27.(第1章完結):陽だまりの告白と、新しい名前
【☆★超・重大発表★☆】
そして、あとがきにて……
読者の皆様に【とてつもなく嬉しいご報告】があります!
ぜひ、本編の余韻と共に、
最後まで目を通していただけると幸いです!
奇跡は起きた。
大賢者ガンダールヴルの秘薬『世界樹の葉』と、精緻な治癒魔法により、ソフィアの右腕は再生したのだ。
骨が、神経が、筋肉が、あるべき形へと織り上げられていく。
それはまさに、神の御業であった。
だが、それはガンダールヴル一人が起こした奇跡ではない。
魔法には未解明な部分が多い。
その一つに、「使用者の精神性が、魔法の効果に大きく影響する」という法則がある。
魔法を使う者が込めた想いが強ければ強いほど、それが効果となって顕現するのだ。
ソフィアの手が、本当に完璧に戻ったのは……ガンダールヴルの技量も大きく寄与したが、それ以上に、
「ソフィア・クラフトという少女を、絶対に助けたい」
周囲の人間が抱いた、その祈りにも似た想いがあったからこそであった。
それはつまり、それだけの強い想いを、大賢者ガンダールヴルやギルバートに抱かせた……ソフィア自身の徳によるものだ。
結果的に、彼女は他者の魔法で治ったのかもしれない。
しかし、それを引き寄せたのは、ソフィアという少女が、これまで懸命に生きてきた積み重ねに他ならない。
奇跡が偶然起きたのではない。
奇跡を、ソフィア自身が引き寄せたのである。
◇
翌日、目を覚ましたソフィアの元には、驚くべき光景が広がっていた。
「妖精ちゃん。無事でよかったぁ……」
「ソフィア様、心配しましたぞ……!」
病室には、溢れんばかりの花束と差し入れ。
そして、面会時間を待ちきれない人々が行列を作っていたのだ。
ヨランダは泣き腫らした目で抱きつき、ベルンシュタイン兄弟は高級フルーツの山を築き、カフェの店員や、除雪作業のおじさんまで駆けつけた。
お忍びで現れたメルティア皇女に至っては、王室専用の最高級菓子を持参してくれた。
誰も、「杖の納期」など気にしていなかった。
皆、口を揃えて「ソフィアが無事でよかった」「痛かっただろう」と、彼女の身を案じてくれたのだ。
(ああ……私、愛されてたんだ)
杖を作る機械としてではない。
ソフィア・クラフトという一人の人間として、こんなにも多くの人に想われていた。
その事実は、失った腕が戻ったこと以上に、ソフィアの心を温かく満たしてくれた。
◇
それから数週間後。
リハビリを終え、完全に復帰したソフィアは、カフェ『白銀の猫』のテラス席にいた。
柔らかな午後の日差しが、二人を包み込んでいる。
「退院おめでとう、ソフィア殿」
「ありがとうございます、ギルバートさん」
向かいに座るギルバートが、穏やかな瞳で微笑む。
ソフィアは自分の右手を目の高さに掲げ、握ったり開いたりしてみせた。
傷跡一つない、綺麗な肌。
指先の感覚も、魔力の通りも、以前と全く変わらない。
いや、迷いが消えた分、以前よりも繊細な作業ができるようになっていた。
「本当によかった。後遺症もないそうで」
「はい。おかげさまで、元通りです」
ソフィアは紅茶を一口飲み、ふと思い出したように尋ねた。
「そういえば……デリックさんは、その後どうなったんでしょうか」
あの事件以来、彼の姿を見ていない。
ギルバートはカップを置き、少しだけ声を低くした。
「彼なら、裁きを受けたよ」
「裁き……ですか」
「ああ。違法魔具の所持、使用。そして何より、皇族の知人への殺人未遂だ。ガンダールヴル学長、そしてメルティア殿下が激怒されてな……。二度と、光を見ることはないだろう」
詳しくは語らなかったが、その言葉の重みだけで十分だった。
厳しい処罰が下されたのだろう。
けれど、ソフィアの心に、もう彼への未練も恐怖もなかった。
彼は過去の人だ。今の自分には、もっと大切な人たちがいる。
ソフィアは再び自分の右手を眺め、以前から気になっていたことを口にした。
「あの、ギルバート様」
「ん?」
「もし……私の腕が、治らなかったら。杖が作れなくなっていたら……どうなっていたと思いますか」
あの時、ギルバートは「無価値じゃない」と言ってくれた。
その言葉に救われたのは事実だ。
けれど、現実問題として、杖作りができなくなった自分はどう生きていけばよかったのか。
そんな不安が、ほんの少しだけ残っていた。
しかし、ギルバートはキョトンとした顔で、事もなげに言った。
「どうなる、とは? 他の仕事を探せば良いだけのことだろう」
ソフィアはポカンと口を開けた。
「……え?」
「帝都には、それこそ仕事は10も20も、30もある。仕事なら星の数ほどあるんだ。たとえ右手が使えなくなっても、やれることは幾らでもある」
ギルバートは、至極当たり前のことのように続けた。
「ソフィア殿は愛嬌があるし、器量も良いからな。喫茶店の看板娘なんかも似合うんじゃないか? 毎日通う客で行列ができるだろう」
あまりにも、あっけらかんとした言葉だった。
杖作りができなければ、自分には価値がない。世界が終わる。
そう思い込んでいたのは、ソフィアだけだったのだ。
(そっか……。そうなんだ)
ソフィアの中にあった、重たい鎖のようなものが、音を立てて崩れ落ちた気がした。
自分は「杖を作るためだけに生まれた機械」なんかじゃなかった。
杖作りは、言ってしまえば、数ある仕事の一つに過ぎない。
自分は、何にだってなれるのだ。
(やっと……こっちの世界に、転生できた気がする)
今までは、心のどこかにずっと「病弱で、無能で、何者かにならなければ許されない自分」がいた。
でも今、こうして「何でもできる」と言われて、ようやく腑に落ちた。
(私は……自由なんだ……)
じわり、と胸が熱くなる。
それに、ソフィアには分かっていた。
魔力の色を見れば分かる。
ギルバートは、お世辞でも慰めでもなく、本心からそう思ってくれていることが。
嬉しくて、ソフィアは自然と微笑んだ。
「いや、まあ、俺の言葉が……社交辞令に聞こえてしまうかもしれないけど。でも本当だぞ?」
「……ねえ、ギルバート様。私実は、人の心が読めるんです」
「……え?」
ギルバートがカップを持つ手を止めた。
「人の魔力を見ると、その人の感情がなんとなく分かっちゃうんです。だから……あなたが嘘をついてないってことも、分かります」
ソフィアが悪戯っぽく告げると、ギルバートの顔色がサァーッと変わり、次にカァーッと赤くなった。
「え……? えっ!? えええーっ」
ガタガタッ、と椅子を揺らし、彼は狼狽えた。
普段の冷静沈着な彼はどこへやら。
「こ、心って……全部か? 思考もか? まさか、あの時のことや、その、あんなことまで……ッ?」
(あ、すごい焦ってる)
彼の魔力が、見たこともないほど激しく波打っている。
『可愛い』とか『守りたい』とか、普段彼が心の中で呟いていることが、全部筒抜けだったと気づいたのだろう。
さっきまであんなにシリアスで格好良かった英雄が、こんなことで大慌てしている。
それがおかしくて、愛おしくて。
ソフィアはコロコロと声を上げて笑った。
「ふふっ、あはははっ」
笑いながら……魂が、解放されていくのが分かった。
病室で死んだ、あの暗い自分は、もういなかった。
過去の自分の魂は、天に昇り……そして……消えていった気がした。
(ありがとう……お父さん、お母さん……)
「わ、笑い事ではないぞソフィア殿っ。軍事機密が……いや、俺のプライドが……」
ひとしきり笑って、ソフィアは目尻の涙を拭った。
こんなに心から笑ったのは、いつぶりだろう。
「そ、そろそろ仕事に戻る時間ではないのか、ソフィア殿?」
恥ずかしさを誤魔化すように、ギルバートが咳払いをする。
けれど、ソフィアは首を横に振った。
「ううん。もう少しだけ……一緒にいたいです、ギルバートさん」
「……ッ」
「それに……その、『殿』って、やだなぁって」
ソフィアは上目遣いで彼を見つめた。
もう、ただの職人と依頼人という関係ではいたくなかった。
(もう少し……近くにいたい。私のことを受け止めてくれた……彼の、そばに)
「じゃ、じゃあ……ソフィー……」
「はいっ」
「あ、って……え?」
「はい。ソフィで、いいですよ」
新しい名前を呼ばれ、ソフィアは満面の笑みを咲かせた。
「あ、いや……いきなり愛称って……」
「なんですか? 嫌なんですか? 私を愛称で呼ぶの?」
「いいやっ。嫌なわけないじゃあないかっ!」
「じゃあ、それでっ!」
冬の寒空の下。
けれど二人の間には、春のような温かい陽だまりが広がっていた。
新しい名をもらい、存在自身を認めてもらえ、ようやく……ソフィアの人生という物語は、スタートした。
これは、辺境の【杖職人】が、自分の作る魔法杖は世界最高だと知る物語。
そして――。
自分という存在の価値に気づいた少女、ソフィア・クラフトが、誰よりも幸せになる物語だ。
(第1章 完)
【※読者の皆様へ、第1章完結と《超・重大発表》】
読者の皆様ここまで読んで下さりありがとうございます。
27話で、一度第一章完結という形となります。
そして……
ここで皆様に、最大級に嬉しいご報告があります。
なんと、本作の――
【書籍化】および【コミカライズ】が決定いたしました!!
まだ連載して間もないですが、
皆様の熱い応援のおかげで、異例のスピードでこのような機会をいただくことができました。
本当に、本当にありがとうございます!
【☆★大切なお願い★☆】
皆様に大切なお願いがあります。
作者の今の正直な気持ちを言いますと……
この最高のニュースの勢いのまま、この作品で【日間総合1位】を取りたいです。
第1章が完結し、この発表をした『今日』こそが、
本作における『最大の』、そして『最後のチャンス』だと確信しています。
「書籍化&コミカライズおめでとう!」
「第1章面白かった! 」
「第2章も楽しみ!」
そう思って祝ってくださる方は、
この下にあるポイント評価欄の【☆☆☆☆☆】から、作者に『ご祝儀』をいただけないでしょうか?
(※星の数は、皆様が「面白い!」と思ってくださった分だけ入れていただければ幸いです。皆様の評価にお任せします!)
……何度も何度も、このようなお願いをしてしまい、本当に申し訳ありません。
「くどい」と思われるのは重々承知しております。目障りでしたら、本当にすみません。
ですが、この作品は私がこれまでで一番、魂を込めて書いた作品です。
1位を取るために、毎日一日も休まず、必死に書き続けてきました。
だからこそ、どうしても結果が欲しいのです。
どうか、作者のこの我儘と本気をご理解いただき、ご協力いただけないでしょうか。
皆様からいただくポイント評価は、
第2章執筆への、何より巨大な原動力になります。
どうか何卒、よろしくお願いいたします。
(※書籍やコミカライズの続報は、こちらのページでお知らせするので、ブックマーク登録は外さずにそのままでお待ちください!)
最後になりますが、ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。
願わくば、また第2章でお会いできることを楽しみにしております!
↓広告の下あたりに【☆☆☆☆☆】欄があります!




