ウリエルルート 3 前編
いつも読んでいただき、ありがとうございます!
今回は生徒会メンバーのウリエル先輩の完結編です!
運命だと思った。
この出会いこそが、運命なのだと。
自分が耳の柔らかな感触に拘る用になったきっかけを思い出す。
あれはまだ自身が幼い頃、暑い気温の最中だっただろうか。
あの頃は本にしか興味がなく、友人と呼べる存在もいなかったがその必要性も特に感じていなかった。
ただ今は、知識をとにかく頭の中に詰め込むことだけだ。
そんなある日の児童舎からの帰り道。
『こんにちは!』
『・・・・・・』
『こんにちは!』
『・・・・・・』
『ねぇ、こんにちは!』
『・・・・・ッ!?』
突然、耳元で大きな声が鳴り響く。
『な、何をするッ!?』
『よかった!目も合わないし、何度話しかけても反応がないから、どうしようかと思っちゃった』
『!?』
目の前にいたのは、太陽の光を受けて自らも発光してるかのような色素の薄い髪色と瞳をした自分よりも少し小柄な少年。
『あのね、この辺りに女神の公園ってあるかな?ぼく、そこに行きたいんだけど道に迷っちゃって』
『・・・・地図を見ればいい』
『ちず、読めなくて』
『それなら、すぐそこの曲がり角を右に曲がって次の分かれ道を左に行き、しばらくまっすぐいった3つ目の分かり道を右だ』
『え?あ、ありがとう!行ってみる!』
分からなければ、分かるまで調べればいいんだ。
人に頼らなくとも、努力次第でいくらでもできることは広がる。
少年が自分の横を通り過ぎて行くのを確認し、しばらくしてからようやく足を進めようとしたその時。
『・・・・・ッ!?』
強い風が吹き、ウリエルが被っていた制服の一部である帽子がその風に攫われる。
『ま、待てっ!!』
その風は帽子をウリエルに掴ませるかのように緩やかになったかと思えば、その直後に強く吹き大きく舞い上がらせ、まるでその風に意思があるかのようにウリエルを翻弄していた。
『いい加減に、その帽子を返せ!』
帽子は代わりを注文すればすぐに手に入るが、アレは祖父から譲り受けた祖父の思い入れが入った大切なバッチがついている。
無くすわけにはいかない。
『待てッ!!』
何度か曲がり角を通り過ぎた先で、ようやく風が吹きやみ帽子がウリエルの手の中に戻る。
『よかった・・・・って、お前!?』
ほっと息をついた先には、先ほど別れたばかりの少年が仰向けで倒れていた。
その膝にはかなり大きな擦り傷ができており、赤い血が足元へ向かって流れている。
『お、おい。大丈夫か?転んだのか?』
何度か声をかけてみるが、反応はない。
『おい、しっか・・・・ッ!!』
頭にケガがないのと呼吸があるのを確認してから、頭の下に手を入れると同時にウリエルの手が何か柔らかいモノに触れ、一瞬電流が全身に走るがすぐにその感覚はなくなる。
『太陽の暑さにやられたのか?』
こういう場合は確か、水分を取ることと身体を冷やすことが大切だったはずだが、ウリエルは水分を持たずここから水辺のある場所までも少し距離があった。
体が同じくらいの少年をウリエルが運ぶのにも無理があるし、だからといってこの場に少年を一人で残して行くのもどんな事件に巻き込まれるか分からない。
別にこの少年がどうなろうとウリエルには何ら関係ないが、このまま何もなかったかのように彼を見捨てこの場を去るという選択肢はウリエルの中にはなかった。
『だが、どうすれば?』
こういう時、まだ体の小さく無力な自分をとても不甲斐なく思う。
早く大人になれば、物理的に可能なことが多くなり一人でもできることがほとんどだ。
誰かの力を借りなくとも、知識と自分の実力と豊かさがあればどんなところでも生きていける。
そんな風に、あの時の自分は愚かにも考えていた。
『おい、何をしている?』
『!?』
そんなウリエルの前に現れたのは、金色の光を纏った身体は幼いものの強い眼差しを持った、幼稚舎で見覚えのある派手な印象の少年。
『君は・・・・ミカエル』
『お前は同じクラスのウリエルか?なんだ、そこの子どもはどうした?』
『ぼくの知り合いではないが、ケガをして倒れていて』
『ケガ?フン、おい!すぐにこいつを手当てして、水を飲ませてやれ!』
『はっ!!』
ミカエルの一言で、少年はミカエルの後ろに控えていた執事に丁寧に抱きかかえられながら連れられていく。
『・・・・すまない』
『お前が何を謝る必要がある?必要な時に、必要な者の手を借りることは悪いことではない。むしろ、それが近くにあるにも関わらず、誰からも借りられずに効率の悪い方法をいつまでも続けていくことの方が愚かだ』
『!?』
『お前のことは少し前から知っていたし、お前の子どもとは思えない幅広く深い知識を俺は高く買っている。なぁ、俺と組まないか?』
『なに?』
『俺自身も努力は惜しまないが、やはり限界はある。だからこそ、俺が出来ないことをサポートしてくれる優秀な仲間を見つけることが何より大切だというのが、母上からの教えだ』
『・・・・・・』
そうだ。
ミカエルとの出会いもこの時だった。
この時の少年は早急な手当てのおかげで大事に至らず元気になったとのことだが、あれから姿を見てはいない。
その日からあの時の手に走った刺激を求めて色々試してみたところ、一番その時の感触に近かったのが耳であり自分の耳ではすぐに違うとなり、様々な人間や動物の耳にも触れてみたが中々自分の中で満足の行く存在は現れなかった。
あの日、『彼』に会うまではーーーーーーー。
「ミカエル先輩、書類の整理できました!」
「・・・・あぁ。それなら、次はこれを」
「分かりました!」
放課後の生徒会室にて、ウリエルとその補佐をしているハニエルが普段通りのやり取りを続けている。
彼は真面目で、仕事も丁寧だ。
いつでも笑顔で明るく、側にいるだけでこちらの気分まで上げてくれるような不思議な雰囲気を持っている。
どれだけ疲れていても、彼の笑顔を見れば心が軽くなり温かいものが心を満たした。
「ハーモニー」
「はい、なんですか?」
「・・・・いや、なんでもない」
目線が、自然とそこに向かってしまう。
彼が持つ蜂蜜色の髪の隙間から見える耳に触れたい、という気持ちが何度抑えても強く膨らんでいた。
だが、その気持ちを感じるとともに頭によぎるのが『彼』の姿。
それがウリエルにハーモニーへ触れることを毎回ギリギリのところで躊躇わせていた。
『色々と、お世話になりました!』
『最後に、少しでいいから・・・・・君に触れさせてくれ』
何度も思い出すのは、あの時にそっと触れた唇の温もり。
「どうして、あの時」
「先輩?何か、言いました?」
「いや・・・・なんでもない」
なぜ自分は、最後にあんなことをしたのか。
最後に触れるならば、別の場所でもよかったはずなのに。
なぜ自分は、寝ても覚めても『彼』の顔ばかりが浮かんでしまうのか。
その答えは、ウリエルの中でまだ分からなかった。
ウリエル先輩との秘密の勉強会が終わってから、ロードとウリエル先輩が会う機会は以前よりも減ったはずだった。
あの時あんなに緊張していた、ウリエル先輩から触れられる機会もほとんどないのに、なぜこんなにも今の方がドキドキしているんだろう。
「あ!向こうから来るの、ウリエル先輩だ!こんにちは~!」
「こんにちは!」
「ウリエル先輩、こんにちは!今日もご指導よろしくお願いきます!」
「・・・・こ、こんにちは」
昼休み、ラジエル・チャミエル・ハニエル君達と廊下で歩いた際、偶然向こうから歩いてきたウリエル先輩とすれ違う。
本当は、チャミエルが見つけるよりもずっと前から気づいていた。
「あぁ、こんにちは」
相変わらず、涼しげでスマートな立ち居振る舞いは思わずため息が出そうになるほどかっこいい。
「・・・・寝癖がついてるぞ」
「!!??」
4人の中で一番後ろを歩いていた、ロードとすれ違うほんの一瞬でウリエルの低い声が耳に響き、朝から何をしても中々直ってくれなかった後ろ髪の癖のついた髪にふわりとウリエル先輩の指が優しく触れる。
なんでこんなことをするんだこの人はっ!
この日だけではない。
「あ!ロード、お前の名前あったぞ!10番って、すごい前回より順位上がったな!」
「すごいね!ロード!」
「い、いやぁ~おかげ様で」
「すごーーい♪今度、チャーミーにも勉強教えて!」
「いや、それはラジエルに頼んだ方がいいと思う」
ロードのテスト結果がびっくりするぐらい良かったのは、全部テストの範囲をピンポイントでわかりやすい解説付きで教えてくれたウリエル先輩のおかげに他ならない。
お礼を返すには言葉よりも結果で出す他ないと、解説付きノートを使って人生で一番と言えるぐらい勉強に力を入れたのだ。
テスト中、あんなに手応えを感じたのは初めてだった。
「あれ、あそこにいるのってウリエル先輩じゃない?」
「本当だ。1年生のテスト結果発表までわざわざチェックしてるのか、あの人?」
「確か、あの辺りって・・・・」
「!!??」
ウリエル先輩が見ていたのはトップ3ではなく、もう少し下の順位。
「・・・・・ッ!?」
ロードと目が合ったウリエル先輩の目と口元が、ほんの僅かに笑う。
まただ。
また、心臓が一気に握られたみたいに締め付けられる。
あんた、俺に何をしたんだ?
なんでそんな、優しい顔をして俺を見る?
なんであの時、最後にキスなんてしたんだよばかやろう。
あんたのおかげで、俺のBLでいっぱいだった頭の中は今はあんたでいっぱいだ。
そして、ある日の放課後。
「そこに、誰かいるのか?」
「!!??」
本当に偶然だった。
たまたま学園内で考え事をしながら一人で歩いていたら道に迷って、それでうっかり生徒会室近くにまで迷い込んでしまっただけ。
「・・・・・ッ!」
息を潜め、気配を必死になって身を隠す。
「気のせいか」
「!?」
ウリエル先輩の声が小さくなりホッと息をはいた次の瞬間、体のバランスを崩してそのまま転びそうになるがその腕を瞬時に掴まれる。
「何をしてる?ここは立ち入り禁止区域だが、それを知っての行動か?」
「す、すいません!俺うっかり道に迷ってしまって!」
これ、ずいぶん懐かしいやりとりだ。
「・・・・・こっちだ」
「えっ?」
ウリエル先輩が、ロードの手を強く握りながら前を歩く。
決して後ろは振り返らず、その広い背中だけがロードの目に映る。
心臓がうるさいほど高鳴り、顔は触らなくても熱くなってるのが嫌でも分かった。
「・・・・・・ッ!!」
今触れているのは手だけだ。
目線が合うわけでも、耳や顔に彼の手が触れているわけでもない。
なのに、なんでこんなに。
あの時の温かい唇の感触を思い出してしまうのか。
「あ、ロード!どうしたの?」
「ハニエル君!」
「お前はまっすぐ寮へ帰宅しろ。ハーモニーは俺と一緒に仕事の続きだ」
「は、はい!また明日ね、ロード!」
「うん。また明日」
ウリエルの横にハニエルが並び、にこやかに笑いかけるハニエルに向かってそっけないが彼らしく誠実に向き合いながら2人が生徒会室へ向かっていく。
そんな2人の姿を、少し離れた場所からロードが黙ったまま見つめる。
あんな風に穏やかなウリエル先輩の顔を見たのは、ロードは初めてだった。
大きな萌えを感じるべき状況なのに、胸がもやもやして痛む自分に戸惑う。
これでいい。
これが正しい、本来あるべき姿だ。
それなのに、おかしいじゃないか。
俺は腐男子でBLを見るのが何より萌えて幸せなはずなのに、何で少し前なら大興奮で目を離せなかったクラスメイトの生BLにも前のような興味が持てない。
あんなに待ち焦がれていたウリエル先輩とハニエル君のBLにも、心が踊るどころか見ていると胸が苦しくなって目を背けてしまう。
ズキン。
「!?」
触れられていた手が、いつまでも熱い。
「何を、悩んでいるんだい?」
「!?」
夕方、ロードがお気に入りの学園の端にあるベンチに座っていると、突然声をかけられる。
慌ててそちらを見ると、短めの黒髪に黒い瞳をし簡素な服に身を包んだ背が高く細身だが割といい身体をした、見た目30代ほどの渋さも入った大人イケメンが現れた。
「すまない。ずいぶん深いため息をついているようだったから、つい声をかけてしまった。私はこの学園の庭師を務めている者で、名前はセラフだ」
「・・・・・俺は、ロードといいます」
セラフと名乗った男の胸に学園の関係者のみが身につけることを許されている、学園の紋章をかたどった羽をモチーフとした銀色のブローチを見つけてから自分の名前を名乗る。
確か、名前と魔法で契約を交わしてから身につけるものらしく、別人がその身につけるとその契約に込められた魔力が発動して全身に雷が走るとかなんとか言ってた気がする。
つまり、学園の関係者というのは間違いない。
「ロードくん。ここ、一緒に座ってもいいかな?」
「・・・・ど、どうぞ」
「キレイだね」
「はい」
あれ?
何で俺、よく分からないイケメンと夕陽を眺めてるんだ?
「この場所は私も気に入っていて、気持ちが滅入るとここから見える美しい夕陽をよく見ていた。夕陽を見ていると、自然と涙が出てね。気持ちが少し軽くなるんだ」
「・・・・・・」
確かに大人イケメン・セラフの言う通り空いっぱいが燃えるような茜色に染まり、ゆっくりと沈んでいく強くも優しい暖かな光を見ていると、特に泣きたいわけではなかったのに涙がにじみ出てくる。
「これは私の独り言だから、聞き流してくれて構わない」
「え?」
「昔、私には大切にしていた可愛い小鳥がいてね。とても美しい声で歌うように鳴く愛らしい小鳥だった。だが、小鳥は私の手の中ではなく広い世界が見たいと自ら外へ飛び立ってしまった。それから私の心は何を見ても聞いても空っぽな部分ができて、埋まらないんだ」
「・・・・逃げちゃったんですか?」
「いや、その小鳥は外で飛びたいと願い、私もその願いを叶えたいと思ったから自由にしたんだ。それが小鳥の為だと思ったからね。ただ、後から後悔はしたよ」
「後悔?」
「なぜ、いなくなってしまう前にもっと大切にできなかったのかと」
「!?」
「なぜもっと側にいられる時に、小鳥の奏でる歌をもっとよく耳を傾けて聞きその歌を褒めてやらなかったのだろう。なぜその美しい身体を、もっとたくさん撫で愛でてやらなかったのだろう、とね」
「・・・・・・ッ」
そうだ。
なぜ、俺はウリエル先輩が側にいる間にもっと彼との時間を大切にできなかったのだろう。
『どうした?どこが、分からない?」
いつだって彼は、あんなにまっすぐ自分に向きあってくれていたのに。
側にいるのが当たり前に感じるほど、誰よりも近い距離にいたはずなのに。
「ロードくん。どうぞ、これを」
「!?」
気がつけば、両目からは涙が流れ落ちていた。
セラフの手から白いハンカチを受け取り、涙の止まらない両目を覆う。
「すみま、せん」
最近、あの人を見るたびに胸が痛む。
あの人の姿を無意識に目で追い、他人が見たら分かりづらい表情の些細な変化一つ一つに心臓を鳴らして、BLを見ている時のようにときめいている。
もう、分かってるんだ。
散々BLに萌えてきた俺からすれば認めたくなかっただけで、答えはいつだってすぐそこにあったのに。
「・・・・・・うぅっ!」
ウリエル先輩との秘密の時間を無くしたその日に泣いてから、久々に声を上げて俺は泣いた。
横に座るセラフは、ただ黙って目の前の夕陽を見つめている。
「ロードくん、これも私の独り言だからそのまま聞き流してくれて構わない」
「!?」
「私の一番の後悔は、私の気持ちを小鳥に告げなかったことなんだ。いつだって側にいてその歌声で何度も私を癒してくれた、そんな小鳥のことを私がどれだけ感謝し大事だったか。残念ながら私は、失ってからでないとその重みに気づけなかった愚か者だがね。それでも、私のその気持ちは小鳥にきちんと伝えたかった」
「好き、だったんですね」
「今も変わらず愛しているよ。これから先も、私が側にいられなくとも小鳥が誰よりも幸せであってほしいと願っている」
「・・・・・・セラフさん」
「つまらない話につき合わせてしまって、悪かったね。もう陽が暮れるから、君も早く家に帰った方がいい」
夕陽はだいぶ沈みかけ、辺りはかなり暗くなり始めていた。
「いえ、ありがとうございます。たくさん泣いたらなんだかスッキリしました」
「そうかい?また何かあったら、あの場所に来たらいい。私は君に何もしてやれないが、話を聞くことぐらいはできるからね」
「はい、ありがとうございます!」
セラフさんに頭を下げて別れると、真っ直ぐに寮へと向かう。
久しぶりに晴れやかな気分だった。
そうだよ。
後悔するぐらいなら、ちゃんと自分の気持ちをウリエル先輩に伝えてからでも遅くはない。
何をバカなことを、と一蹴されてしまうかもしれないが。
あの普段は鉄面皮みたいなウリエル先輩がほんの少しでもあっけに取られるところなら、ぜひ見てみたいと思う。
「まぁ、先輩が好きだったのは俺の耳だけだったかもしれないけど、きっと嫌われてはいなかったよな」
自分で触ってみても何がそこまで気に入ってくれたのか未だにさっぱり分からないが、そこに触れるとウリエル先輩の手つきを思い出してうっかり心臓が早くなる。
手の平も指もロードより大きく、少し節のある手が男っぽくていつも指先は少し冷たかった。
その手の感触を感じるたびに全身が熱くなって、ウリエル先輩のことだけしか考えられなっていくのが少し怖かった。
まるで、自分が自分じゃなくなるみたいで。
でも本当は、嫌じゃなかった。
嫌じゃなかったことがなんだかとても恥ずかしくて、それが何より嫌だった。
もっと、触れてほしいーーーーーーだなんて。
「・・・・・・よしっ!!」
セラフから借りたハンカチで涙を拭うと、ロードは気合を入れて寮の入り口を通り抜ける。
明日の夕方、ウリエル先輩のところへ話をしに行こう。
今夜はしっかり食べて、久しぶりにお風呂にもゆっくり浸かろう。
心を決めると、不思議と気持ちが落ち着いてロードの表情も柔らかくなった。
そして、謎の大人イケメン・セラフのこともさっそく明日から調べようと決めた。
あれだけ雰囲気があるイケメンなら、もしかしたら隠れ攻略者、まさかの理事長という線も十分にありうる。
となると、たとえに出ていた小鳥はハニエル君となるが出会いはまさかのハニエル君幼少期?
そうなると理事長がショーーーーーいや、BLに歳の差は関係ない!
大人になってしまえば、10個や20個の歳の差は当たり前。
むしろ、おじさん×学生なんて普通にじゅうぶん萌えるじゃないか!
「久々に萌えてきた~~ッ!!」
浴槽に浸かりながらのBL妄想は、セラフ(たぶん理事長)×ハニエル君に決定!
一気に生き生きしたロードは、スキップをしながら自室の入り口に向かった。
そして次の日の夕方、生徒会室へ向かったロードだが緊張していたせいか途中で道を間違えたらしく見知らぬ通りに来ていた。
確か立入禁止区域に古い移動用の魔法陣があって、そこに足を踏み入れると別の場所に自然移動できるとか言ってたけど。
さっきすっ転んだ先に、そんな感じのがあったような気がしなくもない。
普段ならそういう場所は結界が張ってあって、普通の生徒が足を踏み込めないようになってるはずなんだけど。
「ピイィィーーーーーーーッ!!」
「!!??」
その時、聞き覚えのある高い鳥の鳴き声が耳に響いた。
「へ、ヘレス!?なんでここにっ!?」
最近は脱走もしなくなり、だいぶ大人しくなっていたはずなのに。
「ピイィィーーーーーーーーッ!!」
「う、うわっ!ど、どうしたの!?」
角を曲がるなり、ヘレスがロードの胸に勢いよく飛び込みその勢いでロードは後ろへと辛く吹っ飛んだ。
「ピイィィ!ピイィィ!」
「ハハッ!くすぐったいってば!」
久々の再会を喜んでくれているのか、ヘレスは夢中で自身の顔や体をロードに擦り寄せてくる。
その頭や背や羽を何度も優しく撫でながら、ヘレスが落ち着くのを待った。
「おや?そいつ、ずいぶんあんたに懐いてるんだね?」
「!!??」
だが、その時ロード達の前に全身を黒い衣服で包んだ見るからに怪しげな男がヘレスが飛んできた方角から姿をあらわした。
「ピイッ!ピイッ!!ピイィッ!!」
「へ、ヘレス!?落ち着いて!」
男の姿に明らかにヘレスが動揺しロードの腕の中で暴れ出すが、なんとかヘレスを両手で抱えながら男と向き合う。
「そうそう、暴れないで大人しくしてる方が賢明だ。その方が俺も優しくしてやれる」
「・・・・・ッ!?」
男の蛇のような目が妖しく光り、ニヤリと口の端が釣り上がる。
そして、ロードと男の姿はその場から消えた。
気がつけば生徒会メンバーの中で一番付属品?が少なくなってしまったかもしれないと感じてます。
書いたことはないけれど、少女漫画的な感じを目指しました。




