少年、止められない衝動
さぁ、今回の冒とく・・は?
変わらない
変わることができない
その憎しみはけして終わらない
彼らの憎しみの行き先はどこに行くのか
いつになれば終わるのか
報われるのか
報われないのか
それは誰も分らないことだ・・。
「・・・雨だ・・。」
一人の獣が涙を流す
洗い流すことも出来ない血と涙は
獣の心を癒すこともなく
降り続けたのだった・・。
***
「あの方たち・・?」
「そう、あのかたたちはとてもつよい・・おれさまよりも
そして、いまもどうほうだけではなくすべてにかんして
ねがっているんだよ・・。」
「その方たちが、村を・・?」
コクンっと頷く
「あのかたたちはむらだけではなくにんげんにぞうお
している・・だから、どうほうのかいほう
それだけじゃない、もっとひどいことも
してしまうかもしれないんだ・・。」
小さな身体とは似つかわしくない風貌
空虚でそして、なにも映すことのない瞳
「・・。」
俺たちは、シーンとした殺伐の世界にいたのだ
「なんや・・ねん」
ラミアはポッリっと呟く
行き場のない怒りと混乱で頭をグシャっとかきあげる
「あんさんたちは村を襲うつもりなんやな?」
ラミアは聞く
「・・・そうだ。おれさまをとめるかい?」
フッと笑う
子供でもない大人でもない
その不思議な雰囲気に飲み込まれそうだ
ジンは、ただ分かっているかのように
「止めようにも・・もう、止まらないのが現状のはずだ」
「・・よく、わかっている。にんげんにしてはおれさまも
ほめてやりたいくらいだ」
ニコっと笑うがその顔は笑っていない
「・・・・。」
そしてジンは黙る
でも、ジンは、知っている
始まったものは止められない
それは、俺も知っていること
目の前に起こってしまえばもう気づくはずだ
動きだしたモノは、もう・・。
でも、俺は止められないと分かっているなら聞く
「・・君はこれでいいの?」
すると、ジゼルは俺たちを見て
もう、諦めた顔
「・・さぁ、おれさまにもわからない。
にんげんは、かわらない。だから、にくしみは
おわらない。おれさまたちはそれをしっている。」
「そんな、人間すべてが、同じはずがない!!」
すべての人間が同じような考えを持っていない!!
俺は気づいているんだ
善人は確かに少ないかもしれない
でも、中には本当に・・。
すると、震えるように
「そんなの、おれさまだってわかっている!!」
大声で威圧するジゼル
「・・ジゼル・・。」
「あんたらが、どれだけよいひとかおれさまはしっている
しょうかんしだって・・。」
しょうかんしだって・・・
ジゼルの頭の中で思い浮かべるのは
痛みと苦しみの中でちいさなうまは涙をながしている
その涙を止めてくれたのは
優しい
優しい・・召喚士だったのを・・。
「おれさまをたすけてくれた。すくってくれた。
だから、おれさまはちゅうこくにきたんだ!!」
ジゼルの瞳は揺れる
それは、迷い・・だ。
これで良いのか
これで良かったのか
それが、分らないから迷う
「おれさまは・・・じゃなかった」
言葉を濁らせるかのようにジゼルはうつむく
「・・・ジゼル・・?」
「・・・あんたたちのことはきらいじゃなかったよ。」
それは、哀しみの顔
そうして、ジゼルは苦笑するのだ
旬たちは呆然とするのだ
「それなら、まだ・・。」
俺が言いかけるとジゼルは首を横に振る
「おれさまは、こどくとくるしみのなかでやみをあるいた
いきるかしぬか。どちらがしあわせなのかってね」
「・・・。」
長い孤独
それは、旬たちは到底理解できることのない大きな闇
「おれさまたちにはヒトをにくむそれだけがのこされた
いきるりゆうなんだ」
それが、ジゼルの答え
生きる幸せも
死ぬ恐ろしさも
どちらが一番幸せなのか・・そこまで彼は追い詰められている
「どうしよう・・ラミア、ジン」
俺は声が震える
無力・・その一言だ。
止められない
そして、何もできない
「旬・・わかっとる」
「我も同じ気持ちだ・・どうしようもない」
ラミアもジンも止められない
それほど、ジゼルの威圧
そして、決意は・・重い
すると、ノエルは静かに・・。
「それならば・・どうして、きみは辛そうにに
しているの?」
ポッリっと呟く
「なにを・・?」
「ボクは、君が本心を言っているようで言っていないことを知っている」
「ノエル・・?」
すると、ノエルの声に反応するかのようにとても
心が痛そうに抑えて
「・・・おれさまには、なにもない。
からっぽなんだよ・・しょうかんし。」
それは空虚でなにもない空っぽな心
満たすことも満たされることもない
嘆き
ノエルはただ、何も言わなかった
「そう・・。」
その一言だけだった
そして・・・ジゼルは口を噛み締めて
「おれさまは、あんたたちだけでもにげてほしいとおもった」
旬立ちを見てジゼルは・・言うのだ。
「あんたたちは、あくにんでもない。だからかんけいない
だから、おれさまたちのあらそいからにげろ」
「・・・・。」
ノエルは黙るばかりだ
「何もできないの・・?まだ時間がきっと・・。」
俺は訴える
「・・・すまない。でも、ておくれなんだ」
「ておくれ・・。」
ゾワっと冷たい何かした
それは、とても嫌な予感
「な・・まさか」
「・・・そうだよ。おれさまたちのきしゅうさくせんは
もう、はじまろうとしている。」
「・・・そんな。」
どうにもできない現状
旬たちは何もできず
動けなかった
そんな、中・・ジゼルはただ柔らかく笑って
「おれさまは、もういくよ」
そこには、子供でもない
小さな獣・・ユニコーンだ。
ジゼルは俺たちを見ることもなく
強い衝撃と共に消える
残されたのは、静寂と不安
そして・・あせり
「・・どないしよう。旬」
ラミアが俺に聞いてくる
「・・どうしようって・・止めければ」
「・・でも、本気の瞳だぞ」
そう、あの瞳は本気の瞳だった
止められない
「旬」
そこには、ノエルが険しい顔をしていた
今まで見たことのない瞳
感情を表に出した・・ノエルの姿だった
「旬、一緒に村に行こう。」
「え・・でも」
ノエルはあの村から逃げ出した
それだけのことする程
嫌っているはずなのに
「・・・このままじゃ、村も召喚獣も危ない!!
「けど、あんさんは村を嫌っているんじゃ」
「そうだ、あの村に向かえばお前はきっと・・
もっと傷つくかもしれないだぞ・・?」
ジンの声が聞こえる
「ああ、そうだよ・・ボクはあの村が嫌いだ
そして反吐すら吐く・・でも・・でもね」
いきなりノエルが土手座した。
「な・・ノエル!!」
ノエルは、地面に土手座したままだ
ラミアとジンは俺を見て不安そうな顔をしている
成り行きを傍観しているようだ
「あの村はボクにとって故郷だ。最低最悪でも
ボクは・・あの村を捨てられない!!ジゼル君のことも
同時に大事なんだ・・あの子はボクの最初の・・。」
そして・・俺の瞳を見る
揺るがない琥珀の強い瞳
「友達なんだ・・。」
その時、俺はドクンっとした
この瞳を・・俺は知っている。
何よりも強く
何よりも優しい瞳
俺に手を差し伸ばしたあの手と瞳
(旬、早くしろぉぉ、遅刻するだろ!!)
(うわぁぁぁ、待ってぇぇ)
(はやくしろよ。ほら。)
あの世界の友達・・。
顔も見えない幼馴染
その顔も見えなくても
その瞳は・・俺は、ノエル似ている気がしたんだ
「・・・。」
ジゼルの決意
止められなかった・・?
いや、違う
俺は、逃げていたんだ・・!!
止めることができないのは俺の弱さ
止める、止めない
そんなの、壁をぶち壊せばいい
そして、俺は決心する
「行こう、だから顔をあげて」
そして、琥珀の瞳が俺を写す
「ありがとう・・。」
琥珀の瞳に涙が流れた
ポロポロと真珠のように流れる
そうと、決まれば
やることはすぐ決まっている
追いかける・・ただ、それだけだ!!
ジゼル君の覚悟
そして旬の記憶
皆さんもお分かりでしょうが
旬の回想は後に重要な役目になります
では、また次話で




