俺が作った最強のボドゲ
盤上遊戯。またの名をボードゲーム。
前世においてその歴史は古く、古代ナントカ文明からあったと思われるのだが、今の俺はそんなWikiじみた検索ができないのでちょっとよくわからん。俺の代わりに目の前の箱か板でちょちょいと調べて是非とも俺より詳しくなっていただきたい。
ともあれ、こういう遊びは石ころを何かに見立てて置いた時点で発生した文化だとしても何ら不思議ではない。それはこの世界においても変わらないだろう。
実際、この世界特有のボードゲームはいくつかあるわけだしな。
俺はそんなに興味ないが、バルガーなんかが良く通ってる賭場でも色々なボードゲームみたいなもんがあるらしいしな。まぁそっちは実力ってよりは完全に運頼りのルールになってるだろうけども。
「完全に実力勝負じゃ面白くねえからなぁ。運の要素のデカいパーティーゲームにしたいところだぜ」
さて、俺がこれから作るのは売れるボードゲームなわけだが……。
面白くなきゃ駄目なのは当然として、その内容にもいくつか縛りがある。
まず文字。これは極力使わない。
ハルペリア市民はある程度の名詞くらいは読めるし自分の名前くらいだったら書ける奴も多いが、聞き慣れない単語は全く読めないなんてことも多い。
複雑な言葉の羅列が生まれないようなゲームにしたい。
で、次にプレイ人数。これは三人以上で……なるべく大人数でもできるようにしたいな。
まぁ大人数といっても四、五人がいいとこだろう。そんくらいのテーブルが普通のサイズだしな。重要なのは人数が少し増えても問題ないゲームってことだ。
二人プレイのゲームは既にあるし、それ以上の人数で考えてみたい。
これに運要素で大きく揺れ動くわけだから……そうだな、サイコロは必須になるだろう。サイコロ使えばとりあえずなんだってゲームになるしな。双六系にしておこう。
「あとはまぁ、革をゲームボードにしてここに色々描いていけば良いだろ。駒は適当に木や牙から作って、必要な小物も……」
そうして俺はしばらく宿でゲーム作りに熱中したのだった。
……まぁ、前世に実在したボードゲームとかをそのままパクっても良かったんだけどな。
けどせっかく異世界にぶちまけるゲームなんだから、俺の考えた遊びを垂れ流しても大丈夫だろ。
それに、思いの外楽しいもんだよ。こういう遊びを作り出すっていうのもさ。
「というわけで完成したぜ……これがハルペリアで今最も熱いボードゲーム、“バロアソンヌ”だ!」
「今のところ私達だけが名前しか知ってないゲームのどこが熱いんスかね……」
「モングレルはゲームも作れるんですか!? ……いえ、評価を下すのは実際にやってみてからですよ!」
「ふうん、ゲームかぁ。僕はあまり経験ないなぁ」
ギルドの酒場に行くと、“アルテミス”と“若木の杖”が珍しく一つに固まって話している最中だった。
どうやらサリーを中心に魔法の講釈でもしていたらしい。テーブルの上には魔法用品店で見たような石ころや本が並んでいるが、気にせずプレイマットを展開させてもらうぜ!
「ちょ、今サリー先輩から魔法教えてもらってたんスけど……」
「えー良いじゃん良いじゃん。私聞いててもよく解らなかったし!」
「……僕もよく解らなかったけど、教えてもらっててそれはないよウルリカ」
「……母は、教えるのはそんなに上手くないので……」
ライナ、ウルリカ、レオが魔法について教わっていたようである。
横にはモモと、珍しくミセリナも同席している。
「解らないことを長々とやっていても辛いだけだろうから、気分転換でもしようか。僕もモングレルが作ったゲームに興味あるしね」
「……あ、あの。それ、どういうゲームなんですか」
「良く聞いてくれたミセリナ。まぁまずこいつを見てくれ」
テーブルの上に革のスクロールを広げる。
するとそこには、記号やらイラストの描かれたマス目がループ状のコースになって散らばっていた。
コースはループ状と言ったが完全な一本道ではない。途中で左右に分かれる道があり、場所によって左右を選ぶことができるようになっている。
また中央にも独立した小さなループがあるが……それはまた後々だ。
「なんなんスかねこれ。ウルリカ先輩は何だと思います?」
「えー……あ、文字もちょこっと描いてあるね。“武器屋”、“ギルド”、“ボア”……へー、なんか全体的にギルドマンっぽい感じ?」
「良く気付いたなウルリカ。このゲームはスタート地点に参加者の駒を置いて、自分の手番になったプレイヤーがサイコロを転がして駒を進めていくゲームだ。参加者はギルドマンとしてこのバロアの森を探索し、金を集めたり武器を揃えたりしながら魔物を倒し、貢献度を上げ、ゴールド3ランクを目指していくっつー内容だぜ!」
「僕はゴールド3だけど」
「遊びの話をしてるの、母さん」
内容はまぁ、双六……というよりはマリパに近いだろうか。
目的としてはループ状のフィールドをぐるぐる回っていって、金を集めたり、集めた金で武器を集めたりする。どちらもコイン型のトークンだな。
武器を使って魔物マスの魔物を狩れば貢献度として星をゲットできる。一定量集めてギルドのマスに停まればクリア。そういうお遊びだ。
「へー! なんだか面白そう! あ、でも剣しかないじゃーん。私弓が良いー」
「魔物マスは色々あるんだね……ゴブリン、ボア、ディア、オーガ……必要な武器の数が決まってるんだ。なるほど。あ、ポーションとかもあるんだ」
「サイコロで進みながら道を選ぶんですね……あ、ギルドを通過する度にお金が貰えるんですか。じゃあ6を出し続ければたくさん進めて有利ですね!」
「……あ、これ最初に6出すと不利になるみたいですよ……?」
「なんでですか!?」
馴染み深いテーマだからか興味は持ってもらえたようだ。
まぁこの国には全然ないタイプのボードゲームだろうからな。そりゃ興味だって湧いてくるだろうさ。
自作ゲームに食いついてくれるのって……なんか嬉しいぜ……。
いやぁ、長々と考えて作った甲斐があるぜ……。
「一応こっちのスクロールにも簡易ルールは書いてあるから、読める奴が読み上げる感じでな」
「字きったないっス」
「あはは! それ書き直した方が良いよー!」
「はいそこうるさい。最初の手持ち金貨一枚減点です」
「始まる前にっスか!?」
「ぶーぶー!」
うっせぇ俺だって綺麗に書きたかったわ。わざと汚くしてんの、わざと!
「うんうん、なるほど……これなら僕でも覚えやすいや。バロアソンヌ……だっけ? 案外面白いゲームなのかも」
「そう……覚えやすいだろレオ。結構シンプルだ。そこで物足りないと思ってな、追加ルール用のサプリも作ってきた」
「え?」
俺は懐から十数枚のスクロールと袋いっぱいのトークンを取り出し、テーブルの上に置いてみせた。
へへへ……俺の徹夜で作った追加ルールとトークンたちだぜ……。
「まず戦闘をサイコロ二つの出目で判定する。攻撃力と防御力があって攻撃力がマス目の魔物のステータスを上回っていればダメージ判定だ。ただし返しのターンで攻撃された場合はタフネスを消費する。あ、このタフネスっていうのは雑貨屋マスの買い物一覧にある道具から選べるポーションとか診療所マスで回復できるぞ。それと雑貨屋で買えるアイテムにアイテムカードってやつを追加してな。あ、これは漂着者の人達が書いたっていう月面世界の神話を元にしたカードでな、これを自分の手番の最初に使うことができるわけなんだが、これはカードにそれぞれ効果があって出目の数を操作したり他のプレイヤーのステータスを変動させる効果があったりするんだ。他にも隣接したプレイヤーをあからさまに妨害したりだとか、魔物マスに停まった時に戦闘を有利に進めるカードなんかもあるぞ。あ、戦闘と言えば同じマスに他のプレイヤーが停まった時にギルドマン同士でバトルするルールもあってな、その時はお互いにスキルカードを使って勝負するんだが、この時相手のスキルの発動に対して自分のインスタント持ちスキルカードをチェーンすることができるんだが、このチェーンした場合は逆順処理っていって最後に発動したカードから順番に処理していくわけなんだけども、この効果中に一部アミュレットの効果は発動できないことになっててそれは書き忘れたんだが調整中ってことで」
「ちょ、ちょちょちょ、ちょっと一旦やめてもらって良っスか」
「はい」
どうしたライナ。お楽しみはこれからだぞ。
「いきなりそんなごちゃごちゃしたルール言われてもわかんないっス!」
「そうだよ! わっかんないよ!」
「うん、わからないね……」
「……そ、そうか?」
正直作ってる途中でちょっと色々と詰め込みすぎたかなとは思っていたんだが、やっぱ駄目だったか……?
いやでも、色々な要素が入ってるゲームの方が面白いじゃん……?
空き地マスの土地を買って施設を建てて他のプレイヤーから金をいただいたり、借金作りすぎると中央の監獄ループで服役するとか、エリア毎の地価が変動したりとか色々あるんだが……。
「最初なんだから最低限のルールでいいじゃないスか。ていうか最初じゃなくても複雑すぎるルールじゃ流行るわけないっスよ……」
「……ス、スクロール……よくこれだけ書きましたね……汚い字で……」
「わかりやすい範囲のルールでやった方が良いというのは私も同意ですね。発想は悪くないと思いますけど……」
うーん、ダメ出しばっかりだ……まだまだ奥行きのあるゲームはこいつらには早かったか……。
「モングレル」
「ああ? なんだよサリー」
「この“天恵のアミュレット”をターンはじめに発動させた時にスキルカードの“トリプルダイス”を使うと“天恵のアミュレット”のサイコロを振った時の効果が四回発動することになるんだけど、そうなるとターン終了時に何枚も金貨を貰えるようになってしまうよね。これは僕から見ると設計ミスのように思えるんだけど。直したほうが良いんじゃないかな?」
「あ、マジだ。てかお前もうルールそこまで読み込んでるのか……ありがとうサリー……」
「いやカードとかそういう複雑なのは使わなくて良いんスよ! とりあえず簡単なのでやりましょ! 簡単なの!」
そういうわけで、ひとまず簡単なルールでバロアソンヌをやってみることになりましたとさ。
「このライトノベルがすごい!2024」のWEB投票が開催されています。
こちらで当作品「バスタード・ソードマン」の第一巻も投票対象になっております。
是非この機会に投票してみてください。
バッソマンが上位にランクインすると私とにくまんが喜びます。
どうぞよろしくお願い致します。
( *・∀・)φ[にくまん冒険記] カキカキ




