エピローグ
まさかの13日の金曜日投稿。
「まったく、散々な目に遭ったったら」
様々な生薬の素がぶら下がる魔女のアトリエにて。
今日も今日とて薬作りだ。
特に最近は色々と活動が活発化しているし、その分需要も増えているから少し多めに作って置かなければならない。
ならないのだが……。
「何だってワタシが城に呼び出されなきゃならないんだ」
呼び出されるだけでは無い。ねこの王やオズらと共に国のお偉いと謁見したりだとか、魔女の薬についての一端を明かす事になったりだとか、とにかく仕事が増えたのだ。
しかもこれは先述した例の“条件”とやらには含まれないという。
……完全なタダ働きじゃないか。
それに、第2王子エドワードとの関係も、良く分からないモノになりつつあった。
城に行けば必ず1度は王子の私室に招かれるし、私はともかく相手は名前呼び(強制)だ。
当人達の感情はともかく、口さがない周囲はあれこれと口を出すし、好き勝手推測する。
王子も王子で、偶に見せ付けるかの如く不必要なまでに距離が近かったりするしな!
……あれは一体何なんだろうか……。
そんな事を考えながらやっていたせいだろう。
「あ」
ぼふん!!
かき混ぜていた鍋が爆発した。
「あ、あー……」
……途方に暮れた声が出てしまったのは仕方の無い事だと思う。
朦々と立ち込める煙と、部屋中に降り注ぎ降り積もって行く白い灰。
まさに一面灰まみれ、だ。
「……この灰……どうしようかねえ……?誰かに引き取って貰って……何かガラス細工でも作ってもらうか?」
誰か、って……そんなの一人しかいないのだけれど。
その後、オズに大量の灰を譲っ……押しつけた結果、ガラスの靴に化けるなど、その時の自分は考えもつかなかった訳だが。……嫌がらせかっ!!
そんなタイミングで、こんこんとノックの音が鳴った。
誰だろう。誰でも良いが部屋はまだ灰塗れで、何処から手を付けたらいいのやら迷う様な状態なのだが。
とりあえず声だけ掛けた。
「何か用かい?今立て込んでるが、それでもいいならお入り」
人に言わせれば「優しい」と驚かれる類の声音で相手を迎える。すると……。
「では、邪魔をする」
……何と入って来たのは先程まで考え込んでいた相手、セントラーダの第二王子、エドワードだった。
お互いにびっくりした表情をしている……と思う。
私は当然、相手が王子で驚いたのだが、王子は……まあこの部屋の惨状を見れば当然か。
しかし、何故平然とやって来るのか。というか良く来られるな。
一体此処を何処だと思っているのだろう。
現地住民の―――一部近隣や親交のある誰それとやらを除けば、無く子も黙る『始まりの―――』現地風に言えば『迷いの森』の恐ろしい魔女様の家だぞ!
本当に空気という物を読まないなこいつは。
しかも、どうやらまた独りで行動しているらしい。
部下の誰にもここまでついて来る勇気が無かったか、あるいはあえて放置されているのか……。いや放置は流石に無いか。
……そもそもこの場所をどうやって知ったのだ、こ奴は。まあ、教える様な人物なんぞ1人しかいないだろうが……。
ともあれ、彼は部下の胃に穴を開けさせたがる人物だという認識で、そう間違いは無いだろう。
……と、此処までつらつらと考えていた所で、見ていた王子の視線がこちらに固定されていた事に気付く。
…………これはもしや、傍目からは見つめ合っている、などという状況になってやしないだろうか。
不覚にも赤面してしまった。
王子の美貌は今更なのでどうでもいい。
ただ気付いてしまったこの状況は、不本意ながら色恋特有の甘い状況を連想させてくれた。
私には、それが我慢ならなかったのだ。
「何見てんだい、じろじろ見るならこき使うよ!」
しげしげ見詰められて途端に不機嫌になる女というのも、彼にとっては珍しいのだろうな。
私は、この状況から逃れる為の方便も兼ねて後片付けを開始すべく、王子に背を向け、箒を取りに歩き出した。
一通りざっとではあるが、灰を袋に詰め込み落ち着いた所で王子は口を開いた。
「お前と俺との婚約が決まった」
「はあっ!?」
むろん魔女は驚愕し、納得できないと詰め寄るが、これが“条件”だと言うと今度は頭を抱え出した。
ねこの王曰く、あれこれあって、眠り姫の呪いを解く可能性のある王子の可能性を潰す為にも、もちろん見張るためにも、魔女と王子が婚約する事になったのだとか。
親魔法派の立ち位置を取る王子としても、これ以上無い繋がりであり、また王国側からすれば、婚約者という立場で魔女を縛る事により、森の守りの要である彼女を城に留めれば確実に守備が薄くなるという利点、それに何より魔女自身の人質としての価値を見過ごす事は出来ず、しぶしぶ了承せざるを得なかったという。
実際に王家に妖しげな魔女の血を入れるかどうかに関しては、意見が真っ二つに分かれたが。
逆に、『森』へは国の方で選抜した専属の騎士を一人派遣し、互いへの各種報告又は連絡役兼調停役として機能させることが決まった。
「森への見張りは構わないさ!だが誰が婚約だって!?そこまでする必要あるのかい!?」
魔女の出した大きな声のせいで、付近の梢から鳥が一斉にバサバサと羽ばたき飛び立つ。
―――割と当然の事かも知れないが、ここまで来た時点で魔女が騒いだ程度で覆る様な、そんな軽い決定では無かったのである。
こうして、うららかな春の良き日に、セントラーダ王国の第2王子はめでたく婚約を発表した。
相手はもちろん――――――
◆エドワード(5th)
中央大国セントラーダの第2王子。
金髪碧眼の偉丈夫。当然の如く美肌。その癖男らしく手はごつい。
かなり無口で見方によっては武骨ともとれるが、真実の鏡で『世界で一番美しい人』に選ばれる程の美貌の持ち主。
無類の新し物好きで、今は『訪問者』達の魅せる魔法に興味深々。
その為ならば貴賤を問わず思うままに行動する為、臣下の胃痛が絶えない。
得意:魔法:光 武器:大剣 特殊:STR特化 そこそこINT ややVIT
肩書き:セントラーダ王国第2王子
◆魔法少女みこっち5
ただ今絶賛ブレイク中の、歌って踊れる魔法少女5人組み。もはやアイドル。
その名に相応しく、使用する魔法はどれも威力が高くてやたらと派手。
オズとは協力関係にあり、各種武器や変身、補助アイテム、さらにはマスコットまで様々な物を作って貰っている。
そのせいか空中要塞に頻繁に入り浸り、ついには専用野外ステージまで造って貰った。
称号:魔法少女
特殊:合体魔法:白龍召喚
★ピュアピンク:アカネ
このメンバーの中では、一歩引いてる感じのお姉さんキャラ。見た目はそうでもないが。
肝心な時には誰よりも熱い心で突っ走り、特に余裕が無い時に本性が出ると、途端に口が悪くなる。
得意:魔法:光 武器:御幣(杖)
特殊:INT重視 ややSTR AGI 浮遊(短)飛行(短)
★ピュアオレンジ:カリン
ちびっこ系元気っ子担当。流されてのち諦め体質。その分切り替えが早くて超前向き。
得意:魔法:光 武器:気功 投擲
特殊:INT ややAGI 浮遊(短)飛行(短)
★ピュアパープル:ノゾミ
野獣巫女……もとい麗しき戦巫女。剣術のスキルはかなり高く、大剣豪との呼び名も。
人と分かり合うためには闘う事も辞さないという、超体育会系思考ゆえの野獣認定。一部でこっそり呼ばれているだけですよ?
日舞の舞い手であり、闘い方にもそれが生かされている。
得意:魔法:光 武器:剣
特殊:STR ややTEC AGI INT 浮遊(短)飛行(短)
★ピュアグリーン:チヒロ
周囲の行動を常に視界に収め、冷静に行動する後衛担当巫女。
守られるお姫様よりは人を率いて戦う真面目な女王様タイプで、本人もそれを常に念頭に置いて行動している。しかしいつまで経っても男心にはめっぽう疎いまま。
メンバーの中では落ち着いて見えるせいか、アカネ、ユキと共にお姉さんグループとして見られる事が多い。
得意:魔法:光 武器:弓
特殊:TEC重視 ややSTR INT 浮遊(短)飛行(短)
★ピュアホワイト:ユキ
魔法少女名物、スーパー天然お嬢様。
教養深く何でも知っていて、実際バイリンガルなのだが、本人は超天然(2度)。
あんまり考えないで行動するタイプで、その都度騒ぎを引き起こすトラブルメーカーな一面も。
しかし、その儚げでたおやかな外見ゆえ、お姉さんグループとして見られる事が多い。
得意:魔法:光 武器:細剣
特殊:INT重視 ややSTR 浮遊(短)飛行(短)
◆オズの魔法使い
凄腕錬金魔法使い。魔法ジャンキーの一角。
掲示板にも良く出没しており、いわゆる『常連』
エメラルドと金の煌めく空中移動要塞『エメラルドラド』(自作)に住んでいて、頼めば大体何でも作ってくれる『何でも屋』。
それゆえ、森の住人達から日々様々な相談を受け続ける毎日を送っている。
皆の生命線であり、その性質上、森の魔女とは昔から関わりが深い。
実際に、異世界召喚以前から交友はあった様だが……?
得意:魔法 風 武器:杖 特殊:INT(上限突破)TEC重視 錬金調合
称号:エメラルドの都の魔法使い
◆浮かれ小坊主
その名の通りの掲示板内愉快犯筆頭。
実際頻繁に出没しており、いわゆる『常連』むしろ『レギュラー』
活動拠点である妖精郷においては、妖精王、妖精の女王の次に認められたエース的存在であり、実際その成立にも深く関わるが、本人の「だからなにー?」といった風な、ひょうひょうとした性格も相まって、尊敬される事はあまり無いようだ。
親指姫の件にしろそうだが、おちゃらけた言動を繰り返す割に、1度認めた身内にはかなり甘い。
得意:魔法 風 武器:なし 特殊:INT 浮遊 飛行 変身魔法
称号:いたずら妖精パック
◆森の魔女
森の奥に居を構える、『始まりの森』の守護者にしてご意見番。
幻影と共に生きていると言っても過言では無く、日によって気分で外見がころころ変わる。トレードマークは魔女専用黒ドレスと中折れ式三角帽。
ただしこの章における彼女の衣装は、手芸部製作による力作(実物)である。よって脱ぐ暇なんか無いから、あの恰好で城まで降下した訳ですな。
他の魔法ジャンキーと共に、森の運営の中核を成す『イミテーションブルー』と『魔力循環制御回路陣』システムを構築した。
現在最も日常的に、かつ効果的に運用する一人である。
神を封印する為に眠り姫に呪いを掛け、別件ではあるが白雪姫に毒林檎を渡したのも彼女。薬作りでも皆の支えとなっている。
責任者の一人として塔を見守る役目についている為、基本的に森から外に出る事は無かったのだが……。
常に老婆の様な話し方をするがそれは全て演技であり、実際の年齢は若い。
年相応の話し方をする時には、何処となく令嬢の様な気品さえ漂う。
本来は理知的な女性であった様だ。
得意:魔法 幻影(鏡)、光、風、空間 武器:杖
特殊:INT(上限突破)薬剤調合
称号:魔女→灰かぶり(NEW!)
ピュアピンクの性格は2次(創作)仕様という事で一つ……。
むかーし、1のヒロインと相方、2のヒロインと相方の4人がばったり出会って、3の時空に跳ばされる話を考えた事があるのですよ……。
そして魔女さんに幸あれかし。




