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バスタード・ソードマン  作者: ジェームズ・リッチマン


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グダグダ撤収作業


 ぐっすり眠り、朝は爽快な目覚めだった。途中で目覚めることがなかった辺りちょっと警戒心を失っていたかもしれないが、お香は過剰なくらい焚いていたし問題はないだろう。


「ふぁあ……おはよー……寝起きだから顔見ないでー……」

「見ねえよ。洗ってこい」

「それはそれで酷いなー……」


 今日は一日中解体で終わるだろう。東門の処理場は人でいっぱいだし、そもそも獲った量がすげえからな。毛皮を取っ払うなりして重さを減らしているうちに解体作業ができてしまうので、ついでに全部やってしまうべきだろう。


 昨日の残り物のハギス、そしてスープに具と水と塩を足しつつ、タンの薄切りを焼いて朝飯とする。スープに足す具はコロコロしたマカロニっぽい乾燥パスタだ。これが結構腹に溜まるし保存や持ち運びも楽だから良いんだよな。


「今日僕は別行動で、応援を呼んできてもいいかな? 解体作業は間に合うだろうけど、獲物を運ぶ役はモングレルさんだけじゃ足りないだろうし」

「おお、応援か。そいつは助かるぜ。本当は俺が行けば良いんだけどな……この拠点に戻ってこれる気がしねえわ」


 今日のレオは街か森の入り口に戻って応援を呼んでくるようだ。正直それが一番賢いだろう。理想を言えば偶然ここに誰かが訪れてくれることだが、こういう時に限ってそんな来客は来ないので期待するべきではない。

 そうだな……“アルテミス”のクランハウスからゴリリアーナさんでも連れてくれば文字通り百人力だろうが、そこまで行かなくてもバロアの森の入り口には暇してる連中が屯してるはずだ。そいつらの中から見知った顔を臨時で雇えば荷物持ちは喜んでやってくれるだろう。


「ウルリカは一人で大丈夫? 解体作業、結構大変だと思うけど……」

「んー私は平気ー。モングレルさんもいるからね!」

「まぁ近くにいるうちは護衛として働いてやるよ。……いや、今日は俺も解体しなきゃ駄目だな。言っておくけどな、俺はお前らほど上手くはないからあまり期待するんじゃないぞ」

「あはは……大丈夫そうだね。じゃあ、僕は早めに応援を呼んでくるよ。じゃあね」

「いってらっしゃーい」


 レオが颯爽と森の奥に消え、俺とウルリカが残された。


「……二人きりだねー……」

「だな」


 というわけで、早速仕事に取り掛かろう。


「よっしゃ解体するぞ解体。けどバラすの下手だから力仕事あればどんどんこっちに振ってくれよ」

「はーい。……じゃ、レオが来るまでにさっさと進めちゃおっか!」




 昨日の途中だった解体作業を続きからやっていく。が、作業の流れはウルリカにお任せだ。俺は力仕事の時だけ手を貸して、他は薪やら水の支度など、雑用中心だ。


「はいモングレルさん、こっちの肋も吊るして軽く燻しといてー」

「ほいよ」


 大量の肉塊を持ち帰るには、まぁ力技で昨日のように担いでやればそれでも良いんだが、基本的にはそれは苦行でしかないしスマートさの欠片もないので、数日間保存が利くような軽めの調理をしてから持って帰ることがある。

 煙で燻してやるのもそのひとつだ。煙で燻して保存性をちょっとだけ上げつつ、水分を飛ばして軽くする。ギルドマンがよくやる方法だな。スモーキーでちょっと美味しくなる。まぁ肋の部分はそれでもちと臭うんだが。


「こっちは限界まで冷やしてー……あーこれは食べちゃわないと。んーやっぱ運ぶ人増えた方が良いなー……」

「レオに手土産の肉は渡したが、まだまだあるもんなぁ」

「こんなに食べきれないよー。処理場で換金するだけじゃなくて、狩人酒場とかにも卸しとかないと」

「あそこ買い取りするのか? 俺前に言うだけ言ってみたら断られたぞ」

「あー……あの店は肉の処理が雑だったり悪いと買ってくれないから……」


 それはアレかい? もしかしなくても俺の肉の解体が下手ってことかい?

 狩人酒場め……お高く留まりやがってよ……ちょっと飯が美味いからって……。


 あまり聞きたくない話を聞いてしまったが、作業の手は止めずに続ける。

 普段はお喋りなウルリカも一人で色々やらなければならない今は普段と比べていくらか寡黙だ。おかげで作業がどんどん進む。




「ウルリカー、応援呼んできたよー」

「あっ、レオだ! ありがとー!」

「やあ、どうもどうも。うわ、こんなに獲ったんですねぇ」


 昼過ぎになって、レオは助っ人を連れてやってきた。

 助っ人は“レゴール警備部隊”の人らしい。あまり見たことのない顔の三十代後半くらいの男性だが、“レゴール警備部隊”は人数も多いし知らない顔も多いので仕方ない。

 俺の印象としては彼らが討伐任務に従事しているのは珍しいのだが、その割に森の入り口辺りで変に屯してることは多いから不思議な連中である。

 こういった助っ人として呼ばれるのを待っているのかもしれないが、単に森の入り口でワイワイやってるのが好きそうな人らもいるからマジでよくわからん。


「いやぁまさか“アルテミス”の人たちのお手伝いをすることになるなんてなぁ……あ、私は“レゴール警備部隊”のクルトンです。どうぞよろしく」

「クルトンさんは最後の荷物持ちを手伝ってくれる他に、解体もできるらしいよ」

「肉を一つ分けてもらえるということだからね。張り切って手伝わせて貰いますよ。あ、毛皮はいらないということだけど、もし良いなら私が引き取ってもいいですかね?」

「うんうん、良いよー。使わないから持ってって貰えると助かるー!」


 ちょっと朝のスープの具について思いを馳せそうになる名前をしたクルトンさんは、ブロンズ3だった。どうやらこうやってバロアの森の前でギルドマンの手伝いや臨時の荷物持ちなどを請け負って、この時期の生計の足しにしているらしい。


「こういう時のためにですね、色々持ち運ぶためのヒモとか鉤針とか用意してるんですよ。ほら、これ使うとお肉を吊るしやすいでしょう?」

「おー本当だ。俺もこういうの持ち歩くかなぁ」

「モングレルさんの荷物はどんどん増えちゃうねー」

「ははは。私も昔はそれなりのパーティーで……いや、もちろん“アルテミス”ほどじゃ全然ないんですが、色々討伐をやっていたんですけどね。怪我をして復帰した頃にはそんな動けるようでもなくなってしまったので。こうした仕事をさせてもらってるんですよ」


 クルトンさんは以前、十年くらい前はバロアの森で普通に討伐の仕事もやっていたらしい。その時に解体なども覚えたのだそうだ。

 俺達がそこらへんに放置しておいた毛皮をちょちょっと手入れしているクルトンさんの姿からは、どこか手慣れた雰囲気を感じる。


「……そうだ。せっかくだし罠も回収しちゃう? モングレルさんと私もここに残ってさ」

「ああ、その方が早いかな? ……どうだろうモングレルさん、僕はこのまま残りの罠を回収しちゃうけど。そうすれば夕暮れ前にはレゴールに戻れるかもしれない。もっとクレイジーボアを穫るなら粘っても良いんだけど、ここまで獲れたらひとまずは良いかなって」

「ああ、目標も速攻で終わらせたもんなぁ。帰れるもんなら今日中に帰っちまうか」


 本当なら大猟になるまでもっと何日か粘る予定だったんだが、ここまで一気に肉が獲れれば区切りをつけていいだろう。

 肉を悪くしないうちに、商品価値が高い間に売っぱらうのが一番賢い選択だ。


「じゃあ僕、罠の回収に行ってくるね」

「悪いなレオ、お前にだけ色々歩かせて」

「あはは、全然平気だよ」


 というより罠の位置をウルリカともども覚えているのがすげえよ。俺そういうのだいたい三割くらい忘れるからこういうの駄目なんだわ。


「いやぁ……皆さん少人数なのにこれだけのクレイジーボアを仕留めるだなんて……やはり“アルテミス”ってのは凄いですねぇ。噂になるだけのことはあるというか……」

「あ、俺は“アルテミス”じゃないんで」

「あれっ!? ああ貴方もお手伝いでしたか」

「ええまあそんなところで。ところで……毛皮、売るんですか?」

「はい。無いよりはマシですし、近頃は革パッキンってやつの材料にするとかで工房も買い取ってくれるんですよ。このくらいまとまった量があれば、足しにはなりますね。ブラシと濾過器ばかりだった頃よりもずっと幅が広がってますよ」


 あーパッキンか。そうか、その需要もあったなそういえば。まぁ生産量に比べたら誤差だろうが……。

 ふーん。“レゴール警備部隊”の人も色々知ってるなぁ。




 レオが罠の回収に行っている間に、ウルリカとクルトンさんは解体の続き。

 俺はテントを引き払い撤収準備だ。荷物が無駄に多いせいでこの作業だけでも結構なしんどさがあるが、慣れればパッキング作業にも愛着が……まぁちょっとは湧く。

 面倒を楽しむ心の余裕が無いとね。こういう野営は厳しいもんだよ。


「いやー解体作業も上手いなぁ! 私も仲間内からは結構上手いって言われてるんですけどねぇ。ウルリカさんは上手いなぁ」

「えへへー、でしょー? でもクルトンさんも丁寧でいい仕事だよー?」

「うっ、可憐だ……そ、そうかなぁ? はっはっは!」


 ウルリカ……レオがこの場に居なくて良かったな。

 あいつすぐに面に出るから、今のお前の光景を見てたらちょっとむくれてたと思うぞ。


 けどまぁなんだ。

 バロアの森で野営したり長期間活動していると、予想外の大猟で計画が狂ったり、新たな人を呼び込んで手伝ってもらったりなど新鮮なイベントが起こったりするものだ。

 ソロで活動することの多い俺はそういう細々としたイベントがどっちかというと煩わしく感じるタイプなんだが、たまーにこうして外部のギルドマンを交えて過ごすってのも悪くはないな。


 罠猟の魅力も再確認できたし、結果として大猟だった。

 慌ただしかったが充実した討伐だったぜ。


「ウルリカー! モングレルさーん!」

「あ、レオだー。どうしたんだろ、焦ってるけど……」

「向こうの罠に一つ、クレイジーボアが掛かってたよー!」

「あれま。ははは、大猟ですねぇ」


 ……。


 いや、やっぱ罠猟は面倒くせえわ。


 その後、超速で追加の一体分の解体も終わらせ、どうにか強行軍で日暮れギリギリにレゴールへと帰還することができた。

 俺はやっぱソロの方が落ち着いてやれる分好きだわ。



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よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
何もなかったんだな……そう思っていた時期がありました モンさんは溜ってないとおかしい
[一言] モングレルがソロで罠猟したらボウズの予感しかしないもんな。誰に福の神付いてたんでしょうね。
[一言] 伯爵一人に投げた情報がどれくらいの速度でどこに流れてるかも観察してるのかなモングレルは パッキンの情報が警備隊に行ったということは警備隊は革を集める仕事を請け負ってそうだと
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