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バスタード・ソードマン  作者: ジェームズ・リッチマン


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売れ残りの調査任務


「おおー、すげえ、直ってる」

「当たり前だ。俺が直してやったんだからな」


 朝。ジョスランさんの鍛冶屋へ行くと、頼んでいた品は俺の思っていた以上に完璧に仕上がってくれていた。

 そう。アーケルシア旅行の途中で衝動買いした、アストワ鉄鋼製の折りたたみ式ツルハシの修理が終わったのである。


「錆びついていたのが駆動部の鉄軸だけで助かった。アストワの軸受までやられてたらおじゃんだったぞ」

「油だけはギトギトにつけておいたからな……やっぱアストワにも錆って移る?」

「ほぼ移らん。とは言われているが、錆びた鉄と隣合わせの上に塩水漬けにしたままだったら危なかっただろうな。その辺りの応急処置は、まあ良くやったと言ってやる」


 このツルハシ。アガシ村で錨回収をした時に活躍してくれたのだが、さすがに海中での使用が悪かったのか錆びてしまったのだ。

 使用回数たったの一回でこのザマ……とはいえまい。誰が海中での使用を想定してるんだって話よ。俺の使い方が十割悪い。


「アストワ同士じゃ摩耗していくし、可動部の仕掛けだけ鉄にしておくってのは良い考えだ。まぁ、わざわざ折り畳めるようにする必要があるのかって品ではあるがよ。お前、本当に変なもんばかり買ってくるな」

「こんな面白いもん見つけて買わないわけにはいかんだろ」

「たまには真っ当なもん寄越しやがれっ」


 真っ当なもんとは失礼な……ツルハシは普通に活躍した道具だってのによ……。


「じゃあこれ、ノコギリの目立て頼むよジョスランさん。野営の時たまに使う折りたたみ式ノコギリなんだけど」

「随分細いノコギリだな……俺のところでもできなくはないが、この手の目立ては俺よりも木工やってる連中のが上手いぞ」

「え、そうなの」

「焼き直しくらいだったらこっちでもするんだがな。研ぎとはまた違うもんだ。道具も俺が持ってるやつより数段良いだろうよ」

「刃物だったらなんでもってわけじゃないんだな」

「そりゃそうだ。ま、これはこれでやっておくけどな」

「お、ありがとうジョスランさん」


 本当は自分で道具のメンテナンスもできればいいんだが、シンプルに面倒くさいので人任せだ。

 ただでさえスローライフするしかない異世界なんだ。金で解決できることは人に任せて時短したほうが気楽である。もちろん、その分の金は稼ぐ必要があるんだが……。


 俺の場合、やろうと思えば金策はいくらでもあるからな。

 お土産をあちこちばらまいたせいでちょっと懐が寂しいから、ここらでひとつ大きめの討伐依頼でも片付けるとしよう。




「難しめの討伐でしたら、そうですねぇ。こちらのホーンウルフの調査なんていかがでしょう」

「調査……しかも二回目かぁー」


 ギルドのミレーヌさんにいい仕事ないっすかと聞いてみると、返ってきたオススメは微妙な任務だった。

 調査というのは、魔物の目撃情報や痕跡があった時などにとりあえず現地にギルドマンを送って様子を見る任務形式である。

 だいたいは痕跡の情報提供も微妙だったり、時間が経ちすぎていたりで空振りに終わることが多い。調査目的の魔物とバッタリ遭遇するなんてのは稀だ。

 だから基本的に報酬は少ない。もちろん、運良く……あるいは運悪く目的の魔物と遭遇することができれば、そのまま討伐に流れ込んでも良いのだが……。


 この手の魔物の調査ってのは、二回目に入れる調査となるとほぼ魔物との遭遇は期待できない。

 “二回送って見つからない。じゃあもうそこにはいないみたいですね”それを確認するだけの任務って感じだ。


「北部ねぇ。目撃情報が糞だけってのもなぁ」

「皆さん街道警備に出られててなかなかこの手の任務を受けてくださらないんですよ。そろそろ調査を入れないとこちらとしても不都合でして……」


 うーんミレーヌさんが困っている。どうにかしてやりたい。してやりたいんだが……。


「ブロンズだと一人じゃ調査受けちゃいけないんでしょミレーヌさん」

「……あら、そういえばそうでした」

「わざとらしいぜ……誰と一緒に行かせるつもりだったんですか」

「ライナさんですよ。もし他に行けそうな知り合いがいるなら一緒に受けても大丈夫だと聞いています」


 ああ、ライナか。弓使いが単独で調査に行くわけにもいかないだろうからな。まぁわからないでもないが……。


「うーん……ホーンウルフねぇ……」

「あまり気乗りしませんか」

「肉が採れない魔物だからなぁ……」

「調査なので、遭遇できるとは……それに、角は加工品に向いていますし、換金価値は高いのでは」


 お、それもそうだ。ホーンウルフの角は中型の細工物に適しているからな……うん、ちょうどストックを切らしているし、金の代わりに角を入手しておくってのも悪くはないか。

 あわよくば角を売れるものに加工して、メルクリオに捌いてもらって大金ゲットよ。


「よし、決めたよミレーヌさん。俺はホーンウルフを討伐しに行くぜ……!」

「調査ですから、いるとは限りませんけどね? でも助かります。貢献度少し多めに付け加えておきますね」

「よっしゃ、やっぱりミレーヌさんは優しいなぁ。今度ミレーヌさんにお酒奢るよ」

「うふふ。そのお金は任務が終わった後、ライナさんとの飲み会で使われるべきだと思いますよ」


 やれやれ、つれないぜミレーヌさん。

 よし、じゃあまぁ調査任務の準備でもしておきましょうかね。

 場所は北部でちょいと離れ気味だから、一泊することにはなるか。




 ライナはギルドの修練場でアイアンランクのひよっこ弓使い相手に撃ち方を教えていた。

 ちみっこいとはいえ、ライナも立派なシルバーランクだ。格下相手に弓を教えるのは何もおかしいことじゃない。ビジュアルがちょっと背伸びしているようで微笑ましいけども。


「ハッキリ言って弓は精度が全てっスよ。狙った場所に狙ったタイミングで撃って当てる。これができなきゃ獲物は仕留められないっス。そのために必要なのは射撃に適した姿勢っス」


 ライナと同じ……というより少し背の高い少年少女たちが集まり、遠くのターゲットに向けて矢を放っている。

 構え、撃つ。この動作をゆっくり行い、姿勢で正すべき部分をライナが修正してやりつつ、正しい構えで射撃させる。基本に忠実な、なんともライナらしい教え方だった。


「正しい型を何度も繰り返して覚えて、早くするのはそれからっス。さっきみたいに違うやり方で弦がぶつかったら痛いっスからね。魔物の眼の前でやってたら悲惨っスよ」


 はえーなるほどな。ああやって構えるのね……参考になるわ。

 弓に関しては何度も習っている俺だが、やっぱまだ微妙なところがあるんだよな……弓は覚えることが多くて困る。


「……あの、モングレル先輩。一応これ有料でやってる講義なんスけど」

「あ、マジで。立ち聞きしてちゃ駄目だったか」


 感心しながら見学してたら、ライナが気まずそうに言ってきた。

 修練場に足を踏み入れてたら門前の小僧にはなれないか。これは失礼。


「で、なんスか。私になんか用っスか」

「いやね。北部でホーンウルフの調査任務があったからよ。俺一人だと受けられないやつだから、ライナもどうかって。ミレーヌさんがな」

「! あ、そうっス、私の行きたかった任務っス! ……えと、じゃあこれ終わったら! もうちょっとで終わるんで、そしたら準備しましょう!」

「おー、まぁ後輩の指導はちゃんとしてからな」


 あの後輩属性の塊みたいなライナにも後輩ができるなんてな……年月の流れってのはすげぇぜ。

 まあ元々ライナは教えるの上手いし、弓だって良い腕してたからこういう立場になるのもそこまで意外って程ではないけどさ。


「……っていうのが、まあ基本的な弓の扱いっス。最初は慎重に、道具を壊さないようにするのが一番っスよ」

「はーい」

「ライナちゃんありがとー」

「すごい勉強になったよライナちゃん」

「また教えてくれよな」

「……もー、なんか先輩に対する敬意が足りてないっス!?」


 しかし……先輩風を吹かそうとしてもイマイチ後輩に親しげにされてしまうライナなのであった。

 なんとなく教育実習で中学校に赴任したものの、中学生から友達目線で扱われてる先生みたいな感じになってるな……。


「……お待たせっス。今日から行く感じスか」

「おう、北部だしな。とりあえず今から行って、最寄りの作業小屋で一泊して本格的な調査は明日からって感じだ。まぁでも出発は明日でもいいぞ?」

「いえ、今日行くっス。やりましょやりましょ」

「やる気十分だな。じゃあ諸々手続きすっか」


 調査は俺一人だと受けられないばかりか痕跡も見逃しがちだからな。

 その点ライナが居てくれると調査も捗りそうだ。


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― 新着の感想 ―
交換しやすい部分はやや弱めの素材か……納得 ……薄いとも言われてないけど、子供っぽいを多用するのは『濃くない』の言い換えのような気がする……
[良い点] ハッキリ言ってライナは語録多すぎっスよ。 忌憚のない意見ってやつっス。
[良い点] 後輩にちゃん呼びされるライナちゃんかわいい [一言] っスっス
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