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少年、異世界に渡る  作者: 野上月子
第5章 ~ある学者の忘れ形見~
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少年、過去から現在に戻る時・・。

さぁ、始まりました、新章のスタートとなりますね。

ではどうぞ。

過去を遡ることはもう無いと思っていた

ただ、もう忘れたかった。

それは、今へと続き

心の傷となるまでは・・。


               *****



「・・・以上だ。」


その重い口で語る言葉は

とても、悲しくて

そして、痛くて

壮絶なことだった


「・・・・。」

「・・・・。」

「・・・・・。」


その場にいるすべての人が無言になった。

もちろん、俺も

ジンの悲しみは・・多分、俺には理解できない程だ。



「だから、ジンは・・名を捨てたのだね・・。」

「・・そうだ、我にはオルフェの名はいらないから」


「・・・そう。」


哀しそうだった。

王太子として名を持ち

その栄光と希望があった。

だけど、ジンは、アリアという一人の家族を守るために

自分を犠牲にした

すべてを失った彼は

生きるために名を変え

今がある。


俺は、何も言えない。

なぜなら・・。

自分には言う資格がないと思うから


そんな、俺の様子を見て


「オルフェは、悪くないわ」


アリアは、口を開いた

彼女は黄金の瞳を揺らし


「悪いのは・・私。あの時、力さえ暴走しなければ・・。」


指を噛み、怒りを抑えるアリア

俺は気になったのか


「力が暴走したのは・・何か、発動したの?」


すると、ふるふると首を振った


「トラップだと考えられるけど・・でも、今、考えてみれば

 発動条件は不明だった・・それだけのこと。」


発動条件か・・。

俺は魔法のことそんなに詳しく無い

それどころか、魔法が使える事自体、不思議・・という感じだ

そんな俺でも今の話を聞くことで一つだけはっきりしたことは

アリアは謀りを受けたということだ。


アリアの話は続く

手を握りしめる姿は痛々しく見えた


「あの後は、私は人の目が怖かった。だから、ヴェールで

 顔を覆い・・自分を隠すしか生き残ることができなかった」


「ヴェールは・・最初からじゃ無かった・・やね?」


今まで黙っていたラミアが口を出す


「そうよ。あの後、私は、罵倒よりもキツイ王宮の暮らしを強いられたわ

 だから、叔父様に頼んでヴェールを・・ね」


その手にもっていたヴェールを見せる

白くて綺麗だが・・逆にその白さが・・なんとなく悲しく見えたのだ


「王位継承の方は・・どうなったんや?あれから?」

「そういえば・・ジンが、継承権を失った・・とは聞いたけど

 どうなったの?」


すると、ためらっているのか


「今は、トウリとクロスが争っているわ」


聞き慣れない言葉に俺は首を傾けた


「トウリ?」

それは、誰の名前なんだ?

すると、ジンがため息を吐き


「・・我の弟だ。過去話には出なかったが、奴は我の次に強い純血の

 力を持っている。」


「そうよ・・詳しいことは今は、話せないけど・・・・。」  


それから黙る

「・・。」


迷っているのか黙っているアリア

悩んでいるチラチラとこちらを見ている

心なしか、情動不信だ。


「何か、我に話たいことでもあるのだろう・・?」


「!!」


ビクリっと反応する

そして、おそるおそる、俺達を見て


「・・オルフェ、本当はこんなこと言いたくない。

 だけど、言うわ。」


言いたくないけど言うのか・・。

なんだか、矛盾しているよ・・ある意味。

俺は少し呆れる


そんな俺を他所に、アリアは暗い瞳をして


「もうすぐ・・王太子の座が決まろうとしているわ

 だけど・・中々、それも上手くいかないの」


上手くいかない・・?

どういうことなんだろう・・?

複雑すぎて分らない

むしろ、ちんぷんかんぷんだ。

そんな、俺よりもラミアは、気になっていることがあるのか


「なぁ、確かあんさんのクロスという王子はんは

 確か、混血なんやろ?」


「・・・!!」


俺もハッとした

そういえば・・そう言ってたな

確か・・王太子になれるのは・・純血だけ・・!!


「王太子になれるのは純血だけやろ?それが決定事項ではないんか?」


すると、アリアは頷き


「そうよ。だから、今、王宮は混乱しているの」

「・・・?」


「今、王宮は、純血派と混血派で別れて争いが続いていてね

 王都以外は広がっていないけど・・時間の問題ね。」


そこまで深刻なんだ・・継承権問題は。

俺は心底にブルっときた



「それで、お前は何が言いたい?もう我には関係はずだ」


オルフェは、厳しい目でアリアを見た

アリアは揺れる黄金の瞳で。


「私は、貴方なら王になれるとずっと思っていたわ

 でも・・貴方は、もう王にならない。

 なぜなら・・王位継承権を失ったから」


そう、ジンは王位を失うことで

もう、王太子になることは無い

そして、王にもなれない

ただの一般人になったのだ


「・・・そうだな。王位継承を放棄したどころか

 王位すら同様だ。今更、王宮に行っても

 部外者風情の我がな・・しかも、王太子の座だ

 どちらが王太子になったしても・・お前にとっては

 痛い所・・だろうな。」


フッと笑う姿

もう、関わりたくないというのが本望だろう

皮肉が聞こえる

アリアは平然として


「どちらかが王太子・・それは私には分らない

 勝つも負けるも私は第三者であるから・・

 たとえ、今度もまた追放された事態になっても

 次は・・もう、恐れることは無いと思うわ。」


アリアの覚悟

それを聞いたジンはただ、黙るだけだ。


「・・・。」


何かが起きる・・か

俺は考えていると、アリアは今度は俺の方を見て


「もし、王国に行くことが前提として・・。

 交換条件として、貴方、何か探しているでしょ?」


「え・・。」


「赤い月の情報・・私が知っていたとしたら・・どうする?」


ニコリっと脅迫めいた一言を言った

な、なんなの?

急に、アリアの様子が・・変わった?

そして・・なぜ、赤い月を・・?


「・・・あんさん・・脅迫する気か?」


ラミアがギラリっと瞳を向ける

その瞳すら怯えることも無く


「これでも、王女だから使えるものは使う。

 何がなんでもね・・。」


その強気さに少しだけ拍手をあげたい気分だ。

だけど・・・。


「・・もし、俺達が馬車を降りると言ったらどうする?」


「・・・そうね、ここから落ちても怪我はする程度ね。

 ただし、擦り傷程度じゃすまないわ・・。

 貴方達が逃げようとしても私は貴方達を王宮に連れて行く」


どうやら、アリアは本気だ。

それほど、もう後が無いってことか。

仕方がない・・。


「分かったよ、行く。」

「旬!?」


ラミアが驚いて目を丸くする

ジンに至っては冷静だ。


「・・で、でも、罠だったら」


「それでも、行くよ。俺、赤い月の情報も知りたい」


そして、何よりも・・。

ジンの過去との決着を着けるべきかもしれない

ジンとしては行きたくないかもしれないけど・・。


「懸命な判断ね。」


そして、フフッと笑うだけだ。

さすがは、王女ということか

そのオーラには圧倒される。


ラミアは髪をガシガシっと掻きながら


「しゃあない。うちも行く」

「ありがとう。ラミア」

「当たり前や、子供のあんさんを一人にできん」


子供って・・。

そんなに、俺子供に見えるだね・・。


未だに黙っているジン


「ごめん、ジン」

「・・別にいい。」

「え・・。」


「・・我は、自分の過去と決着をつけるべきかもしれない」

「・・・。」


俺は、一つ気になることがあった

それは、王の妃だった・・一人の女性のことだ。


「ねぇ、ジン・・メノリという学者さんのことだけど・・

 もしかして・・。」


「もう、昔の話だ・・。」

「・・・そっか」


これ以上は、聞くことは無かった。

ジンとしてはこれ以上・・思い出したくないことだったから


馬車は、やがて・・王国へと続いていく道へと行く

俺は・・その道をなぜか

とても、大きな陰謀に巻き込まれるような気がしたのだった。


ジンは、メノリのことをどう思っていたのか

さぁ、皆さんの想像でお任せします。

では、また次話で。

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