少年、一筋の涙
記念すべき100話目
これからどうなるのか・・・
ついに明かされます
では、どうぞ
俺はその温かい手を知っている
なぜなら・・・。
ずっと昔から・・・。
知っている手だったから・・。
****
ラミアは、その話を終えると
ふぅっと溜息を吐いた
「ほんま、謎の深い人物やったわ・・
気配はないわでほんま・・そこは夢なのか
現実なのかわからんかったわ」
夢なのか・・現実か?
それは、俺は気絶していたから分らない
でも、それは事実あったことなんだ・・。
「・・。」
俺は黙った
「それに、なんやあのリーフルっていう猫は
なんのために現れたんやろ・・?それに、
あの召喚士・・まるで旬と面識があるような感じやったわ・・
きぃ~ほんまに訳わからんわァァァァ。」
と頭を抱えるラミア
どうやら、ラミアも混乱しているようだ
「俺にも分らないよ、多分その召喚士は
俺と会ったのは・・ほら、ジン達のあの時以来だ」
「そやな・・って、そうなのか!?」
クレーエを逃がした召喚士
恐らく・・その可能性が高い
「多分ね・・断然はできないけども」
あの時、消えていった召喚士のこと
もしかしたらとも思っている
「それに・・俺はあの人を知っているような
気がしたんだ」
「知っている気がした・・?」
温かい手を感じたのだ
あの手は、俺は知っている。
そして、俺は知っている
そんなわけがないと思っている
でも、どんどん確証へと変わっていこうとする
ここにいるはずがない人物だからだ・・。
でも、一つだけその考えを覆すことができる
それは・・。
「・・・もしかしたら、俺の前に現れた人物は
俺と同じ・・」「異世界からやってきた・・そうでしょ?」
俺の言葉を遮って誰かが変わりに話したのだ
ガチャっと音を立てて誰かが入ってきたのだ
「あ・・あんさんは・・。」
「ノエル・・ジン・・皆。」
そこには、ノエルとジンの姿があった
後ろからは、アニマ
そして・・ユニコーンであるジゼルだ
「旬、起きたか。大丈夫か?」
ジンが俺を心配するように視線を合わせる
それと同じように
(ゴシュジン、オキタンダナ。ヨカッタ)
どうやら、アニマはまだ本の中には戻っていないようだ
当たり前か・・。
「ありがとう。アニマ」
(イイヨ~ゴシュジンガゲンキナラ)
そして、ノエルがにこやかに俺の所に来て
「よかった。ボク・・心配していたんだよ」
ノエルはニコっと笑う
「そうだな・・よかった。」
ジゼルも人型になっているがとても安心しているようだ
それだけでも俺は嬉しくなった
誰かに、一時は敵同士になった
「・・ありがとう・・それより、ノエル」
「なんだい?」
不思議そうに首をコテリっと傾ける
だが・・俺は聞かねばならないことがあったので
聞くことにした
「どうして・・俺が異世界からきたことが分かったの?」
すると、ノエルは俺の傍にきて
そして目線を合わせる
琥珀の瞳が大きく揺らいでいる
なんだか・・切なそうだ・・。
「ボクは最初から君が異世界人だと知っていたんだよ」
「え・・。」
最初から、知っていた・・・?
どういうことなんだ・・?
「旬、それには召喚士一族にはもう一つの秘密に
関係することなんだ・・。」
「・・・!!?」
「なんやねん、あんたいくつ秘密を持っているんや」
「あははっ。これで最後だよ。本当に」
「・・信用できへんわ。」
溜息をつくラミア
「でも、ボクは・・君が名乗らなくても最初から
知っていたんだから・・君が、どこからきたのかを・・。」
すると、ハッとしたのは俺だけじゃない
ラミアもジンも・・その場にいた全員だ
その中でもラミアはギロリっとノエルを睨む
「どういうことや!!ノエル・・うちだって
旬が異世界からきたことは知っているけど・・
あんさんが最初から知っていると言ったことは
旬の他にもおるんか・・?異世界人が・・。」
ラミアは、そう言うと
冷静に、ノエルは・・・肯定する
「ああ・・いるよ。正確には、過去に迷い込んだ人間は
ボクたちの村が保護していたんだ。」
「・・・保護・・していた。」
それは、俺でも驚いた一言だった
保護・・。
それは、思いもよらない一言だった
ノエルは続けて話をしだした。
「ボクたち、召喚士一族は、”召喚”をすることができる
それは獣だけではない・・希に、人も召喚することがある」
「人も・・召喚する・・!!」
「なんや・・驚くな。異世界人も召喚できるんか
あんさんらは・・。」
俺は開いた口が塞がらない
もう、衝撃すぎたのだ
ただ、ノエルは、溜息を吐く
「それは、間違えてしまった場合に起こるんだよ」
「間違えて・・よくありそうだね」
こういう話は、ありそうだ
でも、俺もまさか間違えて召喚されたのではないだろうか?
少しだけそのことが頭の中で駆け巡る
「でも、全部じゃないよ。中には意図があって召喚された人間もいれば
なんらかの事故によってコチラ側にきた人間もいる
それはランダムであり、ボクらでも把握ができない。」
ラミアはある一言に引っかかった
「なんや・・なんらかの事故って。」
ノエルは腕を組んで考え込む
「・・ボクにはそれが何か分らない。召喚士といえど
召喚された人間の素性をそこまで知っていいわけがないから
現に過去に、そういう例があったのは・・・10人だけだった
でも、それは召喚士村だけだから・・案外、まだ多いかもね。」
その言葉だけでジンは反応するのだ
「10人もいるのか!!?」
ジンは身を乗り出す
無理もないかもしれない
ジンにも・・昔いたのだ。
異世界から来た可能性が高いという女性もいたのだ
浮かべるのはその娘の・・・。
(旬・・。)
そう言って苦笑いした少女の姿が頭によぎった
それは・・なんとなく苦しくなるくらいだった
それは、どこまでも俺の脳裏に思い出すのだ
それでも尚・・ノエルは話を続けてくれる
「その10人については、詳しいことは描かれていなかった
それは過去のことだったから・・でも、
そのうちの一人が・・この村でとても強い魔力をもった
異世界人だった・・」
「もしかして・・それが、うちらの前に
出会った・・人物やな?」
「・・そうだよ。まさか、ケット・シーと共に
行動しているとは思わなかった。」
「どういうことだ・・?」
ジンがケット・シーの話題なると敏感に反応する
よほど、気になるのだろう
「おれさまがせつめいしてやるよ」
ユニコーンであるジゼルが旬の前に来たのだ
「ジゼル君・・いいのかい?」
ノエルは聞くとジゼルは、頷く
「・・おれさまももう・・はなしてらくになりたいんだ」
「・・そっか」
そして、ジゼルは旬に視線を向ける
「けっと・しー・・りーふるは・・おれたちとおなじしょうかんじゅうだった
とくにおれとも、うまがあったし、なかもよかった」
「・・・。」
「だけども、あのひ・・あいつがむらをしはいし
あのじっけんのせいでたくさんのひとがぎせいになったもちろん
りーふるにとってもさいやくのじたいになった・・。」
「なんかあったのか?それも・・・かなり悪い方向に・・・。」
ラミアの不安は的中なのか、ジゼルは頷いて
「・・そうだ。りーふるのまえのもちぬしが・・じっけんにより
しんだ。それだけじゃない、りーふるじしんなにもできなかったと
きいている」
死んだ・・。
それは、とても重い話だった。
誰もなにも言えなくなった
「・・・おれさまもおなじようにおおけがをおったが
あるじはいなかったから・・かなしむことはなかった。」
悲しむことは無かった・・?
でも、ジゼルの顔はとても寂しそうだ。
「・・それからりーふるはわらうこといがいはかんじょうが
なくなった・・あるじのしは・・りーふるには
とてもおもかったんだ」
「・・・。」
「おれさまは、ふくしゅういがいしかあたまになかった
なぜなら、にんげんにおおけがをおわされ・・
そして、りーふるじしんも・・ふくしゅうしか
ないとおもっていたんだ・・あのひ・・もな」
(ふくしゅうしよう・・りーふる。)
すると、りーふるは、けらけらと笑って
(嫌だにゃ・・)
拒否する
(なんで・・?)
(主はもう帰ってこないにゃ・・そんなの
なにもならないにゃぁ)
(だからこそ・・おれさまたちがふくしゅうするんだ!!)
リーフルは首を横に振る
ニコニコ笑っているが、リーフルは首を横に振る
ばかりだ・・・
(駄目にゃ・・主はそれを望まないにゃ
ジゼル君・・君も主を持てばきっと
分るはずにゃ・・。)
(そんなの・・。)
(それがわからないじゃ・・いつまでも
復讐に囚われるばかりにゃ)
そういってケット・シー・・リーフルは
その後・・行方不明になった
「ほんなら・・で、でも変やん。だって
ケット・シー・・いや、リーフルの
主は、生きとったやん・・!!」
ラミアはジゼルに言うがジゼルは首を横に振る
「ちがう。あのしょうかんしは・・りーふるのつぎのあるじだ
それから・・りーふるはゆくえふめいになった。
ひとりのいせかいじんと・・ともに」
それからノエルは・・うつむいて喋るのだ
「異世界人と一緒に行方不明になったのか」
ジンの言葉と同時にノエルは
「ケット・シーと消えたのはボクが尊敬していた人だった
優しくて温かい人だった・・あの、実験が起きたあの日
ボクは・・あの人に守られて・・あの人は死んだ」
「・・・・」
「・・・その異世界の人は?」
「一緒だったよ・・でも・・。」
ポッリっとあの日のことを思い出す
ボクは覚えている
ボクを守るように死んだあの人と
ボクの傍で絶望の瞳で苦しんだ
・・・さんを。
(ノエル・・とても苦しい
ここにいるかぎり何も救われない
ここにいると・・悲しい)
(・・・さん。)
声にならない言葉がノエルをおそう
(アイツに会いたい。きっとバカみたいに笑って
ゲームをピコピコと続けているかもしれない
きっと・・それだけでも救われるかもしれないのに・・。)
(アイツ・・って誰のことですか・・?)
(ははっ。幼馴染だよ。バカで天然ボケで
そして・・優しいあの馬鹿な子
とても大事な・・。)
(あの・・その人の名前は・・?)
(シュン・ヒナセ・・幼馴染だよ。)
「ボクはその時・・君の名前を知ったんだ。
君が異世界人であることもそこで知った」
俺はワナワナっと唇が震える
どこまでも悲しくて
どこまでも優しくて
「・・ノエル・・そいつの名前・・もしかして」
「センリ・クジョウ・・。」
俺の中にその時頭に駆け巡る
(おい、旬!!早く起きろよ!!)
(眠い・・よぉ。)
俺は眠い、眠いと言いながら
目を開ける
そこには、俺を蹴飛ばしたり
毎日、毎日、罵倒するアイツの顔を思い出した
(頼むから起きろ・・お前を起こすのが
大変なんだからな!!ったく、早くしろよ
馬鹿旬!!)
「九条・・千里・・。」
俺の瞳から・・ツゥ~っと一筋の涙を流したのだった
顔の見えない・・幼馴染の・・名前だったのだ・・。
召喚士は・・旬の幼馴染だった?
様々な思惑と共に
次話へでは、またどうぞ




