【いいこと】現地住民と仲良くなったらageるスレ7【あったよ!】
説明パートラスト。
「その点については、この世界は相当徹底しているよ。よっぽど『時の王』が上手くやったんだろうな」
ティーカップを傾けていたオズが、ぽつりと呟いた。
「そうだな。『彼の王』は、古代セントラーダの王だった。当時の世界は争いが絶えず、それに関する文献も数多く残されている」
王子のいる国の事だ、今は簡単な話しかしてはいないが、恐らくは私達より余程詳しいのだろう。
「魔法を禁止し、魔道具にも制限を掛けた。そしてそれを世界中に生きる人すべてに納得させた。今なおその誓いは根強く守られており、その後北方ノーディスラント領がノーディス公国として独立し、東西の大陸が海に沈み、大国セントラーダとしての運営方針が変わっても、その誓いを破ってまで自分の強さを知らしめようと言う人物はついぞ現れなかった」
いつに無く饒舌な王子の言葉に、親魔法派などと言われる彼であっても『彼の王』に対する憧れや尊敬の念の深さが伺い知れる。
だがそれは、裏を返せばこういう事だ。
「魔女狩り、魔法使い狩り、魔技師狩り。全くこの世界はあたしら童話世界の住人たちが闊歩するに相応しい、真っ黒歴史を持つ世界の様だねえ」
白い白いと信じていた人達に、この世界は実は真っ黒なのだと信じて貰う事は難しい。
甘くて優しい味のミルクティーに、ぽつりと一滴黒いコーヒーでも混ざったかのような錯覚。
恐らく、この世界の住人にしてみれば、私達の認識はこの様感じなのだろう。
きっとそれは、暴いてはならない真実なのだ。
王子は、きっと私の言葉が聞こえていたに違いない。
それでも彼は、何も言う事は無かった。
「先程、神が再び目覚める可能性があると言ったな。その場合、この世界はどうなるのだ?」
「そんな事は知ったこっちゃ無いね」
にべも無く言い放つ。どうにかするのは神であって我々では無い。
だが、余りに不親切だとでも思ったのか、オズが苦笑しながら言った。
「まあ、多分また戦争になると思う。こっちとしても決着は着けたいしね。当然、出来る限り俺達で片を付ける気ではいるよ。出来れば味方になって欲しいとは思うけど、それは虫の良い話だからな」
その言葉に続く様に、気を使ったらしい魔女っ娘達が、口々に囀り始めた。
「神様を―――その、殺してしまうのは、さすがにこの世界の人々には耐えがたい事ですよね?」
「まあね。神殺し、なんて、ある意味カッコイイ言い方ではあるけどさ」
「っていうか、私達でも殺せないんでしょ?強すぎて」
「今、オズさんや魔女さんが中心になって、神様をこの世界の理の通じない場所に追い出そうって魔法を開発中らしいよ」
「ノゾミ」
「あっ」
珍しく口を滑らせたのは、普段は冷静な筈のノゾミだった。
どうやら彼女も、王子なんぞという非日常を目の前にしてテンションが上がっている様だ。
だがまあいい。ここまでくれば話してしまっても構わないだろう。
幸い此処には王子一人。彼が無用な事を口にしないのは、この僅かなやり取りの中でも良く分かる事だ。
「神様に、この世界自体を害する意思が無い事は分かっている。何せ創った張本人だしね。何も知らない俺達をすぐさま世界へ解き放たなかったのも、恐らくこの世界の為なんだろう」
「こちらには有難くない事実だがね」
オズの言葉に堪え切れず、苦く言う。
「だが、その上で神が再びあたしらを束縛し自由に操ろうとするのならば、こっちとしては抵抗するしか無いんだよ」
「共存は無理なのだろうか?例えば神が、もう一切この世界に干渉しないと宣言するなどした場合は?」
「どうかねえ。あの神様を見る限り、そいつは望み薄だと思うがね」
「あくまで可能性だからね。復活もしていない内からヤツを信用する事は出来ないよ」
王子の言葉にオズと2人、畳み掛ける。
「神に関して言うなら、最終目標としては、さっきノゾミが言った通りに中途半端に封印している神がもう一度目覚める前に、完全にこの世界から放逐する事、かねえ」
「その為にも、魔法の研究は止められない。どんなに嫌がられても、うとまれても、そして何年かかろうとも、きっと成し遂げて見せる。じゃないと、仲間である眠り姫の眠りが無駄になってしまうからな」
「時間と次元と精神の強制支配が神の領分ならば、それ以外の全てを使ってでも、必ずやいつの日にか、完全なる自由を手に入れて見せるさ」
それが、私達の出した結論だ。
「具体的な事を訊いても良いのか?」
「構わないよ。今はまだ机上の空論に過ぎないからね。現在は―――空間の魔法で次元に干渉する術を模索中だよ。ただし、その魔法の行使には途方も無い魔力が必要となるだろうがね」
その為に、魔力循環制御回路陣を駆使して魔力を貯め込んでいるのだ。
何処にって?そりゃあ決まってる。地下に眠る“イミテーションブルー”にだ。
「神の持つ力―――理の通じない世界からならば、神といえどもそう簡単にこの世界に手出しできない筈だ。例えそれが神自身の作りだした世界であったとしても」
「そこまでして、ようやっと安寧が手に入れられるのさ」
神というのは私達にとってはもはや、トラウマレベルの存在なのだ。
「まあ、神様の事は恨んでるし大嫌いだけど、自分達には、この土地への敵意は無いよ」
好きにさえさせてくれたらね、とオズはティーカップを傾けながら言った。
体を温めてくれたお茶は、もう随分温くなっていた。
「でもだからと言って無抵抗非暴力ではいられないし、いるつもりはない」
付け加えるとするならば、やはりこれだろう。
それは神との交戦で学んだ事だった。
「手をこまねいていた所で、いつまでたっても事態は変わりはしないのだからね」
ある日突然現れた我々が、この世界に、そして魔法という技術と概念に固執する理由。
神という存在とその対立についての今後の展望と、この世界に対するスタンス。
舞踏会で話し合う筈だった内容は、恐らくこんな物だろう。
もっとも仲介役が居ないままに話しているので、多少過不足はあるかもしれないが。
そこら辺は改めて、ねこの王にでもお願いして置こうか。
「少々、こちらの話をしても良いだろうか」
話の区切りが付いた所でアカネが気を利かせて茶を淹れ直し、やや落ち着いた雰囲気に戻った頃、改まった雰囲気で王子が話し始めた。
「こちらの状況としては、ここ数年の間に魔法を恐れていた人々の中でも、そちらのおかげで嫌悪感や忌避感といった物は徐々に緩和されつつある様だ」
これは何もセントラーダに限った話では無い。北のノーディスも、南の大陸でも――――――まあ何せあちこちで暴れまくっているからな、うん。
「だがそのせいで、限られた魔法管理者、管理担当官らの矜持を刺激した事も事実だ」
長きに亘って世界を、その仕組みを支えて来たという自負があるのだろう。
分からない話では無かった。
「特に強硬に魔法を否定する一派は、皇太子―――俺の兄を旗頭に据え、森の住人の力を何とかして削ぎ落とし、再び森に封じ込めるつもりの様だ」
その台詞にオズと顔を見合わせる。
「おう、何というブーメラン」
「どいつもこいつも考える事は一緒だねえ」
邪魔なモノ、目障りな物は、森に捨てて出さない様に鍵を掛けるのが、今後の主流になるかも分からんね。
何となく魔女モードのセリフでそう思う。
出来っこ無いとは思うが。
この世界の、抑圧されて碌な発想も持た無い魔法使いや戦士達に、私達が負ける要素は皆無といって良い。
手加減せざるを得ないから苦戦しているのであって、その箍が外れてしまえば、数日でこの世界は落ちるだろう。
……ん?いや待てよ?オズだのねこの王だのが国家に手を貸している現状、そうも行かなかったりするのだろうか?
しまった。国への介入、早まったんじゃなかろうか、これ。
続く王子のセリフは、それを肯定する響きがあった……気がした。
「何故か兄は自信があるらしい。旧型の武器に精度の劣る兵、大きな魔法の一つでもあれば簡単に突破されるであろう防御。それは分かっているのだ。分かっているが、止めようとはしないのだ」
……この世界の住人ならば、それが当り前なのだろう。
皇太子だって、好きで何度も挑戦しているのではないのかもしれない。
自分の信念の為に旗頭になる事を決めたのだとしたら尚更、下に続く者達の為にも意気消沈した態度は見せられないだろう。
だが、そんな一連の流れが、王子にはどうしても歯痒い様だった。
「それではこの国は、この世界は発展しない。それでは今までと何ら変わりない。……人々がこれまでやって来た事の、積み上げて来た歴史の意味が無い。……実際に森の介入を受けた森の近隣の村が、大都市も真っ青な変貌を遂げていた事を、俺は実際にこの目で見たのだ」
近隣の村というのは、恐らく森が現れた場所にあった、あの小さかった村の事だろう。
初めて私達が森から出て来た時、この世界における普通の人間という存在に初めて接触した場所であり、そこで様々な事を教わった。頻繁に起こった揉め事と、その理由についても。
現在そこにイミテはないが、ネットは森から直で繋がっている。
お礼と称して発展に貢献して来たが、それについても当然揉めに揉めたのだ。
当時の村長の英断には敬意を表したい。
あの村を―――今では立派な港湾都市だが、それを実際に見たと言ったが、いつの間に来たのだろうか。全然そんな話は聞かなかったから、正直驚いた。
「国の英雄を、魔法を否定した『時の王』を尊敬するあんたが、魔法を利用しようってのかい。そこまでして力を手に入れて何をする気だい?」
自身の崇める英雄を、貶める事にはなりはしないのだろうか。
それ位、彼のやろうとしている事は、これまでとはまるで正反対の事だ。
「『彼』はそれまでの世界の在り様を一変させた。ならば俺も、同じ事をするまでだ。方向性は真逆だがな。これ以上の発展を望むのならば、この世界に遍く存在する魔法という概念、技能、技術は不可欠。先程『使える物があるのに利用しない手は無い』、そう言っていたが、俺も全く同じ意見だ。これまでそちらが造って来た物を見て来て、その考えは一層強まったと言って良い」
……私達は余計な物を見せたんじゃなかろうか。
不意にそんな嫌な感じがして顔を顰める。
……いい、大体建築部のせいだ。……そういう事にして置こう。
「とはいえ、俺一人ではどうしようもない部分もある。兄の件もある。最終判断は国王がするが、その前に少しでもいいから繋がりが欲しかったのだ」
その結果がこの状況という訳か。
やれやれ、随分と大事になったものだ。
そんな風に思っていたら、目の前の美麗好男子がとんでもない爆弾を投げつけて来た。
「だから俺は、魔女、『お前が欲しい』」
「……」
嫌な物を見た、或いは嫌なセリフを聞いた、と思うのも、拙い物を飲んだかの様に顔を顰めるのも許して欲しい。
だってそれは、まるで……
「どうした?」
「いや、今のあんたのそのセリフ、昔どっかの『変態(魔導師)』が同じ事言ったと思ってね……」
あと後ろのギャラリー、「キター」じゃないよ。何が「キター」なものか。全然「キター」じゃないったら。むしろ「コネー」だから!
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424:無礼MEN! ぬこみみベース
グローブタウンの双子ちゃん達カワユス
お耳触らせてって言われちったー(はあと)
持ち帰っても良いですか(真顔)
425:白鳥の湖の悪い魔法使い
通報(真顔)
426:おおかみさん@ロリコンはry
通報(真顔)
427:7人の狩人 5番目
おい騎士団仕事だ
428:くるみ割り人形
≪緊急クエスト≫変質者を取り締まれ!
受注しました
429:無礼MEN! ぬこみみベース
ちょwww
430:浮かれ小坊主
例え合法でもロリはマズイよねー☆
他にはー?
431:ノロウェイの黒牛
お前は笑点の司会者か
あー、作ったり狩ったりした物が売れると嬉しいぞ
仲間とか現地民とかそんなん関係無い話かもしれねーが
432:無礼MEN! わんこキーボード
ハゲ同!
ここ最近になっての事だけどさ
何こいつら変な人達頭おかしいの?
的な視線が減って来たのは本当に嬉しいよなあ
もうやっとだよー
433:浮かれ小坊主
この世界の人はあんまり音楽とか聞く機会なさそうだし
そもそもメタルとかプログレとか言っても知らないだろうしねー
てゆーか
無礼MENの場合はボーカルのせいじゃない?(真顔)
434:俺は獣医だー!
般若心経も分らないだろうな
435:星の☆プリンスさまっ☆ミ
宗教はちょっと……
436:ハーメルンのセロ弾き
いやァ、考え方だけなら良いんじゃねェか?
実際ロックアレンジとか一時期流行ったしなァ
437:赤い靴
えっ!?そうなの!?XD
438:美髯聖女
そうなのよ
うちもだんだん現地のお客様が増えて来たわ
最初は変態の巣窟か地獄の1丁目みたいに恐れられてたっていうのにね
それから徐々に度胸試しみたいなお客様が増えてきて……
今じゃ常連さんもいる位よ
439:森の魔女
(゜∀゜)人(゜∀゜)オカーマ
近隣の街で顔見知りになって挨拶されて
それが当たり前になる
最近用があって街に出ると
薬無いの?って聞かれる事もあるな
人との繋がりは得難い物だと本当に思う
440:エメラルドの都の魔法使い
魔女さん仕事終わって無いでしょ?
現実逃避するにはまだ早いお!(#^ω^)ビキビキ
帰って来て!(笑)
441:浮かれ小坊主
えっ?
あっ(察し)
442:おおかみさん@ぼちぼち落ちるわ~
魔女さん(笑)
443:7人の狩人 5番目
魔女ェ
444:ぬこの王さま
魔www女wwwさwwwんwww
そんなに神経使ってんのか魔女さん(笑……えないかな
オチャドウゾー ( ´・ω・`)つ且~~
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元々は舞踏会が今回の様な親魔法派との会談の場となる筈だったのだが、眠り姫の一件でこんな所まで足を延ばす羽目になってしまった。
……こんな事を改めて思い出すという事自体、気が緩んだという事だろう。
疲れているのか、何だか体がダルい。
それにそもそも丸一晩寝てないので、いい加減そろそろ眠気が勝って来ている。
夜明けを迎えつつある室内にも、そろそろ解散の空気が漂って来ていた。
「さて、それじゃあ今回はこれ位にしておこう。城までは魔女さんが送る?それともこの城で一気に王都上空まで行っちゃう?」
「あたしゃ眠いから任せるよ」
これ幸いと押しつけると「おっけー」という何とも軽い声が帰って来た。
ソファに背を預け、目を瞑る。城の上からは私が送る事になるだろう。例の2人乗りで。
それまでの、ほんの一時の休息だ。
「王子……エドも少し休んでおくれ。何、この城の速度じゃ、そう大した休憩にもならんだろうがね」
口だけ動かしてそれだけ言うと、何故か魔女っ娘共が「ざわ……ざわ……」などと言い始めた。
「魔女さんが優しい」
「魔女さんが親切」
「魔女さんと王子様、もう名前呼びする仲ですか」
「魔女さんって、実は……」
「あっ、私、オズさん一人じゃ大変だろうから、お手伝いに行ってきますね!」
「ユキ、余計な気ぃ回すんじゃないよ」
ったく、これだから若いのは。
「あたしゃ寝るから、王子殿下の相手がしたけりゃ好きにしな」
単に放り投げただけだというのに、何故かブーイングが返って来た。
……どうしろというのだ。
やがて軽快な―――ロボットアニメの発進BGMが城中に流れ出し、オズのアナウンスが入った。
『空中移動要塞緑柱輝石の理想郷、発進!!』
ヴヴ……
低い唸りと振動の後、空飛ぶ城は森を背に、ゆっくりと移動を開始した。
「ほう、これはまた素晴らしい」
「いやー、王子さんがこれに興味を示してくれるなんてねー!」
オズの居場所は何処かと知りたがった王子の為に、態々艦橋まで案内するハメになった。
少しはゆっくり出来ると思ったのだが、結果はこれか。
「ここで操縦を行うという事か」
「んー、実は命令実行なら何処に居たって出来るんだけど、ほら、艦橋で操舵輪握って『発進!』てやるのが“男のロマン”ってもんだろ!?」
「ふっ、成程な。それは確かに胸が高鳴るというものだ」
「そーでしょそーでしょ!!いやあ、王子さんとは良い酒が飲めそうだ!」
目を輝かせてじっくりと周囲を見渡す王子と、趣味を褒められて喜色満面のオズ。
まったく、これだから野郎共は。
「魔女っ娘も魔女さんもしょっちゅう此処に顔出す割に、こういう事にはあんまり興味示してくんないから寂しかったんだよねー!」
「別にワタシにこだわらなくても、趣味が同じ奴らはたくさんいるだろう?」
「そりゃそうだけどさ。やっぱこういうのは男の人の方が食いつき良いんだなって、改めて思っただけ」
そう言うとオズは、満足そうに周囲を眺める。奇しくも王子と同じ動きだ。
まったく……。
「動力はやはり魔法……でしかありえんな。地上とネットワーク繋がっている様には見えんし、もしやイミテーションブルーが使われているのか?」
「ご明察。イミテーションブルーのレプリカが動力源さ」
「ふむ。しかしそれ程に凄い力を持つと言うのか?そのイミテーションブルーは。この城一つを浮かせるだけでも、一体どれ程の魔力が必要となるか……」
「ああ、それは……」
ああこりゃあ、すぐには話が終わらなさそうだ。
動力から浮遊魔法固定装置、さらには推進機関部の話へ移り始めた。
今の内にさっきの部屋に戻って、少しだけでも休息をとらせて貰おうかね。
やってられんと踵を返したその時、どん、という大きな音と共に城が揺れた。
「なっ!?」
「きゃあっ!?」
「何!?何が起こったの!?」
「状況は!?」
「結界、作動します!」
一緒にいた魔女っ娘達が、慌てて緊急態勢に入る。
目の前の巨大モニタから見える外の景色は、王都の様子を映し出している。
いつの間にか城は、セントラーダ王城の真上まで来ていた様だった。
「今のは……城からの砲撃か……?いつの間にそんな装備を……?」
「おやまあ、住んでる本人が知らんのかい?って事はかなり極秘の秘密兵器扱いだって事だねえ。目標はいくつかあるだろうが……やはり第1はあたしらだろうね」
王子と話し込んでいたら、傍らのオズがさも今気付いた様に声を上げた。
「あ、ステルス掛けるの忘れてた」
お前かあああああああ!!!
これで少しは説明になってるかな……?




