少年、衝突する想い
今回は、ミリカと旬たちの衝突編です。
さて、冒とくはある少女ではなく
本編にでる誰かのです。
ミリカは彼女の決心はしているけどその揺らぐ想いにより
旬たちと衝突してしまいます
では、どうぞ。
自分は何一つ、与えられたモノ以上のことはできない
そう、病床の中で兄弟たちが走り続けている姿を見届けるしかできない
いっか・・いっか自分もあの兄弟達のように自由に遊びたい
それができない自分は寂しくて、たまらなかった
そんな寂しさを紛らすために
甘い飴を舐めるようになった
気が付けば
甘い飴が自分を抑制するようになった
幼い自分と今の自分
何も変わることもなく
今も・・ずっと・・。
****
影はずっと続いている
俺たちはその影に導かれるように走り続けた
影は王宮の深くまで続いている
どこに続いているのかよく分らないけど
影は、途切れることもなく続くのだ
「ど、どこまで続いているの!?これ」
「さぁ、わからんなぁ」
ラミアもその影が随分長く続いていることに驚いているようだ
どうやら、王宮の奥の奥まで続いているようだから
どこまで走れば終わるんだか
その先が見つからない
その時、向こうに扉を見つけた
それは、大きな扉で頑丈そうな扉
「ここから、影は続いているな」
「そうみたいだね・・。」
なんだろうこの、扉
随分頑丈みたいだけど・・?
「なんや、これ頑丈のせいかビクともせんで!!」
グィグィとラミアが引っ張っても開かない扉
後から追いついたミリカがその扉を見るなり
「待って!!」
鋭い声で、俺達を止める
「な、どうしたんや・・!!いきなり!?」
ミリカは旬たちの前に立ちふさがる
その様子にルークも気づいたのか
ハッした顔になり
「もしかして・・ここは!!」
コクンっと、ミリカは頷く
「な、なんや・・いきなり、あんさんらが知っている場所か?」
「知っているいるも何も、ここは王以外立ち入り禁止された
場所よ。」
王以外・・?
とんでもない話を耳にした瞬間だった
その扉は頑丈でそして、言われてみれば神聖な扉に見えた
「え・・。」
その扉の前にミリカが忠告する
「王が、愛した世界。その世界はあたしたち王の子すら入ることを
すら許されない場所。」
王が・・愛した世界
それは、どんな世界なんだろうか
「ミリカさえ、入ったことないの?」
するとコクンっと頷き
「そうよ。何故なら、生前の王は干渉を嫌っていたのよ
この場所を・・そして、死して尚・・。それは変わることはないわ。」
揺らぐことのない瞳
王は、何か秘密があったのか・・?
「だから、この場所は入りたくない・・ってこと?」
「ええ、そうよ。入れば。罰させられるのよ」
「罰?」
「・・・だから王族の者はここを恐れているの」
まるで、この場所が、危険地帯と言っているようだ
困ったな
どうしたものか・・。
すると、そんな俺に反応するように
ラミアが、ミリカの傍に来た
「気持ちは分るわぁ・・あんさんらも王は唯一な人物やったからこそ
この場所を侵害したくはない・・それは、当たり前やな」
「ラミア・・?」
すると、ラミアはキッとミリカに瞳を向けた
腰に手をやり、高圧的な態度で挑む
「けどな、うちらにとっては唯一も何も関係ないんや
王は死んだ。なら、この場所も王はいないやから
もうそんなことはどうでもええことや。」
そうだ、王はもう死んだ
それだけは確かだ
ラミアは、ニィっと笑い
「そんなこと・・王は、絶対的な存在だったのよ・・!!」
「ふん、絶対的な存在はいずれ終わるんや・・それよりあんさん
どいてや。」
ラミアの一言に、ミリカは傷ついた顔になる
今、言葉にしなかったらきっとこの奥に行く機会は失われる
そしたら、きっと後悔する
それが分かっているのかラミアは言うのだ
譲れない・・そう、ただそれだけだ。
「どけや・・姫さん。」
「どかないわ!!王族として貴方達を行かせない!!」
「・・・どけやって言うとるやろ!!」
ラミアが怒鳴るそれでも、怯えることもなく
「嫌よ!!あたしは王族としての誇りだってある
侵害というのなら、貴方を罰することだってできる!!」
ラミアはイライラしているようだ・・俺は、非情にもミリカに言った
「ラミア、落ち着いて。ここで言い争ってもどうにもならない
気持ちはわかるけど」
「旬・・けど。」
「・・大丈夫。俺も同じ気持ちだから」
ミリカは、フフンっとラミアを見る
だけど、俺は、ラミアの言うとおりここで終りにはさせやしない
「・・ミリカ、どいて。怖いのなら行かなければいい
それだけだよ。」
ハッとしてミリカは旬を見た
信じられないという顔をして
「ど・・どうして」
「もう一度言うよ、どいて。それ以上は言わない」
「そ・・そんな・・貴方達・・異常よ!!」
批判する声が聞こえる
「異常でもなんでも言えばいい・・俺は、行かなければ
いけないんだ・・」
「・・そやな。うちは、この最悪な事態に回避したいだけや
火の粉は払う方がええ。」
「そんなの・・ただの戯言じゃない。」
うっむくミリカその姿にラミアは、ため息ついて
「あんさんは、このまま一生苦しんだままでええんか?
王という概念に囚われ続けだけやで?
うちは嫌や、死んだものに囚われ続けるのは
悲しすぎるんや・・。」
「・・ミリカ様・・」
ルークはもう何もいえない
多分、ルークも気持ちは同じなはずなんだ
でも、彼は主のために何もいえないんだ
ミリカは、静かにポッリっと呟く
手は震えている
そして、見えないけど涙が流れているようにも見える
「・・ずっと、悩んでいたのよ。あたしが弱いから
大事な人がいなくなるのよ・・それが一番怖いの」
ミリカの不安
それは、ミリカが恐怖していることだ。
とても冷たい闇の底・・そのものだ
俺は、その気持ちが分る・・なぜなら
「そうだね・・俺も同じだと思うよ」
「・・・旬も?」
そう、俺も分る
喪失感を・・。
「俺も同じだよ。この道へと続くと
誰かがいなくなってしまうこともあるかもしれない」
「だったら・・・。」「でもね」
俺は話を続ける
だけども逃げる気はないんだ・・。
「何も話すこともなく去っていた人がいるから
これ以上、嫌なんだよ。道があるのに諦めるのは・・。」
そう、何もいうこともなく俺達の前から姿を消したジン
何か言ってくれたらきっと俺もラミアもここまで来ることは無かった
「だから・・俺は行くよ」
そんな俺を見て今まで傍観を決めていたルークが
「・・・少年、君は、この奥にある世界に怖がらないのか?」
ルークさんは俺に問いかけた
俺は首を横に振った
「多分、怖くないよ思うよ。怖い気持ちはずっと前から
しているんだから・・ね」
そう、この異世界に来てからずっと怖かったんだ
家族も友もいない世界に一人
仲間がいてもやはり、怖かった
だから、もう・・
「怖いより、もっとも、その感情は慣れてしまえば
それは恐怖ではなく強さに変わると知っているから。」
もう、何度も怖いは経験している
慣れてもおかしくないんだよ・・。
「・・そうか。」
ルークさんは寂しそうに笑った
彼も同じかもしれない
俺とは違う瞳をしているけど
彼なりの過去があるのかもしれない
そんな、俺達を見てミリカはフルフルと震えている手を握りしめて
「分かったわ。」
「え・・。」
ミリカは扉の前に来て
息を吸い込みそして瞳を閉じる
「あたし、この王宮にいることで自然と逃げ腰になっていたの」
「・・・。」
ミリカは、自分の過去を重ねるように
口を噛み締める
「馬鹿よね。逃げても何もならないことだと分かっていたのに
それでも、この王宮が怖くて恐ろしくて・・貴方達を止めようしたのは
きっと、あたしが弱かったから。」
「ミリカ・・・。」
俺は、ミリカの恐怖を分かってあげられない
ミリカそんな俺を見て
「大丈夫。もう逃げない。さっきもそう決心したのに鈍るとは
あたしが弱い証」
うっすら瞳あけて見えたのは黄金の瞳
アリアと同じ・・瞳
「もう逃げはしない・・今度こそ」
ミリカはソッと扉に手をやる
「汝は、王家の力を持つもの・・」
手から陣が浮かびあがる
「汝の声を聞け。我にその血を受け継ぐ者だと認識せよ」
すると、扉が共鳴してギギギギッっと大きな音を立て
その頑丈な扉が開く
術が終わるとミリカは、荒い息をしてへばりこむ
瞳はまた紅い瞳に戻っていた
「ミリカ様!!」
慌てて、ルークがミリカの傍に寄る
「結構、力を使うのよ・・黄金の瞳。
あたしではまだまだみたいね。」
「あんさん・・。」
ラミアはミリカの行動を見て
何もいえない
ミリカは、微笑んで
「さぁ、行きましょう。油断は禁物よ」
俺は、ミリカの決意に口を引き締めて
「・・そうだね」
俺達はその扉へと入る
もう、怖がる必要性はない。
だって、その向こうには
何か大きなことが待っているはずだから
喪失があるかもしれない
でも、それだけじゃないことは
俺でも分かっていることだから・・。
ミリカは、本当はかなり悩んでいるのです。
旬たちと共に逃げないと分かっていても
心のどこかで恐怖の方が勝ってしまった瞬間がこの55話の真相です。
さぁ、ミリカの行き先は・・?
また次話で、どうぞ。




