【今日から毎日】始まりの森防衛戦パート77特別編VS巨人戦【森を焼こうぜ!】
今回の章は軒並みサブタイがヒドイ(笑)
いや毎回ですか。
あ、分かってると思いますが、絶対マネしないでくださいね(爆)
つ本日のBGM
例のアレ
赤い風車
「……」
恐怖が頂点に達してさらに突き抜けちゃったのか、なんだかもう、何かを考える事さえおっくうな感じ。
ただ目の前で起こっている事を、ぼんやりと見返すだけ。
今のあたしにはこの状況が、自分の見ている悪夢なのか、生み出した幻影なのか、はたまた最悪の現実なのか区別がつかなかった。
ちゃきり、と傍らで金属音がした。
横を見れば、いつの間にかそばまで来ていた義父さんが、険しい表情で巨人を睨みつけていた。
「義父さん……?」
「逃げろ。こいつは俺がどうにかするから」
「ちょ!?何言ってんの!?」
ぼんやりした思考が、いっぺんに吹っ飛んだ。
「なら、お前にあれがどうにか出来る宛があるのか?」
「え、え、ええっと……」
どうにか出来ない訳じゃない。
ただしそれは、自分の意思で「お引き取り下さい」とお願いして帰ってくれる様な簡単なものでは無かったけど。
「時間が無い。手段が無いなら早く逃げろ!」
戦士としての義父さんが、そこにはいた。
「殿下」
「……仕方が、無いね。化け物がいるのは“知っていた”けど、まさかあんな巨大なモノまでいたとは……。これはもう少し、調査が必要そうだ」
それを見たフードの男も、そばにいた戦士の言葉に頷きを返す。
諦めた、って事なのかな。
「マッチ売りさん。彼らはこの場から撤退するそうです。後はあの怪物達をどうにかするだけだ。……貴女なら、どうにか出来ますね?」
「何言ってやがる、ここは俺に任せて……」
「貴方には荷が重いでしょう。それに彼女なら、大丈夫ですよ」
「だから何言ってやがるってんだお前は!こいつを犠牲にでもする気か!?」
義父さんがアースに食ってかかった、その時だった。
「おーまたせぃっ!」
「正義の味方、参、上!!」
「よし、まだかろうじて実害は無さそうだな」
現れたのは、軍用ブーツがトレードマークの『長靴を履いた猫』のぬこ騎士さんと、大斧を担いだ『ジャックと豆の木』のジャックさん。それに、7人の狩人の3番目、おなじみドーピーさんだった。
「あの連中か」
「やってくれたな……」
「まとめてぶっとばす!」
戦う気満々の彼らに、慌てて飛びついて止める。
「あの、ごめんなさい、呼び出したの、あたしで!」
「彼らはすぐにここから去りますよ。そうですよね?」
後押しなのか、アースがそんな事を言いながらフードの男を見やる。
「……」
無言のまま、彼らはあたしたちに背を向け――――――
「行っちまったか」
「あんたは?」
唯一義父さんと顔見知りのドーピーさんが、声をかける。
「こいつらを、あんたらだけでどうにかするってのか?」
義父さんは懐疑的だ。まあ、無理もないけど。
「こいつらにゃ止める装置なんて付いてねえ。止めたきゃ力ずくで、って事になるな」
「なら!」
義父さんが剣を構えようとするけど、それを止めたのはアースだった。
「止められますよ、彼らならね」
「じゃ、じゃあマリーだけでも」
「マッチ売りさんは、この件を納める必要がある。そうでしょう?」
「…………おっまえ、っとに気にくわねぇやつになっちまったな」
はあっ、とおなかの底から息を吐くみたいに、盛大な溜息だった。
その割に、表情はいくらか明るい、というか、軽いものになっていたけど。
「マリーを頼むぞ」
「言われなくとも」
「マリー、本当に危なかったら、すぐに逃げ出すんだぞ」
……何か、勝手に話、進んでったけど……。ま、まあいいか。
……でも、こういうの、ちょっと懐かしい。
拾われたばっかりの頃は、こんな風にいちいち心配してくれたっけ。
『義父さんの思い出』にちょっとだけ浸って、それから笑顔を作る。
「もう大丈夫だよ。―――守るよ、今度こそ。……ここから一歩も進ませないから」
ちゃんと眼を見て決意表明。
したら義父さんは、少し目を細めた後、頭をポンポンと撫でた。
「強く、なったんだな」
その言葉に、ニッと口元を釣り上げる。
「そうだよ。―――だから、早く行って」
「ああ……そうだ、さっきの誤解があった件については、後できっちり話し合うからな。―――また会おう」
その言葉を最後に、義父さんはこの場を去った。
恐らく先行したフードの人と合流するのだろう。
「さて、それではこちらも参りましょうか」
いつの間にか隣に立ってたアースに、こくんと頷く。
「とりあえず、片っぱしから黙らせるか」
「周辺住民は皆、避難完了だそうだ」
「よぉし、なら、気兼ねなく暴れられるな」
「弱点は?」
テンションの上がった仲間達の中で、ただ一人冷静なアースの言葉に、あたしはこちらに向かって移動し始めた巨人を見ながら答えた。
「“設定どおり”なら、首の後ろ、頸動脈。……そんな物が実装されていれば、だけど」
クリーチャーについてなんて、そんな詳しく知ってる訳じゃない。
けど、“彼ら”は立ち向かう気満々だ。
「こんな時ににゃんだけど、血が滾るにゃはー」
腰に差していた2振りの細剣を交差するように引き抜く『長靴を履いた』ごっついブーツのぬこ騎士さん。
「ぶっ叩いてぶっ飛ばしてぶっ散らかすぜ!待ってろよ巨人共!」
大斧を構えてホームラン予告をしたのは『ジャックと豆の木』ジャックさん。
「俺は巨人“専門”じゃないんでね。その分、他のクリーチャー達はこっちに任せてもらおうか」
そう言ってがしゃん、と折り畳み式の弓を取り出したのは、7人の狩人3番目のドーピーさん。
「巨人相手は荷が重そうですが……出来るだけの事はしますよ。では、各自その様に」
片手に剣を構え、あたしを背後にかばう形になったアースが、最終指示を出す。
「「おう!」」
全員がそれに応え―――
「さあて、“ひと”狩り行こうぜ!」
「ぱーぱらぱー♪」
締まらない開幕の合図とともに、あたし達は駆け出した。
「あっ、マッチ売りちゃん、あれやって、アレ」
ぬこ騎士さんが、駆け抜けざまに声を掛けてきた。
「あれ?」
「巨人戦専用BGMっつったら“アレ”でしょう!」
マジすか。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
257:7人の狩人 3番目
やれやれ
なんとか間に合ったな
258:浮かれ小坊主
さっきのあれ何なの?
匿名掲示板みたいなの
259:エメラルドの都の魔法使い
もう消えたのか?
何か不気味だな
260:浮かれ小坊主
もしかして:自演?
261:おおかみさん@急行なう!しばし待たれよ!
誰のだ……って追及するとまた揉め事になりそうだな
262:浮かれ小坊主
つ神様の罠
森の住民はそれこそ
とさつとかマッチちゃんの事とか
教訓として胸に刻んでるからね
過度な暴言や中傷は自滅への道って分かってるはずだし
263:じゅげむっ!
どの程度までが中傷だ暴言だって話にもなるだろうが……
それにしても
封印されているから安心
とでも思ったのだろうか?
264:ぬこの王さま
手出しはできないはずなんだけどねえ
265:7人の狩人 5番目
本当に謎だったな
にしても塔が視覚化するのはこれで2度目か……
264:下水道魔王と地下王国
可能性としては
第2王子“だけじゃない”って事かな?ハハッ
265:仮面の槍者青ひげ
他の国の王族という可能性もあるだろうが
イマイチ根拠に欠けるな
侵攻の話も聞かないし
独断で動いているという報告も無い
266:浮かれ小坊主
って事は
該当するのはただ1人……
267:灰かぶり
城にいるとひしひしと感じるが
第1王子は確かに“アンチ魔法”を標榜しているよ
担ぎ出された可能性も視野に入れてはいたが……
やはりそうなのかい
こりゃ決定的、だねえ
あれらの事を『中大兄皇子』と『大海人皇子』に例えた事があったが
まさか『紂王』と『武王』の様にはなるまいね
268:白鳥の湖の悪い魔法使い
ちょwww
その場合『蘇妲己』誰(真顔)
269:ヘンゼル
革命だ!フードの人逃げてー!
逃がさないけど♪
270:グレーテル
戦争よ、戦争!
271:灰かぶり
ガキ共は黙ってな!
さてねえ
今後の方針が見えて来たところで
まずはこの一件に収集をつけなきゃ話にならないよ
何の為にお前達を選抜したか
分かってるね?
272:ジャックと豆の木
もち!
273:軍用ブーツを履いたぬこ騎士
あいにゃ!
274:7人の狩人 3番目
今回中途半端に関わって来たからな
これできっちり責任取らせてもらうぜっ
275:魔弾の射手
ほんならこっちも
手助けの準備しとこかなっ!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
リクエストに答えたあたしは、右手の紋章を起動させた。
「んじゃ、先行行っきまーす、にゃー!」
派手な音楽が鳴り響き、気合が入ったらしいぬこ騎士さんは、軽々と自慢の脚力で木々の上に飛び乗って、頭上から巨人の首を狙いに行く。
その姿はまさに立体起動というに相応しい。
「そんじゃ、俺は足元狙うかね!」
ジャックさんは足元を狙い、体勢を崩し足止めする役になったみたいだ。
巨人の足に、木こりよろしく斧を打ち込み始める。
「なら、少しでもダメージ稼がねーとな。おいお前ら“行く”ぞ!」
言い終わらない内にドーピーさんは、弓を自分の頭上に掲げた。
ひゅおっ、という音と共に放たれた矢は、美しい放物線を描く様に一度空中高くまで打ち上がってから複数の礫となり、巨人を中心に巻き込む様に降り注いだ。
「ちょ、おま!!」
「被害被害!!」
先行していた2人から苦情が飛ぶ。
苦笑いみたいに言っているから、半分くらいはわざと、かな?いや、お互いにね。
と、見てる場合じゃなかった。
「あたしも、いっきまーす!」
牽制と目つぶしかねて、まとめて一気にマッチを擦る。
これって地味だけど、実は最終手段だったりするんだよ?
さあ行け!
「顔面、集中放火!!」
があっ、と呻いた巨人がぐらりと姿勢を崩す。
この隙に、張り付いた彼らが何とかしてくれるだろう。
こっちはモブ掃除……モブにしては強敵すぎるけど……っ!!
「……ふっ」
息を吐いて剣を振り回し、斬り付けるアース。
グロテスクな看護師を切り捨てて対峙するのは、赤い三角頭の怪人。
大剣相手だと、ちょっと分が悪そうにも見えるけど……。
他の等身大クリーチャー達も、人がいるせいかこっちに近づいてきてるし……って、ひっ!?匠とガストこっち来たー!!
っく、こうなったら!
足元にくすぶる虹色の炎。
さっきの残り火に手をかざす。炎よ……
「燃えろっ!!」
拾った炎を、まるで相撲取りの塩まきの要領で相手にぶつける。
よかったー!爆発する前に倒せたっ!
でも、ほっとする間もなく次のが来る。
こうなったら、一気に燃やすしかない。……後で、怒られるかな、“また”森燃やしたって。
でも、
「っく」
がきぃん、と鈍い金属のぶつかり合う音。
アースのピンチに、手段は選んでられないし!
「ほーか、ほーか、ふぁいやー!!」
構えたマッチを一気に擦って、相手に投げつける。
炎の矢は、炎の雨となり、あたしの意思に従って渦を巻く。
「炎の渦!!」
「がああ!!」
三角の偉丈夫が苦痛の叫びを上げる。
「ありがとう、ございますっ!!」
その隙に斬りかかるアース。どうやらそれが致命傷になったらしく、三角様は地に倒れ伏した。
「さすが英雄さんね」
「貴女の支援があったからですよ。ふう、これで一安心、と言いたいところですが……」
周囲にはまだ、多くの怪物達がたむろしていた。
その多くはまだ行動を開始しておらず、あたりをふらふらしているだけだが、これが誰かを襲うようになったら大変だ。
何がどう影響して攻撃スイッチが入ってしまうか分からない。
作った人達も、あくまで化け物って事で敵味方認識する様には作らなかったしね。
クリーチャーとしては間違ってないんだけど……まあ、それを言ったら動揺して扉開放したあたしの方にもブーメランしそうだから、この話はこれでおしまい。
さあ、サクサク行きましょうか!
「ふぁいやー!」
「はっ!」
あたしの放った炎はフード達の残り火と共に周囲に拡大して、もはや森林火災の様。
これくらいならまだ制御範囲だけど、これ以上はちょっと燃やせないなあ。
「~~~~~~~~~~~~~~♪」
頭上を通り過ぎざま、ぬこ騎士さんが赤い風車の歌を口ずさんでいたので、じゃあそれで、とばかりに切り替えたら、何故か狩人さんとジャックさんに怒られた。
「ちょ!?凄惨になるかららめぇ!」
「あかん、殺伐としとるがー!!」
「確実にBADEDじゃないですか、ヤダー!!」
「“宵闇の歌”に変更でもするか?」
「「「もっとダメだろ!!」」」
あれ……?いつの間にか人数増えてる?
巨人の方は、見たところ部位破壊が進んでいるらしい。
傷だらけの巨人とまとわりつく狩人さん達に、この分なら助けはいらなそうだな、と判断する。
「とりあえずこれ、どうにかしなきゃ」
「あぶない!」
目の前の敵の様子を見ていたら、アースにかばわれた。
……っぶな!そうだった、ひょろ長い背の黒い怪物は瞬間移動が出来るんだった。
「あ、りがと……っ」
言葉尻が乱れたのは、しゃがみ込んだあたし達に向って襲いかかる、クリーチャーの姿を見たから。
「このっ……」
いささか乱暴に押し返す。
乱戦混戦の続く中で、アースも集中力を保つのが難しいのかもしれない。
「炎よ!」
考えながらも次の動作に入る。
足元の火種で一瞬だけの炎の壁、そして――――――
すいっ、と敵の腕が空ぶった。
一拍遅れてアースの剣が相手に深手を負わせる。
ゾンビが倒れて動かなくなった。
その痛んだ体を糧にしようと、地面の炎が乗り移り、舐めつくして行く。
「……今のは、貴女が?」
奇妙なものでも見たかのように、アースが問いかける。
「言わなかったっけ?魔女さんほどじゃないけどさ、あたしも幻影魔法使えるんだよ」
陽炎を使った幻。
視覚に頼る戦い方をする相手なら、これでペースを崩し、そこから一気に畳み掛けたりできるから。
とはいえ、そう何度も使える手段じゃない。
タイミング難しいんだよ。
「次来るよ!行って!」
立ち上がり、走り出そうとしたその時。
「マッチ売り!」
頭上から叫び声がして、あわてて振り向く。
「ひゃああ!!」
我ながら情けない声が出たけど、それどころじゃなかった。
とっさに斜め前方に転がる。
見えたのは巨人の顔。
転がった背中を、巨人の腕がかすめた……様な気がした。
「いい判断です!」
回避成功して距離をとったらしいアースから賛辞の声。
っていうか、そうじゃないでしょ!?
「何でこっち来んのよ!?」
「悪い!こっち向かせっから!」
ゲーム用語で言えば、ヘイトを稼ぐとでも言うのだろう。
ドーピーさんやジャックさんが巨人を引き付ける為にさらに激しく攻撃するけど、巨人がそっちに気を取られるまで少し時間がかかりそう、かな……っ?
「マッチ売りさん!」
「大丈夫じゃないけど大丈夫!そっちも気をつけて!」
お互いに回避に専念せざるを得ないだろう。
「ええ!……気を抜くつもりは……ありません!!」
うわ、さらにそこで攻撃を加えますか。
さすが本職の人は違うよね。
「さすが英雄だな」
いつの間にか近くに来ていたドーピーさんが笑みを浮かべる。
「“巨神兵”が出てくる前に片づけるぞ!」
「「おう!」」
狩人さんの一吠えに、討伐参加の男連中が揃って声を上げた。
「まだ……この奥にいるというのですか?」
うそだろ、とでも言いたげなアースが、そうぽつりと漏らした。
うん「まだ」なんだ、すまない。
ちなみに作者は太刀、ハンマー、弓でした。(どうでもいい)




