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【書籍化&コミカライズ】禁忌解呪の最強装備使い~呪いしか解けない無能と追放されたが、即死アイテムをノーリスクで使い放題~   作者: 青空あかな
第4章:【北方のギルド】編

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第45話:エースの帰還

「それでは、レイクの無事と功績を称え……かんぱーい!」

「「かんぱーい!」」


その後、ノーザンシティに帰るや否やすぐに大宴会が開かれた。

キメラモンスターを討伐した俺たちは、一番良い席に座らされている。

ライブリーさんが巨大なジョッキを持ってきた。

ドンッ! と目の前に置いてくる。


「ほら、レイク! 遠慮してないで、もっと飲みな! あんたのおかげでノーザンシティは救われたんだからさ!」

「あ、ありがとうございます、いただきます」


ワイルさんも俺を呼んできた功績が称えられ、酒を浴びるように飲んでいる。


〔初めてここへ来た時とは、雰囲気が全然違うわね。暗い空気なんか、どこかへ行ってしまったみたい〕

「みんな明るくなって良かったな」

〔これも全部、レイクっちのおかげでマジアゲぽよ~〕


やがて、呪い毒にやられていた冒険者たちもやってきた。

一応大事を取って、討伐隊には参加していなかったのだ。


「レイクさん! あなたのおかげで命が救われました! これであの娘と結婚できます! 本当にありがとうございました!」

「俺はもう死んでしまうのだと覚悟してたぜ! アンタのおかげで、こうして飯も食えるってわけだな!」

「またこうしているのが夢みたいだ! いくら感謝してもしきれんよ!」


屈強な男たちが、いっせいに頭を下げた。

みんな角度がピシッと揃っている。

何も悪い事はしていないのに、俺はめっちゃ緊張してきた。


「い、いや、頭をあげてくださいって! 俺は自分にできることをしただけで……!」


俺は必死に言う。

どんな誤解が生まれるか、わかったもんじゃないっての。

そんな俺を、みんなは笑いながら見ている。

そのうち、クリッサの話題に移っていった。


「それにしても、まさか空から女の子が降ってくるなんてなぁ!」

「あんなに強いなんて思わなかったぜ!」

「あの数のモンスターを瞬殺できるヤツなんて、なかなかいないぞ!」


クリッサは相変わらず、ふにゃぁとしている。


〔ウチ、強いっしょ~? まぁ、レイクっちのおかげなんけどねぇ~〕

〔こら、離れなさい〕


と思いきや、ベタベタくっついてくる。

それをミウが引き剥がすのは、もはや恒例となりつつあった。


「レイクさんはモテモテじゃないですかぁ」

「まぁ、それも当然ですけどね」

「くぅぅ、羨ましいっ!」


冒険者たちは大げさに泣いている。


「レイク! アンタは私らの救世主だな!」


ガハハハッ! とライブリーさんに背中を叩かれた。

めっちゃ力が強いので、振動がすごい。


――何はともあれ、無事に終わって良かったな。


ライブリーさんがギルドの奥に戻ったところで、酒場の入り口が乱暴に開かれた。

みんなの注目がそこに集まる。


「お゛お゛い゛! どうして出迎えがねえんだよ! ノーザンシティのエース、ナメリック様のお帰りだぞ!」


――な、なんだ?


酒場の入り口で、人相の悪い男が騒いでいる。

とたんに、ワイルさんや冒険者たちは暗い顔になってしまった。


「あの、ワイルさん。あの人は誰ですかね」


なんとなく予想はついていたが、念のため尋ねる。


「あいつはナメリック……うちのエースさ」


やっぱり……。


「そうですか、あの人が例の……」

〔女癖が悪い……〕

〔マジきも~〕


ナメリックは“俺最強”とか、“世界一の男”とか書かれた服を着ていた。

自己顕示欲がめちゃくちゃ強いようだ。

ワイルさんが小声で教えてくれた。


「ソロでSランクダンジョンを攻略できるくらい強いのだが……その分、アクも強くてな。いつもあんな感じなんだ」


やがて、酒場もざわざわして不穏な感じになってきた。


「お、おい、ナメリックが帰ってきたぞ……」

「マジか、今までどこに行っていたんだ……」

「しかし、いつにも増して荒れてるな……」


思った通りというか、こいつはあまり好かれてはいないらしい。

ナメリックはずかずかこっちに向かってくる。


「なんだぁ、こいつはぁ? よそ者かぁ? 良い女どもを連れているなぁ、おい」


さっそく、ナメリックは俺を小馬鹿にしてきた。

何か言う前に、ワイルさんが説明してくれた。


「レイク・アスカーブさんだよ。グランドビールから応援に来てもらったんだ」

「おい、マジかよ! こいつがレイク・アスカーブ!? ヒャハハハハハ! 探しに行く手間が省けたぜ!」


え……こいつ、俺を探しにグランドビールまで来るつもりだったの?

こわぁ。

騒ぎを聞きつけてライブリーさんがやってきた。


「どこに行っていたんだい! ナメリック! 探したんだよ!」

「うるせえな! どこに行こうと俺様の自由だろうがよ!」


ナメリックは剣を引き抜くと、ベチャァ……と舐めている。

そして、その両目はカッ! と見開いていた。


――おいおいおい、見るからにヤバいヤツじゃねえかよ。もしかして、こいつもやらかしマ……いや、ちょっと待て。


俺は首を振って、考えを改める。

こいつは単に、金属が好きな男なのかもしれない。

そうだよ。

人の好みは三者三様、千差万別っていうもんな。

きっと彼は、金属が主食なんだろう。


「俺様が一番だ! 誰も俺様に逆らうことは許さねぇ! この世の全ては俺様の物だ!」


ダメだ、こいつもヤバい輩だった。


「ナメリック、いい加減にしな! そんなんじゃ、世の中でやっていけないよ!」

「あ゛あ゛!? お前をボコしてギルドマスターの座を奪ってやってもいいんだぜ!?」


ナメリックはライブリーさんに詰め寄っている。

俺はミウにこそっと話しかけた。


「どこかで見たような光景なんだが……」

〔え、ええ、そうね……〕

〔マジ、きしょすぎて、テンションサゲぽよ~〕


どうしてこう、ギルドのエースは凶暴なヤツが多いんだ。


「おらぁっ! 死んどけ、ライブリー!」

「「あっ、ギルドマスター!?」」


ナメリックはライブリーさんを思いっきり殴ろうとした。

ので、俺はとっさにその腕を掴んだ。


「おい、お前。やめろよ。というか、ほんとにエースなのか?」

「なんだぁ、てめえは? 俺様に触るんじゃ……ぐっ!」


ナメリックは力が強いようだったが、俺はその腕を掴んだまま離さない。

周りの冒険者たちが、緊張した面持ちで見ている。


「てめえ、離しやがれ! ライブリーの後にはキメラモンスターをぶちのめしに行くんだからよお!」

「キメラモンスターなら俺が倒したよ」

「んだと、コラァ! 俺様の獲物を奪いやがって! せっかく、新しいアイテムを試そうと思ってたのによ! おい、お前ら! 俺の獲物だから手を出すなって、言ったよな!」


ナメリックはワイルさんや周りの冒険者を睨みつけている。


「いや……ナメリックはクエストが終わると、いつもどこかに行ってしまうから」

「みんな毒にやられて、早く討伐しないとヤバかったんだ」

「か、勘弁してくれ。ギルドは限界だったんだよ」


冒険者たちは怯えていた。

ナメリックは強さの代わりに、何か大切な物を失っているようだ。


「エースはみんなを導く存在じゃないのか?」

「……チィ! クソッ、離せ!」


俺が手を離すと、ナメリックは痛そうに手をさすっていた。


「強さに自信があるのなら、みんなのお手本になれよ」

「うるせえ! 俺様がギルドで一番強いんだ! 俺より弱いヤツらは、全員俺様の手下だ! いや、手下ですらねえ! ただの道具だ!」


ナメリックは四方八方に怒鳴りつけていた。

あまりにも人間性がヤバすぎる。


「ふんっ……だが、レイク・アスカーブがここにいるとはな。ちょうどいい、キメラモンスターを倒した実力を見せてもらおうか。このギルドの闘技場でなぁ」


――まさか、この流れは……。


「俺と勝負しろ、このザコ虫が。負けた方が勝ったヤツの言いなりになるんだ」

「しょ、勝負……っすか」

「ああ、そうだ。聞こえなかったのかぁ? あぁん?」


ナメリックは俺より背が高いのに、なぜか下から睨んでくる。

めちゃくちゃ眉間にしわが寄っている。

たぶん、目が悪いんだな。

まごまごしてると、俺の体まで舐められそうだ。


「じゃ、じゃあ、俺が勝ったら凶暴な性格を直して、俺たちにもう絡まないでくれ」

「ハッ、良いだろう」


ナメリックは意気揚揚と歩いていく。

俺たちが戦うと聞いて、ギルドは騒然としだした。


「レイク! 本当に戦うのかい!? 別に無理して決闘なんかしなくていいんだよ!?」


ライブリーさんも慌てている。


「いや、大丈夫ですよ。それよりも、ナメリックが少しでも改心しれくれると良いんですが……」

〔レイクっちの戦いが見れるし~、マジテンションアゲアゲマジヤバ~。ミウっちもそうっしょ~? マジチョベリグって感じ~?〕

〔……とりあえず、あんたはちょっと静かにしてなさい〕


俺たちは闘技場とやらへ向かって行った。

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