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【書籍化&コミカライズ】禁忌解呪の最強装備使い~呪いしか解けない無能と追放されたが、即死アイテムをノーリスクで使い放題~   作者: 青空あかな
第5章:【西の教会】編

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第53話:ある修道女からの依頼を受けた

〔ほら、ダーリン。ゾンビのフィギュアは置いといて依頼を聞かないと〕

「あ、ああ、そうだったな」


 名残惜しくて仕方ないが、ゾンビの人形を棚にしまう。

 僅かな隙間を縫って、コレクションを買い集めていた。

 例のあの店だ。

 広告を見て以来、ずっと入荷を待ち望んでいた。

 だが、ようやく買えたのにまだ少ししか遊べていない。

 ポージングを考えていたら、次の依頼人が来てしまったのだ。


「じゃ、じゃあ、自己紹介してくれるかな」

「はい。私は“神聖霊教会”の見習いシスター、ラミーナです」


 何しろ、連日のように新しい依頼人がやってくるからな。

 どんどんこなしていかないと、いつまで経ってものんびりできない。


「ところで、君はとても小さいけど今何歳なの?」

「今年で6歳になりました」


 目の前にいるのは幼い女の子だ。

 金髪に緑色の目をしたキレイな顔つきで、将来は美人になるのを予感させる。

 しかし、その表情はキリッとして力強さがにじみ出ていた。

 きっと、毎日厳しい修練を積んでいるんだろうな。

 

――まだ小さいのになんて偉いんだ。


 気を抜くと涙が出そうだった。

 と、そこで、さっそくクリッサが絡み始めた。


〔かぁいぃねぇ~、飴ちゃんいるぅ~?〕

「いえ、結構です。甘い物を口にしてはいけませんので」

〔じゃあ、ウチが全部貰っていい~?〕

「どうぞ」

〔うぇ~い! テンション爆アゲ~!〕


 クリッサは嬉しそうに飴をなめている。


〔……アンタの方が子どもっぽいわね〕


 まったくその通りだな……って、話を進めないと。

 ラミーナちゃんが言った教会の名前に、俺は聞き覚えがあった。


「“神聖霊教会”って言うと、セインティーナさんがいたところか」

「はい、おっしゃる通りです」

「確か、西の方にあるんだっけ?」

「ええ、霊山“オーヴェスト山”の中に、私たちの教会はあります」


 “オーヴェスト山”は、それ自体に特別な魔力が籠もった山だ。

 冒険者はおろかギルドマスターでさえ、特別な許可がないと入れない。


「もしかして、ラミーナちゃんは一人でここまで来たの?」


 まさかとは思うが、俺は確認する。


「はい。許可なく霊山から出るのはご法度なので。人目を盗んで出てきました」

「マジか……本当に一人で来たのかよ……」

〔一人で来るのは大変だったでしょうに……〕

 

 ミウも憐れむような顔をしている。


「ご存じのように、“神聖霊教会”は聖人・聖女が集まっている教会です」

「どんな訓練をしているの?」

「主に、結界の生成訓練です。教会で力をつけてから、各地のギルドに派遣されます」


 結界は外と中の世界を区切る能力だ。

 何でも、素質のある人間じゃないとできないらしい。

 結界の生成には、恐ろしく繊細な魔力のコントロールが必要と聞いたことがある。

 まぁ、俺は逆立ちしてもできないだろうな。


「あっ、ちょっと待って。もしかして、セインティーナさんも行方不明になっているんじゃ……?」

〔そうよ。あの大聖女さんは無事なの?〕

「いえ、セインティーナ様はご無事です。今もまだ各ギルドを周遊中ですので」


 無事と聞いてホッとした。

 俺たちにも良くしてくれたからな、心配だったんだ。


「ですが、修道長ですら姿を消してしまいました。仲間達も混乱し教会内はパニック状態です。閉鎖的な環境ゆえに、恐怖心や不信感が募りやすいのです」

「なるほど……そいつは大変だな」

「仲間達のことを思うと……心配で夜も眠れないのです。このままでは、教会中の仲間がいなくなってしまいます……」


 ラミーナちゃんは、厳しい顔で俯いている。

 その様子を見て、俺たちも胸が締め付けられた。

 幼い子が苦しそうな様子を見るのは心が痛む。


「行方不明に関して何か心当たりはある? 事故が多いとか」

「いえ……それが、全くわからないのです。私も独自で調査はしていたのですが……」

「う~ん、誰かがさらっているのかな?」

〔行方不明が多発しているのなら、そう考えるのが妥当でしょうね〕

〔さらっているのは、モンスターとか魔族の可能性もあるねぇ~〕


 だが、考えたところでそんなことはわからん。

 さっさと現地に行くのが一番だ。


「“神聖霊教会”は、厳重に人の出入りが管理されています。ですので、そう簡単には部外者は入ってこれないはずなのですが」

「だとすると、なおさら怪しいな」

〔内通者でもいるのかしら〕

「お願いします。もう他に頼める方がいないのです」


 ラミーナちゃんは小さな頭を必死に下げている。

 もちろん、答えは一つしかない。


「依頼を受けるよ。消えてしまった仲間も俺たちが必ず見つけ出す」

〔ダーリンに任せておけば万事安心よ。私たちもいるからね〕

〔ウチもいるかんねぇ~、安心しぃ~〕

「ありがとうございます……みなさん……」


 ラミーナちゃんは、グッと涙を堪えていた。

 ということで、俺たちは“神聖霊教会”へ向かうことになった。

お忙しい中読んでくれて本当にありがとうございます


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