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童話トリップ!  作者: 深月 涼
第3章 シンデレラ
17/53

【もしかして:】始まりの森侵入者迎撃スレパート35【ちょっと本気!?】

BGM:TW○-MIX推奨





 この場所を魔法をかけ続けてまで守ろうとするのは、何もイミテーションブルーを守る為だけではない。

 それ以上に重要なモノが、大切に守り続けなければならないモノが、ここには眠っているからだ。

 故に誰であっても―――例えばそれが王子であったとしても、“ただの”王子では意味が無い。

 ここに―――『眠り姫の塔』まで来られるのは、塔を造った仲間以外では呪いを解く資格のある王子だけ。

『眠り姫の王子』

 そんなものは、存在しない筈だった。

 何故なら『彼女』は『一人』でこの世界へとやって来たのだから。


 だからこそ、この塔に何の不都合も無く存在出来る“彼”は異常なのだ。

 追跡する魔法だと?冗談では無い。

 湖には全体を覆う様に侵入禁止の結界が張ってあるのだ。

 それ故、妖精郷が此処に存在するというのに。

 例え魔法での移動であっても、許可無く他人が入り込むなど有り得なかった。

「ともかく、ついて来て貰う……」

 どがああん!!

 言い終わらない内に、真正面の森が派手に吹っ飛んだ。

『魔女さん!何やってんの!?助けてよ!!』

 それと同時に頭に響く位に大きな音量で、切羽詰まった通信が入る。

 今の大声は誰だい!?まったく。

「やかましい!今それどころじゃないんだよ!そっちはあんた達でなんとかしな!」

『無茶言った!?』

『止めてください死んでしまいます!』

『何とかしてぇ~』

 野郎共がいくら媚売った所で、全然助けようという気にはならんね。

 だが……。

『魔女さん……っ』

『ちょっとこっち、気付かれたみたいだよっ!』

『魔女さんっ、塔の魔法どうなってんスか!?さっきから揺らいでて、微かに見えちゃってるみたいッス!!大至急修復した方がいいんじゃないスか!?』

 湖にいる筈のカエルのその言葉に、忌々しげに隣を見やる。ああ、これはもう。

「……呪い、解けるの?」

 低い声で肩の上の住人が呟く。可愛らしい姿に似合いのつぶらな瞳は今、私と同じく悪鬼でも睨み付けるかの様に厳しい。

「まだそうと決まった訳じゃないよ。だが、まずはこの事態をどうにかしなければだね」

 私は右手の甲を自分の顔に向ける様にして、静かに手を翳した。

 甲に光る紋章が浮かび、光り出す。―――準備完了。スイッチを入れた。


 イントロが流れ出す。


『うおおおおおお!!』

『キターーーーーー!!』

『総員退避ーーー!!』

「退避する前に連中一ヶ所に集めときな!」

『無茶言った!?』

『このおにちく!びくんびくん!』

『もうヤダこの人!』

 野郎共が涙目になっとるが知った事かい。

 ちらりと隣を見ると、やはり無表情のままじっとこちらを見ている。

 まあ、止めるつもりが無いだけまだましかねえ。

 その分兵士には同情するよ。何せ、見捨てられたも同然なんだからね。

 ま、何かあったら困るのはこっちだ。出来るだけの事はして置こうか。

「シャドウシールド」

 私とパック、王子の目の前に、目隠しの真っ黒な四角いウィンドウが現れる。

 向こうが透けている為、このままでも状況は把握出来るだろう。

 森の連中まではこの位置からだと魔法は届かないので、……自力でどうにかして貰おうじゃないか。

 さて、これで準備は整った。


 イントロが終わったその瞬間、

 半透明の巨大なビジョン―――昔アニメで見た白い人型機動兵器(ゼ○カスタム)が森の上空に出現し、その背中の真っ白な翼を左右に大きく展開し、何か(ツイン)筒状の(○゛スター)様な物(ライフル)を持った両腕を左右に真っ直ぐ伸ばし―――


    その場でぐるりと、一回転した。


「ぎゃあああああああ!!!」

「うわああああああああ」

「ひいいいっ」

「目が、目が」と、ここからでも呻き声が良く聞こえて来る。

 巨大な白い機動兵器が、両腕に持った武器から視力を奪うほどの強烈な閃光を発射しながら機体ごと旋回させて360度攻撃した為、遮る物の無かった兵士達は目に光が直撃した事だろう。

 しばらくはまともに見えないどころか、この騒ぎだと最悪失明者も出ているだろうね。

 後は縛って王宮にでも届ければいいさ。

 そうすりゃ向こうで、手当てなり何なりしてもらえるだろうからね。

 命に支障が無い限り、失明程度、どうという事は無い。最悪魔法でどうにかすればいいだけの事だ。

 今の王宮ならばそれ位の医療技術はあるだろう。あのねこの王が居付いている時点でお察しというやつだ。

 まあ心に付いた傷については、どうしようもないかも知れんがね。ひぇっひぇっ。

 おっと……そういえば森にいる他の住民達は無事だろうか?

 イントロが流れた時点で、次の行動は予想が付いただろうが。

 念の為、掲示板を見ておくか。

 王子の件についても報告して置かねばならないし、ねえ。


「さて、ワタシはたった今、あんたの国の兵士に対して酷い仕打ちをした訳だが、捕まえるかい」

 光が消えたと同時に目の保護用の魔法も消えたから、森の惨状は彼にも良く見えている筈だ。

「あれは―――お前が召喚したものか?」

「……そっちが優先かい。城の兵士に同情するよ」

 呆れたのも無理はないと思うが。

 肩の上からも「ホントに魔法、好きなんだねー」と感心した声が掛かる。

「召喚では無いよ、只のハリボテさ。捕まえる気が無いというのならば、今度こそこちらにご同行願おうか、『セントラーダの第2王子、エドワード5th(フィフス)』殿」


「あっ、ちょっと待って!」

「どうしたね、パック」

 王子を連れて塔の内部へ行こうとした時、後ろからパックの慌てた声に引き留められた。

「僕、ちょっと妖精郷の方を見てきたいんだけど……」

「ああそうだね、近かったし心配か。構わないよ行っておいで」

「うん!それじゃあさっそく行って来るよ!後で必ず報告上げといて!王子様、ごゆっくり~」

 ぽん、という音と共に衰退妖精から普段の姿に戻ったパックは、王子に手を振った後、弾丸の様なスピードで塔の真下へと降りて行った。

「妖精郷?」

「彼等―――妖精達が集まって暮らす集落さ。この塔の真下の湖にあるんだよ。まあ普段、人には見えないがね。さ、あんたはこっちだ。ついてきな」

 こうして、私と第2王子は屋上から塔内に入り―――

「なんだ、これは」

「地上からの直通エレベーターだよ。一々階段じゃ面倒臭いじゃないか」

 どうやら王子はさっそく驚いてくれたらしい。ふん、これで少しは溜飲が下がるってものだ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


752:おおかみさん@腹減った

    ふいーっ

    やっと終わったか~


753:魔弾の射手

    手加減せんといかんのがまたしんどいわ


754:美髯聖女

    右に同じく……と言いたくもなるわねえ

    この状況じゃ


755:親指姫

    森の皆さん大丈夫です?


756:浮かれ小坊主

    点呼!


757:へんぜる

    1!


758:ぐれーてる

    2!


759:青い鳥

    3!


760:おばけのパパ

    4!

    こっちは家族全員無事だ!


761:ハト

    5!

    青い鳥含め従業員全員の無事確認済み!


762:鉄のストーブ

    _|:3」∠|_


763:死神の名付け親

    おいストーブ


    誰か起こしに行ってやれ


764:死者の王

    魔女め


    殺す気か


765:浮かれ小坊主

    ああ王様強い光ダメなんだっけ


766:羽帽子の騎士

    童話騎士団これより救助救援に向かいます!


    手が必要な方は遠慮なく名乗り出て下さい!


767:くるみ割り人形

    同じくこちら童話騎士団!

    修理修復の必要な方がいたらお声掛け願います!


768:妖精王

    一通り見て回ったが

    妖精郷の方はどうやら大きな混乱はなさそうだ

    

769:浮かれ小坊主

    妖精郷きかーん☆

    念の為ちょっと詰めてようかな?


770:森の魔女

    予告無しにぶっ飛ばしたが問題なさそうだね


771:死者の王

    おい


772:森の魔女

    あんたが出張って来るとは予想外さ

    だがどうにか出来ただろう?


773:死者の王

    ……まったく


    次は無いぞ


774:森の魔女

    悪かったよ


    他にも薬の入り用がある奴らは願い出な

    今ちょっと手が離せないんで後になるが

    ……誰かに頼むか


775:浮かれ小坊主

    魔女さん今王子様と一緒だからね~……


776:ジャックと豆の木

    え!?マジかっ!?


777:人魚王子

    先程の塔の揺らぎは彼のせい

    ……という事かな


778:青い鳥

    うわわわわ

    やばいよやばいよ~!!


779:森の魔女

    それに関しては後ほど専スレ立てるつもりさ

    可能性の検証だけ先に済ませて来るから

    少し待っといとくれ


780:おおかみさん@一息終了

    あいあい


781:浮かれ小坊主

    スレ立てだけでもやっとこうか~?


782:森の魔女

    ああそれはいいな

    実際手が離せないから

    いっそのこと全部頼んじまおうかね


783:エメラルドの都の魔法使い

    うわ全部終わってた


    もうちょっと機動力上げるかなあ


784:妖精王

    これ以上上げてどうするwww


785:魔弾の射手

    音速超える気かいな

    誰w得w


786:エメラルドの都の魔法使い

    何か手伝う事あったら言ってね(´・ω・`)


787:ドラゴンライダーエルマー

    森の上空なう!

    物資の搬入から人の運搬まで何でもするから

    ジャンジャン言いつけてねー!


788:浮かれ小坊主

    クレイジーなタクシーさんキタ━(゜∀゜)━!!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「……所で魔女」

「何だね王子様」

「先程の発言を訂正したい」

「発言?」

 何か変な事を言っただろうか?……いや、私も彼も特に可笑しな事を言った覚えは……まあ、王子は散々変な事を言っていたか。

「俺は5thではない」

「は?」

 え、そこか?

「いずれ兄が王位を継いだ時、俺も大公位を継ぐだろう。しかし俺はまだその位に立ってはいない。故に5thではない」

 ああそうかい、こまっかいねえ。

「それに、王子と先程から呼んでいるが、王子は俺だけでは無い。兄や、ノーディスの王子がいる。よってそれでは呼称として不適切だ」

 ……小舅め。

「じゃあ何て呼んだらお気に召すんだい?エドワード殿下」

「エドで良い」

「そうかい」

 随分砕けた間柄になったものだ。

「さっきの兵は良いのかねえ?あのまま放って置くのは、この国の第2王子として無責任じゃないのかい?」

 失礼ついでに聞いてみる。この件が終わったら引き摺ってでも持って帰ってくれないだろうか。

 しかし王子はあっさりと、

「あれらの仕事は、俺の預かり知る所では無い」

 無関係だとバッサリ切り捨てた。

「……聞いた話の通り、随分と非情なお方の様だ」

「……」

 それに対して王子は、特に何も言わなかったが。

 

「城にいた時と随分言葉が違うな」

 塔の内部は、見た目よりかなり広く出来ている。

 それによって実際に移動する距離もまた、長くなってしまっていた。

 屋上から地上まで、直通といえどももう少しかかる。

 沈黙が気まずいのか、今度は王子の方から話しかけて来た。

「そりゃあ、時と場所と場合を考えた話し方をするのは当たり前さね」

「ならば、今の“それ”が、本来の話し方なのか?」

「普段は“こう”だね」

「懐に入れて貰ったと、そう受け止めても良いのだろうか?」

「馬鹿言うんじゃないよ。それ所じゃ無くなっちまったからに決まってんだろうがい。もし万が一再び王宮へ向かう様な事があったら、遠慮なく他人様使用に戻してくれるわ」

「そうか?俺としては、これを機に親交を深めたいと考えている」

「ほ!」

 どういう意味で言っているのだか。

「元々そちらの方から持ちかけた話だ。当然調べたのだろう?どれ程知っている?俺について」

「王子―――エド殿は第2王子で親魔法派。剣の才に恵まれていると聞くが、追跡と転移の魔法(しかもねこの王さま印の複合型だ)を行使する時点で、魔法についても才能があると見たね」

 個人情報と言うならこの辺りだろう。生年月日なんぞには興味が無い。

「そうだな。付け加えるとするならば、ノーディスの王子とは同年で、お互いに留学経験がある。サウバークの現国王とも交友関係にあり、将来は国政で身動きの取れなくなるであろう皇太子(あに)の代わりに外交方面を主に担当する事になる、という辺りか」

 ……誰もそこまで詳しく話せと言って無い。

「では逆に問おうか。エド殿下は」

「エドで良い」

「……小舅」

「何か」

「いや何も。エドはワタシについて何を知っているんだい?」

 その言葉に王子はやや黙した後、やたらスラスラと言葉を紡ぎ出した。

「魔女は―――幻影を主とし、その他に光、風、空間を操ると聞いている。その他、風、あるいは空間に関連付ける事で、鏡や音といった物を媒介に魔法を行使する事もある、と。さらに各種薬物……爆薬から劇薬を扱うとも聞いたな」

 詳しい。少なくとも基本的事項は抑えられている。……まあ、爆薬を扱うのは錬金術師であるオズと組んだ時位だが。

 ……しかし裏を返せば、それ位は情報が流れているという事か。

 ねこの王があえて流した情報もあるだろうが……。

「後は、どの程度までそれが知られているかだねえ」

「……何か言ったか?」

「いいや、何も」

 僅かな呟きに王子が反応したが、すっとぼければそれ以上は追及せず、その後沈黙の中、エレベータはようやっと地上へと到達した。








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