ヨシュアは頭が痛い
「あのなヨシュア。アイラの我儘を聞いてやる必要なんてないぞ?」
「普段ならな。だけどアイラには俺の姿を見られてるからな。簡単にあの事を口にされるのは困るんだよ。分かってんだろ?」
お前が甘やかすからあんな我儘女になったんだぞ?
お前も反省しろ。寧ろこれはお前への嫌がらせも含まれている。
「・・・俺からも注意するつもりだけどな。アイラは一度決めたら中々引かないからなぁ」
そういうとこだよ。シスコン野郎。もっと厳しく行けよ。
まぁもういいけどな。俺は開き直った。
「アイラにはちゃんと俺の能力の事を説明した。その上でのあの我儘だからな?後で苦情を言われても俺は受付ねぇぞ?もう気の済むまで撫で回される覚悟で挑んでるんだ。俺はもうそれ以上動く気はねぇよ」
「・・・・・・・悪りぃ。こっちでなんとかする」
当たり前だろうが。
なんで俺が脅されてんのにアイラを説得せにゃならんのか。面倒くさいしアイツ人の話聞かねえし。うざい。
「デズロ様に頼めば記憶の操作もできるけど、嫌だろ?」
「・・・・・本当に、感謝する」
そうなんだよなぁ。
緊急事態だったからアイラの前で変幻したけど、本当は一般人の前で力を使うの禁止なんだよ。まさかアイラがそれを使って俺を脅してくるとは。女って自分の欲求を叶える為なら手段選ばないよな。怖え。
「っつーかさ?ペットでも飼えばいいんじゃね?それでアイラのモフりたい願望叶えられるじゃん?」
「家は両親共に動物が駄目なんだ。飼うのは無理だ」
成る程。それでアイラは中身が俺だとしても変幻した俺を撫でくり回したい訳だ?・・・もう家を出て飼えば?
「おう!お前ら久し振りだな?出張から帰って来たぜ?俺が居なくて寂しかったんじゃねぇか?」
「「どちら様でしたっけ?」」
「冷てぇ!!なんだその汚い物を見る目は!疲れて帰って来てんのによ?」
「いや、寧ろここに来ない方がいいと思うぞ?ハイトがキレる」
「え?何で?」
ギャドは何でこんなにも恋愛ごとになると鈍いのか。
それ以外は結構鋭いし良く気がつくのになぁ。
「お前気付いてないの?ハイトの事」
「・・・・いや、薄々は。だけどよ?信じ難くて。だってお前ら今までハイトが女に興味を示した所、見たことあるか?」
ない。こんな事、今まで一度だってなかった。
ハイト自分と恋愛ごとを完全に切り離して生活してた。
「だからこそ、本気度が伝わって来るというか、牽制してるのが分かるというか・・・・」
「もしかして、この前のセラとの一件で何かあったのか?」
「色々無自覚なティファにハイトがキレて喧嘩になった。まぁもう解決はしてるんだが、その件にはお前の事も含まれてるからな」
ギャドの事?何だそれ。あ、ティファに対する態度の事か?
「・・・そう言われてもな?俺にはサッパリだぞ?」
「ギャドはティファを女性扱いしないから、それがまず駄目なんだよ。お前セラ嬢達と出かける日ティファのデカイ荷物持ってやらなかっただろ?」
「だってよ。持つって言ったら断られたんだぜ?中身弁当だったし、俺に持たれるの心配だったのかと思ってよ?」
そうそう。
めちゃくちゃ断ってたティファ。
ギャドに持たれるの嫌なのかと思ったぐらい拒否してた。
「ハイト曰く、ティファは普段から周りに気を使い過ぎらしい。どんなに力が強くても、ティファは18歳の女の子だろ?ティファはギャドのそういう所を好ましく思ってるかも知れないけど、他の女の子といる時ぐらい、同じように扱ってやれよ」
「いや、そんなつもりは。いや、でもそうか」
あーーー確かに他の女と扱いが違えば嫌かもな。
ティファだから気にしないだろうと勝手に思ってたけど、確かにちょっとティファに失礼だったかも。ギャドがな?
「あ、別に今から何かしようとかするなよ?ややこしくなる。お前はセラちゃんの事だけ考えてればいい」
「は、は?何言ってんだ?あれは、仕方なく・・・」
ギャド。顔が赤いぞ?お前本当分かりやすいというか、耐性がないというか・・・・乙女か!!
「ティファの事は俺に任せておけ?」
「いや、お前は自分の妹どうにかしろよ」
既に忘れてんな?お前の恋愛事情より俺の案件の方が重要だからな?わかってるか?
「そうだった。どうしよう・・・・」
「貴方達、何でいつも食堂に集まるのよ?談話室があるんだからそっちで話しなさいよ」
あ、ベロニカ仕込みに来たのか。
最近はパンも焼くようになってベロニカもそれを手伝ってるんだよな。そういや未だにティファの飯食ってないよな?最近はそんな仲も悪くねぇし、いい加減素直になればいいのにな?
「そういえば、もういい加減ティファのご飯食べたら?面倒なんだろ?料理作るの」
「そうね。でもまだ食べたくないわ」
ん?まだ食べたくない?それって・・・・。
「もしかして。何か理由があるのか?」
ほらなぁ。ギャドこういう勘は鋭い。
「そうね。個人的な事だけど、もしかして聞きたいの?」
「え?教えてくれるの?」
「いいわよ。でも、二度とその言葉を口にしないでくれる?」
わぁ?
ベロニカってなんつーか、刺々しいよなぁ。
聞いたらちょっと後悔しそう。どうする?
「・・・ベロニカが話していいと言うなら聞くが?」
「そう?理由は単純よ。あの子の料理を食べると両親を思い出すからよ」
あ、なんだ。故郷が懐かしいってやつ?
そりゃあそうだよな?ベロニカの実家って料理店だっけ?
「ん?どうして思い出すんだ?ティファの料理で?」
「あの子には私の家のレシピを渡してある。当時それを欲しいと言われて私は深く考えずに渡したけど、後になって後悔したわ。ティファの料理にはその味がちゃんと生かされている。食べれば直ぐに分かるわ。だって、私の親の味だから」
「もしかして帰りたいのか?」
なんだろう。これ、聞いちゃ駄目なやつじゃね?
俺達もしかして、かなり無神経な事しようとしてね?
「まさか?二度と帰りたくなんてない」
「両親に、会いたくないのか?」
「ま、まってフィクスそれ以上は・・・・」
「会いたいわよ。でも、二度と会えないから忘れたいの」
あー馬鹿。やっぱそうだ。これ。聞いちゃ駄目だった。
「私の両親は五年前に殺されたわ。私の目の前で」
俺達、阿呆だ。あれだけ頑なに食べないんだから余程の理由があるんだって予想出来た筈なのによ。
「お腹を空かせてやってきた男を不憫に思った両親は、その男にただでご飯を食べさせた。その後、そいつに殺されるとも知らずに」
「ベロニカ・・・」
「吐き気がする。お人好しの両親も、料理が好きな人間も、ティファを・・・・」
「すまん。もういい。もう二度と言わない。言わないからな?」
「・・・・・・・」
料理店ならそれなりに大きな街にあったんじゃないのかよ?自警団や兵士は何をしてたんだ?
ん?兵士?
「もしかしてベロニカ、その時ティファに助けられたのか?それがきっかけで騎士になった?」
「昔の事は忘れたし消し去りたいの。それに、私もう少ししたら、ここを出るつもりよ。その時は貴方達も、私の事は忘れて欲しいわ」
「は?ベロニカ出て行くのか?」
「つい先日この国での住民権を取得出来たのよ。私、この国を出て行くわ」
おい?それは、ティファが暴れるのでは?
「ここを出て、どこへ?」
「知る必要ある?言ったでしょ?私の事は忘れてって」
ヤバイ。これはまた一波乱起きそうな気がする。
なんでこうも次から次へと問題が?どうすんだよコレ。
ティファの奴、ベロニカについて行き兼ねないから!
お前ら呆然としてないでベロニカ引き止める策考えろ!




