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童話トリップ!  作者: 深月 涼
第5章 眠り姫
36/53

【魔改造】セントラーダ王宮ニュー速VIPスレ第5城目【ハジマタ】

文字通りのVIP専用スレです。

彼等に対してVIPPERとか言っちゃうと、多分制裁が下る(笑)




「今日のこれからは、何か予定はありますか?」

「いえ、本日は特に御座いません。どうぞご自由にお過ごし下さいます様、仰せ付かっております。並びに『充実した1日を送る事を願う』とも」

「……それはどういう……嫌味か?」

 専属のメイドにドレスを着付けて貰い、いつもの様に王家の方々と顔を合わせつつ朝食をとった後、ようやっと訪れた自由時間。

 城に連れ込んだ本人……第2王子のエドは、こういう時あまり干渉して来なくなった。……やっとな。

 何か用があるなどすれば時折ふらっとやって来るが、私の部屋に直接来る場合には、きちんと事前に訪問の旨を伝えて来る。

 どうやら例の「自身の仕事をきちんとこなしもしない奴に会う義理は無い」と突っぱねたのが効いている様で、多少はヤツに付いた『正式な婚約発表が間近に迫って浮かれたアホ男』という恥ずかしいレッテルを剥がすのに役立っている様だ。

 ……逆に『愛しい人に説教され(此処が重要らしい)例え相手が恋人であろうとも、きちんと礼節を弁える様になった』だとか、いらん噂が立っている様ではあるが。

 ……本当に心底いらん。


 さて、では本当に何をしても良いのなら、と予定を考える。

 行き先が自由ならば、行きたいと思う場所は複数。

 実験や講義、何より調合を行う為の工房や、人脈作りの為に何処其処へ足を運ぶのも良い。あるいは興味深く重要な書が充実している図書館も捨てがたい。

 だが……そうだな。

 ふと思い出して顔を緩める。


 ここ最近になって、毎日の様に通う場所が出来た。

 それが、中庭にある鳥籠の様な形をした温室庭園だった。

 中には様々な植物が植えられており……新鮮さが重要となるフレッシュハーブの類をはじめ、私の持って来た一部の苗もここに置かせて貰っている。

 そういった事もあり、ほとんど日参という形で訪れているのだ。

 もちろんそれだけでは無い。

 それなりの広さを誇るこの場所には、見る人の為の休める空間があり……件のハーブの管理も兼ね、ちょちょいと手を加えさせて頂いた。……空間魔法でな。

 中庭の中の更に限られた空間、といえど、広いせいか、最初の利用者は私だけだった筈が……気が付けば「ここにいたか」と第2王子のエドが(しかも私の居る時を狙ったかの様に、だ)訪れ、ぬこ王が「ねー、暇ならちょっと知恵貸してよー」と、何がしかの案件を持ち込む様になり……仕舞いには何処から聞き付けたのか、あの宰相殿の小さな娘―――ココ姫が、私の話が聞きたいと、やって来る様になっていたのである。

「……そういえば、そろそろ時間か」

 小さく首を振って、背後に控えていたメイドに視線を送る。

 それだけで彼女は、この後の予定をある程度察したらしい。優秀なメイドだ。

「いかがいたしました?」

「中庭へ行きます」

「お供いたします」

 彼女との関係は、非常にビジネスライクだ。

 余計な事は言わないし、言わせない。

 それで良いと思っている。

 私は彼女を引き連れ、いつもの庭園、その中心にある鳥籠温室を目指した。


「お早いですね、姫」

「“シンデレラ”さま!」

 私の事を“シンデレラ”と呼んだのは、あのフランス人形の様な可愛らしい姫君、ココ姫だ。

 以前、名前を呼ぶのに“灰かぶり”という名は可愛くない、どうにかならないのかと言われ、『灰かぶり』の別の呼び名を教えたのだ。

 『サンドリヨン』あるいは『シンデレラ』

 そしてどうやらココ姫は『シンデレラ』の方を気に入ったらしく、以来彼女はその名で私を呼ぶのだ。

 もっとも、これは私に与えられた『称号』と少し違う為、呼ばれる度にこそばゆい感覚があって困る。

 ほんの僅かな違和感とでも言おうか。

 公式な場では正式称号『灰かぶり』を名乗る都合と、何より……エドに知られたくなかったので(特に用も無いのに何度も呼ばれて弄られる気がする)ココ姫にはこういった基本2人きりの時でのみ、その呼称を許してある。

 聞き分けの良い子でもあるらしい彼女は、事情を説明すれば直ぐに頷いてくれたのが幸いだ。

 ……もっとも「2人きりの秘密って事なのね!素敵だわ!」と目を輝かせていたのは、果たして聞き分けが良い部類に入るのだろうか……。

 彼女のひた向きな前向きさには、時折脱帽させられる。本当に。


 温室の中にしつらえたティーテーブルに、今は勉強道具が広げられており、彼女の目の前では専属の家庭教師が、やはり同じ様に教本を広げていた。

「お邪魔でなければ、今日もご一緒させて頂きたいのですが?」

 父である宰相殿に言いつかっているのだろう彼は、特に表情を変える事も無く「承知しておりますから」と、こくりと頷く。

 許可を得た私がココ姫の隣に椅子を寄せると、彼女の方からも近くに椅子を寄せて来た。

 目と目が合うと、まるで悪戯がばれた様にはにかむ。

 ……楽しそうで何よりである。


 姫がこれほど私に懐く理由は謎なのだが、少なくともあの舞踏会の事を覚えていて近づいて来たのではなく、本当に、エドという身近な兄分が興味を示したから自身も興味を持った、という事の様だった。

 エドとココ姫は……年齢が離れているので、この表現が適当かどうか分からないが、いわゆる幼馴染の関係にあるらしい。

 こちらに来た当初、メイドとの雑談の中でも、幼い頃から宰相殿が、折に触れ彼女と王子達を引き合わせた為、姫は彼等の事を本当の兄の様に慕っているのだと聞いた。

 それも自身の野望、野心の為ではなく、単純に娘に相応しい嫁入り先として見ていたらしい、というのが真相の様だ。

 現に、可愛い娘の可愛い我が儘の為なら、胡散臭い魔女の元へ通う事も容認するというこの状況。

 どうも宰相殿は、当初抱いていた印象とは逆に、相当な子煩悩であるらしかった。


「うふふっ」

「……どうしました?」

「ココ、お兄様方はいらっしゃったけど、キレイなお姉さまがいたらいいなあって思ってたの!シンデレラさまと一緒にいると、まるで本当のお姉さまが出来たみたい!」

 こんな事を嬉しそうに満面の笑みで言うものだから、本当に参ってしまう。

 ――――――舞踏会の時は、眠くて機嫌が悪かったのか。

 思わず遠くを見たくなった。

「姫さま方?そろそろ話を戻しても宜しいですか?」

「ああ、スミマセン」

「はーい、ごめんなさーい」

 家庭教師としても、部外者が来るのはともかく、それによって教え子が以前より熱心に取り組むのなら、それはそれで良いという方針なのだろう。

 どうも話を聞く限り、この姫、かなりのお転婆さんの様だしな。


 こうして始まったのは、この国の歴史の授業。

 歴史は過去から始まり、関連する現在の事情についても言及する事がある。

 行ったり来たりする歴史の波は、一通りの事を知っていると思っていた私にとっても、実に興味深い講義となった。


 しばらくそんな風に、彼女の授業に付き合った。

 融通の効く教師であるらしく、完全な雑談……は流石にダメだろうが、学習内容に関する質問や意見などを話し合う分には咎められたりする事も無く、そんな彼らとの時間は、私にとっても存外楽しい時間だった事は確かだ。

 だが恐らく、彼もまた、ただの教師ではあるまい。

 私に関して直接何かを口に出して言う事は無いが、その見聞きした内容は、宰相殿や関係機関に伝えられているのだろうと思う。

 私が何か“愉快な事”でも言おうものなら、それをネタに突かれるかもしれない。

 とはいえ、そもそもこちらが油断をしなければ良いだけの話ではある。

 そうして、キリの良い所で休憩を、といったタイミングで、とある客人がやって来た。

「や、勉強頑張ってる?ココ姫」

「ねこの王さま!もちろんだわ!」

『ぬこの王さま』こと『ねこの王』である。

 それにしても、彼女の交友関係はどうなっているのだろうか。

 宰相は我々の扱いには慎重派の様だが、親の敵味方関係無く交友を結んで行く奔放な娘に対して、何か思う所は無いのだろうか?

 それに、ねこの王もだ。

 見返りも無く子供に優しい、など、彼の普段の様子からは考えられ無い。

「お2人は仲が良いのですか?」

 ねこの王に対して丁寧語など、むず痒くて仕方の無い事だが、ココ姫や家庭教師のいる手前、ぞんざいな口調でいる訳にも行くまい。

 それを分かっているねこの王は、ぶふっ、と口元を押さえ、反対にココ姫は「ええ、仲良しなのです!」と自慢げに胸を張った。

「お父様にも言われましたもの。お友達を増やす事は良い事だから、どんどん増やしなさい、って。お友達が多ければ多いほど、姫の助けになるから、って。でもココ、そんなことは関係無しに、お2人とはお友達でいたいわ!だってその方が絶対楽しいもの!それに、頭に動物の耳が生えた人や魔女さんとお友達でいる人なんて、世界中探しても、そうはいませんのよ!」

 つまりは、彼女の中でそれは自慢出来る事なのだろう。

 まったく、正直者のこの小さなお姫様には、まだまだ大人の駆け引きなどという物は早過ぎる様だな。

「ココちゃんは可愛いよ」

 そんなココ姫をにっこりと見つめて言ったねこの王の言葉は、正直意外な一言だった。

 そうして、お愛想だとか社交辞令とかではなさそうな、気負わない言葉が続く。

「人の話もちゃんと聞くし、飲み込みだって早い。良い子だよ」

「わあい、ほめられましたのー!」

 ぽんぽん、と頭を撫でるねこの王も珍しいが、ネコミミ男に撫でられて嬉しそうな令嬢というのもそうはいないだろう。

 ……今度“誰か”に、“お揃い”のネコミミカチューシャでも作らせてみるか。

 多分喜ぶだろう。周囲は引くだろうが。


「で、何の話してたの?」

「あっ、さっきまでお勉強してたのよ!」

「この世界は、幾度か大きな騒乱に巻き込まれていた様だな」

「ああ、歴史の授業?」

「私達が参加した南大陸(サウバーク)についても少し触れていたが」

「そうなんだ」

「……そういえば、その後だったか。急にお前がセントラーダ王宮(ここ)で働くと言い出したのは」

 伝手も無いのに良く潜り込めたものだと、感心したのを覚えている。

「知りたい?」

 ……表情から察するのが得意なのは知っているが、いきなり人の心を読むな。

 まるでおとぎ話のチェシャネコの様に、にやりと笑ったねこの王は、何を企んでいるのかこちらに顔を寄せて来た。

「離れろうっとおしい」

 思わず元に戻った口調でぐい、とその顔を引き剥がす。

「それって、ねこの王さまがここでお仕事なさる切っ掛けのお話ですか?わあ、ココそれ聞きたいです!」

「素直な良い子は好きだよ。じゃあ彼女に免じて特別に教えてあげようか」

 ……単にネタばらしが好きなだけじゃないか、この策士気取りが。

 

「で?どうやって取り入ったん……ですか?」

 危ない危ない、どうでも良い話題につい口調が戻ってしまう所だった。

「や、釣りしてたら偶然?」

「お前は何処の太公望か」

 あ、思わず突っ込んだせいで、ついに戻ってしまった。

「たいこーぼー?」

 ああ、こっちの世界の人には……というか、一部地域に住んでた人間じゃないと分からないか。

「僕らの世界で有名な、軍師様の名前さ」

「まあ!ねこの王さまにぴったりですわね!」

 もはや何も言うまい。

 奴曰く、先の南大陸での紛争後、情報入手も兼ねてセントラーダの王宮付近をうろうろしていたら見つかった、と。

 誰に、何て言われなくとも分かる。妙な所で嗅覚の鋭い奴……セントラーダの第2王子、エドだ。

 釣りを例えに魔法について解説した所(そんな真似が出来るのは奴位のものだろう)気に入られてそのまま王子の専属顧問として取り立てられたとの事。……そんな事になっていたのか。

「関わり合いにならずにいられる状況でも無かったし、今後の事を考えるとやっぱり“中から見る”って事も必要だと思ってね」

「でも、そのおかげでココたち仲良くなれたの!良い事よ?」

「そうだね」

 今のこの状況なら、国の中枢に入り込む事がどれだけ重要な事か分かる。

 出来ればこのまま、ココ姫の言うとおり仲良く“だけ”していられれば良いのだろうけれど。

「――――――そうは、行かないんだろうねえ」

 ひっそりと、魔女の言葉で呟いた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


724:幸福の王子

    風の噂で第2王子が

    どうやら足止めを食らっているらしい

    という話を聞いたのですが……


725:親指姫

    足止め、です?

    誰に止められているんですか?

    王子様はどこに行こうとしていらっしゃるんでしょうか?

    

726:妖精王

    恐らくは足止めというよりは

    囲まれていて身動きが取れないのだろう

    


727:仮面の槍者青ひげ

    臣下の者達にか

    

    さもありなん

    と言った所だな

    


728:灰かぶり

    そこは『ざまあ』だろう

    いなくてせいせいするわ


729:白雪姫

    あらあら灰かぶりさん

    そう言い方は宜しくないんじゃありません?


730:雪の女王

    白雪よ……

    お主の方こそ意地が悪いのではないのかえ?


731:白雪姫

    あら

    そんなことは勿論ありませんわ


    ええ決して


732:ぬこの王さま

    白雪姫様が暗黒微笑を湛えていらっしゃる……


    実際灰かぶりさんがあっちこっちで仕事してるせいもあって

    その分のシワ寄せが王子の所に行っちゃってるのは確か

    食ってかかる人も多いみたいだしね


733:裸の王様

    大方好きにやらせているのが気に入らないのだろう

    

    ふん、直接本人に言えばいいものを

    魔女の呪いが余程恐ろしいと見えるわ


734:動物の王さま

    ただでさえ近寄り難いふいんき(何故かry)な上に

    今魔改造中だろ?

    不審者パワー全開だから余計にだよなー…………って



    半裸神……だと!?


735:風の子王女

    半裸神降誕祭キターーー!!!(すわっ)

    

736:玉子好きの王さま

    おや?風の子じゃないか


    久しぶりだな


737:千匹皮

    早っ!?先越された!

    さすがAGI特化だよねー


    てゆーか玉子好きの王さまもおひさー


738:美髯聖女

    あらぁ

    千匹ちゃんたら今日は余裕ありそうね


    それはともかく

    来ないんじゃなくて来たくても来れない状況っていうのは

    ちょっと可哀想かもしれないわねえ


739:灰かぶり

    いらん世話だよ美髯聖女


    それと千匹皮は単に現実逃避なだけだろう?


740:ぬこの王さま

    まあまあそう言わずにさ

    王子も王子なりに頑張ってんのよ?


741:親指姫

    そうですよ!

    頑張っているのなら

    応援してあげなくちゃなのです!


742:こうのとり(カリフ)

    親指姫はほんに良い子だのー


    ところで前から思ってたんだが……

    この名前表記少し違うてない?

    逆ではないかのう……


    ( ゜д゜)ハッ!

    わしったら実はこうのとりの方が本性なの!?


743:白雪姫

    少しはお相手して差し上げては?


744:灰かぶり

    なぜ皆があれの肩を持つのか

    不思議で仕方が無いんだが……


    言わせて貰うとだね

    全く会わない訳ではないよ

    基本的に朝夕には顔を合せているのだから


745:裸の王様

    いやそうでなくてだな


746:星の☆プリンスさまっ☆ミ

    そういう問題じゃ無いと思うよー……


    問題と言えば第1王子はどうしてるのかな?

    やっぱり妨害を仕掛けて来る感じ?


747:下水道魔王と地下王国

    足止め参加はしてないみたいだよ、ハハッ


    裏の方もちょっと探ってみたけれど

    むしろ周囲には静観しろって指示出しているみたいなのさ、ワーオ


748:仮面の槍者青ひげ

    ……どういうつもりだ?


749:人魚王子

    勝算でもあるつもりなのかな?


750:かえるの王女

    動きが無いのが不気味といえば不気味ですわね

    

    ところで

    今灰かぶりさんは何してらっしゃいますの?


751:灰かぶり

    最近は仕事や役目以外ではココ姫と一緒にいる事が多いね

    普段から気を張る生活をしているせいか

    お姫様マジ癒しとでも言いたくもなるよ

    彼女の勉強に付き合ったりもしているが

    あれは案外為になるね

 

752:白雪姫

    それだけ聞いてると

    まるでお妃様教育の様ですわね!(にっこり)


753:ぬこの王さま

    案外狙っての放置だったりして( ´∀`)σ) ´_ゝ`)


754:灰かぶり

    ……ふざくんなし


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 城にいるのに、ただのんびりしているという訳にはいかない。

 それでは態々此処へ来た意味が無くなってしまう。

 やる事はそれなりにあるのだ。

 王族やココ姫などを中心とした新たな人間関係の構築もそうだし、薬剤調合などの技術の伝達もその一環。

 そしてその裏で密かに……密かでも無いが行われているのが、恐らくは近い内に何か仕掛けて来るだろうと予測した上での、城の魔改造、だったりする。

 そう、先日王族会議で出た例の件だ。

「午後は散歩に出ます」

「かしこまりました」

 散歩という言い訳の下、侍女引き連れて城の中をうろうろと彷徨う。

 厳密には、ただうろうろしている訳では無く、頭に叩き込んだ城の見取り図から選択したいくつかの場所を回っているのだが。

 そこは、魔力循環制御回路陣(ネットワーク)を構築する為の楔……いや、始点にして支点。

 城は、王城だけあってかなり広い。

 全体をカバーしようと思えば、それもしっかりとした物を作ろうと思えば、それなりに入念に下準備しなければならない。

 自室に設置したイミテーションブルーのレプリカ、その最後の一欠片(ひとかけら)を柱とし、こうして植えた種を芽吹かせれば、各々が繋がり循環する魔力回路と成る訳だ。

「~~~~~~~~~♪」

 回廊の柱の陰で魔力を通しながら小さく口ずさめば、私の“願った”通りに付近の魔力が(こご)って“種”になる。

 だが傍目から見れば、其処此処で一々足を止め、何事か呟き、あるいは口ずさむ女は、さぞかし不気味に映るのだろうな。

 実際には、私の意志によって芽吹く魔力の種を植えて行っている作業なのだが、城の連中には意味不明の行為にしか映るまい。

 後から付いて来るメイドも何も言わないが、その情報は関係各所に流されている筈だ。

 そういえばエドがあまり顔を見せないのは、この件で対応に追われているせいだと誰かが言っていたな……。

 ……だからって止めるつもりも無いが。

「~~~……」

 ふと、視線を感じた気がして顔を上げる。

 2階の渡り回廊から、下の中庭に視線を移す。

 午前中にココ姫と居た、あの鳥籠庭園の近くに、その男は居た。

 華やかな貴族の女性達に囲まれた、ハーレム状態の優男……セントラーダ第一王子、皇太子アルジャーノン。

 弟のエドが凍り付いた様な無表情がデフォルトなら、こちらはまさに、穏やかで華やかな春の庭園を思わせる微笑みが基本の様だ。

 毎朝夕の食事会の際にも相変わらず、敵対関係にあるとは思えない程親しげに声を掛けて来るし、ジョークも飛ばす。

 時折やや鋭い視線や質問が飛んで来なければ、“あの”下水道魔王を疑ったかも分からない。

 今の彼は、ぱっと見、興味深げにこちらを見ているだけだが、その目つきは鋭い。

 ……監視のつもりか?


 気づいて無い振りをして作業に戻る。

 お互い人目のあるこの状況。しかも距離が離れているから、何かしようとしても無理がある。

 だったら、まずこっちの作業を進めてしまった方が、まだしも建設的だ。



 とはいえ……どうしたもんかね。
















掲示板の『カリフ』氏のセリフは、白雪姫と灰かぶりさんの両名によって、意図的にスルーされています。ビバ★黙殺!




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