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バスタード・ソードマン  作者: ジェームズ・リッチマン


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モーリナ村を目指して


 モーリナ村での収穫警備の仕事が決まった。

 今回一緒に組む相手はマシュバルさんやミルコを含む“大地の盾”の人たちだ。

 モーリナ村は畜産をメインでやっている村だが、田舎の宿命として当然畑もあるし、収穫期にはついでに近場のススキを刈り取って牧草を作っている。

 大食らいの家畜を養っていくには、農業も欠かせないのだ。柵だけ作ってはいおしまいというわけにはいかない。ハルペリアの家畜は大体食欲が凄いからな……。


「やあモングレル、任務で一緒になるのは珍しいな」

「どうもマシュバルさん。ブロンズのソロでやってる男でよけりゃご一緒させてください」

「ははは、心強いブロンズが来てくれて嬉しいよ。今日からよろしく頼む」

「こちらこそ」


 “大地の盾”は男所帯である。若者もまぁいることはいるが、大体は良い歳した男ばかりだ。

 華がないと言ってしまえばそれまでだが、男ばかりの即席パーティーというのは個人的には気楽で良い。まぁ、こういうことに気を遣っているのはひょっとするとこの世界じゃ俺だけかもしれないが。……そんなことはないか。


「ククク……」

「ようミルコ、相変わらず無駄に意味深な含み笑いだな」

「モングレルか……“アルテミス”と一緒の任務に行かなくても良かったのか……?」

「俺は“アルテミス”所属じゃないぞ。確かにちょっと前はよく一緒に居たけどな」

「羨ましいぜ……」

「こらミルコ! 無駄口を叩いてないで馬の準備をしろ!」

「はい」


 “大地の盾”はパーティーで馬を飼っている。遠方だったり早さを必要とする任務の際はよくこの馬が利用されており、時々馬に乗ってパカパカと忙しそうに働いているメンバーを見かける。

 が、馬を飼うというのは大変だ。草食動物だからといってそこらへんの草だけ食って生きているわけでもない。軍用に耐え得る馬というのは相応の良い飯を食わせなきゃいけないので、下手をしなくても人間以上に飯代がかかるのだ。


「よぉーしフローラ……モーリナ村には美味い草がいっぱい生えてるからなー……楽しみにしてるんだぞー」


 普通はちんたらとした護衛に馬を付き合わせるようなことはないらしいのだが、今回は畜産の盛んなモーリナ村が行き先ということで、馬の休息と体作りも兼ねて何頭か同行させるようだ。ついでに馬車に繋いで多頭立てにし移動速度を上げる腹積もりもあるのだろう。旅程が縮むのであれば俺も大助かりである。




 モーリナ村までの移動はなかなか快適だった。

 村までの物資を積んだ馬車は通常よりも多い馬の働きもあってかなかなか良い速度が出るので、周りを固めて護衛している人間たちの方がバテそうになるという普段とは違った逆転現象が起きた。


「この程度で音を上げるなよ!」

「うーっす」

「良い訓練になりますぜ」

「はっ、よく言う! モングレル、辛かったらいつでも言ってくれよ! お前を俺たちのペースに付き合わせることはないからな!」

「あー気にしないでください、俺は全然平気なんで」


 早歩きだったりジョギングだったり、そんなペースと言えば良いだろうか。

 まぁ確かに荷物を背負いながらずっとこの調子で動くのはしんどいだろう。俺は体が頑丈だから全く辛くはないけどな。

 そうでなくても“大地の盾”の連中よりも装備は軽いし。超余裕っす。


「クソ……荷物だけでも馬車の荷台に放り込めないものか……」

「こらミルコ! 聞こえてるぞ!」

「ヤッベ、はいッ!」

「お前返事だけだからな素直なのは……」


 そして体育会系のお硬い“大地の盾”にあっても、ミルコのこんな感じは相変わらずである。

 マジでなんでこのパーティーでやっていけてるんだろうな、こいつ。




 昼間に一度だけ休憩を挟み、軽く焚き火を作って昼食を摂った。

 ハルペリア軍隊式の一つのデカい鍋で作る具沢山の粥である。腹も満たせるし間違いなくバランスも良いが、美味いかどうかっていうとまぁ美味くはない。

 けどこの国の微妙な味付けの粥にしては食えないでもない。塩味強めで男好みの具が多いからだろうか? まぁけど“ご当地料理だけど別に美味しくはないやつ”の域は出ないかな……。


 一日だけ宿場町に泊まり、その日の夜は宿の飯を食って普通に就寝。

 翌日は日の出かその前には出発し、モーリナ村へ向けて移動を始めた。全ての行動がキビキビしててさすがだなって感じる。俺でもちょっと自分がタラタラやってんなって感じるくらいには行動が早いのだ。まぁついてはいけるけどさ。無駄に昆布茶セットを広げて一服するとかそういう時間はない。


「モーリナ村で馬見てくか?」

「いやぁ、まだ新しいのは良いだろ。厩舎も限界だぞ」

「チーズだけで良いっすよ。買って帰りましょ」


 ああそうだチーズだ。俺も帰りに燻製チーズを買って帰ろう。

 畑メインでやってるとこの収穫祭は農作物ばかりだが、畜産系の収穫祭は大体旨いものを食えるから嬉しいね。

 祭りの時も肉とか食えるかもしれん。ジビエも悪くはないが、たまには柔らかな肉も食いてえぜ。……おっと、ヨダレが出てきた。今から楽しみだ。


「魔物確認! 正面からバイザーフジェール!」


 と、完全に油断しながら歩いていると大声が。

 どうやら進行方向からキモいお客さんが来たようだ。

 バイザーフジェール。生白いヒヨケムシのような虫系魔物だ。前に“アルテミス”の連中と移動していた時も遭遇したっけな。


「前衛、フリードとログテールは構え! 私とラダムで横合いから仕留めにいく! 数は二体! 後ろへ通すなよ!」

「了解!」

「“鉄壁(フォートレス)”」

「フッ……モングレル、俺たちは馬の守りを固めるぞ。あの人らは下手を打つことはないが、念のためにな……」

「おうよ。頼りにさせてもらうぜ」


 カサカサと脚を動かしながら街道を爆走してくるバイザーフジェールたち。

 どうしてこんな街道のど真ん中を走っているのか。それはわからない。虫系魔物からは感情も読み取れないので、永遠の謎だ。

 ただただこちらに襲いかかろうとしていることだけが確かである。


「ハアッ!」

「“強斬撃(ハードスラッシュ)”!」

「良いぞ! “迅突(ピアシングスラスト)”!」


 まあ、見た目はちょっとグロくてキモい連中だがそう強い魔物ではない。

 虫系にしては斬撃も良く通るし、やわっこい魔物だ。“大地の盾”の前衛達は連携しつつ、危なげなく二体のバイザーフジェールを片付けてしまった。

 マシュバルさんもギフトを持っているって話を聞いたからそれが見れるかなーと思ったが、使うまでもなかったようだ。


「他はいないか」

「目視できません」

「異常なし」

「多分なし」

「……うむ。よし! 死体から討伐証明を剥いで脇に寄せておけ! 移動再開だ!」


 いやー仕事が早い。討伐から片付け、討伐証明の回収まで流れるようだ。

 剥ぎ取り作業も気色悪がるようなことなく、手早くサッサと済ませている。俺だったら体液が漏れたり飛んできたりするのにビビりながらタラタラやってるだろうからな。駄目だわ。俺に軍人は向いてない。


「いやー、みんな手慣れてるな」

「ククク……街道警備中の魔物討伐は普段からよくやってるからな……数やってれば慣れるさ……」

「バイザーフジェールの死体とかもよくあんな風にガッと掴めるもんだわ。気持ち悪くないのかね」

「最初は気持ち悪いがな……ま、それも慣れだろう」


 パイクホッパーとかなら余裕なんだけどな。ああいうブヨブヨしたタイプはちょっと苦手だわ。


「さあ、そろそろモーリナ村に到着するぞ。村の顔役と代官にはしっかり挨拶しておけよ。私は現地のギルド役員と手続きしてくる」

「うーっす」

「マシュバルさん、馬たちはどうしましょ。モーリナ村だったらいつものとこですか?」

「一応村の顔役に聞いておけ。同じ場所とは限らんからな。モングレルは、私と一緒に来てもらえるか? 同じパーティーというわけでもないからな。別々で手続きしなければならん」

「はい」


 そういう感じで、俺たちはサクサクっとモーリナ村までたどり着いたのであった。


書籍版第一巻の発売日は2023年5/30です。


もう予約はできるみたいです。電子書籍もありますよ。

また、ゲーマーズさんとメロンブックスさんでは特典SSがつきます。こちらは数に限りがあるかもしれないようなので、欲しい方はお早めにどおぞ。

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書籍版バッソマン第4巻、2024年9月30日発売です。
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― 新着の感想 ―
やっぱり規律ある組織は引き締まるなぁ。サクサク進むわ
読み返してて気付いたけど、馬のフローラがローサー追放したメンバーと名前被ってますね。問題があるとかじゃないけどちょっと気になりました。
体育会系は返事がいいやつにはなんか甘いから……そんなことない? ないかな……
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