ至る道での露払い役をお願いしたい」

「……まあ、仕方ないだろうな」

「フレンドリ・ファイヤが怖いからねー」

 ねこの王が言うと、じゅげむっ!とオズが苦笑した。

 確かにその辺りは暴走癖(バーサーカーモード)が怖いからな。

「広域殲滅ならわたくしや、雪の女王様もですわね。護衛も兼ねて狩人達も参加させますから、ご安心下さいな」

「うむ」

「それなら……そうねぇ、死者の王にも声を掛けておくわねん」

 白雪姫の言葉に雪の女王が鷹揚に頷く。

 一方で、少々不本意そうな表情で言ったのは聖女。それほどに頼み込むのが嫌か。

「……で、あるならば、アースクライドにも参加させるべきだろうな」

「んー、マッチ売り嬢、って確かアースクライドに見張らせてた子で……化け物呼んじゃった子だよね?……そうだね、安定して彼女を運用する事を考えたなら、彼が傍にいた方が良さそうだ。……国側としても、誰か1人くらいは情報面や作戦面といった点で“向こう”に居て欲しい所だし」

 エドとアル殿下は、顔を見合わせ相談していた。

 少々気になる内容ではあるが、こちらとしても腕の立つのが参加してくれるというのなら心強いというもの。

 否やという理由は無かった。


「護衛と遊撃、ついでにヘイト管理もしてくれる担当は―――」

「はーいはいはーい!」

「ほいなー」

 ねこの王が顔を見渡した瞬間には、すでに手を挙げていたおおかみと射手。

 恐らくは、この2人も最終パーティーに参加する事になるのだろう。

 美女が呆れた様に溜息を吐いていた。

「妖精2人は、森の住人達を中心に防衛線を築いて。魔物は絶対森の外に出さない様にしてね」

「了解っ!!まーかせてっ!」

「心得たぞ」

 妖精王と小坊主が力強く頷く。

「美女さんは本拠……『梁山泊』でナビ兼解析をお願いしたい。灰かぶりさんの『魔法の鏡』は使えるよな?」

「ええ勿論。……私も魔女の端くれですもの」

「あの……わたし……」

 美女がこくんと頷いた横から、眠り姫が小さな声で遠慮がちに何か言いかけたが、そこで何故かアルジャーノン殿下が彼女の小さな肩を大切そうにそっと抱いた。

「君はいいんだよ。大丈夫、任せておいて。皆で……いや僕が、こんどこそちゃんと、君の事を守る。……守って見せるから」

「でも……」

 ……ん?何だ?何なんだこの空気は。

 いつの間に“そういう”空気になった。

 眠り姫はあれか、刷り込みとかインプリンティングとかいう奴なのか?

 そしてアルジャーノン殿下は、助けた者の義務とかではないのか。

 ……本当にそれでいいのか?年齢差を考えてもみろ。立派なろr「灰かぶりさん?考えたら負けですわ」そうか。

「あー、眠り姫ちゃんは、さっきも言った様に俺達と一緒にお城の防衛。おk?」

「ん、がんばる」

 あのねこの王でさえ、生温い表情になっていた。

 アルジャーノン殿下はまだ何か言っていたけれど、それをまともに聞こうという人間は、この中にはもう居なかった。






『在来者』は造語。

元々は国、州を意味する『ステイツ』と、ビジターに対する対語(候補)の『ホスト』を足した物。

より直接的な言葉でいえば、ここは『オルダー』あるいは『エルダー』となるのですが、耳障りの悪くない方の言葉を選んだ模様です。




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