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童話トリップ!  作者: 深月 涼
第5章 眠り姫
35/53

【王子が粘着】灰かぶりさんのわんだふるお城生活そろそろ7日目【ご家族は癒し(一部除く)】

分かっておられると思うけど念の為。

スレタイの『7日目』はあくまでスレナンバー(何スレ目)って事で、

実際には、7日どころかとっくに月単位で過ぎてます。





「ほう?なるほど、それはそう使うものなのか。……やはり興味深い」

「ええい、一々首を突っ込むなと何度言ったら分かるんだい!?いい加減邪魔をするのは止めとくれ!」

「邪魔?俺はただ、好奇心を追及しているだけだ」

「……それが邪魔だと言っているんだがね。繊細な作業もあるんだ、部外者には出て行って貰おうかい」

「部外者ではないだろう。何せお前と俺は……」

「婚約者だって言うんだろう?……言われなくとも分かっているし、それとこれとは今関係無いんだよ」


 城へ来てどれくらい経つか。

 言葉遣いや服装をはじめ、周囲に気を使う生活は肩が凝って仕方がないが、気にしなければどうという事もない程度には慣れた気がする。

 ここへ来た当初の案内により、普段の生活として与えられた自室、図書室、そして数代前の数寄者に作られたという外に出られる半離れの様な工房(アトリエ)、意見が聞きたいから、と連れられた医局などを訪ね歩いた。

 一方で魔法省……魔法使い管理官の所属する部署などには顔を出さなかったが。

 ……理由など、トラブル除け以外の何物でも無いだろう。


 “灰かぶり(ワタシ)”の朝は、それなりに早い。

 こちらの王家の“家族として”の方針として、朝夕は必ず共に食事を摂るという物があるのだが、そこに私も参加する事となったので。

 某人の婚約者となった以上、意味無く独りでいるのも不自然だろう。情報を得る、という理由にもなるしな。

 ちなみに当然だが、例の皇太子殿下も一緒だ。

 意外……でも無いが、対外的には人当たりの良いらしい皇太子殿下は、一応対立している立場である私にも朗らかに接して下さる。

 そして食事が終われば、その日その日で行き先が違うのだが……。

 今日は掲示板での依頼もあった事だし、王家専属の薬師の皆と共に調合する日とした。……したのだが。

 お分かりだろうか。

 背後霊(エド)がべったりとくっ憑いたまま、離れないのである。

 ここへ―――城に来てから、もうずっとこんな感じだ。……いい加減うざったくて仕方が無い。

 元々好意(こい)等という甘っちょろい感情すら無かったのが、いい加減マイナスになりそうだぞ。

 ……とはいえ、奴の一言から発展する議論(はなしがはずむこと)もあるのだから、一概に大嫌いだ、とまでは言わないでおいてはやるが。

 だが、作業中に声を掛けて来るのだけは頂けない。

 背後の肉厚な圧迫感も、集中力を削ぐ要因となっているのだから余計に。

 イライラしているせいで、教授の相手である筈の薬師達から、恐る恐る間違いを指摘される事3回。

 恐る恐るの部分は、きっと恐らく第2王子のエドがそばにいるからだ。……決して私が顔に般若面を付けているからでは無い。……無いったら無い。


「そういえば、お前はいつも同じ薬ばかり作っている様だが……例えば……そうだな、“媚薬”などという物は作らないのか?」

 ぶふぉあ!

 がらがら、がっしゃーん!

 ……おい、言うに事欠いて何て事言い出した、この男。

 今の衝撃で私だけではなく、周囲の薬師達の調合していた物まで犠牲になったぞ。

 ああ、皆顔を赤くして……。

 私は深く溜息を吐いてから、床に散らばった器具や破片を片付け始めた。

 それを見た周囲も、慌てて危険な破片を拾ったり、零れた薬液を拭き取りに走ったりし始める。

「作らんよ」

「何故だ?作れるのなら金にはなるだろう。引き取り先には困らんぞ」

 確かに需要は多そうだが。

 あー、まあ、病の者―――例えば何がしかの障害を持つ者に対する、そういった薬効を持つ薬なら考えてみるのも良いかもしれない。

 ……が、今仲間内から、そういった事で困っているという話は聞かないしな。

 ならば、それは後回しでも良いだろう。

「ワタシの仕事はあくまで仲間が優先だからね。そんな趣味嗜好の世界にしか通用しない取扱要注意薬など作る暇があるのなら、低コスト回復薬(ポーション)の開発でもした方がマシってもんさ」

「そういう、ものか?」

 首を傾げるエドを放置したまま、改めて手元を見ながら作業を再開する。

「そうさ。皆怪我をする様な危ない事ばかりするからね。媚薬を作るより先に、回復の手段を整える事の方が大事なのさ」

 とぽぽぽぽ、と試験管に緑の薬を注いで行く。よし、こちらはこれで完成だ。

 緑の薬は上級回復薬。

 得意先に廃人が多いせいか、下級の回復薬はほとんど利用者がいない。

 なので作るのは、もっぱら上級品に限定されてしまっている。

 そのせいで、こうして城で、効果の高い薬についての研究会など開く羽目になってしまっているんだがな。

 後は小分けにするだけなので、話しながら試験管に次々と注いで行った。


「彼等ならば、魔法で回復する方が早いのではないか?効果も高いであろうし」

「そうさね」

 引き続き薬草を取り出す。

 先程の緑の薬に使った物とは別の物だ。

 それを聖別された少量の水と共に、自宅から持ち込んだ魔法ミキサーに掛ける。この辺の作業は面倒なので、時短を遠慮なく採用だ。

 ……そういえば、この魔法ミキサーも、オズが依頼を受けていたな。

 ねこの王曰く、人命に関わる事だから、と、医局がごり押しでねじ込んだらしいが……。

 こういう所からまた、魔法関係者達の反感憎悪が育つんじゃなかろうかと思わんでも無かったりする。

 ……まあ、その話は一旦置いておくとして。

「魔法だと、どうしても個人の資質に頼る所が大きいからね。回復の魔法が使える人間は確かに多いが、中には不向きな者もいる。使える者とて、その回復量は千差万別さ」

 巨大ボウルに、ペースト状になったそれをあけ、小瓶から出した粉末を加える。

「その点、薬ならば使用者本人の素質如何を問わず、回復量は常に一定だ。―――そういった事が、大事になる場合もあるんだよ」

 気合を入れて念入りに混ぜ、さらに魔力も加えて行く。

 ゲームだった当時はクリック一つで出来た作業が、今はこうして手順を経なければならないのが……逆に面白いと思う。作っている実感が湧く、とでも言おうか。

 ただ、本当に大量に作らなければならない時には、やはり面倒だがな。


 ―――恐らくじきに、これらの薬が大量に必要になる時が来る。

 例え相手が全力で当たれば軽く捻り潰せる相手であっても、それでも油断は出来ない。

 窮鼠は猫を噛むものだ。……なあ?下水道魔王よ。

 何処かから、ハハッ、と小馬鹿にした様な声が聞こえた気がしたが……とりあえずは目の前の作業だ。


「回復魔法はまだいいのさ。回復の手段が一つでは無い、という事の方が重要なだけだからね。だが、その魔法の素が無くなるのは大問題だろう?」

「む……?」

「緑は回復薬(ポーション)。で、今作っているのはMP回復……いわゆる身の内に秘めた魔力を回復させる薬さ」

 魔力が馴染むにつれ、どろりとした薬草の繊維は溶けて行き、次第に澄んだブルーの色水に変化して行った。

 うむ、毎度毎度思うが、まるでブルーハワイの様だ。まあ、飲み易さの為に後で甘味も入れるのだが。

「ほう?魔力を回復させるのか。先程の回復薬とそれがあれば、自身の魔法に頼らずとも無限に戦い続けられるという訳だな」

「それ以前の問題で、本人の精神力が持つまいよ」

 本気で兵士達にやらせかねないエドに、苦笑しながらも一応釘を刺して置く。


「ワタシらの方は、やらなきゃならんからやっているだけさ。一緒にしちゃいかん」

 この薬はこれでお仕舞い。瓶ではなく小さな甕に入れる。

 ここから小分けにするのは、錬金魔法使いであるオズの仕事だ。

「そうか?」

 ええい、残念そうに言うな。と、いうかだな。

「おい、また距離が縮まっている気がするのだが?」

「ん?それが何か問題か?」

 はあ、と溜息を吐いた。

 確かに初日、見学は構わないと言ったが……いい加減これは無い。

「問題では無い、大問題だ」

 む、少々素が出たか。

 ……浮かれ小坊主がいたら爆笑でもしていそうだな、これは。

「先程も言ったがね、これでも一応繊細な作業なんだよ。それを一々ひっつかれては、進む作業も進まないってものさ」

「ふむ」

 私の懇願めいた言葉に、片手を口元に持って行き何やら考えるそぶりのエド。

 しかし、

「しかしだな、こうした事が仲を深める第一歩だと……」

 誰だー!?そんないい加減な知識教え込んだ奴は!

 そんなツッコミとは裏腹に、私の脳内で『しましまのネコミミと尻尾』が見事にチラついたんだがな……。

 十中八九あいつの策だろう。影で爆笑しているに違いない。……納品予定数誤魔化してやろうか(怒)


「大体仕事はどうした仕事は」

「しているぞ?」

「……」

 知っているのだぞ。影で部下が泣いてるのも、メイド達の噂で、何やら聞くに堪えない傾国的な話が出始めているのも。


 ――――――心配されている―――して貰っているというのは、十分に理解しているのだ。

 何せ此処は敵の巣窟、総本山でもあるのだからな。

 有難いと思うべきなのだろう。だが――――――

「まずは仕事を終わらせるんだね。話はそれからさ」

 ぴしゃりと言い放つ。

 先程から他の薬師達がハラハラしながら見守っているので、彼等の胃薬を調合する羽目になる前に終わらせてしまいたい。

「だが―――」

 なおも言い募ろうとするエドに、私はついにキレた。

「自身の仕事をきちんとこなしもしない奴に会う義理は無い!何より、他の研究員達の邪魔だ!これ以上五月蠅く言うのなら、王妃殿下に申し出るぞ!」

 つまるところ、色々と限界だった私の取った最終手段は「おまえのかーちゃんにいいつけてやる」だったという事だ。

 ……自分でやっておいて何だが、子供の喧嘩か、これは。


~~~~~~~~~~~~~~~~

453:浮かれ小坊主

    何かさー

    いちゃらぶい話しか聞いてない気がするんだけどー


454:灰かぶり

    好きでやっとるんじゃないわ


455:ぬこの王さま

    まあちょうどいい機会だし

    こっちの仕事に専念させるよ


456:エメラルドの都の魔法使い

    王子も災難だな


457:灰かぶり

    慮りはするがね

    ありゃやりすぎだよ


    自業自得さね


458:おおかみさん@腹ごなしに見回りなう

    むしろここで引く事で

    灰かぶりさんの気を引く事にも成功したりして?


459:灰かぶり

    だが断る


460:幸福の王子

    まあまあ

    そう邪嫌にするものじゃないですよ


461:ジャックと豆の木

    あれ?おかしいな

    幸福の王子さんの文末に(呪)って文字が見えた気がしたよ?


462:灰かぶり

    で、だ

    今このタイミングで王子が離れるのなら

    いよいよネットワークを引く作業に入ろうと思う


463:7人の狩人 3番目

    おっ

    いよいよか


464:注文の多い料理長

    魔改造キタのにゃーーー!


465:豚に嫁入り★奈良梨取考★末の王女

    でもそれは

    どうしても引かなきゃならないモノなのでしょうか?


    むしろ相手方に

    余計な力を渡してしまう事になりません?


466:7人の狩人 5番目

    先を見越す事は必要だが

    先読みし過ぎて備えが疎かになってしまうのは

    本末転倒だからな


    本当に必要になるかはこれから次第だろう

    まあ念の為にという事だ


467:じゅげむっ!

    灰かぶりが城にいる今の内にやっておかんとな

    

468:魔弾の射手

    いつやるの!?


    今でしょ!


    っちゅー事やな


469:ぬこの王さま

    そのネタもう古くない?

    

    でも実際仕方ない部分はあるかな

    向こうがどう出てくるのか分からない部分はあるし

    そうなった時に備える必要はあると思う


    使わなかったらその時はその時で……無駄にはならないだろうし、ね


470:白鳥の湖の悪い魔法使い

    連中どうせその内に

    ある意味分かりやすい行動に出てくるだろ


    ……って予測が簡単に付くからやっといた方がいい


    それに暴れるなら目いっぱい暴れたいじゃん?(真顔)


471:赤い靴

    でもさーそれって

    許可とったの?

    勝手にやるのはさすがにマズいような?


    最悪通報XD

    

472:7人の狩人 3番目

    無断でこっそり……ってやるにはちょっとなあ(苦笑)


473:おおかみさん@オレはやるぜ!オレはやるぜ!

    あー(苦笑)


474:ジャックと豆の木

    まあなあ(苦笑)


475:灰かぶり

    お前らがあの作業時に何を思っていたのか

    如実に思い知らされるな


476:魔弾の射手

    魔女さん呪いはあかん(迫真)


    でそれ誰がやるん?


477:注文の多い料理長

    それは勿論……(チラッ)


478:灰かぶり

    まあワタシだろうねえ

    やるのもワタシだし


479:じゅげむっ!

    背後に控えた皇太子が

    どう出るかが問題だな


480:ぬこの王さま

    そこら辺は根回しが物を言うのですよ!


481:白鳥の湖の悪い魔法使い

    そしてこのドヤ顔である(真顔)


482:灰かぶり

    やれやれ面倒臭いねえ


~~~~~~~~~~~~~~~~


「城の改造、とは?」

「実際に、城の何処かに手を加える訳ではありません。ただ、『森』で使用している『ネットワーク』を、こちらでも使用出来たら、と思いまして」

 という訳で、さっそくその日の夕食時、議題に出してみた。

「ふふっ、随分面白そうだけれど、それって本当に必要な物なのかい?そんな物を作った所で、大それた魔法を行使する予定があるとでも言うのかな?……あるいは、君達だけしか利用出来なかったりとか?」

 さっそく来たか、この妖怪猫被り((メガ)盛り)め。

 まあ彼の立場ならば、周囲へ見せるべき態度として、一度は止める必要があるのだろうとも思うが。

「この城の中の者ならば、誰もが利用可能となるでしょう」

「それってどこら辺までが許容範囲?その日しかいなかったり、遠くから来た人は?害意を持った人間とか……例えば“わたし”とか」

「……」

 先程まで穏やかな団欒だった筈が、一気に冷ややかな空気へと変貌する。

 ……まあ、そう仕向けたのは私なので致し方ない所なのだが。

「……出来ますよ」

 正直な所を答えた。

 こんな所で嘘を吐いても仕方ないからな。

「へえ?」

 器用に片眉を上げ、驚いたそぶりの皇太子殿下。

 平静を装い、説明を続ける。

「元々このネットワーク機構の主な役割としては“魔力の循環と蓄積”そして“感情によっては容易く暴走する魔法を、誰でも―――それが不得手な人間であっても、ある程度平等に自由に使える様に、との理念から発生した物です」

「ふうむ」

 それに唸ったのは国王陛下だった。

「安全は保障されるのだろうな?」

「当然の疑問かと。ですが心配なされる必要は御座いません。“そこにある”と認識しなければ、勝手に発動する様な物でもありませんので、不要の方々にはそもそも公表しない、という対策が取れます」

「それでは不公平が生じるのでは?そもそもの理念から外れている様に思うけど?」

 面白がるような響きに、王妃殿下が眉根を寄せた。

 だが問題無い。

 この程度の挑発、軽い言葉遊び程度でしかないのだから。


 しかし、これに釣られた訳では無かろうが、ただ黙っているだけでは無かった人間がいた。

 答えたのは私では無く隣の男―――エドだ。

「兄上、これは彼女の―――いえ“彼等”の“好意”であり“実験”です。結果が出れば、いずれ公表すべき対象も変わって行くでしょう。ただ現状、この城に関わる全ての者に明かした所で、彼らが上手く扱えるとは思えません。ましてや事故など起こせば本末転倒かと」

「そうまでして対策とる位ならいっそ、最初からそんな“物騒な物”作らなければ良いのにね」

「……」

 にこやかな棘。

 しかし、ここで引き下がる訳には行かない。

「ネットワークを敷く理由がもう一つあります」

「ふうん?」

 あくまで穏やかな、余裕の表情。

 その心は、必ず阻止する、という所か。

「我々の利用する『魔力循環制御回路陣(ネットワーク)』は、循環する魔力の流れで構築されております。よって、立ち上げる際、その魔力の流れ自体に意味を持たせる事も可能となっております」

「意味?」

「簡単に言えば付加価値、という所でしょうか。必ずしも必要ではありませんが、例えば『森』のネットワークには、とある指向性の魔法が掛けられております。その魔法を利用すれば、眠っている間にすべての事象を理解する事も可能となっております」

「まあ……」

 王妃殿下が驚いた様に口元に手を当てる。

 まあ、馴染みの無い人に想像は難しいか。

 この話自体は眠り姫の間にある記憶の紋章の話だが、余り詳しい事情を説明する訳にもいかんしな。これ位が限度だろう。

 しかも元々の順序は逆だ。

 記憶を収集し留める為の魔法が、副産物的に一般開放されただけの事。

 ……まあ、時にはハッタリも必要という事だ。


「で?その魔法を掛ける意味は?」

 確かに此処で記憶の紋章を用意した所で、あまり意味は無いだろう。

 だが、別の魔法ならばどうだ?

「掛ける魔法は『防御の陣』です」

「ふむ」

「すでに『対空みさいる』とやらがあるじゃないか。これ以上防御固めてどうするの」

 笑う皇太子殿下。

 ……まあ、確かにそうなのだがな。

「上空から半円状に、地上までの魔力による防御障壁を築きます。これがあれば地対空ミサイルが他国に流出した場合にも備えられますし、いざという時の避難所(シェルター)ともなりえます。ただ外壁に頼るだけの籠城戦よりは、確実に耐えられるでしょう」

「『みさいる』が流出って、それこそ君達が何かしない限りは無いと思うけどね。そもそも現在、他国との交流は穏やかで、何処の国も妙な野心など持ってやしないさ」

 意味があるとは思えない、と肩をすくめた皇太子。

「それに外交は現在エドの領分だし、って事は、君って実はエドの事信頼してないって事にならないかい?」

 くすくす笑う皇太子殿下に、御父君である国王陛下が「アル」と、ついに窘めた。

「ご心配無く、兄上。彼女との絆は徐に深まりつつあります。それに、国勢とは常に移り変わる物。防衛を疎かにする事程、愚かな事も他に無いかと」

 ……今何か、余計な一言があったような気がしたが。

 ま、いい。これもフォローの内という事で、な。うん。

 ……言い聞かせてなど無い。無いったら無い。


「魔女である灰かぶり殿を受け入れたからには、こちらもさらなる変化を受け入れるべきであろう。でなければ、彼女がここに居る意味が無い」

 陛下の、重みのある御言葉が響く。

「……わたしには、無理に変化する必要は無い様に思えますがね」

「アル……」

 頑なな皇太子殿下に、陛下も少々困惑されている様だ。

 だが、これは悪い事では無いと私は思う。

 急な変革は、どうした所で反発を招く。

 革新的な人物がいれば、保守的な人間がいるのもまた当然の事。

 双方が意見を交わし、お互い理解し合う事が重要なのだろうと思う。

「ま、出来るならやってみるのも良いんじゃない?」

「宜しいのですか?」

 ……とはいえ、こうもあっさりと許可が出るとは思わなかった訳だが。

「君達で言う所の『多数決』ってやつ?何より父上が乗り気なら、僕が口出しした所で意味は無い」

 ……皇太子とは後継ぎであり、いわば王の次に権力を持つべき人物だ。

 その皇太子殿下の意見を無下に出来る人間は、そうはいないだろう。

 特に此処の国王陛下は、周囲の人間の声を良く拾う耳をお持ちの様だ。受け止める器もな。

 だから、決して皇太子殿下の言う、そんな事は無いと思うのだ。

 ああほら、陛下も眉根を寄せていらっしゃる。

「精々その手腕を見せて貰う事としようか」

 ……その妙な余裕が、酷く気になった。



 そうして―――

 間に『マッチ売りの少女』に関わる事件が起こったりなどしつつ―――


 『魔力循環制御回路陣(ネットワーク)』構築の準備を開始してから、凡そ1ヶ月が過ぎた。












末の王女の“奈良梨取考”表記については、某電撃小説から。

みっしんぐ知ってる人だけおののいてください。



おのの~ん。




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