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少年、異世界に渡る  作者: 野上月子
第5章 ~ある学者の忘れ形見~
50/485

少年、飲み込まれた嘘

50話目になりました。

急展開は毎度のことです。

今回は旬ともう一人の視点が入っています。

誰の視点なのか

多分、読んでいれば分ります。

真っ白な世界にあたしは一人だった

もう、何も覚えてはいない。

目が覚めたとき

もう、自分が誰なのか思い出せなかった


「・・大丈夫?」


いつの間にか誰かそこにいたようだ

あたしはうつむいた顔をあげると

目の前にいたのは・・優しい顔をした

悪魔(デビル)だったのだ・・。



                *****




優雅にジンがお茶を入れる準備をしている中

俺は、一人・・考えていた。

それは、先ほどのこと

アリアやソリドゥスのことだ


哀しみの瞳をしていた

そして、一瞬だけ・・見えたのは憎悪

俺は、確かにあの時だけラミアの言っている意味が理解できた

ような気がした。


連鎖が、連鎖を生む


まさに、負ばかり続く。


その言葉・・俺は、少しだけ分かったような気がした。

冷たい底にいるような瞳・・正直、ゾッとしたのだ

アリアは、一体何に対して怒っているのか

俺にはよく分らない


そして、何に対して謝っていたんだろう・・?

俺は、ずっと考えていた。


だけども、考えても答えなど・・。


見つかるはずが無かった・・。


旬は、小さな体を丸める

ソファで体を丸める姿は誰がどう見ても

可愛らしい姿であった・・。


そんな、俺を他所に他の二人は優雅にお茶の準備をしていた。


コポコポっと紅茶を注ぐ音がする

その仕草を見てラミアはジ~っとその様子を見ていた


「すごいな。あんさん。手慣れとるな。」


ジンの紅茶の淹れる姿に思わず見惚れているようだ


「そうか?」


「さすが、元王太子様やな」


そのいきなりの答えにジンは


「・・王太子は関係ないと思うが・・。」


呆れるジンに感嘆するラミア


「でも上手すぎるな・・なんや、茶入れるのも礼儀作法の一つか?」


「特には・・。ただ我は、子供の頃、母がよく淹れてくれたものだ」


「・・そうか。お母はんか。」


「・・・随分、昔の話だが・・な。」


ジンが、思い描いたのは幼い頃の母の姿

まだ、幸せだった頃のかすかな記憶だ。


「ふっ・・。」


そして、また優雅な手つきでテキパキとする姿に


「しかし、庶民には馴染みはないな」


「ん?庶民も紅茶くらい飲むだろう?」


すると、首を横に振り


「・・・いや、庶民はここまでの紅茶は飲まんな

 うちらはこんな高級な茶は庶民では

 手を出すことはできん」


「確かに、見かけないな。」


「当たり前や。庶民が飲める茶には限りがあるやで?

 こんな上等もん・・うちには目から鱗が出る程や。」


そういうと、ジンが覚えがあるのか


「そういえば・・そうだな。我も、庶民の茶を飲んだことは

 あるが・・味は薄いしな。」


「まぁな。うちらの生活もそんなに豊かじゃない

 こんな茶、を飲めるうちは幸運・・それだけやな」


もっともな意見を聞いてジンは目を細めて


「・・・かもな。」


その一言だけだった。

渡された紅茶を眺める

自分の瞳が映る姿にラミアはソッと笑ったのだ

俺は、二人の会話を聞いているようで聞いていない

あいかわらず丸くなっている

その状態に、ラミアが心配したのか


「・・旬、飲まへんの?」

「・・・」


黙ったままだ、瞳は無のまま。

丸くなっている旬に、ラミアは心配そうに近寄る

具合が悪いのか・・と思い、つい旬の肩を揺する


「旬、大丈夫か?」


ハッとしたのか酷く慌てた顔をしている旬がラミアの方へと目を向けた


「ラ、ラミア。」


本当にハッとしたのだ

無我夢中で呆けたように・・・。


「・・。」


俺の心の動きが分るのか

ラミアは神妙な顔になり


「・・アリアはんのことだけや・・ないのやな?」


「・・まぁね。」


ジンが、そんな俺の様子にコポコポっと音を立て

俺に、何かを渡したのだ。


「旬、ミルクティーだ。飲め」

「・・・ありがとう。」


渡された湯気が立って美味しそうだ


コクっと一口だけ飲む


「・・・悩み事か?」


「うん、ずっと考えていたんだ・・なぜ、アリアは俺に

 謝ったのか・・とかね」


なんで、謝ったのか分らない。


「そんなん、巻き込まれるからやないの?」


「・・・それだけなら、いいんだけどね」



本当にそれだけならいい

何か・・。

俺は決定的に忘れていることがあるかもしれない

そう・・何か


俺はチラリっと、ジンを見る

絶対とは思えないけど

何か・・隠していることがあるはずだ。

アリアもソリドゥス・・そして、ジンも。


「・・ジン、俺は一言だけ言うよ」


「何だ・・?」


「明日・・・何をするつもりなの?」


「!!?」


ジンは目を丸くする


「な・・どういうことや」


「ただの直感だよ。でも、当たっているようだね」


俺は、やはりジンは何か知っているような気がした。

ジンは、沈黙を守るかのように黙る。


「・・・・・・・・。」


「・・・・・・・。」



果てしない静寂だった。



そして、口を開き


「明日、宴があるのは・・お前たちは

 恐らく、知らないと思う。」


「なんや?宴あるんか?初耳やな。」


どうやら、俺とラミアは知らなかったようだ


だけども、思い当たることはある


「いやでも、確か・・あのレイアス卿の人が

 言っていたのはそれのことじゃない?」


「そういえば、そうやな。」


そして、ジンに俺は問う。


「宴に何かあるの?」


「恐らく、アリアは大きなことをするんだ

 それは、王宮を揺るがすかもしれない

 大きな賭けだ。」


「・・・賭け?」


「ああ、我としてはアリアにはそこまで聞くことは無かった

 何故なら・・部外者だからな」


そう、ジンはもう関係ないことだ。

だけど・・。


「・・・明日。俺達も参加できるの?」


「もちろん。招待状をもらってきた

 純粋な宴を楽しめとな。」


「純粋・・ありえへんな。」


「・・・まぁな。」


「とにかく・・・ヴっ」


その時・・グラリっと揺れた

俺は、気持ち悪くなった


「ぐっ・・。」


「旬・・?」


頭が・・グラグラする

そして、強烈な眠気を感じたのだ


「・・ごめん、なんだか眠くなったみたい。」


「な・・大丈夫か!?」


ラミアは心配そうに俺のそばによる

俺は強烈な眠気にもう何も考えることはできない


俺はフラフラとベットに向ける


ラミアは心配そうな顔をする

俺はそれより強烈な眠気の中

ジンを見た。


何か苦虫を噛み潰した顔をしている。


どうやら、俺の飲み物に何か・・いれたみたいだね。


どうして、ジンがそんなことしたのか

俺には分らない。

でも・・。


ジンがどこかに行くような・・気がしたのだ。


「ぐっ・・。」

「旬!!!」


ラミアの悲痛の声を聞いたまま

強烈な眠気は、俺の意識を遠ざけたのだ



            ****


うちはとにかく焦ったんや

尋常やない

この旬の眠りは・・。

うちは、急に怖くなって


「な・・旬、起きろや」


ビシビシっと頬を叩くが起きることもない

深い眠り

それも、痛みにも反応しない。

うちは焦る

すると、うちの手を握り


「やめろ!!」


強制的に旬から遠ざけさせられる

うちは、カッとなり


「あんさん、一体、なんのつもりや!!

 旬を・・なんでこないなことを!!」


「・・。」


ジンは黙るだけや

一体・・何をする気なんや・・。


「何かいえや。なんでそんなことを・・。」


うちの問いかけにジンは静かに


「すまない。今は・・何も言わないでくれ」


「何も・・って・・ぐっ。」


グラリっとうちの頭も大きな揺れを感じた


「あんさん、一体何を入れたんや?

 あの紅茶に・・。」


「・・・。」


だんまりか、腹立つな。

それより最悪な眠気やな。強烈な眠気がくる


どうやら、盛られたようや・・何かの薬

恐らく・・眠り系やな。


「・・睡眠薬だ。ラミア、お前は本当にシーフだな

 効き目がすこし遅かったようだ」



「なんやと・・?」



うちは、グラリっとする

壁に手をつくが

思うように動かない。

そして、ジンはうちや旬をみて

どこかに行こうとする


「あんさん、何処に行く気や!!

 うちらを置いて」


「・・・すまない。」



ただ、ジンは謝るだけだ

うちは、そのまま意識が失くなろうとした。

そしてジンは一言うちらに向かってこう言った



「すまない・・二人とも。」



そして、ジンは姿を消したんや

うちと旬を・・置いて。



ジンが、旬達に睡眠薬を飲ませました。

一体何をするつもりなのか

次号明らかになります。

では、またどうぞ。

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