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チャミエルルート 3 後編 ED

チャミエルルート完結編です!


少しエロスを普段よりはがんばってみましたが、なにぶんまだまだ慣れてないもので温かい目で見ていただけると幸いです。




「大丈夫?落ち着いた?」


「・・・・うん、ありがと!ハニー!」



ハニエルが用意した濡れタオルで涙を拭うと、ニッコリとチャミエルが満面の笑みを浮かべる。



「それにしても、まさかあの時の君が学園のアイドルにまでなってるなんてね」


「キャハ☆ママに可愛いって褒めてもらえるのが嬉しくて、つい!あ、でも今はおしゃれして可愛くするのも、可愛いもの集めるのも本当に大好きだよ!」


「それに、ステキな友達もたくさんできたんだね」


「!?」


「チャーミー?」



『友達』の言葉に、チャミエルの体がびくっと大きく反応する。


そうだ。


ロードは、ラジエルとともにチャミエルにとって、家柄などにとらわれずいつだって側にいてありのまま楽しく過ごせる大切な友達だった。



いや、チャミエルにとっては友達以上の。



「どうしよう、ハニー・・・・ぼく、大事な友達を1人、無くしちゃった」


「え?」


「チャーミーのこといつだって受け止めてくれるから、嬉しくてつい調子にのってわがままが止められなくなって、そしたらもう嫌だ!って手を離されちゃった。チャーミーったら、本当におバカさん☆」



チャミエルは笑顔のまま、自分の拳をコツンと自分の頭の上に落とす。



「ハニーも、チャーミーの嫌なとこがあったら遠慮なく言ってね!チャーミーそういうの、おバカだから言われないと自分じゃ分からないの」


「・・・・・君は、バカじゃないよ」


「!?」



笑顔のチャミエルの頰を両手で優しく包み込むと、ハニエルは普段の穏やかな笑顔ではなく真剣な眼差しでチャミエルの目を真っ直ぐに見つめながら伝えた。



「なんで君は今、心の中で泣いてるのに無理して笑ってるの?君はバカじゃないけど、そうやって自分の心を無理やりごまかす君は大バカだよ」


「は、ハニー?」


「心の奥で泣いてる君が・・・・可哀想だ」


「!?」



ハニエルの両目から、涙が静かに流れる。



泣いてる?


ぼくが?



違う。


今目の前で泣いてるのは、ぼくじゃなくてハニエルの方でしょ?


ぼくは泣いちゃダメなんだ。


だって、ぼくが好き勝手したせいで大切な人が嫌な気持ちになったんだから。



「君はまた、前と同じように君自身の本当の気持ちを言えてないだけだよ。今心の中で泣いてる君が想ってることを、君は全部その人に伝えたの?」


「・・・・・言って、ない」


「君は変わらないね。君は優しくて少し怖がりだから、本当の気持ちをぶつけることを抑えてしまうのかもしれないけど、いいんだよ」


「!?」


「その人の前で、たくさん泣いてもいいんだよ」


「・・・・・・ッ!!」



泣きながら、ハニエルがあの時のようにチャミエルをギュッと強く抱きしめる。



「いい子でいなくてもいいんだよ。言ったでしょ?ありのままで、君はじゅうぶん魅力的なんだ。君の大切な友達だって、ラジエルだってぼくだって、君のことが大好きだから君の側にいるんだよ」


「・・・・・そ、それでも、嫌われちゃったら?」



ハニエルの肩に頭を伏せしがみつく様にして泣いているチャミエルが、全身を震えさせながら小さい声で本音をぽつりとこぼす。



「大丈夫、ぼくを信じて」



『大丈夫、俺を信じて』



「!?」



チャミエルの中で、2つの声が重なる。




「ありがとう、ハニー!チャーミー、行ってくる!」


「うん。行ってらっしゃい!」



涙でチャミエルの目の周りは赤くなっていたが、今すぐ『彼』に会いに行く為に『彼』の部屋へと急ぐ。


その顔はハニエルがこれまで見たチャミエルの笑顔の中で、一番輝いて見えた。





「・・・・・大丈夫。君は愛されてるよ、チャミエル。ぼくにはもう見えなくなってしまったけれど、目に見えない者達からもたくさん君は愛されてる」



ハニエルの目には、部屋を出ていくチャミエルの背に丸く淡い光がいくつか映る。



「シルフィー、ぼくもまた君に会いたいな」



思い出の中に映る、大切な友人の姿を思い浮かべハニエルは優しく微笑んだ。












コンコンと、チャミエルは目の前の扉をノックする。


だが、現在その部屋の持ち主であるロードの声は返ってこない。



「ごめんなさい、ロード。ほんの少しでいいから、お話させて?」



コンコン、ともう一度ノックをして待ってみるが、やっぱりなんの反応も返って来なかった。


やっぱり、もう2人きりではチャミエルの顔も見たくないということなんだろうか。




カチャ。




「!!??」



突然、扉が勝手に開いて行く。



「・・・・ろ、ロード?」



だが、部屋の中に入ってもロードの姿はなく、彼が帰宅した痕跡もそこにはどこにもなかった。



「ろ、ロード?ね、ねぇ、これってかくれんぼ?」



クローゼットなど、ロードが隠れられる場所など限られておりそのどこを開けて探しても彼の姿は見つからない。



「・・・・・・ッ!!」



その時、チャミエルのポケットにしまわれていたはずの金のボタンが突然ふわふわと宙を飛んでいた。



「え?な、なに?不思議ボタン?」



ボタンをつかもうとチャミエルが手を伸ばすが、ボタンはそのまま扉の外へと出ていく。



「待って!それは、ロードとの大切な思い出のボタンなのっ!!」



これだけはずっと捨てられず、お守りのようにして持っていたのだ。


たとえロードがあの時のことを忘れていても、たとえこの先1番近くにいられなくなっても、チャミエルには絶対に捨てられない宝物。



「お願い、待ってっ!!」



必死で追いかけるチャミエルに対し、彼が見失わない距離を保ちながら金のボタンは空を早いスピードで駆けていく。













「おらっ!!いい加減起きろッ!!」


「!!??」



バシャッ!!と頭から大量の水がかけられ、失っていたロードの意識が一気に覚醒する。



「・・・・いててッ」



先ほど殴られてできた顔の傷が、水に晒されてしみる。


頭部から滴る水をぬぐいたくても、その腕は身体ごと柱に縛られていて動けなかった。



「さぁ、そろそろ吐いたらどうだっ!?お前は理事長とどういう関係なんだっ!!」



ロードの目の前には、先ほど寮の廊下で声をかけてきた怪しげな男とあと2人ほど見知らぬ男がそこにいた。



「・・・・それは、俺の方が知りたいよ」


「まだシラをきる気かっ!!」


「!!??」



腹を蹴られて激しく咳込む。


部屋は暗く、男達が座る木製の小さなテーブルと椅子以外は何もない古い小屋だ。


ハニエル君の代わりとして無謀にも咄嗟の判断で捕まったが、あの可愛らしいハニエル君が今の自分のように殴られたり蹴られたり暴行されていたかもしれないのだから、直感で下した自分の選択は正しかった。



いや、コレがハニエル君なら別の脅され方になるのかもしれない。


犯人側もイケメンならそれも大いに有りだし、モブに無理やり攻められるハニエル君を少しだけ見てみたい気もーーーーーーーー。



「悪いけど、本当に理事長のことは何も知らないんだ。転入の際も紙面でのやり取りだけで、会うどころか顔を見たこともないです」



『まさか!この学園の理事長さんから確かに途中入学を許可する旨の連絡は紙面でもらったけど、直接会ったこともないよ!』



少し前、途中転入が割と珍しいハニエル君にもしかして理事長辺りと知り合いなのかとラジエル達と聞いたことがあったが、本当に何も知らない感じだった。



「嘘をつけ!あの理事長がただの一生徒に過ぎないお前に、理事長直々に転入の為の連絡をするなど何も関係がないわけがない!!」


「!?」



確かに、それは俺も同じことを思ってる。


そしてぜひとも関係があって欲しいと切実に願っている。



「お前が理事長のお気に入りなら、理事長に直接連絡するなんてことは簡単なことだろう?」


「だから、別にお気に入りでもないし連絡先なんて何にも知らないって言ってんだろっ!」


「・・・・・なら、身体に聞いてみるか?」


「!!??」



お、おい、嘘だろ?


一番奥で黙ったまま酒を静かに飲み続けていた、肩までの緩やかに波打つ黒髪に無精髭を生やした、見るからに怪しげな雰囲気と鋭い目つきをした男がロードに近寄る。



「や、やめろっ!!」


「ガキに興味はないが、あいつのお気に入りなら話は別だ」


「!?」



男の手がロードの頰と腰に触れた途端、ぞわぞわっと全身が一斉に寒気が走り鳥肌がたつ。



「さぁ、どこまで黙ってられるかな?」


「・・・・・ッ!!」



男達に殴られ、傷口から流れていたロードの口元の血をざらりとした舌で舐めとる。



気持ち悪い。


側にいるだけで全身が震えてくる。



「結構いい味だな。もっとあちこち傷つけて、全身舐めてやろうか?」


「!?」



ヒヤリとした冷たさを感じたと思ったら、首元には冷たいナイフが添えられていた。


怖い!!



ナイフが怖くて声も出せず、全身が無意識に小さく震えるロードの姿にニヤリと歯を見せながら笑うと、顎に手をかけ親指を無理やりロードの口元に入れて強引に広げると舌を入れながら噛みつくようなキスをしてくる。


同時に、強いお酒の匂いと辛味の味がした。



「い、やだっ!やめ・・・・ッ!!」



蛇のような鋭い目をした男は、ロードの呼吸すらも奪うかのような激しい動きの舌で口内を好き放題に侵し、首元に当てていたナイフで着ていた制服のシャツを切り刻んで破く。


身体のあちこちで痛みが走ったから、皮膚も直接切られていることだろう。



やめろっ!!


嫌だ!!


気持ち悪い!!



男に触られるたびに吐き気がロードを襲い、呼吸がまともにできず苦しくてなんとか顔を背けようとするが、痛みを感じるほど顎を強引に抑えた手がそれを決して許さない。



「・・・・・・ッ!!」


「いてぇな。舌を噛むなんて、可愛いマネするじゃねぇか。なんだよ、気持ちよくなかったのか?」



唇の端から流れる血を、先ほどまでロードの口の中に突っ込み互いの唾液で汚していた親指で拭うと、その血を唾液ごとべろりと舐めとる。



ロードは嫌でも襲ってくるあまりの嫌悪感から、口の中の血が混じった唾液ごと唾として床に吐き出し男を睨みつけた。



「ヒューーー!ルチーフェロを最後まで拒んだ奴なんて初めてみたぜ!」


「うるせぇ・・・・・いい目だが、そんな目で見ても俺を喜ばせるだけだぜ?」


「んぐっ!?」


「そんなに噛みたきゃ、これでも噛んどけよ。俺はお前の体を噛んでやるから」


「!!??」



口の中に丸められた布が無理やり突っ込まれ、男の口がロードの胸元にその歯を立てる。




やめろっ!!


嫌だ!!


やめろっ!!




今ロードの脳裏に浮かぶのは、1人だけ。


同じように身体を触られ、舌で全身を舐められた時とは全然違う。


彼も時々、やや少し強引にロードが逃げられないように色々準備してから触れてくることがよくあった。


確かにすごく恥ずかしかったし、本気で逃げたくなることも何度かあったのも確かだけど、それでも一緒に過ごすことをやめたいとは思わなかった。


恥ずかしくて気持ちのいいことはされても、ロード自身を本気で傷つける様な真似は彼は絶対にしない。


彼が心から喜び興奮する姿を見て可愛いと感じたり、同じかそれ以上に熱くなり内心でとても興奮していたのはロードの方だ。


最初こそ嫌がっていたロード自身が、いつしか彼に触れられることを受け入れていた。



そしてその熱は、決して嫌なものではなかった。




『ロード!大好き!』




本当は、いつも感じていたんだ。


彼の目から唇から、その手の先から全身から。


いつだってロードへの愛情を熱とともに全身で伝えてくれていた。




「・・・・・んんッ!!」


「ちっ。この俺が直接舐めてやってるのに、無反応だと?まぁ、俺は突っ込める穴があればそれで十分だがな」


「!!??」




男の手がロードの下半身に伸びる。




嫌だ!!


チャミエルッ!!







「こ、この光は・・・・ッ!?」


「!!??」



その時、目を開けてられないほどの強い光が視界を埋め尽くし、ロードはすぐさま目を伏せる。



「ーーーーーーーーァァァッ!!!」


「!?」



すぐさま鳴り響いた男の叫び声に驚き目を開くと、ロードに触れていた男を含めてその場にいた男達全員が壁に打ち付けられ気を失っていた。



「・・・・・ロードッ!見つけた!!」


「ふぁ、ファびエルッ!!」



そして光の向こうからこちらへ駆けてきたのは、会いたくて会いたくてたまらなかった人の姿。



「やだ、ロードってば、大丈夫!?ひどい!こんなに・・・・・こんなに、ロードのことを傷つけて!!」


「ーーーーーーーッ!!」



チャミエルはロードの口の中に入れられていた布を取り、身体を縛っていた縄をナイフで切ると力が抜けて倒れ込んできたロードの身体を優しく抱きしめる。



「無事で・・・・本当によかった!」


「チャミ、エル?」



いつもならすぐ力加減を忘れてだき潰しそうになるのに、今日のチャミエルは全身が小さく震えていた。


まるで、触れることすら怖がっているかのように。


チャミエルの顔が見たいのに、彼はロードの胸の辺りに顔をうつむかせてこちらを見ない。


「あ、安心して!あいつらなんて、このチャーミーがすぐにボッコボコにしちゃうんだからっ!!」


「チャミエル!」



ロードの顔を見ないまま慌てて離れると、チャミエルは壁際に倒れている男たちの所へ向かう。



「もう!ロードを傷つけるなんて、絶対許さない!!悪い子には、コレでたくさんおしおきしちゃうんだからッ!!」




ピシッ!!


パシッ!!




「ぐ、ぐえぇぇーーーーーっ!!」


「グギャッ!や、やめてっ!!許し・・・・んギャァァーーーーー!!」



と音を立てながら、どこから出したのか長いムチを出すとチャミエルは意識を取り戻した男達をあっという間にそのムチでぐるぐる巻きに縛り上げた上で、その見た目は華奢で細く美しい足でもって思う存分蹴り飛ばした。


もちろん、仕上げは急所を足先で思いっきり押しつぶして。


ただ、その時その場にいた男は2人だったことにチャミエルは最後まで気づかない。




「チャミエル!もういい!!もう、大丈夫だからっ!!」


「!!??」



男達が激痛に気を失ってもなお、蹴るのをやめようとしないチャミエルをロードが後ろから抱きしめてその動きをなんとか止める。



「・・・・・もう、俺は大丈夫だから。だから、もう泣かないでチャミエル!」


「!?」



全身をロードに包み込まれ、温かいぬくもりを感じてようやくチャミエルは自分がずっと泣いていたことに気づく。



「ろ、ロード・・・・さい」


「え?」



ロードの腕の中にいたチャミエルが、ゆっくりとロードの方へ向き直りその顔を恐る恐る上げた。


目の前には、自分を見上げてくるチャミエルが映る。




「ロード、ごめんなさい!!」


「!?」



チャミエルは、その大きな瞳が溶けそうなほど涙で顔中を濡らしていた。



「チャーミー、ずっと、ロードのことわがままたくさん言って好き勝手に振り回してた!ロードのことが好きで、好きで、ただそれだけだったのに・・・・ごめん、なさい!お願い・・・・もう、嫌がることしないから、だから、チャミエルのこと・・・・嫌わ、ないで」



「ーーーーーーーッ!!」




泣いている。


向日葵の様にいつも明るく笑う、チャミエルが。


ガタイのいい大の男が何人襲いかかってきたってその持ち前の強い力で難なく軽やかに追い払える、見た目よりはるかにたくましいチャミエルが。


たくさんの人から愛され大切にされている、誰より可愛く愛らしいチャミエルがーーーーーー俺なんかの為に、俺に嫌われたくないと本気で泣いていた。



「・・・・・嫌いになんて、なるわけないじゃないか」


「!?」



「何をされても嫌いになれなくて、どんなことがあっても結局チャミエルの可愛い笑顔が見れれば、それで最後はいつも許してしまう俺自身が・・・・・何よりも、嫌だったよ」



「ロー・・・・ッ!?」



チャミエルの頰を両手で包み込むと、ロードはチャミエルの唇にそっと口づける。


その時のキスは涙の味がして、少しだけしょっぱかった。











その後、いつのまにか意識を失ったロードはチャミエルに担がれて無事に学園の寮にまで戻ってきたらしい。


あの男達はチャミエルより報告を受けた生徒会役員がすぐに対応し、警備隊により捕まって色々取り調べを受けているとのことだった。


ロードのケガも、ラファエル先輩がミカエル先輩からの命令を受けて渋々直してくれたおかげで今はもう傷1つ残っていない。



だが、それでも大事をとってチャミエル共々一日だけ部屋で休むようにと本日は学校を休んでいる。



そして、自分の部屋で俺はーーーーーーーーチャミエルを縄で縛っていた。




「ちょ、ちょっと、俺が嫌がることはしないって言ってたじゃないか!」


「うん!嫌じゃなかったって、ちゃーんとこの耳でぼく聞いてたよ!」


「い、嫌じゃなかったとは言ってないっ!」


「えぇ~?でも、嫌いにはならないんでしょ?」


「それは・・・・そう、だけど」



他の生徒が登校する時間が過ぎた頃、チャミエルはロードの部屋へと笑顔で押しかけてきた。


その手には、深紅の縄を持って。



「あん!やっぱり・・・・これは、ロードに・・・・やん!まいて、もらわないとね!」


「だ、だからって、何も俺の部屋でやらなくても!」



ロードの部屋のベッドの上で、半裸のチャミエルを同じくベッドの上に乗ったロードがチャミエルのスレンダーな体に縄を巻きつける。


場所が違うだけだというのに、いつも以上に心臓の音がうるさい。



「ほ、ほら!これで、終わりっ!!」


「ひゃんっ!うん。すっごく、いい感じ!」


「!?」



久々の縄で亀甲型に縛られ、頰を紅葉させたチャミエルの姿に、全身が一気に熱くなる。



何を今更ドキドキしてるんだよ、俺は。


チャミエルが縄で縛られた姿なんて、これまで何度も見てきてるじゃないか!



見慣れたはずの光景だったが、陶器を思わすようなシミひとつない真白い肌に、赤の縄がよく映えている様は改めて見てとてもキレイだと感じた。


あと、割ときつめに縛られてるはずなのに、縄の跡がよく残らないものだとそこは不思議で仕方がない。



「・・・・は、早く上着着ないと、風邪ひくよっ」


「待って、ロード!!」



すぐにおさまりそうにない熱を鎮める為、ベッドから降りようとしたロードの手をすぐさま掴み、チャミエルはそのままロードを勢いよくひっぱってベッドの上に押し倒す。


突然視界がぐるりと変わったロードの視線の先には、息の荒いなんともなやましげな姿のチャミエルがロードをじっと見下ろしていた。



「ちゃ、チャミエルッ!?」


「ねぇ、ロード。昨日のキスは・・・・なんでしたの?」


「!?」


「ぼくは、ロードが好き、大好き!ロードは、ぼくのこと・・・・嫌?それとも、少しは好きでいてくれてる?」



チャミエルが自分のことを『チャーミー』ではなく、『ぼく』と呼び方が少し違うだけなのに受ける印象がだいぶ変わる。



「そ、その聞き方は、ずるくないか?」



そんな必死な目と声で聞かれて、嫌いだなんて冗談でも言えるわけがない。



「ロード?」


「・・・・・・・好き、だよ」


「!?」


「で、でも、チャミエルにはハニエル君がいるだろっ!?」



チャミエルの運命の人はハニエル君だ。



「ハニー?確かに、ハニーはぼくの恩人で初恋でとても大切な人だけど。ぼくのことを縛って欲しいって思うのも、ぼくが縛りたいって思うのもロードだけだよ?」


「え?」


「ハニーには、ううん。ロード以外に、ぼくのこの趣味のことをちゃんと話してる人はいないよ?」


「し、執事さん達は?」


「縄をコレクションしてるのは知ってるけど、どう使ってるのかは直接見せたことなんてない。みんなに知られたらママ達の耳にも入っちゃうし。もちろん、ぼくを縛らせたこともないよ」


「・・・・・ッ!?」



チャミエルの手がロードの手を掴み、縄で締められたチャミエルの胸元にそっと触れさせる。



「ねぇ、ぼくを縛れるのは今までもこれからも、ロードだけ。それは、嫌?」


「・・・・い、嫌って」



ロードの頭は激しく混乱していた。


自分自身の心臓もバカみたいに早鐘を打ってるのに、手の平から感じるチャミエルの胸の鼓動まで感じ取ってしまい、まるで全身が心臓になってしまったかのように熱い。



チャミエルの身体を縛るのが、他の人でもいいのか?って。


そんなの、執事が当たり前のようにやるんだと思ってたから考えたこともなかった。


少し前まで、その現場を見たいとまで思っていたはずなのに。



今それを思うとーーーーーーーー。



「ほ、他の人が、チャミエルの裸を見て縛るのは・・・・少し、嫌かも」


「ロードっ!」


「!?」



ロードの言葉に、チャミエルが勢いよく抱きつく。



「チャーミー、うれしい!!」


「ちょ、ちょっと、チャミエル!!は、離して!これ以上くっついたら・・・・ッ!?」



頭がどうにかなってしまいそうだと、チャミエルを突き放そうとしたロードの思考が体とともに止まる。


下半身に、固く熱を持った存在を強く感じて。



「・・・・うれしい」


「チャ、チャミエル?」



チャミエルは抱きつくのをやめると、ロードの大きく主張している熱の部分をうっとりとした目で見つめている。



「ロードには、チャミエルの全部をあげる!だから、ロードの全部じゃなくてもいいから、少しだけチャミエルにちょうだい?」


「へ?」



チャミエルはいつもの笑顔とは違う、先ほどまでの泣き顔とも違う、何かロードの胸を締め付けるような笑顔で見つめていた。



「今は大好きじゃなくてもいいから、今よりもう少しだけチャミエルのこと好きになって?」


「ちゃ、チャミエル、何言って・・・・ちょ、ちょっと、チャミエル!?そ、そこはダメだって!!」



チャミエルの唇と舌がロードの熱に直接触れ、嫌でもその熱をさらに高めていく。



「ねぇ、ロード」


「はぁっ、はぁっ!!やめ・・・・やだっ!」



チロチロと、チャミエルの小さな舌と細く華奢な指がロードの熱を愛おしそうにゆっくりと丁寧に舐めあげ包み込む。


その刺激が弱くもなく強すぎもしない為、ロードの熱は高まる一方でおかしくなりそうだった。



「ロードは、チャミエルのこと食べたい?それとも、食べられたい?」


「あっ・・・・んんっ!何、言って・・・・ッ!」


「チャミエルの、全部をあげるって言ったでしょ?どっちもあげるけど、最初はどっちがいい?」


「どっちって・・・・・あぁっ!!」



熱が果てそうになっては、チャミエルの指でその熱の元をキュッと握られ寸前で止められる。


その繰り返しで、思考はもはや全く正常に動かない。



「ロードってば、本当に可愛い☆どっちがいいか、ちゃんと決まるまで何度でも高めてあげる!」


「いや、やだっ・・・・ッ!?」



突然、チャミエルの舌の指から解放されたかと思うと、今度はチャミエルがロードの腰に跨った。



「キャハ☆この方が、ロードの可愛い顔がよく見えるね!」


「ちゃ、チャミエ・・・・・ッ!!」



ロードの熱の上に重ねられたのは、チャミエルの熱と服越しであるはずなのに感じてやまない生々しい柔らかな温もり。



「ねぇ、ロードぉ、どっちが・・・・いい?」



ロードの腰の上で緩やかに腰を動かしながら、チャミエル自身もその熱を感じることに夢中になる。


そこにいるのは普段の可愛らしいチャミエルではなく、ロードの理性をめちゃくちゃにしてもまだしたりないほど、美しく妖しく時に強烈なほど可愛く微笑む、天使か悪魔か。


ロードからすればもう、目から耳から皮膚から感じる全ての刺激が限界を知らない熱をさらに生み出し、暴力的なまでに強い快感となって幾度も襲いかかってきて仕方がない。



チャミエルの視線1つ、動き1つで心臓が何度もその動きを止める。








「ーーーーーーーーッ!!」









もう、限界だった。








「た、食べ・・・・・いっ」


「うん、いいよ」


「!!??」




ロードの大好きな向日葵のような笑顔のチャミエルの顔に、たまらずロードから何度も浅くはないキスを交わしながら、2人の熱はさらに深く織り混ざっていく。



チャミエルの言葉通り、その全てを捧げられながらーーーーーーーー。











その夜、ふと目を覚ましたロードの目には窓から夕陽の優しい光が差し込んでいた。


身体を少しでも動かすと全身のあちこちに痛みが走り、思わず悲鳴をあげそうになった口を手で慌てて塞ぐ。


声を上げれば、疲れきりロードの腰に縋るようにくっつきながら休んでいる彼が目を覚ましてしまうからだ。



「少しだけっていいながら、結局全部持っていってるのはどこのどいつだよ」



一応、これも小声で。



「ロードぉ・・・・すき」


「!?」



まだ起きたわけではない、寝ぼけたままのチャミエルの顔に汗でくっついている髪の毛を指で撫でるように取り払う。


伏せられた長い睫毛と、力なく少しだけ開けられたピンク色の唇とでできたそのあどけない顔は、先ほどまでの熱のこもった時間が嘘のようにとても儚げでキレイなものに映った。



「たぶん、お前が思ってるよりもずっと、俺もチャミエルのことが好きだし・・・・どんなチャミエルでも可愛いし、かっこいいって思ってるよ」



普段は前髪で隠されたその白い額にそっと唇を寄せると、ロードは目を閉じてもう少しだけと先ほどまでの心地良いまどろみの中へと戻っていく。






その少し後。


むくりとロードの横にいた存在がゆっくり起き上がり、指先でツンツンと身体を刺激して何の反応もないのを確認した上で、ニッコリと満面の笑みを浮かべる。



「ロードってば、本当に可愛い☆」



そして、こっそりと『いたずら』をたっぷり仕掛けてから部屋の主に気づかれないよう衣服を整え自分の部屋へと静かに戻っていく。




「また明日ね♪バイバイ」




寝ぼけながらようやく起きた部屋の主が自分の体に刻み込まれた、前回の比ではない大量ハートの痣を見て大絶叫が響き渡るのは、このあと数時間後。











運命だと思った。


この出会いこそが、運命なのだと。





運命はきっと、様々な選択肢とともにいくつも用意されている。


その中で、これが俺の選んだ『運命』だ。


振り回してるようで依存してて、振り回されてるようで支えてるって感じでしょうか。


少しでも2人が幸せになれればと、思いましたがちゃんと表現しからているのかと少し不安です。

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