過去編その⑧ 夢の終り
ついに、オルフェ編はここで終了です。
では、どうぞ。
一人の王とその妃が死に至り
すべてが終わると思いきや
それは始まりに過ぎない
我は忘れない。
この事件を・・。
父を・・メノリを。
そして、この黒幕が誰なのか分らない誰かに対して
絶対・・許しはしない。
*****
あの後、それはすごいことだった。
気絶したソリドゥスとアリアを運び
事態は、かなり最悪なことになりそうだ
我としては、このあと起こることを予知している。
ただ、アリアのことが心配になった
あの後、説明すると
彼女は蒼白になり・・そして、震えていたのだ
そのことで、訪れたのだ・・アリアの部屋に。
「コンコン」
音を鳴らした
「・・・・。」
シーンっとして返事が無い
それどころか・・何か音がする
「・・アリア!!」
我は思わず気になって
慌てて部屋に入ると
そこは、荒れ果てた部屋だった・・。
「な・・。」
カーテンは破かれ、ソファは壊れ
ガラスであちらこちら割れている
我はそれを器用に避けながら
アリアの元へと向かう
問題のアリアは寝室にいた
だけど・・異変があった。
「・・あ、アリア・・?」
呼びかける
毛布をかぶって震えている
我が触れようとすると
「・・なんでこんなことなっちゃった・・だろうね。」
アリアは毛布越しからポッリと呟く
「アリア・・お前。」
アリアは、首を絞められたことにかなりショック受けている
それが、まさかの父親だったことだ。
「・・お父様は・・私を殺そうとしたわ・・」
「・・。」
震える声、カタカタと手も同じだ
「オルフェ、お父様は死んだわ。私のせいで」
「違う!!」
我はそう叫ぶが
「いいえ!!違わない!!」
顔をだしたアリアの姿は酷かった
お気に入りだと言っていたかんざしも手で握り潰したのかゴナゴナに
アリアの傍に落ちていて、顔は、涙で濡れて酷い状態だった
ただ、黄金の瞳だけは・・美しく輝いていたのだ
「私が暴走したからお父様は私を殺そうとした
そして、責任を感じたからお父様は自害した!!」
震えながら彼女は自分の顔を覆う
我は心が痛くなった。
父は、最初から狂っていた
だけど・・それに対する証拠もない
「違う・・父上は・・。」
言いかけた・・だが、言葉が出なかった
狂気に陥っていたと説明することができても
証拠すら・・。
アリアは、思いつめたように話だす。
「お父様を追うようにメノリも死んだわ・・。どうして、お父様が死んだら
あの人も・・ねぇ・・どうしてなのよぉ・・。」
ポロポロと涙を流す
収まりきれない程の涙が溢れる
「この瞳のせいよ・・あれから、何度も術を試しても治らない
それどころか、私を・・苦しませる」
「アリア・・。」
我はどうしようもなかった
何もできないこと
そして・・。
「私は嫌われていたのかしら・・混血のせいで・・。」
涙は、ポロポロと流れ落ちるだけ
うつむくアリア
だけど、我は・・。
メノリのあの最期の顔
そして、王としての父ではなく
久しぶりに見た父の顔を思い出して
我は首を振る
「それだけは違う。」
「え・・。」
「父上は、お前を愛していた。だから、お前を助けるために
あんな結果になったのは・・仕方ないことだ。
だけど・・父上は最期は・・謝ってくれたんだ・・我達に・・。」
「謝って・・いた。」
「メノリもそうだ・・お前の目のことを気にしていたんだ・・
だから・・だから。」
我は必死にアリアに届くように訴えた
だけども・・。
「・・もう、無駄よ。」
「え・・。」
無駄・・?
どういう・・ことだ?
「ふふっ。」
「・・・。」
「私はもうすぐ王族ではなくなるもの・・当然、お母様も」
「アリア・・?」
アリアは、笑うしかないのか
手を顔に覆いながら
「・・もうすぐ、私は、審議会で、王族ではなくなるもの
決定的よ・・。」
「・・・。」
あざわらうかのように、我を見つめる
それは、すべてに対して諦めた姿だった
「当然よね・・でも、オルフェ、貴方は大丈夫よ」
「え・・。」
目をまるしくた
皮肉にそうに
「だって、貴方は正室の母親をもってそして、数少ない純血であり
そして、王太子でもある・・私のような混血よりかね
たとえ、父の罪を問われてもあの人たちは貴方に甘い」
我は、確かにそうかもしれない
正室の子で。母親の影響が強かった
だけど・・今は、そんなことは関係ない!!
「・・。」
アリアは、ただ空を見つめるように
「すべては、仕組まれたこと。私にはもう居場所なんて
どこにも・・ないのだから・・。」
「・・いや、大丈夫さ」
我にできることを・・。
「・・我に考えがある。」
我には背負うべきは重い
それだけじゃない。
すべてを失うのは・・アリアではない。
それだけのことだ・・。
****
審議会では、王族関係者、貴族、公爵・・権力者達が傍観している
当然、問われているのはアリアだ。
「アリスティ様」
「・・はい。」
「貴方は、王であるライドウ様を死なせた。それはとても重い罪です」
「・・・・。」
アリアは、空虚な瞳で、周りを見た
皆、アリアを疑惑の瞳で見つめ
誰も弁解などしてくれることも無かった
見渡しても家族である母は、呆然として
従者である彼も同じ
他の兄弟は、私を軽蔑する
「・・いいでしょう。あなたの王位を剥奪・・そして追放処分を言い渡します」
それは、すべての終わりと誰もが感じていた。
その時、
「その審議会。待ってもらおう」
ザワザワと騒ぎだす
アリアは慌てて後を見る
そこには、オルフェの姿があった
「な・・お、王太子・・なぜ!!」
我にはもう・・失くすものが無い
それならば・・。
「我こそが父を見殺しにした張本人だ・・アリスティには罪は無い
彼女は、ただ気絶していただけだ」
ザワザワと騒ぐ音が響く
驚愕と疑惑が一気にこちらに向いた
「しかし、彼女は黄金の瞳を・・力を。解放しています。」
「それは、事故だ。誰のせいでもないこと。
王のことは我は止めることはできなかった
それこそが、罪だろう?」
今は、あれが謀りかどうかわからない。
だからこそ、アリアを守るにはこれしか方法がない。
ニヤリっと笑う
すると、呆然としていたのか
「では・・なぜ貴方が・・。」
「我のことか?当然だろう?
皆も思っているはずだ、我こそが・・な。」
カタリっと何かが音をした。
それは、我にとっては始まりの音
「ま・・まさか、貴方様が王を・・?」
「残念だが、父上を殺すはずがない。それはただの自害だったのだから」
「・・・!!」
「調べればすぐ分かることだ・・さて、アリスティの罪状のことだが」
我はコツコツと音を立てながらアリアの傍に来た
アリアは、我の行動に驚いているようだ
「アリスティに関しては無罪・・ただし、監視付きだ。
その罪に関して我の王位継承権を放棄することによる
・・以上だ。!!」
「そ、そんな・・オルフェ様!!」
我を、信頼していた部下たちか・・。
もう、失うのは我一人で十分
「すまない。」
「謝ることはしかできない我を許せ・・。」
そして・・・。
「では、あなたは・・?」
我は好戦的に笑い
「王位剥奪は、我で十分。これより、我は、王位継承権を放棄し
追放されようじゃないか」
それが、合図に会場はさらなる驚愕の嵐となったのだ・・。
当然、アリアは我を見つめていた
何を考えていたのか・・分からずしまいだけどな。
****
王宮の外に出るのは初めてだ
メノリの一言がまだ頭に響く
”外に出なさい・・。 ”
”さよなら”
「・・我は・・どんな気持ちだろうな。」
メノリのことが頭に駆け巡る
思い出すたびにククッと笑うばかりだ。
足は・・歩き出したいとうずうずしている
一歩と歩きだそうとすると
「・・・待て」
そこには、ソリドゥスが我を呼び止めた
「なぜ・・アリア様を庇う」
なぜ・・当たり前
それは、我にとっては重大なことだからさ
王位よりも・・な。
「・・なぜ?そんなこと、当たり前だろう?」
「・・・。」
「家族として、守らなければならない
それが・・頭に駆け巡った・・それだけだ」
「王位を無くしてもか・・?」
「・・・ああ。」
「そんなこと・・アリスティ様も私も望んだことかぁぁ」
そして、襲いかかる剣
我はすぐ応戦し、そして・・
「ぐっ・・。」
ソリドゥスは負けた
「我の勝ちだ・・望んでいないとしても我は後悔しない。」
そして、我は歩きだした
ソリドゥスのことを気にせずに去っていく我
本当は、痛かった
仲間だった
家族でもあった。
だけども、仕方がないことだ。
我がそう・・望んだから。
我が立ち去る姿をソリドゥスは憎しみを向けていた
「ぐぅぅ」
ソリドゥスから黒い気が漂う
後に・・大変なことになるとは
誰もその時は気づくことなどなかったのだった・・。
これで、オルフェの過去は終了となります。
どうだったでしょうか・・。
彼なりの哀しい話
別れです。
では、次話はいよいよ現在へと戻ります。
では、次話で。




