少年、召喚獣の襲来
さぁ、始まりました。
第53話目のお話です。
戦闘描写が今回あります。
さぁ、どうぞ・・。
ザァァァァ
その日は、とても寒くて雨だけは容赦なく降り続けていた
「・・あなた、どうして雨の中、震えているの?」
王宮の中で、一人、寂しそうに雨に濡れている少年を
少女は、見つけたのだ
少年は無言で何も話すことは無かった
少女は、ただその様子を眺めるだけだ
「・・・・。」
「・・そう、何も聞かないわ」
少年は、哀しそうに雨の中、空を見ていた
その様子に傘を渡す少女
「・・・あなたにあげるわ。」
「・・・。」
少女の方に向いた少年は目をパチパチして少女を見つめる
少女は笑みを浮かべ
「くすっ。王宮にいれば、どこにでも会えるわ。
その時でいい。返すのは。」
少女はそのまま王宮へと帰っていった
少年は、ただ傘を見るだけだった。
でも、少しだけ・・・。
嬉しそうな顔をしていたのだ・・。
*****
ドッシャーンっと大きな音が響く
その途端、会場を揺るがす事態へとなった
「な・・何!?」
「なんやろう・・?」
さいわいけが人はいなさそうだが
旬とラミアはその音に、混乱するだけだ
「旬、何か・・来とるようや」
「・・・招かざる客」
「ああ・・どうやら、そうみたいやな・・。」
ミリカの言う通り招かざる客が来ていたのだ
それは、全身黒ずくめで、気味悪い格好だ。
まさに、不吉という名がありそうで怖い
黒ずくめの男たちが一人の青年を見て囲んでいる
そこにいるのは・・もちろん、竜騎士の格好した青年
トウリ・エラィア・ラゥ・クランティアだ
会場はザワザワと騒いでいる。
当然だ、突然の出来事で会場は、ざわめくのだ
「静かにしろ!!」
男の声にピタっと止まる
すると、トウリは彼らを見て
「なんですか、貴方達、私はただの竜騎士ですけど?」
「いや、お前はトウリ・エラィア・ラゥ・クランティアだ。
情報があった。お前が竜騎士の格好をして、歩き回っているとな」
「・・ふぅん。面白い情報ですね・・たった、それだけの情報で
よく、分かったものだ」
すると、リーダー格の男が偉そうに
「さるお方からの命だ。分かって当たり前だ。
さぁ、来てもらおうか・・王子様!!」
「・・・。」
トウリは無言だ。
その酷く静寂した会場に
皆、動けないでいる
「連れて行け」
トウリへと近づいてくる黒ずくめの集団
俺は動けずにいた
正確には、動けなかったんだ
この奇妙な感じに
なぜか・・分らないくらいに
ミリカは、ただその光景を黙って見ている。
ルクウェアも同様で静かだ。
静観といえば・・正しいかもしれない
不気味なくらいにこの光景が・・恐ろしく。
静だったのだ。
クハっ。
小さな・・でも、よく、通る声だ。
やがてその声は大きな笑い声へと・・。
「クハハハハハっ」
会場へと響く声だ
大声で笑いだす、トウリ
腹を抱えて笑うその姿に、会場はどよめく
当然、黒ずくめの集団も同様で
「な、何が可笑しい!?」
「くはっ、私が、こんな無防備で来るわけがないでしょ」
「・・な・・!?」
すると、陣が現れる
「な・・貴様」
良く通る声は響くばかり
そしてニッコリと黒ずくめの集団を見て
「では、皆様。お先に失礼」
その陣で、トウリは消える
「な・・・!?」
集団は慌てるばかりだ
なにせ、目的の人物が消えたからだ
「今の陣は・・。」
「・・!!」
ミリかの顔が強ばる
「どうしたの・・?」
俺は、ミリかの異変に気づいた
声をかけると・・ピクリっと震えて
ありえないという顔になり
「召喚術用の陣だわ・・!!」
「・・召喚術!?」
ミリカが呟いた
「近くに、召喚者がいるの!?」
「なんやて!?」
すると、ふるふるとミリカは首を横に振る
「違う、ありえないのよ・・だって・・」
ミリカが説明しようとすると
ピクリっとルクウェアは反応する。
「何かくるみたいだね・・それも禍々しい何かが」
感じるのか、ルクウェアは警戒する
すると、代わりに別の陣が次々と出てくる
陣から何か召喚されたようだ
それは、どこかで見たこともある生物なかり
そう、それは・・。
「・・・召喚獣!?」
ガロォォォっと騒ぐキメラ
そう、現れたのはキメラだ。
それも、一匹ではない数匹のキメラが会場に次々と召喚されたのだ
その光景に俺達は開いた口がふさがらない
もう、衝撃的だったのだ
「な・・なんやねん」
ラミアは、最悪そうな顔をしている
俺は、先ほどの声が響いた
(いいことが・・。。)
「・・まさか・・。」
「どうしたんや、旬。」
やはり、あの時のことはそれを知っていて
わざと・・なのか?
「危ない・・」
ミリカは杖を持って
「我らを守りその力を、受け流せ!!シールド!!」
すると、炎により、盾が出てきて皆を守る
「あ、危なかった」
「危機一髪・・っていうのかしら」
「くっ、まさか、これがさっき言っていたこと!?」
これが最初から計画されていたことなのか!?
会場は、最悪だった。
逃げまどう人々
「なんで、反撃しないんや」
「仕方ないんだよ・・ここにいるほとんどは、貴族だから。
当然、魔法など使えるわけではない。ただのお遊びだったからだよ
そう、遊びだからこそ。混乱するんだ。」
キメラが暴れまわっている中
静観している姿は、ただ・・哀しみを感じたのだ
「そうみたいやな・・さてと、うちは、あのキメラを倒すんや」
「・・・。」
ラミアは周りを見て、懐からナイフを出す
「旬、うちは向こうのやつを倒すから、あんさんはあっちのキメラを頼む」
そういって駆け出すラミアの後姿をみながら
俺は、決意した
「う・・うん!!」
俺も、早くなんかとしなちゃ・・。
その姿に、ミリカはポンっと背中を叩き
「旬、あたしも行くわ」
「え・・。」
ミリカはニコっと笑う
そして、コソっと囁く
「貴方からかすかだけど・・どこか懐かしい匂いがする
その懐かしい何かが分かるまで・・一緒に行動して」
「・・・?」
「くるわよ!!」
目の前に迫るキメラ
懐かしい・・何か?
俺は、その懐かしい何かについて気になったのか
隙を作ってしまった
「旬・・!!」
するとガチンっと音を立て何かがキメラの行動を止めた
「ぐぁぁぁ」
そう、鋭い槍がキメラの身体に刺さったのだ
そこには、汗を流しながらこちらに走るルクウェアの姿があった
「少年!!しっかりしろ!!」
パンっと頬を叩かれる
「い、いた・・ルクウェアさん・・・?」
「お前しか、ミリカさまを守れない。今は
しっかり・・前をみろ」
そう言われてハッとした
俺は、この人にミリカのことを頼まれたんだ
くっ・・。
今は、他のことを考えている場合じゃないんだ・・!!
「はい・・!!ルクウェアさん」
すると、ルクウェアはフッと笑い
「僕のことはルークと呼べ」
「え・・。」
「がるぅぅ」
後ろで、キメラの唸る声に、俺はヤバイっと感じた
このままじゃルークさんが危ない
またキメラが動き出す
俺は、サッと杖だし
「風よ、そのモノを吹き飛ばせ・・ブレス!!」
すると、キメラが風に吹き飛ばされる
その様子を見て笑みを浮かべる
その時、俺は気づいた
どうやら、俺は彼に一杯喰わされたようだ
あれは、気づかなかったのではなく
気づいていたからこそ・・俺を試したんだ
「やれば出来るじゃないか・・少年。」
「・・ええ。」
「ふっ、ではお礼に僕の技を見せよう」
ターンっと軽々しく飛び
その軽々しさに俺は驚いた
「あれは・・?」
「ルークの得意技よ・・”ジャンプ”
高く飛ぶことで攻撃を鋭くさせる技よ」
ミリカの解説に俺は隣で聞いていた
正確にはミリカは杖でシールドを張っている中だ
高く飛んだルークはそのまま
「ジャンプ!!」
すると、鋭い槍が振って来る
真正面のキメラに向け・・。
「ぎゃぉぉぉ」
その途端、キメラは鋭い槍により急所をつかれる
すると、キメラは倒れる
「僕はまた向こうに戻る
お前は・・ミリカさまを・・頼む」
「ええ。わかりました」
そういって軽々しく飛ぶ姿を見届け
「旬、くるわよ!!」
「ああ・・」
目の前に迫るキメラの集団に俺は杖を持って
「・・・うん。」
杖を持って走りだす
ただ、前を見るしかない
俺は、ミリカと共に戦う為に
杖をギュッっと握りしめたのだった。
なぜ、ミリカは旬に動揺を持つような話をしたのか
単に彼女自身が、知らないのか
それとも確信犯なのか
貴方はどちらだと思いますか?
では、次話で・・。




