【Side Story】 幻の大職人と、孫娘の基準値
ヴィル・クラフト。
ソフィアの祖父であり、彼女に魔道具作りの全てを叩き込んだ師匠。
この世にいる職人たち全員に、もし、「この世で最も優れた職人は誰か」と問えば、彼らは迷わずヴィルの名を挙げるだろう。
彼は、まさに「神」の如き腕を持っていた。
無から有を生み出し、一本で国家予算が吹き飛ぶほどの神器を量産し、時には戦場で失われた兵士の腕を、義手とは思えぬ精巧さで「再生」させ、老いた貴婦人を若返らせるほどの魔道具すら作り出した。
では、なぜ。
なぜ、それほどの偉業を成し遂げたヴィル・クラフトの名は、歴史の表舞台に刻まれていないのか。
なぜ、教科書にも載らず、ただの「辺境の職人」としてその生涯を閉じたのか。
答えは単純である。
彼の仕事が、あまりにも『荒唐無稽』すぎたからだ。
例えば、ある地方で崩れかけた城塞が一夜にして修復されたとする。
人々はそれを、「凄腕の職人が直した」とは考えない。
「大地の精霊が奇跡を起こしたのだ」と解釈する。
例えば、折れた聖剣が、以前よりも鋭い切れ味を持って復活したとする。
人々はそれを、「職人の修理技術がすごい」とは考えない。
「女神の加護が宿ったのだ」と崇める。
ヴィルの技術は、人間の理解の範疇を軽く凌駕していた。
その結果、彼の手による功績の殆どは、「神の御業」や「精霊の悪戯」、あるいは「古代文明の遺産が発見された」として処理されてしまったのである。
そしてヴィル本人も、名声や金銭に一切の興味がなかった。
「直ったからヨシ!」と言って、礼も受け取らずに風のように去ってしまう。
これでは、伝説になりようがない。
誰も彼を、実在する「人間」だとは思わなかったのだから。
――たった一人、その背中を一番近くで見ていた孫娘を除いて。
◇
デリックとの騒ぎから、数日後。
帝都の一角にあるカフェテラスで、ソフィアとギルバートは向かい合って茶を飲んでいた。
「……それにしても。あの時の君の技術には、未だに驚かされる」
ギルバートが、ティーカップを置きながら感慨深げに言った。
話題は、先日の決闘でソフィアが見せた『ガンダールヴ』の転生についてだ。
「砕け散った杖の破片を集め、以前よりも強力な杖へと『転生』させる……。あんな芸当、帝国軍の宮廷魔導師たちでも不可能だ。まさに神業だよ」
ギルバートは、一切のお世辞抜きで称賛した。
実際、あの場にいた全員がそう思ったはずだ。ソフィア・クラフトは、歴史を変える天才だと。
しかし。
当のソフィアは、困ったように眉を下げ、フルフルと首を横に振った。
「いえいえ! 私なんて、まだまだです!」
「……まだ?」
「はい。あんなの、お爺さまに比べたら、積み木遊びのようなものですから」
ソフィアは本気で言っていた。
謙遜でも卑下でもなく、純粋な事実として。
「お爺さまなら、その辺の石ころを拾って『これ素材な』って言って、一瞬で転移結晶を作り上げてましたよ?」
空間から空間へ、転移する効果を持つ、とてつもない結晶のことだ。
当然、それには、とてつもない値段がついてる。
「……は?」
「あと、朽ち果てた呪いの刀を見つけた時も、修理ついでに『どうせなら聖剣に生まれ変わらせるか』って言って、勝手に改造してましたし」
「…………」
「それに比べたら、私は元ある素材を繋ぎ合わせただけです。無から有を生み出せたお爺さまの足元にも及びません」
ソフィアは、「ふぅ」と溜息をついた。
彼女の中には、明確な基準がある。
それは、「祖父ヴィル・クラフトならどうするか」。
神の如き祖父を見て育った彼女にとって、自分の技術など「ようやくスタートラインに立った見習い」程度にしか思えないのだ。
ギルバートは、戦慄した。
(……待て。その『妖刀から聖剣に生まれ変わった』伝説、東方の神話で聞いたことがあるぞ。まさか、実話なのか?)
彼は悟った。
ソフィアが自信を持てない理由。
それは、彼女の比較対象が「人間」ではなく、「神域のバケモノ(祖父)」だからだ。
身近に神がいたせいで、自分が人間であることを過小評価している。
だが。
「……ソフィア。いいか、よく聞いてくれ」
ギルバートは真剣な眼差しで、彼女を見つめた。
「君のお祖父殿が『神域』なのは分かった。だがな……」
「はい?」
「君がやったこと……砕けた杖の転生も、我々人間からすれば、十分に『偉業(神の御業)』なんだよ」
「えっ? そ、そうですか? ただの応急処置ですよ?」
ソフィアはきょとんとして瞬きをした。
全く自覚がない。
その無自覚な怪物ぶりに、ギルバートは頭を抱えたくなり――同時に、愛おしさが込み上げてきた。
「……はは。君には敵わないな」
「?」
「いつか、君が自分の凄さを自覚する日が来るのだろうか。……まあ、そのままでいてくれる方が、俺としては安心だが」
あまりに凄すぎる才能が世間にバレてしまえば、国中が彼女を奪い合いになるだろう。
今のうちに、しっかりと捕まえておかねば。
ギルバートは苦笑しながら、冷めた紅茶を口に含んだ。
【第2章、2月11日より開幕!】&読者の皆様へ御礼とお願い
第一章の完結から数日が経ち、作者は恐る恐る連載ページを開いてみました。
無論、読者様からの反応を見るためです。
そして――。
「……えっ……?」
小心者の作者は戦慄しました。
そこに寄せられた、大量のポイント評価とブックマークの爆撃に。
もはや……書くしかない……っ!
これだけの『ポイント評価』と『ブクマ』という名の魔力をいただいてしまったら……っ。
書かないという選択は……不義理、不誠実、魔力切れ……ッ!
つまり――決定です。
第2章の執筆ッッッ!
ということで皆様、たくさんの応援、本当にありがとうございました!
皆様の応援が、作者にとって最高品質の魔石(エネルギー源)となりました。
回復効果によって完全に癒やされましたので、【2月11日(水)】より再び、第2章の連載を始めますっ!
読者の皆様からポイント評価とブクマをいただく
↓
作者のやる気が爆発し、執筆速度が上がる!
↓
読者の皆様に続きをお届けし、喜んでいただける
↓
作者のやる気が(以下略
まさか……ソフィアのお爺様ですら成し遂げられなかった『夢の永久機関』が、ここに完成してしまったのかもしれない……っ。
ここで皆様に、作者から大切なお願いがあります。
「第2章キターッ!」
「ソフィアとギルの続きが気になる!」
「ざまぁ展開も、ラブコメも楽しみ!」
ほんの少しでもそう思ってくれた方は、本作をランキング上位に押し上げ、作者の永久機関をフル稼働させるため、
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この二つを行い、本作を応援していただけないでしょうか?
ランキングが上がれば、作者の執筆意欲も上がります。
おそらく皆様が思う数千倍、ギルバートの独占欲くらいめちゃくちゃに跳ね上がります!
ですので、どうか何卒よろしくお願いいたします。
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