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童話トリップ!  作者: 深月 涼
閑章
24/53

【なにがでるかな?】サウバーク地下遺跡迷宮攻略 最終アタック開始!【ちゃらちゃちゃん♪】

今回は舞台となる国とはまた別の国のお話。

やっぱりグロ表現あります。




1:ピノキオ

  んで?

  結局乗り込むのは狩人さんチームと青ひげさんでいいの?


  お家の方ならまかせて!

  瓶詰め魔人さんと一緒にばっちり警備しちゃうから



  あの連中についてもね

  オイタをする子にはローズなウィップが火を吹くよ!


2:妖精王

  本来ならば

  後方頭脳労働担当が一人くらいいればよいのだがな


3:ぬこの王さま

  てへ☆


4:エメラルドの国の魔法使い

  ペロッ☆


5:雪の女王

  お主ら……


6:ピノキオ

  うわあ


7:ちびクロ

  ダメだこりゃ!


8:浮かれ小坊主

  ぜーんぜんっ☆

  反省していないみたいだねっ☆


9:白雪姫

  実動部隊としても

  頭が痛いところですわね


  オズさんには後で何かしてもらうとして(にっこり)


  うちの5番目と青ひげさまに頑張ってもらうこととしましょうか(にこにこ)


10:仮面の槍者 青ひげ

   ……はあ

 

   5番目はともかくこちらに期待されてもな……いやなんでもない

   せいぜい最善を尽くす事としよう




   ……気分転換に花でも愛でに行くとするか(現実逃避)

   



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 見渡す限り、どこまでも広がる空と大地。

 ここは南大陸にあるサウバーク王国新規領、その名も『追放者達の失楽園(エリュシオン)

 広大な大陸にありがちな比較的乾燥した地域にあってなお、この付近だけは豊かな実りが約束されているらしく、一面に広がる畑には今を盛りとヒマワリの花が精いっぱい咲き誇っていた。

 畑を管理するのは1匹のこぎつねのみ。

 中央には何故かふよふよと揺れている赤い風船。その真下に彼がジョウロの水をかけると、ヒマワリ達は一斉に青い燐光を放った。

 どうやら、一度に全ての水やりを行える様な魔法が掛かっているらしい。


 ここ南大陸では、海を越えた先にある中央のセントラーダや北のノーディスなどと季節が真逆になる。

 サウバークは今ちょうど、夏の終わりを迎えていた。

 まもなくヒマワリ畑では、大量の種が取れる事だろう。

 種からは油が採れ、残った葉や茎、花弁はすき込まれて新たな作物の栄養となる。

 そんな畑の真上に広がる、小さな雲がぽっかりと浮かぶだけのよく晴れた青い空を、巨大なクジラが悠々と横切って行く。

 空飛ぶクジラ、などというと幻想的な筈なのに、どこかのんびりとした牧歌的な光景ですらあった。

 きょろりとした目が下を向いて瞬く。どうやらあいさつ代わりの様だ。

 それに気付いた小熊は、大きく手を振って見送った。


 ヒマワリだけではなく、さまざまな作物が植えられ、育てられている大規模農場。

 ゆえに『失楽園』は、しばしば『農場』とも略される。略になっているかどうかは定かではないが。

 その主……掲示板で『青ひげ』と呼ばれる仮面の男は、国から管理を任されているこの地域の領主でもあった。


 そして今この青ひげ一家の住まいとする領主館には、他国から来た仲間達―――訪問者(ビジター)が数名、訪れていた。

「では行ってくる。留守を頼むぞ、ジュディ」

「はーい、おじさま。お気をつけて行ってらっしゃいませ」

「うむ」

 年若い娘に金色の鍵の混ざった鍵束をじゃらじゃら言わせながら渡し、青ひげは振り返った。

 ……とたんに、仲間による何とも言えない生ぬるい表情を見て、顔を顰める事となったが。

「何だ、何が言いたい」

「いやいや何でも」

「何でもありませんわ」

 仲間―――3番目の狩人と白雪姫は、白々しくすっとぼける。

「予定日はいつだ?」

「“そんな”予定はない(・・)

「まだジュディさん、お若いですからねー」

 5番目も(彼にしては珍しく)冗談だとわかる軽い声音で問う。

 すぐさま強調してまで否定する青ひげであったが、それにフォローになっていないフォローをしたのは、狩人の中でも一番の年少者である7番目だった。

「そういう問題じゃねえだろボケっ」

 ツッコんだのは、元々ツンデレ気質で少々口が悪い2番目。

「青ひげさんが『秘密の部屋の鍵』を、ぽーんと渡せるくらい気を許してるって事だもんね。そりゃあ仲を疑ってもしょうがないんじゃないかなっ?かなっ?」

 4番目がいかにも含みなんてありませんよ~とでも言いたげな明るい声で言うと、脳筋族の1人でもある1番目が、「それよりさっさと行こうぜ!お宝がオレたちを待っているんだ!」と漫画の熱血主人公の様にガッツポーズをした。

 同じく脳筋族の6番目が、何も考えていない様子で「おー!!」と拳を上げて同調した。

 そこへ―――

「親父!」「オヤジー!」「オレ達もつれてけー!」「つれてけー!」

 やって来たのは小さな子供達。……ただしその手には各々物騒な(得)物を構えているのだが。

「誰が連れていくか馬鹿者共め。お前らは留守番だ。ジュディに迷惑かけるんじゃないぞ」

 家族の様な気易いやり取りだが、彼等は別に、青ひげの子供という訳では無かった。

「どうしてもダメかー?」

「危険だからな」

 子供たちの中でも年長者らしき少年の意見は、にべもなく却下されてしまう。

 少年は、「ぶー」とぶーたれたが、それでもしぶしぶ引き下がった。

 家長の権限は絶大なのだ。

「なんか面白いもん手に入ったら見せてよ」

「みせろー!」「よこせー!」

 周囲にいた子供達が年長の少年に合わせて騒ぎ始めるが、今度は青ひげも止めなかった。

「では行ってくる。くれぐれも頼んだぞ、ジュディ、チャッキー」

「「はーい!行ってらっしゃーい!」」

「「「らっしゃーい」」」

 その様子を見ていた狩人達も、青ひげの後に続いて玄関の扉へと向かった。


「まるで幼稚園だな」

「どっちかっていうと孤児院だろ?」

 5番目と3番目が呆れた声で言うと、

「どっちだっていいけど、預けられた子供が物騒すぎる」

「“とさつ”が子供とかナニソレ怖い」

 と、2番目と4番目が嫌そうな表情をする。

「その場合『あしながおじさん』も物騒ですから、釣り合いが取れて丁度良いのではないかしら」

 そばで聞いていた白雪姫が、クスリと笑った。

 ……ちなみに会話に参加していなかった1番目と6番目は、さっさと表に出て「早く行こうって言ってんのにー」と不平を洩らしたり、「俺わくわくしてきたぞ!」とテンションを勝手に上げていた。

 ……これから行く先は、かなり障害の多い危険な場所なのだが……楽しそうで何よりである。



 狩人7人と白雪姫、そして領主にして凄腕の槍使いである青ひげ―――ずいぶんと大所帯になった一行が向かったのは、南大陸の中でも南方砂漠地帯に存在する遺跡だった。

 この世界の魔法の歴史は、時の王の手によって全てが廃棄されたものの、人の手の入りにくい未開の大地―――例えばこの南大陸の各地にも、わずかにではあるが遺跡としてかろうじて残っていた。

 数少ない手がかりや、実際に仲間達が旅の途中で見つけた魔法遺跡。

 彼等はその中でも、最高難易度などといわれる様な遺跡の調査に来ていたのである。

 ただ潜って探すだけならば苦労は無いだろう。

 だがこの遺跡には、かなり強い魔物が出る事が判明している。

 また、要所要所に仕掛けられた魔法式(トラップ)も強力で、素人が手を出すのは危険と判断されるほどであった。

 だが―――――彼らには、諦められない理由があった。

 未だこの世界で安心して暮らせるとは言い難い状況であり、これら魔法の歴史を紐解く事は、運命(みらい)を切り開く為の何がしかのヒントになるのではないか……と。

 それに、いくら魔物が強くても倒せないほどではない。

 掲示板で探索の名乗りを上げた猛者達の中から選ばれた彼ら―――

 危険回避や罠に強い(仕掛ける方も見破る方も解除する方も)狩人達、そして強い魔物に対抗できる青ひげや白雪姫。

 人材に事欠かなくて済むのは、こちらの強みだともいえた。

「次はどちらだ?」

「……右方向ですわね」

「さほど複雑な作りをしている訳では無いんだがな」

「……マジうぜえ」

 トラップに引っかかってあわや、という状況も3度目ともなれば、いかに屈強な狩人達であっても息切れの一つもしようというもの。

 マップを見ながら平然と進行方向を確認する青ひげと白雪姫の後ろで、狩人達はすでに疲労の色を滲ませていた。

 それはつまり、トラップ解除→失敗→発動→白雪姫をかばって右往左往、という事が失敗の回数分だけあった訳で。

 ……さすがに、即死トラップだけは他の仲間に任せるなどして回避出来た様だが。

 熟達したスキルを持つ彼らでさえ手こずるほど、難易度の高い遺跡の罠を解除する担当は、主に精神的な疲労も考え順繰りとなった。

 ……参考までに今回の探索で失敗したのは、武闘派でおつむの足りない1,6と、器用さの足りない2番である。


「ねえねえこっちー?」

「チャッキー、勝手に先に行くな」

「はーい」

「まったく、いい返事だな」

「はいはーい」

 問題はトラップだけではない。

 どういう訳か、子守りもしなければならないというトラブルまでついて来てしまった様だ。

 青ひげの家に住んでいる―――というか、匿われているというか―――の子供達の一人、チャッキーと呼ばれる少年が、気がつけば勝手について来てしまったのだ。

 最後のいい返事は一体何だったのだろうか……?

 『かくれんぼ』と呼ばれる隠蔽スキルのせいで、大人達の誰もが気付かなかったのは痛かった。

 だがそこは怒らせると大層恐ろしい白雪姫の事、「蘇生魔法(ザ○リク)はありませんから、お好きに」などと言われてしまえば、さすがのいたずら小僧も大人しくせざるを得なかった様だ。


 入口こそ周囲に擬態するかのごとく、赤土の大地にぽっかり空いた洞窟の様だが、中に入れば自然に出来た構造物で無い事がわかる。

 薄暗い遺跡の内部を、カンテラを持った(来たのなら仕事しろと持たされた)チャッキーが照らし出す。

 足元は、明らかな人工物である細かな段差の階段状になっており、下へ下へと続いて行く。

 高さにして3階ほど降りた頃だろうか、周囲の様子が土から石畳へとがらりと変わった。

「よし、まずはここまでか」

「はーっ、つっかれたー!!」

「何言ってやがる、まだまだこれからだぜ!」

「おうよ!ここからが本番だぜ!」

 緊張し続けて疲れた体をがくりと折った2番が、無駄に元気の有り余っている1番と6番に背中を叩かれ―――「うるせえし痛えよっ!」逆ギレされていた。

 ぎゃあぎゃあと騒ぎ始めた3人に、何かに気づいた5番目が落ち着いた様子で声をかけた。

「3人とも―――来たぞ」

 その一言で目つきが変わる。

「やっと来たか」

「ようやくお出ましだぜ」

「ウサばらし、けってー」

 2番目の目が据わっているのはご愛嬌というものである。

 タンカーとアタッカー、遊撃中距離担当のバランスのとれた―――とれているのだろうか?そんな3人が、揃って前へと駆け出した。


 現れたのは人骨の集合体―――スケルトンなどと呼ばれる類の魔物であった。

「うっわー、いかにもって感じ」

「腐っていないだけ視覚的にはまし(・・)ですわ。とはいえ、あまり長時間見ていたい物でもありませんわね」

「さて、じゃあさっそ―――」

 4番と白雪姫の言葉を受け、行動開始しようとしていた3番の言葉は空へと消えた。

 なぜなら―――

「うおりゃああああ!!」

「んな狭い所でぶん回すなそんなもん!!」

「ん?ダメか?」

「やるならもうちょっと前でやって!青ひげのおっさん!!」

 槍とバトルアックスの回転攻撃に、中距離鞭使いの2番が巻き込まれかけた様だ。

 ……つくづく2番は貧乏くじを引くタイプらしい。

「お約束ですねー」

「ですわね」

「お願い誰かこいつら止めて!!」

 7番目と姫のほのぼの会話に、2番が全力で嫌がった。


 バシュッ、ドシュッ、などという貫いたり粉砕する音と共に、次々と白いガイコツはその数を減らして行く。

 後方から弓の3番と猟銃の5番が撃ち込み、動きの止まった隙をついて前を固める3人が(ほふ)って行くからだ。

「出番がありませんわ」

「まあまあ」

 不服そうな白雪姫に、7番が苦笑を浮かべながらなだめる。

「ま、動く死体程度、俺らの敵じゃないって事でしょ」

「そうそう♪……オレ的には、もっと切り刻みがいのある奴らにいっぱい出てきてほしいところだけどね、くすすっ♪」

 呑気に観戦としゃれこんでいたのは、チャッキーと4番。

 だがその瞳は呑気におしゃべり、というにはいささか剣呑な光が宿っていた様だったが。

 ややあって―――辺りに静寂が戻った。

「先へ進むぞ」

 青ひげの言葉に仲間達はそれぞれ返事を返し、先へと進んだ。






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