少年、謎とそして・・・。
65話目・・残すこと本当にあと一話
ミリカ・・そして・・・?
学者の忘れ形見
もっとも、偉大で
もっとも、短期間しか妃になれなかった母親
優しい母親だったのか
怖い母親だったのか
それすらも思い出せない
忘却だ。
少女は空を見つめた
それは、思い出すこともない
忘却の彼方となって・・・。
****
俺は、アリアの話を終えた後
「謎っていうのはええけど
姫さんの話しを聞けば聞くほど・・怖いな」
「まぁ、そうなるわ・・いずれにしろ。
何かがあったってことね」
「・・・。」
「くすっ。大丈夫よ。ミリカのことは
今は、その時ではないのかもしれない」
アリアは、静かに呟く
「え・・・。」
俺は思わずアリアを見た
「いつか、その時がくるわ・・今はまだとしても
いずれ・・ね」
ニコっと笑った
「気を長く待っていろ・・って所やな・・まぁ、ええ
旬、行くで」
「ああ、そうだね・・アリア、お大事に」
「・・ええ、旬・・またいっか会いましょう。」
「・・・うん。」
そして、俺たちはアリア部屋から出たのだ
そして、その間は無言だった。
「なぁ、旬」
「?」
「忘れたい記憶・・ってあると思うか?」
ラミアの突然の言葉
とても、切なそうな顔をしている
「・・分からない。」
「・・・うちもや。」
「だけど、ミリカの場合・・それしか、無かったかもしれないね」
「・・・そかもな。」
そういって、歩き出していると
庭の方面になぜか足が向いていた
「おや、うちらは、庭の方へときたな」
「うん、部屋に戻る?」
「そやな・・ん?」
ラミアは庭の方面で誰かを見つけたそうだ
「あれ、ジンと姫さんや」
「あ、本当だ。」
俺たちはコソコソっとジンたちの会話を密かに聞きにいった
「何を話しとるんやろう・・?」
俺たちは耳を潜ませる
そこからは、二人の会話を聞くことになる。
これって・・犯罪かもしれない。
(やめよう、ラミア)
(ええやん、減ることないし。)
(・・・いいのかな?)
密かなため息をした俺。
当然、二人には聞こえないようにだ。
二人は、静寂の中で話す
とても、重たい空気だ。
「・・お兄様、初めましてといえばいいでしょうか」
「・・・ああ。」
ミリカは真正面でジンを見た
その瞳は強気で揺るがぬ瞳・・。
ジンは、ただ黙るだけ
「・・あたしのことではなく・・お母様のことですね?」
「・・・。」
無言になったジン肯定だと受け取ったのかミリカ
「あたしには、お母様のことの記憶は無いです。」
「・・知っている。」
ジンはポッリっと呟いた
「ご存知だった・・ですね」
「ああ・・そうだな。」
「・・・・。」
「・・・・。」
俺たちはヒソヒソっと話す
(重たい空気やな)
(そうだね・・。)
なんだか、そこにいるだけで重い
そんな会話をヒソヒソっと続けていると
「お前たち、いつまでそこにいるきだ?」
ビクっと二人の肩は震える
(やはり、バレたか)
(当たり前だよ!!)
俺たちのヒソヒソ声に、ジンはため息をつく
「ごめん、ジン」
「すまん。」
出てきた、二人にジンは
「いや、構わない。」
すると、今まで黙っていたミリカが
「お兄様・・あたし、多分。恨んでいないと思うわ」
「・・。」
「・・・ミリカ?」
「旬も聞いて。あたしね、記憶を亡くした時
涙は流れた・・そして、怖くもあった。
だけど・・その時芽生えた感情は
良かった・・それだけだった」
ミリカの顔に影が出来る
哀愁・・そんな表情だ。
「今となればどうして良かったと思うのかは
分からない。」
「・・・。」
「だけど、いずれ・・あたしは思い出すと思う
いつか・・その時、自分で受け止められるようになると思う
これも、貴方達がいたからよ」
ミリカが俺たちにそう言ってくれたのだ
だけど、ジンはとても辛そうにして
ミリカに土手座する勢いだ。
「だが・・我は、お前の母親を・・。」
すると、ミリカはジンの口をスッと閉じさせる
「お兄様、これ以上はいいのです。もう済んだこと。
母もきっと、そう思っていると思います
あたしも同じ気持ちだから」
ミリカはほがらかに笑ったのだ
「・・・・すまない。」
「いいえ、ここは、ありがとうですよ。お兄様」
「・・・ありがとう。ミリカ」
「・・・どう、いたしまして」
二人の会話に俺もホッとした。
今、空気が緩やかになったのだ。
「あたしは、そろそろ政務があるから行くわ」
ミリカがそう言うとラミアはそうかと言い出し
「ほな、うちらも帰ろうか」
「あ・・そうだね、ジン行こう」
「・・ああ。」
そして、帰ろうとすると
「旬。」
ミリカが俺を呼び止めた
「ミリカ?」
なぜか、ミリカは真っ赤になっていた
「あ、後で、話しがあるから来てくれない?
また、この場所で夜に待っているわ」
そして、急ぐように走っていった
「・・・え、あ、うん」
なんだろう・・?
風邪でもひいたのかな?
「ふぅん、さすが色男やな。旬」
ツンツンっと俺の頬を触るラミア
「どうしたの?ラミア」
すると、フィっと首を横に振って
「ふん、うちはお子ちゃまの旬にはまだ早いとおもうけどなぁ~」
ニヒヒっと笑うラミア
「・・・?」
俺は首を横に傾けているとジンが突然
土手座してきたのだ
「ジ、ジン!?」
さすがの俺もラミアもあんぐりと口を開けるばかりだ
「すまない。我がお前たちに眠り薬など仕込んでしまったことを
許してくれ」
土手座をするジンにラミアはため息を吐いて
「なんや、まだ根にもっていたんかい。」
ラミアは呆れている
どうやら、ラミアはその話題は忘れていたようだ
俺は、ジンに立ってもらうようにお願いする
「もういいんだよ、ジン」
「・・我を恨んでいないのか?」
すると、俺もラミアも同じ気持ちなのか
「うちらは怒っていないんや・・安心せぇ」
苦笑するラミア
「そうだよ、ジンのおかげで俺たちは助かったから」
もし、ジンが来てくれなかっただけでも
俺は、黙るばかりだ
「・・・そやな、ありがとうさん、ジン」
すると、ジンは静かにうつむいていた
「・・・ありがとう。二人共」
こうして、俺たちは仲直り(?)できた。
それから、俺たちはそれから王族の宴でお酒とか飲んでいた
俺たちの御礼を含めた、お別れ会のようだ。
クロスとジンは互いに酒を飲んでいる
それに巻き込まれているのは、ルークだ。
ルークはもうふらふらだ。
ジンもクロスも笑っている。
ラミアはお酒を飲んでいるけど不機嫌だ
どうしたのかな?
その時、俺は視線を感じた
ミリカだった・・。
ミリカがそのまま庭に出るのを見て
俺はそっと抜け出した
ミリカが待っている庭に・・・。
****
そこには月を見ているミリカがいた
「きたよ、ミリカ」
そこには清楚な服を着て
まさに、姫という格好をしているミリカの姿だった
「・・旬・・。」
ミリカは、切なそうに俺を見たのだ
思わず俺は・・ドキっとしたのだ
「あ、あのさ、話しって・・何?」
あたふたしながら話しかける
当然、俺はかすかだけど頬が紅いかもしれない。
「旬、あたしね。お兄様には言えなかったことがあるの。」
その時、俺は頬を真っ赤から・・真剣な顔になったのだ
「・・・何を?」
ミリカは月を見ながら話す
「・・お母様のこと、かすかだけど言葉だけたまに頭を響くの
”ワスレテ”って」
「忘れて・・?」
「・・何に対してワスレテなのか・・きっと、あたしの記憶かもしれない
でも・・それだけじゃないような気がするの・・」
「・・・。」
「目覚めた時、あたしの目の前にいたのは悪魔だったわ」
「・・悪魔」
「そう、人の顔をした、悪魔・・最初はトウリお兄様かと思ったけど
違ったわ。お兄様では無かった」
「つまり、別の誰かだというの?」
「おそらくそうなるわね・・どちらにしろ
思い出さない方がいいかもしれない・・かもね」
月明かりに照らされて輝く俺たち
無言の中
「ねぇ、旬」
再びミリカが俺を見る
「何・・?」
「・・・旬は、もう行ってしまうのね」
「・・ああ、そうだね。」
俺たちは明日になれば
この国を出ていってしまう
だけど、行き先はまだ決めてはいない。
「・・残念だわ。あたし・・旬に言いたいことがあるの」
その時、真っ赤なミリカが俺を見た
俺はその時・・ドキっとしたのだ
な・・なんだ、そのドキって
「あ・・あたし・・」
その時
「あ~ミリカ様が、少年を襲っているぅぅぅ」
声を出したのは酔っ払っているルークだった
しかも、酔っ払っているのかかなりタチが悪くなっている
「な・・。」
ミリカはバッとルークを見た
「やっほ~ミリカ様、少年を襲うとはまさか少年趣味とは
きゃっ、僕、こんな主人で恥ずかしい」
「ル、ルークさん」
「少年も少年だよぉ、ミリカ様はこう見えても
夜になると子供を丸呑みするという・・恐ろしい」
ヒソヒソっと話すルーク
すくならず機嫌が良さそうだ
「え・・。」
ありえない話を聞かされる
俺は思わずミリカを見てしまう
ミリカといえば、うつむいて見えるのはドロドロだ。
ルークがキャラキャラっと笑っていると
ゴゴゴゴゴッとミリカから何か声がした
俺は怖くなって後ろ逃げた
ミリカはヒタヒタと酔っているルークに近づく
俺はもう怖い
「せっかく・・旬に・・。」
俺は耳を塞いでいるとトントンっと誰かが俺の肩を優しく
叩いた
「えっ・・。」
俺は誰かに連れ去らていった
ラミアだろうか?
暗闇の中ひたすら走った。
ピキーンっと、ミリカの何かが覚醒したのか
「このぉ・・。」
呟きながらミリカはズンズンっとルークの前にきて
「ボンクラ部下がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
「ぎゃぁぁぁぁぁっ」
ルークの声
そんな叫び声を俺は聞いた
ただし、耳を塞いでも聞こえるのだ
暗闇で誰か分からない
でも、月が俺たちを照らす
「貴方は・・・」
そこには照らされたのはラミアでもなく
「クロス・・・。」
そこにいたのは、第3王子のクロスだったのだ・・。
何気にルークに邪魔されたミリカ
可哀想すぎる・・。
さて、クロスは旬に何を話すつもりなのか
次回、クランティア王国終幕です。
では、またどうぞ。




