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バスタード・ソードマン  作者: ジェームズ・リッチマン


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第二回熟成ウイスキー猥談バトル


 ウイスキーは一人一杯まで。これに嘆いたのは酒好きなのんべえ連中だ。ビールでは味わえないカッとするアルコールが恋しい気持ちはわからんでもない。

 だが、朗報は外より運ばれてきた。

 新たに酒場にやってきたギルドマンの一人が「広場の方でも配布してたぞ」と言ったのである。


「その手があった!」

「行くしかねえぞこれは」

「並んででも奪い取る!」


 これによってギルド内の何割かがゾロゾロと祭りに戻っていった。

 なるほど、伝令の人も酒の配布は「各場所で」とか言ってたから、ギルドの他にも色々な場所で酒を配っているのだろう。

 つまり酒好き連中はお一人様一つのみを各店舗で実践しようというわけだ。外はすっげー混んでそうなのによくやるぜ。気持ちはわからんでもないが。


「おや、モングレルさん。どうも、お久しぶりです」

「ああカスパルさん! お久しぶりです。ギルドで会うのも珍しいですねー」


 人の出入りが激しい中で「レゴール警備部隊」のヒーラー、カスパルさんの姿もあった。

 お祭りということもあって普段はあまり顔を見せないおじさん連中も一緒にいる。それと、見慣れない若者の姿もあった。


「うちのユークス君とたまにはこちらで飲もうかと思いまして……」

「あ、どうも。ユークスです」

「おー、カスパルさんの部下だっけ、名前は聞いてるよ。俺はモングレルな。まぁあまり顔を合わせることもないだろうが、よろしくな。こっちはアルテミスのライナとウルリカ」

「どもっス。弓使いのライナっス」

「同じく弓使いのウルリカでーす。よろしくー」

「は、はい! よろしくお願いします!」


 若いなぁ。しかしこんだけ若い奴がヒーラーとして働いているっていうのは心強い。

 この世界、ヒーラーは何人いても困らないからな。適性が魔法使い以上に厳しいってのが惜しまれる。人数さえいれば医薬品の発明なんて必要ないんじゃねーかってほど便利な能力なんだが。


「今年は飲みすぎて具合を悪くする人が多いらしいですからねぇ……モングレルさんたちも、あまり飲みすぎないようにしてくださいね」

「ええもちろんです。節度は守りますよ。……あれ、ひょっとしてカスパルさんたちは今日仕事ある感じで?」


 よく見たら彼らは「レゴール警備部隊」の制服を着込んでいる。いかにも“仕事中”って感じの装いだ。


「今は休憩をいただいているようなものです。夜にはまた持ち場で、急患に備えなければ……こういう時こそ、我々は忙しくなりますからねぇ……」

「……お疲れ様です」


 俺達三人が頭を下げると、カスパルさんは悟ったような薄い笑みを浮かべ、ビールを一口飲んだ。

 ……仕事はあるけどそれはそれとして少しは酒を飲むというのが、なんともこの異世界らしい。前世じゃありえねーよな。


「うおー飲んだ飲んだ! レゴール伯爵万歳! ケイオス卿万歳!」

「現伯爵様が後を継いだ時はどうなるかと思ったが……最高の領主様だな!」

「販売いつになるんだろうなぁ、あの酒……」

「でも多分貴族向けになるだろ? 値段によるなぁー」


 そうこうしていると、さっきまで外に出ていたのんべえ達が戻ってきた。

 どうやら無事に外で配布されていたウイスキーにありつけたらしく、上機嫌そうだ。ちょっと羨ましい。


「……ふむ。あのガラス瓶に入っていたいくつかの棒。あれがウイスキーとやらの風味を出しているのだと私は推測している」

「ナスターシャもそう思うかい。僕もその意見には賛成だ。表現は適切ではないのだろうが、あの煮詰めたような酒精の中に感じる焦げた香り。あれは火で炙った木材より析出した風味に違いない。あるいは同じような材質の樽に保管していたのかもしれないが……」

「サリーは似たようなものを飲んだことあるのかしら」

「さあ、僕は無いね。蜂蜜、乳、様々な酒があるけれど、あんな強い酒は初めてだ。高級品に関してはシーナの方が詳しいんじゃないかな」

「見たことも聞いたこともないわ。伯爵の言う通り、確実に新開発されたものなのでしょうね」

「ケイオス卿が伯爵に肩入れするのも初めてではないが……ふむ。興味深い……」


 ゴールドランクの連中はなかなか鋭いな。

 本来ウイスキーは炙った樽によって風味を出すものだが、今回は更に樽の中に焦がした棒材を突っ込む手法も伝達してある。焦がした表面積を増やすことで風味付けがより促進されるわけだ。前世も酒飲みグッズとして酒瓶に突っ込む木材が売られてたりなんかしたしな。自宅で熟成ってやつだ。

 もちろん、それだけでこのベースアルコールの荒っぽさが改善される訳では無いが……俺としてはひとまず、この強い酒を口にできたことが嬉しいね。


「……私も、あのお酒が売られたら買おうかなぁ……いくらくらいになるんスかね……」

「ライナは酒強いなぁ。俺より強くないか」

「うち結構みんな強いんスよね」

「私もライナが酔っ払ってるところは見たことないなぁ」

「ウイスキーが高かったらどうするよ? 一杯1000ジェリーしたりしてな」

「……」

「おーいライナ? 真剣な顔してるけど大丈夫か? ……買うのか? 買うつもりなのかお前……?」


 まだ十代だってのに既に酒豪の素質が垣間見えるな……。

 ……もうちょっと色々と酒を開発しても良いのかもしれん。農業国の輸出品としては滅茶苦茶強いからな、蒸留酒。消毒用にもできるかもしれないし。健康被害だけは気がかりだが……。




「おーいてめぇら~! 腕相撲大会で我らがディックバルトさんがレゴール一の勇者になったぞぉ~!」


 陽も沈みはじめ、警備部隊の人が仕事に出かけ、それと入れ替わるようにしてギルドの客が増えはじめた頃。

 それまで姿を見ていなかったチャックたち「収穫の剣」の面々がゾロゾロとご来店なさった。


「おお、すげぇな! さすがはディックバルトさんだ!」

「やっぱ一番の腕っぷしはギルドマンじゃなきゃいけねえよな!」

「ご立派ァ!」


 そこには糸目の大男、ディックバルトの姿もある。

 どうやら祭りの催しの一つ、街一番を競い合う腕相撲大会で優勝をもぎ取ったようだ。

 パーティーメンバーに囲まれ称賛を受けるその姿は、まさに今レゴールで最も脚光を浴びているパーティーの長に相応しい。

 ……よく見たら集団の一番うしろにバルガーもくっついている。酔い過ぎてフラッフラじゃねえか……今の今までずっと飲んでたのかあいつは。


「……負けて……しまいました……」


 そしてバルガーの更に後ろから、どことなく気落ちした様子のゴリラ、じゃなくてゴリリアーナさんも入ってきた。


「ゴリリアーナ先輩、どうしたんスか?」

「大丈夫? なにかあったの?」

「いえ……ただ、決勝でディックバルトさんと戦って……負けてしまったのです。全く敵いませんでした……力不足です……」


 決勝戦はディックバルトとゴリリアーナかよ。逆にゴールドの超強いディックバルトと戦えるほどの力があるのか……。

 これからもゴリリアーナさんに失礼なことをしないように気をつけよう……。


「あら、おかえりなさいゴリリアーナ。惜しかったのね、よく頑張ったわ」

「シーナさん……すみません、全力を尽くしたのですが……」

「気にしないで。むしろよく二位まで上り詰めたわね。同じパーティーの一員として誇らしいわ」

「……ありがとうございます」


 そうか、腕相撲大会かー。毎年やってるけどいつもそんな遅い時間まで見て回ってないからなぁ。

 一応精霊祭は夜になって月が出てからが本番ではあるんだけどな。ここらへんで見て回るの面倒になって酒場に籠もっちゃうんだよなぁ。


「そこでよぉ~今年は腕相撲の優勝者に豪華な商品があるってことでよ~……なんとディックバルトさんがなぁ~……この酒を一本、勝ち取ってきたんだぜぇ!? まさか未だにこの酒を知らない奴はいねぇよなぁ~!?」

「なっ……!」

「それは!?」


 チャックが掲げたのは、一本の酒瓶。

 色ガラスによって中身はわかりにくいが、間違いない……!


「レゴール伯爵様が作った新しい酒、ウイスキーだぜぇ~!」

「うおおおおお! ディックバルトさん最強っ!」

「強い漢だ……!」

「――うむ。この街における最も強き雄として認められたことを嬉しく思う。ありがとう、皆。だが――この気持ちは、俺一人で独占するべきものではあるまい。今宵は精霊祭――この美酒は、ギルドにいる皆と共に味わおうと思う」

「イヤッホォオオオオウ!」


 す、すげえ! 優勝商品ってウイスキーだったのかよ!

 瓶はギルドに配布されたものより少し小さめだが……それでも未だ売られていない酒だ。そんなものを振る舞うというディックバルトの男気に、ギルドの飲兵衛たちが沸き立った。


「流石だぜディックバルト!」

「すごいっス! あざっス! ごちっス!」


 なんだったら俺とライナも立ち上がって拍手している。

 しょうがないじゃんだってウイスキーもっと飲みたかったんだもん。


「だけどよ~……とはいえこのうめぇ酒を全員に配るにはちと足りねえんだよなァ~……てことはよぉ~……? 何かしらのゲームで“勝者”を決めるしかねぇよなぁ~!?」

「これは、来るのか!」

「やるのかチャック! 始めちまうのかぁ~!?」

「当たり前だぜ! ディックバルトさん直々のご提案だぁッ! “第二回熟成ウイスキー猥談バトル”の開幕だぁあああッ!」

「ヒャッホォオオオオオ!」


 ギルドが異様な熱気に包まれ、男たちの野太い声が響き渡る。

 吟遊詩人が悪乗りして激しい曲を掻き鳴らし、バルガーが謎に飛び跳ねて壁にぶつかり、チャックが靴を脱いでテーブルの上に立ち上がる。土足じゃないだけまぁ偉い。お行儀悪いけど。

 ……あ、ギルド内の女が冷たい目線を送ってる……。


「さぁ~冬以来の開催だぜぇ! 美味い酒を飲みたかったら参加しろぉ! 我こそはって野郎はその場で立ちなァ! 己のスケベ知識の強さに自信がある奴は大歓迎だぜぇ~!」

「猥談なら任せろー!」

「バリバリバリッシュ!」

「誰だ今の!」

「今回だけは負けられねえぜぇ!」


 次々に立ち上がる猥談に自信ニキらが拳を鳴らす。反してそっと離席し中央から離れる女性陣たち。

 今宵、ギルドは漢の世界と化していた。


「……モングレル先輩……まさか……」

「ああ……その“まさか”だよ、ライナ」


 俺はビールのジョッキを机にドンと置き、立ち上がった。


「――来るか、モングレル」

「俺の参加にだけ反応するのやめてくれない……? いや、まぁ参加はするんだけどさ」

「え、わ、猥談ってことはあれだよねモングレルさん……この前みたいな……」

「ああ。まぁ、でもさ……世の中、綺麗事だけじゃ済まねえもんってのもあるっていうかさ……ギルドマンってそういうもんだよな……」

「モングレル先輩……」


 ライナがジト目で俺を見つめている。

 ……すまないライナ。それでも俺は……。


「……応援してるんで……ちょっとだけ分けてもらえると嬉しいっス……」

「ラ、ライナ……!?」

「……ああ、任せろ……!」


 こうして俺は二度目の猥談バトルに参加することになった。

 前回以上に女の多いギルドだ。色々と衆目もあるが……ウイスキーのためならやむを得まい。


 プライドと酒をかけた、つまり色々きったねぇ男たちのバトルが幕を開ける……!




「今回ばかりは出し惜しみはしねぇ……よく聞け! “ダートハイドスネークの乾燥粉末は”……“一匙で一晩勃つ”……!」

「なんだってぇ!?」

「一匙で……!?」

「老いてもまだまだいけるのか……!?」

「くっ……やるじゃねぇか……だがな、伊達に俺だって報酬の二割を使い込んじゃいねぇんだ……! 喰らいやがれ……! “スワンプタートルの鍋は朝まで戦える”……!」

「ぐッ……!?」

「――むぅッ、勝者バウル!」

「ッシャオラッ」

「ぐあああ!? 俺が負けたぁ……!?」

「――確かにスワンプタートルの鍋は“効く”……だがその価格、入手性……諸々を考慮した場合、俺はダートハイドスネークに軍配があがるものと判断した……――僅差ではあったがな」


 また始まってしまったよ、聞くに堪えない猥談バトルが。

 細かいルールというか判定はディックバルトに一任されているらしく、参加者も全面的にディックバルトの審判を信頼している。かなり曖昧なバトルのはずなのにここまで信頼されてるのって普通にすげーよな。


「さあ次は“大地の盾”のアレックスだぜ~! お行儀の良い従士あがりは一体どんなネタを持っているんだぁ~!?」

「期待のされ方がなんかエグい……! え、えーと……そうですねぇ……“キスする時に相手の耳を塞いでやると音がよく聞こえて雰囲気が上がる”……とかですか」

「うおおおお! わかる気がする!」

「アレックスお前なかなかのスケベ使いだな!」

「スケベ使いって!?」

「く……“大地の盾”にまさかこんなやつがいたとはな……! お、俺は……“店に飴を持ち込むと普段キスを拒否する子でもオーケー出してくれることが多い”で……!」

「――勝者、アレックス!」

「グワーッ!」

「あ、勝った」

「――アレックスの言……多くは語るまい。あれは良いものだ……」


 今回は釣り餌の豪華さも相まって、普段参加しないような男たちまで参加している。

 俺の順番が回ってくるのもまだまだ時間がかかりそうだな。


「……モングレルさんはさー、今回も勝つ自信とかあったりするの?」

「ん? まぁな。俺は知識だけならある。ここにいる連中に負けるなんてありえねえさ」

「へ、へー……すごい自信……」

「私のコップこれっスから」

「準備も気も早いなライナ」

「お~いこらそこのモングレルッ!」

「あ、来たぞ」

「来たぞじゃねぇ~!」


 なにやらチャックがお怒りのようだ。こいつはホント俺に突っかかって来るやつだな。


「いつもいつもアルテミスの子と楽しそうに話しやがってよぉ~……! かと思ったらこの前は若木の杖の子とも仲良さそうにしやがってぇ~……なんか秘訣とかあるのかよテメェ~!」

「……なんか俺に言いたい事と自分の求めてることがごっちゃになってない?」

「うるせ~! 知らね~! モングレル、お前だけはこの俺が直々に倒してやらなきゃ気が済まねえぜぇ~!」

「ほーう……前回は俺に負けたくせになかなかデカい口を叩くじゃねえかチャックさんよぉー」

「……モングレル先輩ひょっとして結構酔ってるっスか?」

「俺はレゴールで一番酔ってない男だぞコラァ」

「あ、これ結構酔ってるっス」


 酒場の中央に歩み寄り、ついでにそこらへんに置いてあったジョッキをグッと飲み干す。

 気合充填。どうせ今日は無料なんだ、許してくれ。


「――では見せてもらおう。二人の可能性を……な」

「ああ良いぜぇディックバルトさん! まずは俺からいくぜぇ!」

「やべぇ! また先攻取られた!」

「うおー! チャックさん一気に決めるつもりだぁ!」

「モングレル先輩っ! よくわかんないスけど負けないでっ!」

「男は酒を飲むと馬鹿になるのか?」

「ナスターシャ。ほぼ全ての男は生まれながらに馬鹿な生き物よ」


 勢いでビールを飲み干したチャックがテーブルにドンとあぐらをかき、鋭い目で俺を睨みつける……!

 ……お前、本気だな……!


「“男でも先の方を集中攻撃されると”……“潮を噴く”……!」

「……」

「へへ、へへへ……前回は男のネタでやられたからよぉ……これは意趣返しってやつだぜぇ~……? モングレルさんよぉ……!」

「マジかよ……男でも……!?」

「そもそも俺は女のさえ見たこと……」

「ディックバルトさんは審議を出してない……この攻撃……“有効”ってことか……!」


 次第に強まるざわめき。目を瞑るディックバルト。白い目を向けてくる女の子たち……はいいとして。

 チャックのそのネタは、この酒場においてかなり異質というか、革新的なものではあったらしく……聴いたものは多くが驚いていた。


 ……だが……俺は……。


「……がっかりだよ、チャック」

「なッ……!?」


 情報社会日本。検索欄にちょっとキーワードをはめ込んで調べてやれば……そこには数千年間積み重ねられてきた人類の叡智が広がっている。

 そのネットの集積知を前にすれば……チャックの見つけ出したそのトリビアの、なんとちっぽけなことか。


 今時その程度の知識、マセた小学生でも知ってるぜ……?


「俺はさ……なんだかんだ、楽しみにしてたんだぜ? ひょっとしたらお前が俺のライバルになってくれるんじゃないかって……心の奥底では、期待してたんだがなぁ……」

「な、おま……ハッタリだ……!」

「……それで終わりか?」

「……ッ!」


 チャックが戦慄し、唾を飲む。

 次弾は……無し、か。


「だったらもう良い。失せろ――“男は尻の中にある前立腺を適度に刺激されると”……“何度でも絶頂できる”」

「ぐぁあああああああああ!?」


 チャックはテーブルから吹っ飛んで床の上に叩きつけられた。

 雑魚め。身の程を知るが良い。


「チャックぅうううう!」

「そんな……まさか、そんなことが……!?」

「――勝者、モングレル!」

「うおおおおおおッ!? 瞬殺だぁああああ!」

「ディックバルトさん!? そんなものが……実在するのですか!?」

「――まさか、モングレルがこれを知っていようとはな……直腸に入ってすぐ、膀胱の真下に存在する木の実のような器官……これは男にしか無いと言われる、ある意味最も男らしい臓器のひとつ……――だが、ここを刺激された時……――男はたちまち、メスになる。それはこの俺が保証しよう……」

「なんだってぇええ!?」

「ディックバルトさんの保証……聞きたくなかったぜ……!」

「これからどこに目をやってディックバルトさんの後ろを歩いたら良いんだ……!?」


 ディックバルト……お前……すげぇな……。

 こんな情報のない世界でよくぞそこまで練り上げたもんだ……。


「――無論、慣れぬ者には解らぬ感覚……メスとなるには研鑽を積まねばならんが……まさかモングレル、お前もまた俺と同じ――?」

「いや、俺は通りすがりのスケベ伝道師から聞いた」

「またスケベ伝道師かよ!」

「一体誰なんだスケベ伝道師!」

「さぞ名のあるスケベ伝道師とお見受けするぜ……」

「ふ、ふーん……直腸の、膀胱の下……」

「駄目だ、チャック完全にノビてやがる……! ダメージが強すぎたんだ!」

「ていうか酒飲みすぎてるだけじゃねえの?」


 こうして第二回の猥談バトルも俺の勝利で終わった。

 健闘を称えるディックバルトは、なんとなく俺のコップに普通よりも多めのウイスキーを注いでくれたように思う。

 でもその同志を見るような目はやめてほしい。


「……不潔ね」

「紳士的な趣味をしてるんだねぇ、彼」

「医学の領分だな」


 ゴールドクラスの女性陣からの冷めた視線を浴びたが……これもまた、強すぎるチートを持った主人公の宿命……ってやつなのかもな。ハハ……。


「ライナ……ウルリカ……持ってきたぞ」

「……あ、その、私の分は平気だから……ライナにあげちゃって……うん」


 ウルリカはどこかよそよそしくウイスキーを固辞し、結局これはライナとはんぶんこすることになった。


「んく、んく……ぷぁ。……くぅー、美味しいっス!」

「フフ……良かったなライナ……俺はそれだけで幸せだぜ……ほら、俺の分も飲んで良いんだぞ……」


 良い飲みっぷりをみせるライナに、俺は自分のウイスキーも分けてやった。


「えっ!? でもこれは、モングレル先輩の分じゃ……」

「いや……向こうで変に動き回ったせいでなんかもう……酔いが回ってしんどいわ……もう飲めねえ……へへへ……」

「……モングレル先輩……あざっス!」


 こうして俺の勝ち取ったウイスキーは、全てライナの腹に収まることになったのだった。


 強い酒だからちゃんと水も飲んでおくんだぞ、ライナ……。


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― 新着の感想 ―
結局ライナの為にウィスキー獲得しただけになったモングレル… ウルリカは今夜エキサイトしそうだな
ウルリカちゃん…自分で体験済み…だね?(。´´ิ∀ ´ิ)
おもしろいなあwww
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